宇宙警備隊長・冴子   作:EF12 1

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ガトランティス講座、続きます


会談③

 

会談の席に真田志郎が加わり、早速解説が始まる。

地球連邦・地球防衛軍がガトランティス帝国に白色彗星帝国という別称をつけた理由を、真田が図を交えて説明したが、所々に現地らしい画像や動画があるのにも驚いた。

 

「詳しくは後程話すが、古代と俺は首都要塞内部に突入して何とか戻れたのでね。こういう資料が得られた」

 

動画には、モザイクがかかっているとはいえ、立ちはだかったガトランティス兵がレーザーの束に貫かれて倒れる姿も入っており、フェイトは思わず目を背けた。

 

「驚かせたようで済まないね。しかし、我々の世界の戦争がどういうものか知ってもらうには、これが最適なのでね」

「はい‥‥」

 

フェイトも嶋津達の意図を理解していたので、抗議するつもりはなかった。

さらに、地球・ガトランティス双方のハンドガンが実弾兵器ではなくレーザー兵器である事にも息を飲む。

弾速では実弾兵器や射砲撃魔法より遥かに速く、何より発射の兆候が分かりにくい。

 

予想していたとはいえ、この世界の兵器の高性能ぶりには、管理局員としては危機感を抱かざるを得ない。

 

(局員の大半は嫌悪するかもね。でも‥‥)

 

自分だっていい気分はしないが、拠って立つ土台が違うのだから仕方ない。

 

それよりも、今はガトランティス帝国の情報収集が先だ。

 

「彼らの軍事ドクトリンは、多数の宇宙空母から圧倒的多数の宇宙・大気圏両用航空機を発進させ、大規模空爆による目標の制圧・殲滅を基本としており、戦闘艦艇も、基本的には空母の護衛が基本としているから、大型艦の砲撃能力は、単艦では『ヤマト』や我が軍の主力戦艦に及ばない。

しかし、何分にも数が多いのでね。正面対決は避けなければならなかった。特に、この機動部隊は」

 

真田が指し示したのは、ガトランティス艦隊主力の後方にいた多数の空母による機動部隊。

これに空爆されたら、ただでさえ数で下回る地球艦隊は壊滅しかねない。

 

「で、我々は戦闘空母を中核とした奇襲部隊を急遽編成して、この機動部隊にぶつかった」

「結果だけ言えば、敵の空母全てと護衛艦の過半を完全撃破。人命損失はこちらのパイロットの3割強と、ガトランティス艦の乗組員、推定数千名だ」

 

嶋津はほろ苦い顔で話した。

 

「敵機動部隊撃滅の数時間後、双方の主力艦隊同士が激突した」

 

数で劣勢の地球艦隊は、中央突破と見せかけて、突進してくる敵艦隊に波動砲の統制発射で痛撃を与えようとしたが、敵は予想の斜め上を行った。

 

「敵の旗艦はプラズマらしい光弾を空間転移させて目標にぶつけてきた」

(弾道が読めないということか‥‥)

 

ガトランティス艦隊の空間転移砲は緒戦で絶大な威力を発揮し、地球艦隊は数分で1割強の艦を失った。

 

「ただ、敵の決戦兵器は射程が極めて長いかわりに照準がデリケートだったようだ。我々はそこにつけ込んだ」

 

地球艦隊の土方司令は、敗走を装って全艦隊を土星の環の中、カッシーニの隙間まで後退させ、潜ませていた予備部隊と合流した。

 

一方、追撃してきた敵艦隊は、土星の環の中であのワープ砲を放ったため、環を形成していた無数の氷塊が蒸発して水蒸気爆発を誘発。乱気流が発生したため操艦不能に陥り、味方同士で衝突したり、地球艦隊の砲撃を受けて壊滅した。

 

「しかし、本当の戦いはこの後からだった」

 

地球艦隊主力と『ヤマト』『白根』ら奇襲部隊は合流したが、その直後、白色彗星がワープアウト。

戦闘空母ら一部の艦が飲み込まれてしまった他、『ヤマト』、さらに旗艦『アンドロメダ』も味方艦と衝突し、大ダメージを被って戦線離脱を余儀なくされた。

 

そして難を逃れた地球艦隊の指揮は『シリウス』のスコット中将が引き継ぎ、白色彗星に対する拡散波動砲一斉発射を行ったのだが、ガス帯を取り去ることすら叶わず、『テシオ』ら一部の艦を除いて白色彗星に飲み込まれてしまった。

 

(こんな‥‥!)

 

地球艦ですらこの有り様では、管理局の艦ではアルカンシェルを撃つ前に引きずり込まれてしまうし、威力も話にならない。

この人達は、どうやってこんな化け物と戦ったのか?

 

「戦闘可能な残存艦は木星・天王星圏で修理と補給を受け、白色彗星を追うことにした」

 

『ヤマト』は何とか戦線に復帰したが、そこに立ちはだかったのがガミラスのデスラー総統。

 

瞬間物質移送装置を駆使した“デスラー・ドメル戦法”で『ヤマト』を追い込んだが、『ヤマト』は小ワープでデスラーの旗艦に接舷し、移乗白兵戦を挑んだ結果、デスラー艦は大破。

古代・雪と対峙したデスラーは心境が変化したか、『ヤマト』や地球との和解と白色彗星帝国の弱点を匂わせる言葉を残して退去し、ガミラス艦隊を率いて立ち去っていった。

 

一方、残存地球艦隊は土方司令が『テシオ』に移乗して指揮を続け、ガトランティス帝国に対するリターンマッチを挑んだが、その直前、敵本星は自らガス帯を解いて全容を見せると共に、本星自体が牙を剥き、地球本土を砲撃し始めた。

 

(ひどい‥‥!)

 

無慈悲な攻撃に、フェイトも呻いたが、

 

「‥‥市民はいち早く地下都市に避難していたのでね。幸いにも犠牲者は出ていない」

 

嶋津が口にした。

 

そして、説明は敵首都星攻防戦に移る――。


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