神々の狂乱   作:初代小人

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書きたくなったので投稿。読者様には迷惑をおかけしますが、このスタンスが割と健康にもいい気がする。

言い訳ですごめんなさい。不定期投稿でごめんなさい。
このお祭りのお話も長くなってきたのでそろそろ終わらせねば…


参回目・弐

さて、どうしたものか。

ロキは陽炎の中で策を練る。

炎の熱によって周りの空気の光の屈折率を操ることで自らが他人に見えないようにするのがこの術の原理である。

もっとも、あまり早く動きすぎると空気が掻き乱されて解けてしまう不十分なものだが。

 

 

 

必要なのは目の前の女、そしてその中に巣食う老婆の声の虎馬。

但し、相手の負傷は最小限に抑えなくてはならない。

その中には相手の自滅による負傷も含まれる。

 

 

…もうさっさとMSFに通報して援軍を呼んだ方がいいんじゃないか、と思うがそれをすると高確率でサラが来てしまう。

そうしたらきっと目の前の女は取り押さえられてもサラは助からないだろう。

 

 

なら…あれしかないか。

 

 

覚悟を決めて俺は鎧を消失させ、陽炎の中から女の後ろに姿を現した。

すぐさま察知して回すように振るわれた右の拳を俺の拳で包むようにして受け、そのまま回転しながら引き寄せ、回転の半径を小さくしながら投げる!

 

 

急速に加速しながら地面に叩きつけられた女は当たりどころを調節しておいたため、重傷こそ負わなかったもののショックで呼吸が出来ず地面に倒れ伏して苦しそうにもがいている。

 

 

すかさず組み伏せ無力化しながら、「なぁ、聞いてんだろ虎馬ァ」と話しかけた。

すると「なんだい、近頃の若者は口が悪いねえ」と、随分皮肉気な答えが返ってきた。

 

 

「お前を無力化すりゃぁこのふざけた輪廻が終わるって聞いてんだが、どうすりゃ無力化できんだ?さっさと吐かねえとお前ごとコイツをMSFにぶち込むぞ?」

「そんな事かい。このこの願いはあんたと居ること、さ。全く…こんな生意気な小僧の何処がいいのやら。まあ、あたしも自分の立場くらいわかっているつもりさ、だからお願いさせていただくよ。」

 

そういうと老婆の虎馬は一呼吸おいて、「お願いだ。あんたと少し話して、この子の恋が終わってしまえば、この子の願いは叶って、この輪廻からあんたも、この子も、そしてあたしも、解放されるはずなんだ。おかしな事を言ってることは分かってる。でも、この子にこれ以上罪を背負わせないでやって欲しいんだ…お願いだ…」

 

 

それを聞いて俺はどうにも毒気が抜かれて、「あ、あぁ…」と答えた。

 

 

しばらく待つとストーカーは起き上がって俺の顔を見て、「ふぇ?」なんて気の抜けた声を出した。

その後、「え、なんで?ロキ様なんで、え、どういうことなのムネシちゃん!」と慌てる女の声と、くつくつ、と愉快そうに笑う虎馬の声がしばらく響いた。

 

 

 

────────

 

 

 

 

本当はいけないことだ、そう分かって居ながら私はロキ様の後を尾行していた。

隣にはMSF総隊長のサラさんがいて、悔しいくらい美人で、私はロキ様の横には立てないという現実を改めて突きつけられた。

 

 

出会いなんて言えるものはそもそも無くて、「MSF隊員養成学校立てこもり事件」の解決に貢献したとして表彰されているロキ様に私が勝手に一目惚れしただけ。

それでふと、「あーあ、あんな素敵な人と建国祭に行けたらな〜」だなんて呟いた。

 

 

それから建国祭の日になって、惨めになることはわかっていたけれど私もお祭りの空気を楽しみたくて建国祭に出かけた。

今年は唯一の友達のムネシちゃん───虎馬っていう怪異で本名はアムネシアって言うらしい───もいるし寂しくないもん!って思ってた。

昼頃だとカップルも多くて虚しくなるから朝早く行こうってムネシちゃんと決めて行った。

 

 

そしたら…ロキ様が居た。後はさっき言った通り。

 

 

ムネシちゃんは声も性格も私の死んだおばあちゃんみたいで、よく世話を焼いてくれるけど、自分についてはっきりと教えてくれたことは無い。

ただ、前に言ってたのは、「あたしの仕事はシオン、あんたを幸せにすることだよ。」だった。

ちょっと照れ臭くて「何それ旦那さんみたい〜」って茶化したら、ムネシちゃんも照れててすごく可愛かった。

って言っても直接姿を見たことはないんだけど。

 

 

 

声だけの不思議な友達ムネシちゃんは時々大胆で、ロキ様を見つけた時に後ろについて行こうって言ったのもムネシちゃんだった。

まあ、言いなりになっちゃった私も私だけど…

 

 

そうやって、変だけどロキ様とお祭りを回ってる気分でしばらくすると、ロキ様はサラさんと別れたようだった。

といってもカップル的な別れるじゃなくて行動の面で、だよ?

 

 

そのまましばらく付いていくとロキ様は恐ろしい声でおい、もう分かってんだよ。そこの女、出て来な。」と仰った。

ふと、ありえないはずの記憶が頭の中に入ってきて、拒絶される悲しみが一気に去来して私の意識は暗転した。

 

 

 

目が覚めると目の前にロキ様がおられた。

 

 

「ふぇ?」思わず間抜けな声が出て、一気に意識が覚醒する。

顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。

ムネシちゃん…嬉しいけど心臓に悪いよ…

 

それでもロキ様はやっぱりお優しくて、しばらくしてから「んー、落ち着いたか?ちょっととりあえずさ、話しようか。そこの公園でいいか?あ、これスポーツドリンクな。」と、自販機で買ってきたと思われるスポーツドリンクを差し出しながら仰って下さった。

 

 

ただ歩いてるだけだけどもう…死んでもいいくらい幸せです。

 

 

 

To be continued…

 




次回予告

語られるシオンの過去。アムネシアの願い、そしてロキが出した答えとは…

次回、「打ち砕かれてなお、輝く希望」

※なおこのタイトルは投稿時には反映されません。ご了承ください。

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