“彼”は何が言いたいのか、全然わかりませぬ。
――『ヤマト』とガミラス艦隊が正面対決している宙域に、約40隻ほどのガトランティス艦隊が向かっているとの報せを受けた土方は、戦闘可能な艦船を直率して出撃した。
旗艦(巡洋艦)『テシオ』。
戦艦『アルハンゲルスク』『アルミランテ・コクレーン』。
戦闘巡洋艦『サンフランシスコ』『ザラ』『トンブリ』『アソ』『リュッツォー』『チャンドラ・ボース』。
哨戒巡洋艦『アヤセ』『クリーブランド』『イムジン』『アンドロポフ』。
駆逐艦は『Z07』以下12隻、護衛艦は『ヒルガオ』『ナデシコ』以下18隻の、計43隻の陣容だ。
土方率いる残存地球艦隊は出撃2時間後に敵艦隊の針路上に布陣。敵艦隊も針路を変える事はなく、戦端が開かれた。
――ガトランティス帝国艦隊旗艦(戦艦)『アイレス』――
この艦隊を率いるのはエアロダスター・ナスカ。
ガトランティス帝国軍の先鋒部隊を率いたコズモダート・ナスカの実弟だ。
彼は元々ゲルン機動部隊に所属していたが、護衛すべき空母を全て討ち取られ、バルゼー率いる本隊に合流すべく残存艦をまとめていたのだが、その間にバルゼーもテロン艦隊に斃されてしまったため、本星から命令で、本星に合流しようとしていたのだが、兄を殺し、自分にも屈辱を味わわせた『ヤマッテ』がガミラス艦隊と戦っていると知るや艦隊の針路を変え、『ヤマッテ』とガミラス艦隊の戦闘に介入して、憎んでも余りある『ヤマッテ』を討とうとしたのだ。
しかし、その前にテロン艦隊残党が立ちはだかる。
「死に損ないの身の程知らずどもが、蹴散らしてやる!」
この一言のもと、ナスカ弟は地球艦隊との戦闘を決意。
中央突破のため紡錘形の隊形を組んで前進を始めた。
「“ヤマッテ”以外の艦のタキオン砲は拡散形だ。密集隊形のまま中央を突破する。戦艦は艦橋砲発射用意! 敵艦のエネルギー反応に注意しろ!」
我が艦隊の戦艦の艦橋砲は衝撃砲。射程ならそう見劣りはしない。
「全艦前進!地球艦隊を突破し、このままガミラス艦隊と『ヤマッテ』に割って入る!」
――『テシオ』――
「敵艦隊、密集隊形のまま突撃してきます!」
「第25戦隊(『リュッツォー』『アソ』『チャンドラ・ボース』)と第3・第4護衛隊は波動砲戦に移行せよ」
報告を受けた土方は時間差波動砲戦を指示した。
巡洋艦は当然拡散波動砲を装備しているが、第3・第4護衛隊のプランツ級護衛艦8隻は、小型ながら集束波動砲を装備する“Bタイプ”だ。
因みにプランツ級の“A・Cタイプ”は波動砲をオミットして、それぞれ『ヤマト』主砲と同型の18インチショックカノン、ドレッドノート級主力戦艦主砲と同型の16インチショックカノン砲を2連装装備していた。
Aタイプの大半とBタイプの一部は『ヤマト』帰還直前に就役し、ガミラスの太陽系残党や『ヤマト』を追撃してきたデスラー総統の親衛艦隊と戦った。
現就役艦の大半は使い勝手が良いCタイプで、A/Bタイプは通常練習艦任務や整備保管されているが、ガトランティス帝国の来襲に際し、復帰してきた。
「第24戦隊波動砲発射10秒前、9・8・7‥‥」
「第3・第4護衛隊、波動砲発射10秒前、9・8・7‥‥」
「総員対閃光防御!」
嶋津の指示が飛び、ブリッジクルーは遮光ゴーグルを付ける。
艦橋の窓ガラスは光線透過率を自動調整できるので、ゴーグルをつけなくても網膜をやられる心配は少ないのだが、念のためというやつだ。
「撃て!」
土方の号令に合わせて第24戦隊の巡洋艦3隻が拡散波動砲を放ち、数秒後ら第3・第4護衛隊の8隻は集束波動砲を放った――。