宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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盆前最後の更新です。


邂逅⑤

   ――『テシオ』艦橋――

 

土方や各艦のブリッジクルーらが見守る中、クライドとリンディは21年ぶりの再会を果たした。

通信画面越しではあったが‥‥。

 

『‥‥フェイトから聞いたよ。総務統括官とは大した出世じゃないか』

『‥‥望んでなったわけじゃないけど、あなたと合わせて2人分頑張っただけよ――でも、良かった。ホントに‥‥』

 

あとは言葉にならず、リンディは俯き、しばらく肩を震わせていた。

号泣しても誰も文句は言うまいが、そこは管理局の高官。何とか感情を抑え込む。

 

クロノ、フェイトも同じだが、クロノも両目を真っ赤にし、フェイトは涙。クロノの後ろでシャリオとティアナも大粒の涙を流していた。

それは傍らの森 雪や相原、太田も眼を赤くしていた。

 

 

 

“さて、どう進めたものか”

 

夫婦の再会を見ながら、土方ら地球防衛軍側が考えたのは、クライドを返す具体策だ。

 

TF13は未だ作戦行動中であり、『ヤマト』には古代 守とサーシャが乗っている以上、一刻も早く帰還させなければならないし、クライド・ハラオウンも地球にいる以上、TF13を地球に戻した上で、改めてクライドを乗せて出発させるべきだろう。

それまでにも、管理局側とはコミュニケーションをとる必要があるが、地球防衛軍には次元間通信システムはない。

回収した『エスティア』の通信システムが未だ解析中である以上、管理局に協力を仰ぐ事が不可欠だが、局員1人のために、管理局がどれだけ本気で動くだろうか。

 

とはいえ、頭であれこれ思い悩むより、行動した方がいいに決まっている。

 

「‥‥皆さん、クライド・ハラオウン艦長帰還の具体的方策を協議しましょう。時間は限られています」

 

 

嶋津冴子が話を切り出した。

ガトランティス残党や暗黒星団帝国といった敵性勢力がこの場を嗅ぎ付けてくる可能性がある以上、具体策を早めに決めておかなければならない。

 

「ついては、我が隊で作成した計画を提案したいと思いますが、よろしいでしょうか?」

 

『いいだろう』

『お願いします』

 

TF13首脳部が数日かけて練ったクライド返還計画案が披露された――。

 

 

 

 

    ――約30分後――

 

嶋津冴子が発表したクライド・ハラオウン返還実施案は、土方と管理局サイドの意見・要望を入れて修正し、双方が了承した。

 

管理局側からは、ブラックボックスながら次元通信ポッドを地球防衛軍に貸与することになった。

 

さらに、連絡・通信要員としてフェイト・T・ハラオウン執務官、さらにティアナ・ランスター執務官補が本人の強い希望もあって、TF13に同行して地球に赴く事になった。

 

先ほどの次元通信ポッドは、使用者として登録した者の魔力で起動するため、フェイトとティアナしか起動できないのだ。

 

なお、20歳のフェイトはともかく、17歳のティアナは地球連邦では未成年(満18歳未満)であるため、土方が2人の身元保証人、嶋津冴子が保護責任者を引き受けた。

 

一方、シャリオ・フィニーノとスターレット・タランティノは予定どおり『クラウディア』に移乗し、本局経由でミッドチルダに帰るので、『ヤマト』を離れる事になった――。

 

 

  ――『ヤマト』医務室――

 

『クラウディア』に移乗するスターレットは、病棟服から制服――遭難時に着用し、『ヤマト』艦内の縫製機で修復されたもの――に着替えを済ませ、車椅子に座していた。

 

「皆さん、今日まで色々とお世話になりました。‥‥それと、フェイトさんとティアナをよろしくお願いします」

「こちらこそ、色々不自由させてしまってごめんなさい」

 

お礼の言葉を述べるシャリオに森が笑顔で応じる。

 

『『クラウディア』からランチが間もなく出発する。総員、警戒厳にせよ』

「よし、ぼつぼつ行こうかの?」

「「ハイ!!」」

 

 

  ――『クラウディア』1号ランチ――

 

 

 

『クラウディア』を発艦した1号艇はコスモタイガーの護衛を受けて『ヤマト』に向かう。

搭乗するのは正副操縦士とクロノ、医務官のシャマルと護衛の魔導師2人だ。

 

――、肉眼でも地球艦船が判別できるようになった。

 

葉巻形の艦体に司令塔と大小様々なアンテナらしき突起物を持つ艦が哨戒巡洋艦『テシオ』と僚艦、蛾の幼虫みたいな形の艦角張った水上艦形をしている大型艦が補給艦の『オシマ』。

そして――。

 

「あれが『ヤマト』ですか‥‥?」

「そうだ」

 

シャマルの呟きにクロノが応じた。

 

目の当たりにした艨艟たちが、管理局の艦船とは全く異なる思想で建造されていることは、艦船に深い知識がないシャマルにもすぐ解った。

 

特に『ヤマト』はそれが如実に表れている。

 

「《アインヘリアル》も、これに比べたら玩具も同然だな‥‥」

 

前甲板上にある主砲塔を見たクロノが溜め息混じりで呟いた。

 

(彼らの地球はどんな運命を辿ってきたんだ?‥‥)

 

あんな強武装の艦船を保有しているということは、過去そして現在、宇宙規模の戦争の当事者になっているという理屈が一番通じる。

 

フェイトとティアナは、父の帰還のための手伝いと共に、地球連邦がどういう情勢なのかも見極める任務も課せられるのだ――。




天皇陛下は実に難しい宿題を示されました。

確かに、このままでは皇室は22世紀を迎える事なく立ち枯れしますね。

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