――戦闘空母『ドメル』――
「タラン」
「は…?」
酷く冷たい声を発したデスラーに、背筋が縮み上がる思いをしながらタランが応える。
「我らの母なる星を崩壊させた元凶が目の前にいる。奴らの大罪を裁かねばならない。全艦戦闘配備!艦載機発進!‥‥古代達には手出し無用と伝えろ」
「!‥‥はっ!!」
デスラーの命令一下、ガミラス艦隊は母星の仇を討つべく動き始めた。
――『ヤマト』――
「ガミラス艦隊に動きあり!‥‥艦載機が発進していますっ!!」
「何をする気だ!?デスラー!」
太田が驚いた声を上げ、古代もデスラーの意図を訝った。
「デスラー総統より入電!手出し無用、との事です!」
「“こけし”から艦載機多数が発進してきます!」
相原と雪から続けざまに報告が入
スクリーンを見ると、例のこけしから多数の艦載機がわらわらとばかりに出てきた。
「‥‥古代、デスラーは俺達に兄さん達を救出しろと言ってるんじゃないのか?」
島がデスラーの意図を推し量るかのような意見を出す。
古代も合点がいった表情を浮かべた時、『テシオ』から一報が舞い込む。
「『テシオ』からです。『密集シテ“まざーたうん”ニ向カウ、艦載機発進セヨ』です!」
「よし!」
考えた事は同じようだ。
古代は戦闘指揮席から立ち上がる。
「コスモタイガー発進!俺も出る!佐渡先生、受け入れ準備をお願いします!」
『合点じゃ!』
コスモタイガーはさっき確認した艦載機が万一こちらに向かってきた時に対応するもの。
佐渡には、守達が乗艦したらすぐメディカルチェックをしてもらわねばならない。
特にスターシャとサーシャはイスカンダル星以外の環境に触れたことがない。メディカルチェックの結果によっては『ヤマト』の一角をイスカンダルの気候に近い環境に調整しなければならないからだ。
その間にも、TF13と『ヤマト』は『オシマ』を中心に間隔を詰めて前進し、『ヤマト』からは山本率いるコスモタイガー隊が発進し始めた。
しかし‥‥。
「暗黒星団帝国軍機、こちらに接近してきます!」
雪の声に古代は舌打ちした。
「あの司令官、俺達も見逃す気はないんだな!左舷、対空戦闘用意!主砲・副砲は三式弾を装填!」
「了解!」
『テシオ』以下の各艦も主砲とパルスレーザーを左舷に指向した。
――『ヤマト』――
「コスモタイガー隊、敵艦載機と交戦します!」
“こけし”から発進してきた“敵”艦載機と山本率いる『ヤマト』飛行隊がドッグファイトに入った。
――坂本 茂機――
「――!」
ロックオンのシグナルが灯った一瞬の内に、操縦捍についたトリガーを押した。
次の瞬間、蛆虫のような形状の敵機はスラスター付近に火の手が上がり、次いで爆発四散した。
「よしっ!次行くぞ、中岡!」
『おう!』
凱歌もそこそこに操縦捍を倒し、フットバーを蹴って僚機ともどもその場を離脱した。
空中戦では真っ直ぐ飛び続けてはならない。
旧日本海軍のエースパイロットの格言と言われる。
訓練学校の教官から口を酸っぱくして言われ続け、『ヤマト』でも古代と山本に怒鳴られながら再度教え込まれたものだ。
敵機は火力こそ強力そうだが、機動性はさほどでもなく、隊内通信でも僚機は全て無事だ。
爆装した戦闘攻撃機なのか、元から運動性が悪いのかはわからない。
『坂本、そっちに2機行った!』
「!?」
別グループリーダーの椎名 晶から警告が飛んできた。
左下方からさっきの蛆虫タイプ2機が『ヤマト』ら本隊の方向に向かっていく。
たった2機では『ヤマト』の対空火器群を突破することは難しかろうが、油断は禁物だ。
装甲が薄い『水無瀬』には十分な脅威になる。
「引き受けた、行くぞ!」『おう!!』
坂本達は返事と同時にフットバーを蹴った。
――『ゴルバ』戦闘指揮所――
「何をやっているのだ‥‥」
指揮官席のメルダースは苛立ちを隠せずにいた。
発進させた戦闘機の損耗が予想以上に高い。
いや、敵が予想以上に精強だったというべきか。
むしろ問題はこちらのパイロットだ。
「知能と知性を刷り込んだとて、所詮は操り人形か‥‥」
メルダースは自嘲気味に呟く。
これは自分の部隊に限らず、我が国全体が抱える宿痾だ。
だが、自分の任務には当面関係がない。
「無限α砲用意!目標はガミラス艦隊だ」
小賢しいことに、『ヤマト』ら地球隊はイスカンダル地表の真上にいる。
無限α砲を撃ち込んだら、イスカンダルの脆くなった地殻にまで歪ませ、ガミラス星と同じことになる。
まあいい。地球人があの2人をイスカンダルから連れ出してくれるのならば手間が省ける。
賓客を乗せたまま戦うことはできないだろうしな。
メルダースは関心を前方のガミラス艦隊に向ける。
「無限α砲Φ、発射準備完了しました!」
「照準固定!」
メルダースは頷くや号令した。
「――撃て」