神々の狂乱   作:初代小人

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昨日も投稿しようと書き進めたのですが、寝落ちしてしまいました。
生活習慣を整えなければ…
お待たせしました。今回でとりあえず一段落つきます。
あと、お気に入り登録して下さった方が二人も増えていました。とても嬉しい事です。ありがとうございます。これからもこの作品をお願い致します。


それではどうぞ


終戦

天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)MSF隊員全員を率いての戦闘が始まる。

雄叫びを上げてキメラに襲いかかるMSF隊員達はその圧倒的戦闘力でキメラを貫き、砕き、吹き飛ばしていく。

しかし彼らですら、ロキの戦果を上回ることは出来ない。

実は古代の竜人の奥義である煉獄(プルガトリオ)というらしい魔術でキメラを焔の渦の中に次々と閉じ込めていく。

彼の周りには常に十個ほどの焔の繭がある。

キメラは頑丈な殻に包まれているにもかかわらず、その渦は5秒ほどでキメラを灰にして消滅する。

その火力はMSFきっての炎魔術の使い手である『焔獅子』ウィルソンよりも高いのではないだろうか。

依然として舞うようにキメラを斬り続けながら合間に焔の渦を顕してキメラを行動不能に追い込み、そのまま焼き殺してしまう。

更に彼は無意識の内に陽炎が発生する程の純粋な熱を体のまわりに纏った状態で戦っている。

最初は煌めきを放っていた白銀の竜騎士の鎧は今では赤熱してしまっている。

これは古代の竜人の防御用焔属性魔術の奥義、陽炎の鎧だったがそんな事はロキの知るよしもない。

竜人の奥義三つも同時に発動させたロキは完全であるように見えた。

だがその防壁は唐突に破られる。

 

前後左右、全方位をキメラに囲まれているロキ。

その顔に焦りはない。

既にどのキメラから斬っていくかなどは決まっている。

手始めに斜め前のキメラを煉獄(プルガトリオ)で捕獲し、灰にする。

それと同時進行で左手から焔弾を投げて周りのキメラを半歩ほど後ろに下がらせる。

後は天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)で回転切りをすれば周辺の敵をまとめて処理できるはずだった。

そこに唐突に無粋な黒い鉄の塊が乱入する。

その正体は空戦舞台の投下式爆弾なのだが、少し身を躱して直撃を免れようとするとキメラ達に襲われてしまう。

しかし躱さなければ爆殺されてしまう。

いくら分厚い鎧に身を固めていたとしても爆弾を直撃させられては無事では済まないだろう。

味方からの誤爆。これこそがロキを窮地に追い込んだただひとつの原因であった。

さあ爆弾がロキに着弾しようか、という時だった。

ロキの周りの地面から鋭い氷が氷柱のように生えてキメラ達を貫いて一掃した。

おかげで空間に余裕をもてたロキが術者を確認する。

右手で鞭を構えていて、流水の鎧を纏った見覚えのある魔術師だった。

「サラ!」

ロキは思わず名前を呼び、再会を喜ぶ。

サラも、「ロキ、良かった、良かった…」と言っている。

感無量の様子で、装甲で表情は見えないが、涙声になっている。

とはいえキメラはまだ沢山いるため、周りからじわじわとにじり寄ってくる。

交戦しようとしたその時、キメラを錆色の炎が襲う。

立っていたのは獅子(ライオン)をモチーフにした装甲を纏った戦士だった。

鬣の部分が錆色の炎になっている。

「ウィルソン!?」

サラはなにやら驚いた様子だ。

「おいおいお二人さんよぉ、お熱いのもいいがちゃんと奴らを片付けちまってくれよぉ。特にサラ総隊長はそいつの世話をちゃんとしてやれよ?強くても一般人なんだからよ。」

と錆色の獅子はおどけた様子で言う。

「そ、そんなんじゃ!無いわよ!」

と否定するサラの装甲の水は今や熱湯となり、湯気が出ている。

ウィルソンは「へいへ〜い」と言って立ち去り際にロキの耳元で小声で嘯く。

「サラのこと、護ってやってくれよ?」

ロキには意味が理解できない。

この場合はサラをキメラから護ってやれという事なのか?と解釈してその通りに動く。

 

サラへと迫る触手を全て叩き落とし、足りない分は焔を幕のようにして防ぐ。

太刀の切っ先でぐるりと時計回りに小さく円を書き、焔の渦を纏わせる。

そしてそれを振るい、焔の竜巻として打ち出す。

道筋にあったキメラの体の一部は全て一瞬の内に灰に還る。

だがロキはギリギリまで気づけなかった。

サラの体の陰になっている部分。その方向から触手が迫っていることに。

気づいたのはサラの肩の上を超えて、あと数刻でロキに命中するという時だった。

鋭い触手はロキの体を貫かんばかりに高速で飛んでくる。

が、その勢いは突然落ちる。

サラが高圧水流の刃を振るってまとめて触手を切り落としたからである。

地面に落ちた触手の断片はピチピチと跳ねながら、麻色の霧となって消えた。

「え!?」

ロキはそれを見て驚く。

彼にとってキメラは灼き殺すもので、雲散霧消する前に灰として無機物に還元していたからである。

その様子を見たサラはすべてを察して、「ロキ、人に造られた魔獣は死に際、製作者の魔術の痕跡と共に消えるの。」

と教えてくれた。

そのあいだも2人はどんどんキメラを屠っていく。

切れ味の落ちない聖剣、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)はその使い手が振るい続ける限りすべてを斬り続ける。

その性能もそうだが、何よりもロキとサラ、二人の連携がとてもスムーズに働き、効率よくキメラを霧と灰に還していく。

ロキの死角をサラが、サラの死角をロキが埋め、周辺の敵を駆逐し尽くし、移動する。

闘う場所を10回ほど変えた時だった。

目の前がすっきりとして、周りを見回すとキメラの影がどこにもない。

ロキの焔による探索にも引っかからない。

地上のキメラが殲滅された瞬間だった。

ロキは安全だと確認してから灼熱地獄(インフェルノ)を解除する。

焔の紅で気づかなかったが、辺りにはキメラの体だった麻色の霧が立ち込めている。

そこで初めて空から射す陽光に気付き上を見上げると、飛翔型のキメラはすべて撃墜されていた。

同時にサラの無線に連絡が入る。

「サラ地上部隊長に連絡です。空戦部隊、損害34で勝利、敵反応完全に消滅しました。」

小鳥は啼き、暖かい陽の光が射す。

皆がそう感じたその時だった。

立ち込めていた麻色の霧が凝集して、フードを被った巨大な人間の胸から上になった。

そしてその大きな人形のモノは言った。

 

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次回からはサラ外伝と称して、ロキが目覚める少し前のサラの話を投稿していきますのでよろしくお願いします。

感想、お待ちしていますよ。

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