── 航宙母艦『ニムカ』 ──
「何をやっているのだ!愚か者ども!」
続けざまに4隻の艦が火球と化した様を目の当たりにし、コズモダート・ナスカは怒りの声を上げた。
先陣争いをしていたラスコー級巡航艦2隻のうち『ズ・デズコー』が『ヤマト』からの第1射を浴び、舵を誤って並走していた『ダ・ドズコー』に衝突して2隻とも爆散。
さらに大戦艦『ランデ・バダー』は『ヤマト』からの連射で炎上し、艦列から脱落。『ダ・ウォーダー』は『ヤマト』の脇にいた小型艦2隻の艦首大口径砲の砲撃で艦橋が崩壊。次の砲撃で爆散した。
『ヤマッテ』の砲撃もさりながら、小型艦の艦首砲も予想外の射程と破壊力だ。
先に地球艦隊を襲撃した時とは真逆の苛烈な反応だ。
「デスバテーターを呼び戻せ!」
「『ヤマト』艦載機との戦闘で、既に過半が失われました。残存機も敵機に追い詰められています」
「く‥‥!」
また1つ火球が煌めき、配下の艦の信号が消えていく。
(地球人め、無能のふりをしていたのか!?)
先日の襲撃では『ヤマト』や僚艦も大した反撃をしてこなかったが、今は何だ。
先日の報復というにはあまりに呆気なく配下の艦が沈められていく。
こちらの狙いは初めから『ヤマト』のみ。
命中弾があるはずなのに、あの艦は堪えた様子もなく、正確な砲撃で1隻また1隻と仕留められていた。
『ヤマト』もさりながら、他の中小型艦も憎らしいまでに正確な砲撃で我が方の艦船を屠っていく。
(艦の規模は我が方が上回っている。なのにあの貫徹力の高い砲撃は何だ?我が方の装甲が弱いのか、奴らの動力と武装の組み合わせが良いというのか?)
“‥‥テロン、特に『ヤマト』を侮ると致命傷を負うよ、ナスカ君”
煙ったい亡命者の言葉が何度も脳裏に響くが、ナスカは振り切るように頭を振る。
散々邪険にしてきたあの男が正しいと認める事など、栄光ある大ガトランティス帝国軍人の矜持が許さない。
数はまだこちらが上。戦力を失っても『ヤマト』を始末すれば、後は雑魚同然。その上で基地を建設できれば、彼奴── デスラー ──は最早何も言えまい。
「地球艦、前進してきます!」
「数はまだこちらが上だ。包囲して沈めよ!本艦も前進だ!」
ナスカは『ニムカ』直衛艦にも地球艦への攻撃を命じるや、座乗艦にも前進を命令した。
── 『テシオ』 ──
「敵艦6、左右から半包囲隊形で前進してきます!その後ろから空母1、来ます!」
「向かって左翼から切り崩す!」
イの敵情報告を受けた嶋津は、向かって左翼側から敵の艦列を切り崩す事を決断した。
敵艦はガミラスと比べて大型で機動力は同等だが、防御力も大差なく、こちらの大口径砲なら一・二撃で致命傷を与えられた。
距離を詰めてくる敵巡洋艦に『ヤマト』の主砲6門が、隣の駆逐艦に『ヤマト』の副砲3門と『テシオ』の主砲4門が向けられる。
「撃て!」
双方のビームが一瞬交錯した後、ガトランティス側では2つの光球が煌めき、地球側でも小規模な爆炎が上がった。
「左舷24に被弾。火災発生!‥‥自動消火装置作動確認」
「目標を敵4番艦に変更。発射管1・2・11・14番開け」
左舷から煙を噴きながらも、『テシオ』はまだ健在な敵4番艦に照準を定めた。『ヤマト』を楯にしている『ヒルガオ』『ナデシコ』も再び砲門を開く。
── 『ナデシコ』 ──
「面舵12、上4‥‥ 艦長!」
「おっけ~、てぃ!」
舵を預かる若い女性が隣の戦闘指揮席を一瞥すると、艦長と呼ばれた、これも若い女性がコンソールから突き出たトリガーを嬉々とした表情で引いた。
突き上げるような衝撃がやや間を置いて2度ブリッジクルーを見舞うと共に、艦首先端が煌めいて光の槍を射出する。
同時に僚艦『ヒルガオ』も主力戦艦主砲を固定化・長口径化して『ヤマト』に匹敵する射程距離を持つ艦首砲── 長40.6サンチ連装艦首陽電子衝撃砲 ──を放つ。
2隻から放たれた4本の光の槍は狙い違わず敵巡洋艦を串刺しにし、内部から崩壊させた。
「駆逐艦接近!!」
「主砲と行くよ~」
「取り舵10」
のんびりした調子の“艦長”と隣の航海長は、よく見ると同じ顔立ちだ。
「ん~‥‥‥‥てぃっ!!」
艦長がトリガーを引くや、『ナデシコ』の連装主砲が一斉射撃を始める。同時に『テシオ』『ヒルガオ』も敵駆逐艦に向けて砲撃を放つ。
『ヤマト』のようなパンチ力こそないが、短時間で大量に撃ち込まれる陽電子の矢に、ガトランティスの駆逐艦は易々と装甲を穿たれ、操舵不能になったのか、艦首を下げて脱落し、やがて火球に包まれた。