宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

62 / 166
哄笑

 

――機能不全に陥った都市要塞を爆破崩壊させて出現した機動要塞(超巨大戦艦)『ガトランティス』は、まさに圧倒的な火力、否、暴力で残存地球艦隊を文字通り叩きのめした。

 

ものの数分で巡洋艦以上の艦は殆どが爆沈又は大破・戦闘不能に追い込まれたが、駆逐艦や護衛艦は砲火が掠めただけで爆沈してしまうので、残存艦は無傷か損傷軽微という両極端な状態にさせられた。

 

『ヤマト』に至ってはほとんどの武装が破壊され、乗組員の大半が戦死又は重傷という有様。

そして、『テシオ』も

 

「1・2番主砲塔は完全脱落旋回、艦首魚雷も先程投棄しました」

 

使えるのは艦底部の3番主砲塔と拡散波動砲くらいなものだ。

 

「そして‥‥戦死・MIAが6名、トリアージブラックが4名。重傷判定者が5名、軽傷判定者が25名です」

「‥‥そうか」

「‥‥‥‥」

 

乗組員の2割が死亡・MIAと重傷で離脱。戦力的には深刻なダメージだ。

 

(‥‥クソッタレが!)

 

2年前とは次元違いの戦力を得たというのに、この凄まじい損失は何なのだ!?

 

敵と己に憤怒し、アームレストを握る手に力が入ったその時、通信席のパクが声を上げた。

 

「敵要塞戦艦から地球圏全域に、全周波帯通信が発信されています!」

「‥‥繋げ」

 

土方は受信を命じる。

 

メインモニターに1人の人物が映った。

 

緑色の皮膚に、頭髪と眉が繋がっている髪型を除けば、地球人と大差ない顔立ちだ。

地球人に換算すれば土方くらいの年齢か。

嶋津も画面を睨みつけた。

 

(こいつがズォーダーか‥‥)

 

かのテレサが『ヤマト』に提供した白色彗星帝国の情報にあった、敵国の国家元首、大帝ズォーダー。

 

歴代の元首の中でも際立ったカリスマ性を持ち、あのアンドロメダ銀河を完全征服したという。

 

そのズォーダーが勝ち誇った顔で傲然と口を開く。

 

『どうだ、解っただろう。宇宙の支配者はただ1人、余であるのみ!

余がこの宇宙の法であり秩序である!生命ある者はその血の一滴まで余の所有に帰す!‥‥よって当然、テロンも我が物である!』

(‥‥何とでもほざけ)

 

嶋津は内心で毒づきながら、抗戦の方策を探っていた。

 

『テシオ』に残された目ぼしい武装は拡散波動砲のみ。

威力は問題ないだろうが、今の位置から撃てば味方艦を巻き添えにしてしまう可能性が高い。

 

(どうする‥‥?どうしたら味方の犠牲を抑え込める‥‥?)

 

モニターには古代の顔も映っていた。

ズォーダーに猛然と噛み付き、反論しているが、当のズォーダーは嘲笑の色を隠さない。

 

『あくまで戦うか、ヤマトよ。それも良かろう。

だが、全ての武装を失い、エネルギーも底をついたうぬらがどう戦うのだ?』

 

ズォーダーは哄笑しながら通信を切った。

 

「‥‥司令、意見具申します」

 

しばらくスクリーンを睨み付けていた嶋津冴子は、後ろの土方に向き直った。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。