私的に色々ありまして、大遅延しました事をお詫びします。
―― エンケラドゥス ――
遊弋するTF13艦船群の下には一面の氷原。
そしてそこに擱座し、半ば氷漬けになっている1隻の小型艦があった。
その小型艦の傍らに佇む3人の人影。
うち1人は明らかに項垂れ、肩を小刻みに震わせている。
「‥‥‥‥」
「うっ‥‥グスッ‥‥皆、ごめんね‥‥」
「‥‥自分を責めるな。フランベルク」
「‥‥っ、すみません。古代艦長」
フランベルクと呼ばれた女性は
フランベルク――フランベルク・アリア小百合はTF13所属の巡洋艦『アシタカ』副長だ。
なぜ彼女がこの場にいるかというと、目の前の船骸が、彼女と傍らの男、古代艦長こと古代 守にとって共通の乗艦――M21881形突撃駆逐艦『ユキカゼ』の成れの果てだからだ。
ガミラス戦終盤、小百合は『ユキカゼ』の航海長として舵を預かっていた。
『ユキカゼ』は彼女のアクロバティックな操艦でガミラス艦隊の砲火を掻い潜り、僚艦の大半が宇宙の藻屑に消える中、艦と人的な被害を最小限に抑え込み、かつ必ず戦果を挙げてきたが、『ユキカゼ』が失われた第2次天王星軌道上会戦のひと月前、横浜で発生した暴動に巻き込まれて重傷を負ったため、出撃していく乗艦を見送らざるを得ず、そのまま『ユキカゼ』やクルーとは今生の別れになってしまった。
それゆえ、今に至るまで、彼女の心に『ユキカゼ』はささくれとなって突き刺さり、改めて変わり果てた『ユキカゼ』を目の当たりにした時、しまっていた感情が一気に溢れかえってしまったのだろう。
しかし、古代 守の言葉で感情の爆発は抑える事ができた。
「――頼む」
その様を横目に見ていた古代 進がヘルメット内蔵のマイクに向けて話すと、数秒後、上空の『ヤマト』が虚空に向けて第2主砲を三斉射。
TF13各艦の乗組員はそれに合わせて敬礼又は黙祷するのだった。
―― 『ヤマト』 ――
『石津副長以下23名の御霊に、敬礼!』
艦内一斉放送の声に合わせて、手が離せない者以外のクルーは敬礼又は黙祷。
便乗しているスターシャは自室で、フェイトとティアナは左舷展望室で静かに頭を垂れた。
(あんな小さな
モニターに映る『ユキカゼ』の船骸を見ながら、フェイトは内心で呻いていた。
管理局の小型次元航行艦と比べても更に小さく、実質的には『艇』だ。
地球防衛軍でも、残存している同型艦は駆逐艦から『宙雷艇』に格下げされているという。
『ヤマト』就役以前の旧国連宇宙軍艦隊の中核はこのクラスだったが、ガミラス艦は武装・装甲とも数倍強力で、ガミラス艦1隻を沈めるのに地球艦10隻の犠牲を要すると、当の乗組員が自嘲混じりの笑い話にすらした。
そんな“小舟”で、古代守や嶋津は複数のガミラス艦を撃沈してみせたというが、所詮は焼け石に水。
(どんな思いで戦っていたのだろう‥‥)
自分達は明らかな劣勢下で戦った事はないが、この世界の地球防衛軍は数で勝る敵と戦わざるを得なかった。
どんな心境で倍する敵に向かっていったのか、フェイトは知りたいと思った。
残り2~3話です。