DE103・22・475
── 「デウスーラⅡ」 ──
「そうか、ナスカは敗れたか‥‥。データは後ほど見ておこう。今日もご苦労だった、休みたまえ」
「はっ」
‥‥ナスカ都督が敗死した。惑星ダゲダゲのテロン駐屯地攻撃には成功したが、救援に駆けつけた『ヤマト』と中小型艦の小部隊にほぼ一方的に叩かれてだ。
ゴーランド都督は少なからず衝撃を受けていたが、我々から見れば当然の事だ。
あの戦いぶりは我々と戦っていた時と変わらぬ見事さだ。
軍中央に歯向かってでも己の信念を通したあたり、一度は我々を破っただけの事はある。
尊敬に値する艦と乗組員だからこそ倒しがいがあるものだ。
ナスカも総統の忠告に耳を傾けていれば、たとえ敗れるにしても、ヤマトを追い詰める位はできていただろうに。
あのような力攻め一辺倒でやられるようなヤマトではない。
ガトランティス軍は攻勢の時は滅法強いが、それを挫かれると実に脆い。何より功名心が強いのか、艦同士の連携がとれていない、否、とる気がない。
テロン攻略を受け持つのは本国防備艦隊たるバルゼーの第6遊動機動軍団だが、バルゼーは新たな乗艦『メダルーザ』を過大評価しているふしがある。
あれは確かに強力だが、大きな弱点も抱えている。
ドメルや、あのオキタと同等の将ならば、ほどなく見抜いてしまうだろうと総統は仰せになった。
総統はヤマトを憎んでおられるが、恐らくはそれ以上に敬意をお持ちであるとともに、あの艦の実力を正確に把握していらっしゃる。
ヤマトを討ち果たせるのは、ゴーランドでもバルゼーでもなく、我が総統しかいない──。
以下は我が没後、必ず消去の事。
──テロン攻略作戦時、彼らの恒星系に敷設した通信傍受システムの再起動に成功。テロン圏の軍用通信傍受を再開したが、今のところ総統のお気を引く通信はない。
ただ最近、総統は新たな無聊しのぎを見出だされ、その事で従卒は皆頭を抱えている。私もまた同じだ。
テロン標準時間で7日に一度、彼らの安息日の終わり近くの時間、ヤマトの建造地であるニホン地域で流される『ショーテン』『サザエサン』『チヴィマルコチャン』なる娯楽プログラムを総統はいたくお気に入りで、少し時間があるとお部屋でひとりご覧になっているらしい。
そのせいか否かわからないが、総統のお顔は以前より僅かながら穏やかになられたようだ。
だが、その理由は言えない。総統がお一人酒杯を片手に、テロンの大衆文化映像をご覧になっている等と、どうして言えようか──。
ガデル・タラン記す