宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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あの艦、登場です。


リターンマッチ⑤

「敵艦隊ワープアウト!12時37分の方角。距離20000!」

 

『テシオ』艦橋に観測士の声が響く

「戦艦9、巡洋艦20、駆逐艦86、中型空母2!‥‥戦艦のうち1隻は、カッシーニの隙間で沈めたワープ砲搭載艦と同形です!」

「!!??」

 

ブリッジに一層強い緊張が走る。

やはり本国艦隊、あるいは近衛艦隊というべきか。

 

こちらの戦艦8(ヤマト含む)、戦闘空母2、戦闘巡洋艦12、哨戒巡洋艦15、駆逐艦51、護衛艦47、雷撃艇母艦2だが、雷撃艇母艦と護衛艦の大部分は別行動中だ。

これは、護衛艦の大半が建造費用削減と建造期間短縮のため、ワープに必要な機器を搭載しなかったからで、彼らは本隊に先駆けてこの宙域に到着していた。

 

それにしてもあのワープ砲は厄介だ。完全にこちらがアウトレンジされてしまう。

前回は土星の環の氷塊を急激に融かさせて大規模な水蒸気爆発を誘発し、艦隊を混乱に陥れたが、今度は障害物らしいものはない。

こちらの規模からして、あれを撃たれたら、ものの数発でこちらは全滅だ。

どうやってあれを封じればいいのか――?

 

が、緊張を破ったのは、他ならぬ土方だ。

 

「本隊は小ワープ用意!敵艦隊の直前に出ると同時に砲雷撃戦に入る!戦闘空母は――」

「了解しました。ワープ準備、主砲・発射管スタンバイ!ワープアウト座標算出急げ!」

 

即座に揚羽電機製のコンピュータがワープアウト座標を算出する。

 

「1分後にワープする。総員スタンバイ!カウントダウン60!!」

「1分切ったぞ!総員準備急げっ!!」

 

座標が算出されるや、土方はいきなり1分後の小ワープを指示し、自らカウントダウンをスタートさせた。

司令官自らカウントダウンを指定した以上、変更はない。

 

『ワープ40秒前!!』

「だああっ!相っ変わらず人使いの荒ぇオヤジだ!‥‥おら、そこ!手ぇ止めんじゃねぇっ!!」

 

中堅クルーは、相変わらず無茶ぶりをする親玉にぼやきながら、あたふたする若手クルーに怒号を飛ばす。

 

『ワープ30秒前!!』

「包丁、固定完了しました!」

「戦闘糧食、固定完了!」

「よーし、急いでジャンプシートにつけ!」

 

厨房では炊事科員が刃物類を格納し、作りかけも含めた戦闘食を所定のスペースに入れてロックしている。

『ワープ10秒前!!8・7・6‥‥』

「‥‥ワープ!!」

 

カウントゼロ。各艦の艦長は同時にワープインを下令す。

 

直後、地球艦隊はかき消えた。

 

 

――ガトランティス帝国軍首都艦隊旗艦『メガルーダ』――

 

「敵艦隊、密集隊形で接近してきます!大型艦8、中型艦16、小型艦64!」

「小型艦が少ないな。それに2隻あった大型母艦はどうした?」

「‥‥恐らくは別行動かと」

 

指揮官席に座る遊動艦隊司令長官ゲーニッツが質し、幕僚が応える。

 

見たことがない形状の母艦も去りながら、小型艦も侮れない。輸送船団の護衛艦だと侮っていたら、まさか長距離砲や高タキオン砲まで仕込んでいたのは予想外だった。

が、今は目の前の敵艦隊を葬るのが先だ。

特に忌々しいあの艦を。

 

「全艦、照準を『ヤマッテ』に定めよ!奴さえ仕留めれば地球人どもの反抗意欲も削がれよう!!」

 

あれが今の旗艦かどうかはわからないが、地球人の精神的支柱であることは明らかだ。

首都星が意外に深い傷を負っている現状では何としても地球を屈伏させ、当面の本営にしなければならない。

そのためにはあの『ヤマッテ』を一刻も早く仕留めなければならない。

そして大帝の信頼を取り戻さなければ、間違いなく自分は破滅だ。

 

「照準、『ヤマッテ』に固定しました!」

「よし!」

 

ゲーニッツは力強く頷き、下令した。

 

「全艦砲撃開始!!」

 

 

帝国艦隊から一斉に砲撃が放たれ、同時に地球艦隊からも砲撃が放たれた――。


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