宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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またもや遅くなってしまいました。


帰還へ②

   ――太陽系外縁『テシオ』――

 

 

「航路正常、規定速力24宇宙ノット」

「敵性反応なし」

「了解、全艦警戒体制を維持せよ」

 

ブリッジクルーからの報告に、艦長席の嶋津冴子は警戒体制維持を指示する。

 

『ヤマト』と『オシマ』を加えた第13戦隊(TF13)はワープを重ね、8日で太陽系外縁まで戻ってきた。

まだガトランティス残党の散発的な襲撃がある事と、国賓級の重要人物が乗艦している事を勘案し、中央司令部は艦艇を配置した航路を指定してきた。

但しTF13側は土星の衛星エンケラドゥスへの一時立ち寄りを申請し、30分の滞在許可を得ていた。

理由は、‥‥まあ、あれである。

 

「エンケラドゥスまでの所要時間は9時間です。‥‥ガトランティスがちょっかいを出してこなければ、ですが」

「そう願いたいね」

 

大村の報告に、嶋津は肩を竦めて応じる。

残存ガトランティス軍の9割は、ラーゼラーと共にアンドロメダ座銀河方面に向けて去ったと思われていたが、それでも単艦から数隻での散発的な襲撃が起きていた。

TF13の戦力は一見充実しているが、全艦が度重なる戦闘で少なからず消耗しており、ドック入りしてのメンテナンスを要していた。

それでも、もはやドック入りが望めないガトランティス残党よりは遥かにましなのだが、何事もなく帰還できる事に越した事はない。

 

 

     ――『ヤマト』――

 

「どうしたの?守」

 

難しい顔つきの夫に、スターシャが尋ねる。

守は一呼吸して応えた。

 

「‥‥『ユキカゼ』の不時着場所に向かう事になった」

「!‥‥そう‥‥」

 

無論、スターシャは『ユキカゼ』が夫にとって極めて重い意味をなしている事を知っているから、聞き返さない。

 

「どの面下げて、(部下達)に会えばいいんだ‥‥」

「守‥‥」

 

スターシャは、守の苦衷を理解した。

『ユキカゼ』の生存者は艦長だった守のみ。

守の性格からして、自分一人が地球に生還する事への罪の意識は軽くないだろう。

地球に戻ったら乗組員の遺族を訪ねたいと言っていたが、果たしてうまくいくだろうか。

面罵されるならまだましで、門前払いどころか、家族全員が命を落としていた事もあるだろう。

 

さらに、そもそもその時間が与えられるだろうか。

守は間違いなく地球防衛軍に復帰する。

ガミラス・ガトランティスとの戦いで深刻な人材不足に陥った地球防衛軍にとって、人材確保は最優先。

 

守が軍でどのような存在だったかは、スターシャにも理解した。

真田や嶋津とも話した限り、守は勇猛果敢にして冷静。大局的な視点も持ち合わせており、『ヤマト』副長職が約束されていたのも頷ける。

それだけの人材を軍が放置するはずもないし、自分とサーシャの保護も軍が主体でやる以上、帰還後早期に軍に復帰するのは確実だ。

できるならばゆっくり休ませてあげたい。

しかし、それが許される状況にない事に、スターシャの憂いは深い。




次話は2年ぶりの再会です。

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