── 哨戒巡洋艦『テシオ』艦橋 ──
「『レキシントン』から砲雷撃戦用意の指令です!」
「全砲門・発射管開け」
「了解」
篠田戦術長の報告を聞いた嶋津は通信主任のイ・ソンヨブに向き直る。
「『ヤマト』とのリンクはどうだ?」
「順調です。『ヒルガオ』『ナデシコ』ともリンク順調です!」
「ん」
『ヤマト』は、戦術長の古代がコスモゼロで出ているため、砲雷長の南部康夫が戦闘指揮をとる。
そしてGF666は『ヤマト』と連携して砲雷戦を行うのだ。
『ヤマト』主砲と『ヒルガオ』『ナデシコ』の艦首固定ショックカノンで長距離砲戦を行い、『ヤマト』副砲と『テシオ』で中距離砲戦を行う事になっている。
(シルヴィアはアドレナリン出まくっているだろうな‥‥)
(早く!早く!!)
──嶋津の想像に違わず、『ナデシコ』では艦長のフランベルク・シルヴィア夏実が全身から幸せオーラ全開でトリガーを握り、南部の合図を待っていた。
(‥‥‥‥)
その様を隣席で見守る妹のアリア小百合の目に双子の姉は、餌を前にお預け中のコーギーのように映っていたとか──。
(‥‥私もシルヴィアを笑えないがね)
嶋津の顔に一瞬微苦笑が浮かぶ。
彼女もまた、全身にアドレナリンが走り回っていた。
太陽系辺境警備という任務に不満などないが、艦同士の殴り合いには否応なく闘志が漲り、かつ頭の中が冷たく冴えてくる。
──実のところ、自分は戦うために生まれてきたのではないか?
人類を守るという大義の元、大量破壊と殺戮に充実感を覚えてしまう自分が疎ましい。
こんな自分に、人並みの幸せな人生を送る権利が存在するのだろうか?
幾度となく考えているが、回答が出るのはまた先の事だな──。
嶋津は首を振って意識を戻した。
その直後、艦橋内を閃光が照らす。
「『ヤマト』『ヒルガオ』『ナデシコ』が発砲しました」
ややあって報告が入った。
「中型空母2、巡洋艦1に直撃。爆発炎上! 」
こちらの一番槍も届いたようだ。
そして、間もなくレキシントン級戦闘空母の有効射程に入る。
前半分はドレッドノート級主力戦艦そのもののレキシントン級は、前正面の砲戦・防御能力もド級主力戦艦とイコールだから、艦載機を出せないガトランティス空母群にとっては『ヤマト』とさほど変わらぬ死刑執行官になるだろう。
しかし、空母に随伴している護衛艦も決死の覚悟で突撃してくるのは間違いない。
戦艦は『ヤマト』と戦闘空母群が対処すればいいが、より数が多く軽快な巡洋艦や駆逐艦の相手は我々がやらねばならない。
「牧羊犬たち(敵護衛艦隊)の様子はどうだ? 三沢」
「混乱の最中ですが、数隻は我々と空母の間に割って入っています」
嶋津の問いに、レーダースクリーンを見る新人の三沢亜理沙が応えた。
──敵とて、あっさり空母を見捨てて逃げる事はしまい。
空母を逃がすべく、こちらに牙を剥いてくるはず。
その時こそ、全力でその牙をへし折ってやる──。
①すみません、もう1話続けます。
②今回はサーベラーと冴子の生意気対決やるつもりです。