――『テシオ』――
メインモニターには特別任務艦隊の主だった艦の艦長と、『ヤマト』艦長代行の真田、さらに戦術長の古代が包帯を巻かれた姿で映り、それを土方、嶋津冴子以下の『テシオ』ブリッジクルーが見上げていた。
無論作戦会議で、議題は、
『いかにして白色彗星のガス帯を排除するか』
である。
護衛艦以外の波動砲搭載艦にはエネルギー増幅装置が付いており、戦艦の拡散波動砲は出力・射程とも『ヤマト』を凌いでいた。
ところが、現実には白色彗星を破壊するどころか、ガス帯を除去することすらできず、大半の艦が強力な重力帯に引きずり込まれて押し潰された。
『残念ながら、拡散波動砲の特性が裏目に出てしまい、ガス帯の排除には至りませんでした。
‥‥逆にエネルギーを集束し、ドリルのように急所に撃ち込まなければなりません』
『その急所とやらのあてはあるのか?』
『アルハンゲリスク』艦長・スミノフ准将の質問に、真田は
『テレザート星に赴き、テレサから得た情報と、つい先刻、本艦クルーがガミラス総統デスラーから直接聞いた白色彗星のガスが噴き出している渦の中心、いわば台風の目の所在がわかりました。‥‥スコット司令による拡散波動砲一斉発射でガス密度が薄くなったために突き止める事ができたのです」
「‥‥そうか」
皆が黙然と頷く。スコット中将達の犠牲を無駄にするしないは自分達の手腕にかかっているのだ。
『土方司令、戦術を提案します』
「よかろう」
古代の意見具申を土方は了承した――。
1時間後、この宙域の地球艦隊は100隻――駆逐艦や護衛艦が主体だが――を越える規模になっていた。
戦艦8(ヤマト含む)、戦闘空母2、戦闘巡洋艦12、哨戒巡洋艦15、駆逐艦51、護衛艦47、雷撃艇母艦2。
機動戦力は戦闘空母とヤマトのコスモタイガー75機と雷撃艇母艦の雷撃艇51隻。
これが地球防衛宇宙軍が実質的に動員できる精一杯の戦力だった。
『──宇宙戦士諸君』
土方が立ち上がり口を開く。
『‥‥残念ながら、我々は白色彗星との第1ラウンドでダウンを喫した。
艦隊を預かる者として、このような結果になった事を申し訳なく思う。
‥‥しかし、まだ敗れたわけではない。先の波動砲一斉攻撃で白色彗星のガス帯を一部除去することができ、ウィークポイントも明らかになった。
あの彗星は言うまでもなく人の手で造られた物だ。そしてガトランティス人も、我々地球人とさほど変わらないメンタリティを持つ人間である事もわかっている。‥‥人間の造った者に完全無欠な物など一つもない事は、ここにいる全員も痛い程理解しているだろう。
戦いはまだ第1ラウンドが終わったに過ぎない。
ガトランティスにはガトランティスの正義があるのだろうが、我々がそれに従う義務は毛頭ない。
地球の前途は、我々地球人類自らが切り拓かなければならず、突然押しかけて来たならず者共に権利を奪われるわけにはいかない。
この一戦で地球の運命が決まる。何としても勝利し、地球の明日をこの手に掴もう!‥‥諸君の健闘に期待する』
“ザッ!!”
『テシオ』で、各艦で、乗組員がそれぞれの持ち場で敬礼した。
「全艦発進せよ!」
「前進、第3戦速!」
「前進、第3戦速、ヨーソロー!」
土方の号令を受け、残存地球艦隊は地球圏目指して前進を始めた――。