宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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三つ巴④

    ――『テシオ』――

 

 

「大型巡洋艦または戦艦クラス1、巡洋艦クラス2、駆逐艦クラス5来ます!約 27宇宙ノット!!」

「我々は巡洋艦と駆逐艦を叩く。先頭艦に火線を集中しろ」

 

大型艦は『ヤマト』に任せ、TF13本隊は巡洋艦と駆逐艦の相手に専念する。

早くもヤマトと敵大型艦が砲火を交え始めた。

TF13の巡洋艦4隻も主砲を敵先頭集団に向け、照準する。

 

「狙点固定。有効射程です!」

「撃て!」

 

4隻から30本の光の矢が放たれ、一瞬後、前方に火球が煌めいた。

 

戦果確認の後、嶋津はパク通信長に尋ねる。

 

「通信長、イスカンダルかガミラス本隊との通信は!?」

「申し訳ありません、ジャミングは幾分弱まりましたが、まだ安定しません」

「‥‥和文モールス通信をイスカンダルの古代守宛で連続打電しろ。

 

『弟ト愉快ナ仲間達ガ来タゾ』

 

とな!」

「わかりました!」

 

和文モールスなら古代 守がすぐ意味を解するだろうし、ガミラスも地球がモールスという通信手段を持つ事は知っており、英文モールスは完全に解読されているらしい。

和文モールスは一部しか解読できないだろうが、裏を返せばデスラー総統の呼びかけに地球が応えたことを知らせることになる。

 

艦長の意を解した通信長は直ちに和文モールスフォームを作成し、イスカンダルに向けて自動打電を始めた。

 

――その間にも、TF13はコルサック艦隊と相対する敵小型艦群の左後方に到達した。

 

「撃て!」

「発射!」

「てッ!」

 

たちまち虚空に新たな花火が広がった。

 

 

 

  ――デザリアム艦隊旗艦『プレアデス』――

 

「司令、第9・第12部隊が壊滅しました!」

「何!?」

 

デーダーの表情が険しくなり、幕僚も驚きの表情に変わる。

 

「敵にはどのくらいの損害を与えたのだ!?」

「数隻のガミラス艦を撃破。『ヤマト』にも命中弾を与えましたが、彼奴は全く戦闘力を落としていません。

‥‥敵は、特に地球艦の砲撃は射程・装甲貫徹力とも我々の予想を超えていました」

 

幕僚たちの会話を聞きながら、デーダーは思考をめぐらす。

 

(ガトランティスの意図を挫いてみせたのはまぐれではないということか‥‥ならば!)

 

デーダーは切り札を切る。

 

「狙撃戦列艦を前進させよ。無限α砲を浴びせるのだ!」

 

決戦兵器である無限α砲を搭載した狙撃戦列艦で敵艦隊に大穴をあけ、一気にイスカンダル首都のマザータウンを制圧する。

 

無限α砲は大威力だが射界が狭く、必ずしも艦隊決戦向きではない。

これはデザリアム帝国が抱える深刻な事情に起因する上、狙撃戦列艦自体も最新型で配備数が少ないので、できれば使いたくなかったが、これ以上時間をかければイスカンダリウム採掘にとりかかる時間が延びてしまう。

 

既にガミラシウム採掘に失敗した以上、イスカンダリウムは何としても採掘しなければならない。

 

デーダーの命令を受け、円盤型船体の前面中央に巨大な筒状の構造物を持つ狙撃戦列艦6隻が艦隊前面に向けて動き始めた。

 

 

――ガミラス艦隊総旗艦『ドメル』艦橋――

 

デスラーは艦橋の中央に仁王立ちし、スクリーンに映る敵艦隊を睨み据えている。

その後ろにはタランが控えて幕僚からの報告を捌き、重要な報告はデスラーに伝えていた。

 

そこに、通信担当幕僚が極めて重要な情報を携えてきた。

 

「タラン将軍、途切れ途切れですが、地球式モールス信号を受信しました!」

「!?」

「間違いないのか!?」

 

デスラーも振り向き、タランの声が大きくなる。

 

「間違いありません。短長符号を組み合わせた、地球独自の通信に間違いありません!」

「解析を急げ!間違いなく地球の信号か確認せよ!!」

「はっ!」

 

――確か、スターシャ陛下の夫君は《彼》の兄。

地球軍の軍人だったあの御仁なら、あの信号の意味も理解できるのではないか。

しかし、続く報告に一同は一層緊張した。

 

「敵艦隊に動きがあります!複数の大型艦が前進してきます」

「攻撃隊からの映像、入ります!」

 

情報幕僚がモニターを切り換えた。

 

「む‥‥」

 

モニターには、艦首部に巨大な砲門らしき構造物がある大型戦闘艦が映し出された。

 

「総統、これは‥‥」

「デスラー砲や波動砲と同じく、敵の決戦兵器だろう」

 

デスラーはタランに向き直るや指示を出した。

 

「タラン、デスラー砲用意!」

「!‥‥はっ!トリガー準備!親衛艦は旗艦にエネルギー供給!生命維持に必要な分以外の全エネルギーを急速充填に振り向けろ!!‥‥射線上の艦は緊急待避用意。ご命令あるまで現座標で戦闘を支えよ!」

「はっ!」

 

大型戦闘空母『ドメル』の飛行甲板が反転し、デスラー砲の砲身が迫り上がって定位置に据えられた。

 

『ドメル』の左右と下部には深蒼色の艦体色をした親衛艦が寄り添い、エネルギーケーブルを総旗艦に接続して波動エネルギーを供給している。

 

ガミラス式波動機関の特性上、デスラー砲を最大出力で撃った場合、再チャージに要する時間は宇宙空間に倍する。

それゆえ、親衛艦からエネルギー供給を受け、連射を可能にするのだ。

 

――因みに、イスカンダル式波動機関を起源とする地球式波動機関は、タイムラグがガミラス式機関の半分以下で済む――。

 

一方、照明が落とされた艦橋では、デスラーの前にトリガーが固定された。

 

「‥‥目標、敵艦隊旗艦」

「エネルギー充填急げ!機関全開」

 

デスラーが持つトリガーの動きに応じ、『ドメル』の艦首も動く。

 

デスラー、タランともに、敵艦隊はマザータウンを含む陸地に決戦兵器を撃ち込めないことを看破していた。

 

寿命が尽きかけたイスカンダル星の地殻は脆弱になっているが、半身ともいうべきガミラス本星の爆発消滅とその後の大暴走の影響で地殻はさらに痛め付けられ、各所で噴火や地震が頻発しており、その余命はさらに短くなっている。

 

そんな状態のイスカンダルの陸地にデスラー砲級の決戦兵器を撃ち込めば、間違いなくイスカンダルは崩壊する。

 

さらに、マザータウンには星自体を消滅させるための起爆装置が埋設されていると言われているが、デスラーもタランも、この言い伝えは真実であると考えている。

 

自爆装置はともかく、不用意に陸地に決戦兵器を撃ち込めば、肝心のものは採掘できずに終わり、敵の司令官は処断されよう。

 

デスラー砲の砲口が敵艦隊中央集団を向いた時、幕僚の緊迫した声が響いた。

 

「敵艦隊からエネルギー反応の急速増大を確認しました!」

「構わん、このまま撃つ。射線上の友軍艦を下がらせろ」

 

デスラーは落ち着き払った声で発射準備完了を告げ、その直後、

 

「――発射!」

 

『ドメル』艦上のデスラー砲が轟然と吠えた――。




オリジナルキャラ並びに原作キャラ独自設定2

     
嶋津 冴子の補足
幼少期から近所の道場に通い、御神流なる古式二刀流剣術を会得し、師範代級の腕前を持つ。


真田 志郎評
『素材はいいのに、色々と残念な奴なんだよな。
‥‥それ以上はノーコメントだ』



大村 耕作(おおむら こうさく

役職
哨戒巡洋艦『テシオ』副長 兼 航海長

階級
地球防衛宇宙軍 少佐

年齢
27歳

概要
ガトランティス戦後の緊急人事で『テシオ』副長に就任、嶋津冴子の補佐役に。

真田志郎評
『‥‥頑張れ』

イメージCV:千葉進歩

※『復活篇』におけるヤマト副長の青年期です。


  
塩江 龍一(しおのえ りゅういち)

役職
戦闘巡洋艦『チョウカイ』艦長

階級
地球防衛宇宙軍 中佐

年齢
28歳

概要
ガトランティス戦時はチョウカイの副長だったが、土星圏決戦で所属していたヒペリオン艦隊が壊滅し、チョウカイも艦橋等への被弾で前艦長が戦死したため指揮を代行。沈着な指揮で危地を脱出したばかりか、追い撃ちをかけてきた敵巡洋艦を返り討ちにした。

戦後の緊急人事で艦長に昇任。
TF13では次席指揮官。

幼少期からコーヒー大好き人間で、ガミラス戦時も麦芽やタンポポ等の代用コーヒーの味改善に独自の研究をしたり、ミニ温室でコーヒーの苗木を栽培している。
(2201年時点で、本物のコーヒーは貴重品)

真田志郎評
『TF13随一の常識人。但しコーヒーが絡むと常軌を‥‥』

イメージCV:杉田 智和



綾歌 麗奈(あやうた れいな)

役職
戦闘巡洋艦『チョウカイ』副長 兼 航海長

階級
地球防衛宇宙軍 少佐

年齢
27歳

概要
グラビアアイドル顔負けのスタイルだが、それゆえセクハラにも多く遭っており、反撃の毒舌も強烈。
酷いセクハラに遭っていた時、塩江に助けられたのをきっかけに彼に好意を持つようになり、ガトランティス戦後の人事で『念願叶って』塩江を補佐する立場についた。

真田志郎評
『女子力は防衛軍士官屈指。航海士官としても優秀。
‥‥何?塩江に惚れている? それは苦労するな』

イメージCV:内田 真礼


次回は『クズリュウ』の艦長と副長です。

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