── 地球防衛軍タイタン基地・司令長官室 ──
土星圏最大の衛星タイタンは、宇宙艦船建造に不可欠な超金属コスモナイトの一大採掘地であると同時に、
地球艦隊再建と共に太陽系内惑星圏防衛のため、艦隊の駐泊施設と修繕ドック等が設けられた。
準惑星マケマケに謎の敵が襲来した時点で、連合宇宙艦隊司令部は旗艦『アンドロメダ』と共にタイタンへ進出していた。
『マケマケ沖会戦』で『ヤマト』とGF666が謎の敵艦隊の大半を撃沈したことで、謎の敵の正体や戦力が解明され始めたのだが、敵の身元が解明されたのは、別の謎の艦『エスティア』と衝突し全損した空母からサルベージした通信機器や資料からだ。
空母の艦体はひどく損壊していたが、艦橋部分は小破程度に収まっていた。
もっとも、窓は吹き飛んでおり、乗組員の姿はなかった。
艦橋から回収した資料や通信機器は工作艦『ホンダ』で解析され、敵の身元も判明したのだが、通信記録の中に、ガミラス総統デスラーの映像と音声が残されていた事に、関係者は衝撃を受けた。
時系列も、地球時間で半月以内と判定した事で、デスラーの生存が確認された。
そして、新たな敵は『ガトランティス』という軍事帝国である事も判明したが、敵本星の位置や国家元首の名等は判明できなかった。
「最優先事項は、遠からず押しかけてくるガトランティスの侵攻軍を徹底的に叩き、侵略を諦めさせる事だ」
藤堂と土方は異口同音に幕僚に語った。
艦船は向こうの方が大型だが、射程とパンチ力はこちらの艦が勝り、戦艦であろうと、こちらの主力戦艦ならアウトレンジで叩ける。
反面、向こうはターレット形砲塔を多数搭載しているため、速射性と手数は要警戒だ。
艦載機はどうか?
空母に搭載されていたのは『デスバテーター』というカブトガニ形の機体だが、戦闘記録を見る限り、空戦性能はこちらの虎(コスモタイガーⅡ)や隼(コスモファルコン)の方が上。反面爆弾搭載量はカブトガニの方がかなり多そうだ。
2倍くらいの機数差なら何とか押さえられるが、物量戦で来られたら、1隻あたりの対空火器が少ない我が方の艦船では防ぎきれまい。
敵の艦船に波動砲のような決戦兵器が見当たらない以上、敵の戦術は艦隊による包囲殲滅戦か、かつてのアメリカ海軍同様の大規模航空攻撃だ。
(後者で来られたら、こちらは不利だ)
ここが思案のしどころだろう。
沈思黙考する土方の元に『ヤマト』からの報告がもたらされたのは、この日の深夜だった。