遅くなりまして申し訳ありません。
――『ヤマト』――
「‥‥‥‥」
フェイト・T・ハラオウンとティアナ・ランスターは空間転移していく『クラウディア』ら管理局の艦船を見送っていた。
(地球の諺だと、こういうのを“賽子は投げられた”というんだったか‥‥)
本局、そして親友と愛娘が待つクラナガンへ確実に帰還できる機会を振り切り、義父にあたるクライド・ハラオウンがいるこの世界の地球に赴く。
はっきり言ってかなり危険な任務だ。
こちらの地球は未だ戦時体制だ。
ガトランティス帝国は撃退されたようだが、最終決戦の最中に、大帝と呼ばれるガトランティスの国家元首が崩御/戦死してしまったため、復讐を企てている残党に対する投降勧告と掃討作戦の最中だという。
そして、新たに敵対する事になってしまった暗黒星団帝国という星間国家もまた、かなり強力な武力を持って星間戦争を戦っているという。
こちらもいつ地球が再び戦争の当事者になるかわからない。
(だからこそ、早期に義父さんを連れ帰らないと‥‥)
『ヤマト』乗組員や嶋津・土方ら、フェイトが知己を得た地球防衛軍の軍人達は協力を約してくれているが、それ以外の地球側の高官はどうなのだろう。
そしてもう一つの任務は、この世界の地球と時空管理局・次元世界が共存できるか否か、だ。
この世界の様子は管理局のみならず、ミッドチルダら主要世界の首脳も知るところとなっており、かなりのインパクトを与えているという。
『宇宙規模の戦国時代じゃないか! こんな世界の連中と関わるなど狂気の沙汰だ!』
第3世界ヴァイゼンの某代議士はそう発言し、この世界とは積極的に関わるべからずと主張していると聞いた。
それはもっともだが、何も知らないまま、突然次元世界に彼らが現れたらどうなるのか。
ガトランティスのような好戦的かつ侵略的な勢力が乗り込んできたら、短期間で管理局は駆逐され、管理世界も管理外世界もしゃぶり尽くされた挙げ句破滅する。
そうさせないための第一歩として、自分は23世紀の地球に行くのだ。
しかし、
「本当に良かったの?ティアナ」
フェイトは3歳下の補佐官を振り返った。
「はい。私も、この世界の地球に興味があります。それに‥‥」
「それに?」
「ひょっとしたら、200年後の第97管理外世界かも知れないんですよね」
「うん‥‥」
『ヤマト』の図書室で読んだ本の中に、『海鳴市』という地名があったのだ。
その位置も、第97管理外世界の海鳴市とほぼ同じだった。
だが、こちらの海鳴市はガミラスの遊星爆弾で、数十万の市民共々消滅したという。
さらにもう一つ。『月村』『バニングス』の名も、日本屈指の工業グループとして存在し、現在は経営統合して『月村バニングス(BT)グループ』になっているという。
「‥‥できれば、そっちも調べたいな」
「そうですね」
二人は、閉じていく格納庫ドアを見ながら言葉を交わした。
「‥‥艦長、我々も」
「ああ」
クロノ達を見送った嶋津冴子も『テシオ』の連絡艇に乗り込んだ。