――『クラウディア』――
メインモニターに映し出された地球防衛軍艦に、クルーの間からどよめきが漏れる。
「あんな大きな大砲を持っているのか‥‥」
「XV級と大きさは幾らも変わらないのに‥‥」
(やはり『ヤマト』の存在感が群を抜いている――)
クルーのどよめきをよそに、クロノはモニターに映る地球艦を見やり、感想をもらした。
紡錘型の艦が『テシオ』『クズリュウ』『チョウカイ』『アシタカ』。巨大な芋虫型の艦が『オシマ』。
そして、あの戦艦の面影を引き継いだ大型艦が『ヤマト』であることは、日本に住んでいる者なら誰でもわかるだろう。
(やはり、管理局の艦とは建造思想が根本から違う。戦うための艦船だ)
とはいえ、地球艦の砲身は水平のままで、こちらに向けられてはいない。
敵意は持っていませんよということか。
「心配するな。あちらの砲身が水平になっているだろう?あれは敵意はないから安心しろと言っているんだ」
警戒しているとすれば、近くに潜んでいるかも知れないガトランティス軍に対してだろう。
その時、通信オペレーターが通信の準備ができたことを告げた。
「『テシオ』との通信回線繋がりました。開きます!」
メインモニターが明滅したかと思うと、黒っぽいジャケットを着た女性が映し出された。
「時空管理局次元航行部隊所属、次元航行艦『クラウディア』艦長、クロノ・ハラオウンです」
『地球防衛軍内惑星防衛艦隊所属、巡洋艦『テシオ』艦長、嶋津冴子です』
互いに挙手敬礼を交わしながら名乗り合う。
クロノは内心で唸っていた。
(よく似ている。プレシア・テスタロッサとフェイトに‥‥)
一緒にいれば、歳の離れた姉妹に見えるだろう。
惜しむらくは、右頬に走る傷痕が、せっかくの美貌を台無しにしている事だが。
それはさておき、まずは礼を言わなければならない。
「この度は、我が局員を救助・保護していただき、ありがとうございました。局を代表して御礼申し上げます」
スクリーンの中の嶋津は僅かに表情を緩めた。
『軍人の義務を遂行したまでですから、お礼には及びません。それに、4名しか助けられず、残念です』
「いえ、生存者がいただけでも十分です。それに、ガトランティス帝国軍の情報と資料を得られたのは大きな収穫でした」
『そう仰っていただけると、我々としても有難い事です』
嶋津と名乗った女艦長は、一拍おいて待ち望んでいた一言を口にした。
『‥‥何はともあれ、まずは直接お話しされた方がいいでしょう』
「え?」
嶋津が言うや否や画面が切り替わり、スクリーンにフェイト、シャリオ、ティアナ、スターレットと、2人の男が現れた。
スターレットは車椅子に座っている。
『クロノ!』
「フェイト、皆‥‥」
フェイトが現れると同時に、シャリオとティアナも艦長席に駆け寄った。
『‥‥心配かけてごめんね、クロノ』
「元気そうで何よりだ。‥‥タランティノ准尉、体調はどうだ?」
『傷は塞がりました。今はリハビリ中です』
「そうか」
しかし、フェイトはそこで表情を翳らせた。
『でも‥‥助かったのは私たちだけ。他の人達は‥‥』
「自分を責めるな、フェイト。ガトランティス艦の方がはるかに高性能・強武装で、明確な殺意を持って接近してきたんだ。我々も残骸を調べたが、生存者がいた事自体奇跡だ」
唇を噛み、自分を責めるフェイトをクロノは諭した
『ヤマト』ブリッジクルーはその様を痛ましげに見ていたが、古代が口を開いた。
『宇宙戦艦『ヤマト』艦長代理の古代です。テスタロッサ執務官ら4人は本艦で保護しております。ついては、是非とも彼女達をそちらに移乗させたいと思うのですが‥‥』
「異存はありません。私達もそのつもりで参りました」
『では、早速移乗準備にかかりますが、連絡艇はどちらから出しましょうか?』
「こちらで準備しましょう。私も同乗して伺います」
クロノは自ら『ヤマト』に赴くと宣言した。