宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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敵機動部隊ヲ発見セリ

── 土星圏 エンケラドス沖 ──

 

艦隊を先導するGF666をフライパスしたコスモタイガーが虚空に消えていく。

 

――敵空母撃滅の任務を託された第21任務部隊(TF21)がタイタンを発った3時間後、太陽系外縁から戻ってきたGF666が合流し、そのまま艦隊の先頭に立ったが、敵の逆探知を警戒してタキオンレーダーの出力を半分以下に落とした。

反面、センサー感度は最大限に上げられ、敵の通信波やレーダー波を掬い取ろうとしていた。

 

『ヤマト』から発進した索敵機は、一騎当千のエース、加藤三郎と山本 明が率いる各8機のコスモタイガーⅡに、篠原 弘樹とアナライザーがコスモタイガー三座型の計9機。

加藤・山本両隊は増槽とともに対艦ミサイルを搭載し、敵発見即攻撃の態勢をとっていた。

一方、篠原機は増槽と偵察ポッドを搭載し、より広範囲の索敵に対処していた。

 

――愛機のコクピットで加藤三郎はぼやくことしきり。

 

「‥‥ったく、レーダーも無線も使えないなんて、太平洋のど真ん中で零戦に乗ったような気分だぜ」

 

山本もぼやきを漏らす。

 

「温帯の浜辺で星の砂を探すようなもんだな‥‥」

 

彼らのぼやきもわかるが、レーダー、無線とも敵発見まで使用禁止というのは、敵艦隊に悟られない為で、加藤たちも十分理解した上でぼやいてみせたのだ。

一方、加藤・山本たちとは別に、篠原とアナライザーが搭乗したコスモタイガーも、衛星を縫うように土星圈外縁部に向けて索敵を続けていた。

 

「アナちゃん。反応ある!?」

「アリマセン、篠サン」

 

このやり取りを何度繰り返しているか。

アナライザーは敵艦隊の通信信号を探っているのだが、まだ何の反応もないようだ。

 

TF21の各艦、そしてタイタンの連合艦隊司令部も、敵機動部隊発見の報せを待ち詫びていた。

 

敵影を見ぬまま、篠原機は土星圈の最も外側、衛星フェーベに達しようとしていた。

 

さすがの篠原にも焦りが見え始めていた。

敵機動部隊は速度を上げて本隊と合流したのか、既に攻撃隊を発進させてしまったのか……。

 

空の空母を攻撃しても何の意味もない。

発進の直前、格納庫や飛行甲板に爆装した攻撃機が並んでいるところを叩かないと意味がないのだ。

 

「!!?」

「!」

 

突然、アナライザーが目まぐるしく頭部を回転させ始めたが、ほぼ同時に、ポッドに収められたパッシブレーダーにも反応が生じた。

 

 

   ――『テシオ』――

 

「艦長!ソード3(篠原機)が敵機動部隊を発見しました、和文モールスです。本隊に増幅再送信します!」

「よし、全艦戦闘態勢!対空警戒厳に!!」

 

篠原機の発信を受け、他の偵察機もそちらに向かったが、その間にアナライザーが和文モールスで敵情を打電した。

モールス信号、それも和文モールスにしたのは、『ヤマト』から齎された、ガミラスと白色彗星帝国がツーカーであるという情報ゆえだ。

 

ガミラスは地球の英語を、完璧とはいかなくとも自国語に意訳できるレベルにあり、そのノウハウが白色彗星帝国側に漏れているのを警戒してのことだ。

それゆえ、TF21の日本籍以外の主要艦には、日本人、あるいは日本語知識が豊かな者を乗せており、目立ったタイムラグもなく攻撃戦闘モードに入れたのだ。

 

篠原機からの連絡を受け、加藤・山本両隊が翼を翻してフェーベに向かう。

TF21の各艦も戦闘体制に入った。

 

「第1次攻撃隊、全機発進!」

 

ヨナミネ司令の号令を受け、5隻の戦闘空母からCT―Ⅱ艦上攻撃機と爆装したコスモタイガーが次々と発進していく。

 

『ヤマト』からもコスモタイガーと、古代自ら操縦するコスモゼロが発進した。『ヤマト』搭載機は制空任務だ。

 

第1次攻撃隊は古代機を先頭に編隊を組み、敵機動部隊を目指し、篠原機や強襲偵察隊が集結するフェーベに向かった。

 

第1次攻撃隊を送り出した空母各艦はすぐに第2次攻撃隊の準備にかかる。

一方、母艦と護衛艦も敵機動部隊との距離を詰めていった。


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