宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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4ヶ月ぶりの更新になってしまいました。
弁解のしようもありませんm(__)m


帰還して‥‥

12月25日、地球連邦大統領はクリスマスメッセージを発表したが、その内容に連邦市民は一様に驚愕した。

大統領はグッドニュースとバッドニュース双方があると前置きし、グッドニュースとしては

 

①過日、防衛軍が派遣した『イスカンダル救援部隊』はスターシャ女王とその夫、古代 守防衛軍予備役大佐を無事救出し、タイタン基地に帰還した。

女王・古代ともに概ね健康であるが、女王は生涯初めて母星を離れた事による心労が濃いため、地球の環境適応準備を兼ねてしばらくタイタンで静養する。

 

②『ヤマト』を始めとする派遣部隊は、損傷はしたものの全艦健在で、戦死者はなし。

 

 

一方、バッドニュースはというと――

 

①イスカンダル星は爆発消滅した。

 

②『暗黒星団帝国軍』と名乗る軍事勢力と武力衝突に至り、これを撃退。

 

③暗黒星団帝国軍は、星間戦争に必要な重要資源として、連星だったガミラス星とイスカンダル星の地下物質を採掘しようとしたが、たまたま遭遇したガミラス軍と交戦。

その最中にガミラス星は爆発消滅。

 

④イスカンダル星の消滅は、地下物質を戦争に利用される事を危惧したスターシャ女王が自爆を選択したもの。

 

⑤暗黒星団帝国軍の本拠や総規模等は現在のところ不明だが、ガトランティス帝国と敵対関係にあり、その途中で地球の事も既に知っている。

 

等が発表され、さらに補足事項として、

 

①デスラー総統率いるガミラス軍と防衛軍派遣部隊は、スターシャ女王救出という共通の目的の元、協力して暗黒星団帝国軍と戦った。

 

②デスラー総統は、ガミラス帝国の再建と暗黒星団帝国への復讐を明言。

 

③ガミラスは古くからイスカンダル星と歴代イスカンダル王を信仰の対象としていたため、スターシャ女王を迎え入れた地球に対して武力で臨んでくる可能性は、ゼロではないがかなり減少した。

 

等であるが、伏せられた事実も存在する。

①スターシャと古代 守の一人娘サーシャ(サーシャ・イスカンダル・古代)は、歴史上初の地球人と異星人の混血人だが、乳児の段階で公表するとサーシャの今後に悪影響を及ぼしかねず、公表は見送られた。

 

②任務途上で「時空管理局」と再度接触し、地球で保護されている同局員の身柄返還準備の名目で、女性局員2名が『ヤマト』→『テシオ』に同乗して密かに地球に降り立った事も伏せられた。

 

こちらもまた、地球では公認されていない『魔法』を科学技術として確立している等、公表は時期尚早とみなされた。

但し、2名については任務の必要性と、地球人とのコミュニケーションに問題なしと判断され、条件付で滞在が認められた。

 

一方、任務にあたった独立第13戦隊(TF13)+戦艦『ヤマト』+高速補給艦『オシマ』はというと。

 

『ヤマト』はスターシャとサーシャを乗せたままタイタン基地で待機し、そのまま整備入り。(一部乗組員は下艦→地球帰還)

『オシマ』とTF13主力は地球に帰還し、やはりドック入りとなったが、各艦の首脳は事後処理と軍中央との丁々発止に忙殺されることになった。

 

 

     ―― 12月31日 ――

 

中央司令部ビルの一角、喫茶室『敷島』。

 

「‥‥‥‥」

 

TF13司令代行兼哨戒巡洋艦『テシオ』艦長・嶋津冴子大佐は、一人カウンター席で物思いにふけっているように見えた。

 

一見、宝塚のトップスターと見紛うほど恵まれた容貌 ――間近では右頬の裂傷痕が隠せないが―― の嶋津が長い脚を組み、物憂げにしている様は実に絵になるのだが、当の彼女は不機嫌だった。

 

(やれやれ‥‥)

 

不機嫌の原因は、つい1時間前まで対峙していた司令部の参謀や法務士官とのやりとりにあった。

 

TF13が持ち帰ったものは、地球にとっていい物事ばかりではない。

古代守とスターシャ、サーシャの一家3人を救出し、地球に連れ帰る事はできたが、その過程で暗黒星団帝国という新たな軍事国家らしい勢力と戦闘し、停戦に至らず、本拠などもわからぬままじまいに戦場を離れざるを得なかった。

 

これは非常にまずい。

軍がこれを重視し、責任の所在を明らかにしようとするのは当然であり、帰還翌日から嶋津を始めとするTF13各艦の艦長・副長に『ヤマト』の古代艦長代理、『オシマ』の真島艦長らは連日事情聴取に呼び出され、特に嶋津、古代は26日から今日まで連日半日以上聴取を受けた。

それ自体は構わない。

嶋津が不愉快なのは、言葉尻をつかんでネチネチ責めてくる担当官たちのやり口だった。

 

『ヤマト』は別格として、TF13も新編早々イスカンダル救援作戦にあたるという、傍目には華やかな任務にあたり、概ね成功といえる実績を挙げたが、それに対し不快、要は嫉妬じみた感情を抱いた士官は少なからず存在した。

そういう背景は当然あると考えていた嶋津は、内心の不快を抑えて低姿勢、時々慇懃無礼な対処に徹し、“検察”が期待したようなボロは出さずじまいだった。

むしろ、向こうの方が苦虫を噛み潰していたのには内心で失笑したのだが。

 

とはいえ、不愉快には違いない。

それでも、元来血の気多目な嶋津が感情をあからさまに表に出していないのは、くぐり抜けてきた修羅場の数か、宇宙戦士及び士官としての成長か。

 

「――お隣、いいですか?」

 

嶋津のマイナス思考は、聞き覚えがある若い女性の声で中断された。

振り向いた先には、3人の女性、森 雪にフェイト・T・ハラオウンとティアナ・ランスターが佇んでいた。

フェイトとティアナは防衛軍の制服――フェイトは士官、ティアナは下士官用――に着替えている。

嶋津が頷いて促すと、3人はすぐ丸椅子に腰を下ろした。

 

「――相当やり合ったみたいですね」

「もう慣れっこさ」

 

雪の切り出してきた意味はすぐわかったから、嶋津も苦笑混じりで返す。

“やり合った”中には、ガトランティス残党に攻撃されていた管理局の艦を救援し、フェイト達を救出し、かつ管理局とコンタクトをとった事も含まれていた。

そのためにイスカンダルへの到着が遅れ、スターシャ達を長く危険にさらしたのではないかと遠回しに非難されたので、それに対して反論したところ、そのまま激論になりかけたのだが、そういう事をフェイト達の目の前で話すのは気が引ける。

嶋津は話題を変える事にした。

 

「お前さん達こそ、今日はどうしたんだ?」

「土方司令に挨拶に伺ったんです」

 

雪の答えに嶋津は合点行った表情になる。

土方はフェイトとティアナが地球滞在中の身元保証人を引き受けていたのだ。

嶋津はフェイトに向き直った。

 

「司令はおっかなくなかったかい?」

「いえ、とても優しい方でしたよ」

「‥‥そうかね」

 

フェイトの答を受けた嶋津は雪を見やる。

 

「‥‥マジか?」

「はい‥‥微妙ですが、いつもより温和な印象でした」

 

雪の答えに、嶋津は思わず天を仰いで慨嘆した。

 

「‥‥娘っ子にゃ甘いんだからなぁ、あの親父は。私なんか怒号とケチョンケチョンなダメ出ししか記憶ないぜ」

 

――嶋津や古代 守が訓練生だった頃、土方は現役バリバリの教官であり、彼が課す訓練は女子にも手加減がなかった。

その鬼教官ぶりから、嶋津は彼に“鬼竜”と渾名を付けたところ、そのまま定着してしまった。

無論、土方は実戦部隊でも鬼ぶりを如何なく発揮。“猛”という字ですら生温い程の凄まじい訓練を課したのだが――。




モタモタしている間に、ヤマト2202が始まってしまいました><

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