今回で壱回目終わりです。次回からは弐回目になります。
サラはMSF付属の病院に運ばれた後、すぐに緊急手術することとなった。
医師曰く、「最強の魔術師のためです、手を尽くしましょう」との事だった。
ああ心配だ。
頭の中にサラの色んな顔が浮かんで消えていく。
怒った顔、照れた顔、悲しそうな顔、嬉しそうな顔、はしゃいだ顔。
そして、血にまみれた苦しそうな顔。
俺には一つわからないことがあった。
刺されて痛かっただろうに、女から俺を守るために文字通り血を吐きながら言葉を紡いだサラ。
どうしてわざわざ相手を刺激するようなことを言ったのか。
学校では犯人をなるだけ刺激せずに確保しろと習った。サラもわかっていたはずだ。
疑問だけが頭の中をぐるぐると駆け巡る。
ラオがもしこの場にいたらすぐに答えにたどり着いて苦笑いしたのであろう。
しかしロキは人間の機微に疎く答えが出せない。
「…ん!ロキさん!」
白衣を着た医師に起こされた。
見慣れない天井に、寝心地の悪いベッド。
いいやこれはベッドじゃない、病院のソファーだ。
どうやら考え込んだまま眠ってしまったようだ。
「ロキさん、手術は終了しました…」
少しだけバツの悪そうな顔に思わず不吉な想像をしてしまう。
その想像を打ち払いながら、「どうなりましたか?」と問いかける。
「最善は尽くしたのですが…残念なガラ…モウシワk…ゴシュウsyou…」
その言葉の意味を理解して、その後の意味が、言葉が、理解出来なくなった。
サラが、死んだ?あの、サラが?
やめてくれ、そんな悪い冗談は。
そんなわけないだろう?今日はエイプリルフールじゃないだろう?
今日は…今日は…
今日今日今日今日今日今日今日今日今日今日今日今今今今今今今iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii……
あれ?今日って何日だっけ?
目の前の景色がぐるぐると回って、回って、回って。
何周したかわからないうちに、消えた。
ふと気がついた。
まるで眠りから覚めたかのように意識が覚醒した。
「ここは…建国祭の会場?サラと…待ち合わせてた時間…え?どういう…ことだ?」
考えがまとまらない。理解が出来ない。
悲劇なんて
「何が起こっていやがるんだ…時間遡行魔術なんて…そんな大掛かりなもんまで使って…それとも…ただの夢?」
そうであればどれほどいいか、そんな希望を込めて俺はつぶやく。
しかし夢ではないと否定するように彼女はやってきた。
「ごめんなさい、待ちましたか?」
怪我などしていない、元気な姿のサラが、変わらぬ服装でやってきた…
To be continued…
次回投稿もいつになるやら…
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