コントの片割れ『ブチャ猫』の声は故・富山 敬さんでしたから、まんま古代の声とぬいぐるみのギャップの凄まじさに腹筋崩壊しました。
ミシェロビッチと古代が先頭で進んできた突入隊は、次第に数を減らしながらも中央動力炉に近づいていた。
が、突然の熾烈かつ正確な射撃で10人余りが撃ち斃される。
「伏せろ!今までの奴らとは違う!!」
ミシェロビッチが命じるとともに全員が身を低くしたが、数人の空間騎兵隊員が返礼とばかりに突撃銃からグレネードを発射。敵兵数人が吹き飛んだ。
『テロンの蟲けらどもが。ここが貴様らの墓場だ!』
一目で指揮官とわかる、グリズリーみたいなガタイの男が立ち上がって声を上げる。
ガトランティス語ゆえ完璧に理解はできないが、地球側も大体の意味は理解した。
「芸がねぇなあ‥‥」
「こいつぁ驚いた。人語を話す熊がいるぜ」
地球側も負けてはいない。特にアメリカ海兵隊出身者が多いミシェロビッチとその配下にとって、口撃はお手の物だ。
「熊が人の言葉をしゃべるなよ。おとなしく蜂蜜でも舐めてやがれ!」
「超過勤務なんかしてねぇで、テメーらの女の尻の心配した方がいいんじゃないかぁ?消耗品の帝国軍兵士諸君よぉ!?」
等々、下品・下卑た言葉を中指を立てながら哄笑まじりに返す。
『‥‥皆殺しにしてくれる!』
どうやら格下の敵から口汚く罵倒されるのに慣れていないのか、熊男はレーザー機銃を乱射する。
「どうやら、言い返されることには慣れてないようだな、あの熊」
物陰に隠れながら、ミシェロビッチはニヤリと笑みを浮かべる。
「言っちゃ何ですが、奴らは負け方っつーもんを知らないんでしょうね。テレザートで戦った連中もそうだった」
斉藤も同じ事を言う。彼はテレザート星で敵の戦車兵を叩き出して戦車を乗っ取ったり、総指揮官とガチで戦い、格闘の末斃した経験を持つ。
「なるほどな。だが、恐らく奴らは近衛部隊だろう。萎縮はノーだが、過小評価は断固ノーだぞ」
皆を戒めるようにミシェロビッチが言い、古代以下の面々は無言で頷く。
「さて、熊狩りといくか」
皆の反応に満足気に頷いたミハロビッチは表情を改め、突撃銃の残弾を確認した――。
――首都要塞付近――
首都要塞の外側でも戦闘は続いていた。
戦闘機同士のドッグファイト、迎撃砲と地球艦の撃ち合い。そして‥‥。
激しく炎上しながら地球艦隊に接近するのはダガーム座乗の大戦艦。
艦橋砲や回転砲は半分が破壊されながらも、戦意は失っていない。
「逃さんぞ『ヤマッテ』!」
負傷を押して指揮官席に座るダガームの闘志は、些かも衰えていない。
「全砲門開け!移乗戦用意!!」
大戦艦は機関出力を最大にし、『ヤマト』目掛けて突撃を図る。
しかし、その突撃は地球艦隊に筒抜けになっていた。
――『テシオ』――
「2時50分の方向から敵旗艦! 『ヤマト』に突っ込んできます!!」
「面舵85!!主砲と発射管、敵旗艦に照準!」
正面火力が強い敵戦艦に横腹を晒す事は危険極まりない。嶋津は正面からの砲撃戦を決断し、『テシオ』は艦前後のバーニアをふかして右旋回していく。
『ヤマト』も艦を右旋回させるが、『テシオ』の方が早い。
「主砲有効射程まであと20秒!」
「艦長、撃ちますか?」
既に射程自体には入っている。
「奴は我々と刺し違えるつもりだ。十分引き付けて仕留める!」
その時だ。
「敵戦艦右舷に揚陸艦『ペリリュー』が急速接近!衝突します!!」
「!!?」
ミシェロビッチら突入隊を送り出した強襲揚陸艦『ペリリュー』が、突撃を図る敵戦艦に向かって突っ込んでいく。
敵戦艦は回転速射砲で迎撃するが、強襲揚陸艦は重装甲であり、複数搭載した8インチショックカノンで応戦する。
さらに衝角戦や接舷戦闘も想定した鋭角艦首を持つ『ペリリュー』は、被弾して煙を上げながらも突進を続けた。
敵戦艦も辟易したか左回頭し始めたが、その直後、敵戦艦の右舷艦橋基部に『ペリリュー』の艦首が深々と突き刺さる。
さらに、
「何!?」
『ペリリュー』は生き残った主砲をゼロ距離で発射。
「こんな戦、俺は認めんぞーーー‥‥!」
ダガームの憤怒はほどなく、座乗艦もろとも火球と化した。