神々の狂乱   作:初代小人

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どうも小人です。昨年一年間書き溜めていたオリジナル作品の第1話が遂に完成いたしました。9,000字超えの長文です。駄作ですが読んでください。たまにボカロ曲の歌詞が入ってます。わかった方はネタバレ防止のために個人的にメッセージを送っていただけると幸いです


※2016/03/13
大規模な修正を行いました。神々が1話から二柱登場します。今までに読んだことがある方もぜひ読みなおしてみて下さい。


本編壱章
異変


序章

 

気がつくと俺は燃え盛る炎の中に居た。周りは、怒号やら赤ん坊の泣き声で埋まっていく。知っている顔はない。

すくむ足を無理やり動かして、走り出す。

2、3分ほど走ると、よく知ってる執事がいるのを見つけ、そこに駆け寄る。

「爺〜‼︎」と声をかけると、爺はこちらに気づいてすすで汚れた顔を向ける。

「王子様、よくぞご無事で‼︎」それに応えて、

「爺、これは、どういうことだ?」と問うと、「焔の破壊竜(バハムート)の襲撃を受けているのです‼︎」と答え、「あの野郎懲りもせず」と毒づいてから続ける。

「もうこの王国は終わりです。せめて王子様だけでも…」

と、上部が赤色、下部が白色に塗られた巨大なボール、すなわちモ◯スターボールを取り出す。

「ってそれはまた違う世界のやつじゃねーかー‼︎」

というと、爺はいたずらっ子が浮かべるような笑みを浮かべ、

「申し訳ございませんっ。間違えてしまいました。本当はこっちで…」と、こんどは伝説の青い狸を引きずり出す。

すると、青い狸は、「ボクはタヌキじゃない、猫型ロボットだー!」とうわごとを言いながら暴れる。

「だーかーらー‼︎」と怒鳴ると、今度こそは真剣に、大きな黒い球体を取り出す。

「こっこれは⁉︎」と俺が言うと、爺も頷いて、

「はい。王族専用の地面に埋めるタイプの脱出装置です。これで逃げてください。」と言う。

そして俺が「でも、爺や親父は、どうすんだよ?」

というと、爺は哀しい決意のこもった笑みを浮かべて、

「私たちは私たちのやることがあります。あなたのすべきことは逃げることでございます。」

それに対して俺が「で、でも、みんなだけ戦って俺だけ生き残るなんて、そんなこと…」と言うと、爺は哀しみと慈しみの入り混ざった笑みでを浮かべ、「ありがとうございます。あなたのその優しさに、私は救われました。今度は私があなたを救う番です」と言ってから、目にも留まらぬ速さで、俺に電撃をうちこむ。

俺の世界が傾いて、暗転して、消えた。

 

 

 

「おいゼウス!どういう事だ!イレギュラー因子は排除したと言ったではないか!あれは嘘だったのか!?」と、三叉の鉾を携え、程よく日に焼けたハンサムな男が怒鳴りつける。

「いいやポセイドン、確かに焔の破壊竜(バハムート)を送り込み排除したはずだ。ハデスからもそう聞いている。」ゼウスと呼ばれた白い髭を十センチ程たくわえた威厳のある初老の男は答える。

「とにかく!一度冥界に行くぞ!」ポセイドンと呼ばれた男は居ても立っても居られぬ様子で言い、ゼウスもゆっくりと頷いて肯定の意思を示す。

そして2人が冥界で見たものは、壁に縛り付けられ、神術によって封印されたハデスであった。

ゼウスは怒り狂い、術式を即座に走査し、その命令言語が北欧神話の神によるものである事を断定する。

「北欧…オーディンめ…」ゼウスは奥歯をギリリと噛み締める。運命を示し、長針と短針が常にⅫを指しているはずの時計の針は、11:10を示していた。

運命は、北欧の神々の手によって今、狂わされることとなったのである。

そして物語は始まる。

 

 

 

壱章・覚醒

 

時は人界暦3652年。

場所はとある埃っぽい廃工場。

そこで、いかにもマッドサイエンティストな、年齢不詳性別も不詳な謎多き人物が、下品な声と口調でブツブツ独り言を言いながらこれまた謎の機械を操作している。

「これをこうして。」

青白い火花が散る。(軽い粉塵爆発が起きる。)

「あれをああして。」

機械についている赤いライトが不規則に点滅する。」

「それをそうして。」

ドン、という不穏な音がする。

「どこをどうすんの。」

「知らないよ‼︎」と律儀に突っ込んだのは、マッドサイエンティストの周りにいた下っ端の一人である。

マッドサイエンティストの趣味なのか、全員センスが悪い目出し帽をかぶっている。

「センスが悪いとか言うんじゃないわよ、作者‼︎」

だってそういう設定で固まっちゃってるし…

「設定とか言うんじゃないわよ。」

だって…それに。

「それに?」

その目出し帽、シ◯ッカーそっくりじゃん。

「はっ!それはそっちが固めたせっ…」

せっ何かな?バッドサイエンティスト君。

「うっ。そ、それより、できたわよ。」

逃げた逃げた〜〜。

「うるっさいわね〜ちゃんと小説として成立させなさいよ。ここ、崩壊寸前よ。」

へいへい。

と、今まで無数のコードにつながっていた黒い球体(ガ◯ツ)が、

「ふざけないでってば‼︎」

半分に割れた。

「無視!?」

中には若い男が丸まって入っていた。

「アァァァああああ!」

 

 

「アァァァああああ!」

変な叫び声が聞こえる。うるさい。

目が開く。眩しい光が目を刺して痛い。

安らかな眠りを妨げられた怒りが燃え上がる。

そして、

俺の怒りの発露たる紅蓮の炎が舞った。

 

 

Magical special forces

略してMSF(魔術師団特殊部隊)は、魔術師などが起こす、この世の物理法則に当てはまらない事件のための警察のような組織である。

人界歴3652年15月5日

MSFに、ガスが通っていないはずの廃工場が、突然爆ぜたという報せを受けて出動した、総隊長兼であり、第一分隊長でもあるサラが率いる、部隊が現場で見たものは

大量の灰に埋もれた、朽ちた服だった布を局所的に纏った男だった。

 

 

目がさめる。

見覚えのない天井が見える。ほのかに良い香りがする。

そこで初めて、横から女が覗き込んでいるのに気づいた。

ここは、どこだ?俺は、何を?

そうだ。思い出した。あの変な奴らを一瞬で消し炭にしたんだった。

でも、その前は?

謎が謎を呼ぶ中、俺の顔を覗き込んでいた女が話しかけてきた。

「気がつきましたか?ここはMSF本部基地です。

あなたの名前は?私はサラです。」

なまえ

俺の名前。

なんだっけ?そもそもそんな物があったのかどうかも思い出せない。

「思い出せないんですか?」

という質問に、コクリと頷くと、

「博士〜〜ダメです。顔認証はどうですか?」

「引っかからん。一体そやつは何者じゃ?」

と答えた博士というらしい老爺の顔を見た時、なぜか懐かしさが心の中にあふれ、脳裏に紅白に塗り分けられた球や、青ダヌキを引きずる、

博士と瓜二つの顔が、

浮かんで、消えて…

視界が反転した。

 

 

 

保護した、重要参考人の男が、博士の顔をみて倒れた。

反射的に受け止めて、

「どうしましょうか、博士…」

と問うと、

「とりあえず、身体が不安定なようじゃから、健康状態その他諸々詳しく調べた方がいいじゃろう。

暴れられても困るからのう。麻酔をかけよう。

丸一日は寝ているじゃろう。」

「そうですか。」

「小一時間ほどで終わるじゃろう。」

「はい…」

 

 

 

 

約1時間後、ワシは仰天した。

「な、なんと!?」

「どうしたんです?博士?」

こたつに入ってミカンを食べているサラが、ゆったりとした様子で聞いた。

それと対照的に、博士が驚いた様子で、

「これを見ておくれ‼︎」

と、手に持っていた資料を見せる。

「えっ‼︎酸素運搬物質が、鉄じゃなくて、銀!?」

「そうなんじゃ。他にも人間とは違うところが…」

「あれ?俺なんで寝てたんだっけ?」

その声を聞いてわしは戦慄した。

(丸一日寝てるんじゃなかったんですか‼︎?)

(そのはずじゃったんだが……)

サラと目線で会話していると、

「あれ?サラ?博士?どうかしたか?」

「いやはや、お主急に倒れてな。疲れとったんじゃな。」

「そ、そうですよ〜。」

となんとかごまかし、

「ところでお主、いいガタイをしとるのう。

これのテスト被験者になってはくれんか?」

と、博士が投げたのは、銀色の、不思議な形の箱。

「これはなんだ?」と男が聞いた。

と、突然サラが尻に下げていた黒い箱が喋り出した。

「a13ℓ254で、不審な爆発を確認。

大至急向かってください。」

「了解。」とサラが答える。そして無線を切ってから、

「早く行かなきゃ。」

というが早いか、「来れ、我が守護霊よ」

と唱えたのに応えるように、

冷気からなる白いもやが集まり、

凝縮して、氷で出来た、純白のユニコーンになった。

「こやつも連れて行ってやれ。」

と博士が言う。

「とはいえ、この子は2人乗りできませんよ?」

などと話していると、不意に男が、

「来れ、我が守護霊よ」と唱えた。

すると、紅蓮の炎が巻き起こり、集まって、ユニコーンになった。

サラはそのことにおののいた。

だが…

「準備はいいですね?どんな指示でもきちんと従うんですよ。」

ユニコーンは、触れる者をも凍てつかせるほどに冷たかった。

 

 

 

 

サラは、ユニコーンの上で考え込んでいた。

守護霊召喚術は、高等で難しいからMSF隊員以外に使える人はこの国にはいないはず…

ならあの男は一体……?

 

 

 

 

「着きましたよ。」とサラに言われて我に返った。

ユニコーンは初めて乗ったと思えないほど馴染み、意のままに走った。

「しっかしよくついてこられましたね。割と飛ばしたんですけどねぇ。

「いやいや、もう、必死、だっ、たよ。」

息も絶え絶えですねぇ。そんなので大丈夫なんですか?」

と不敵な笑みを浮かべたサラに

「大丈夫だよ‼︎」と答えると、

「そんなに意地にならなくてもいいんですよ?

そうでした。突入する前にそれ、起動させておいたほうがいいですよ。」

と、腕に巻きつけた、博士にもらった箱を指す。

「そうだ、これは一体何なんだ?」と、結構気になっていた疑問をやっと聞くと、

自分の魔力を実体化して、鎧にするための触媒です。」

「どうやって起動するんだ?」

という問いに答えて、サラが、その方法を教える。

「そのレバーを上げて、ベルトについてるメモリーを…」

そして、俺は、銀色の十字架を基調とした鎧をまとった。

「出来たようね。じゃあ行くわよ。」と言ってサラと共になんの変哲もないバラックへと歩き出す。

中は案外広いなーなどと思っていると、

目出し帽をかぶった男たちが、束になって襲い掛かってきた

 

 

 

 

(あぁー危なかった。もう少しで灰にされちゃうとこだったわ。

そんな死に方絶対イヤよ!)

マッドサイエンティストは、男に殺されかけた時、

1人だけ逃げて、今いるバラックに避難したのである。

そして、謎の薬を火にかけていた。

だが、またも失敗である。

薬液が火を噴き、爆音が周囲の空気を震わせる。

(まずいわね。MSFの連中が嗅ぎつけて、来ちゃうじゃない。

まあ、仕方ないか。雑魚どもに時間を稼がせるか。)

そして、素早く術式を組み立てて、どこかへとワープした。

 

 

 

 

 

サラは実際、とても強かった。氷で出来たレイピアで敵を刺し貫いていたかと思えば、

氷の鎧で敵の攻撃を受け流し、バランスを崩した所を蹴倒して別の敵にぶちあてる。

またたく間に敵は全員伸されていた。

と、俺は微かな違和感を感じた。その発生源に近づくと、魔力が流れた痕跡があった。

それに沿って魔力を流すと、テレポート用とみられる術式が、再構成された。

 

 

 

 

 

バラックには、ザコしかおらず、あっけなく全員倒せた。

気絶している大勢の覆面男たちをどう処分したものかと思っていると、

一緒に連れてきた男が、バラックの奥へ、スタスタと歩いて行く。

そして、不意に止まったかと思うとしゃがみこんでなにやらゴソゴソとしていたかと思うと、

麻色の魔法陣が、顕われた。

「えっ!その術式は?」と問うと男は、

「ここに居た誰かが使ったんだろう、転移術式だ。」

「この先はどこへ?」と問うが、

「わからない。」と、答える。若干残念ではあるが、仕方ない。と思ったその時、男が続きをいう。

「けど、術式の精度から見て、大物がいるだろう。」

(なんで、なんでこいつは、私が努力をしても出来ないことを飄々とやってのけるの⁉︎)と思うと、男が、

「嫉妬は弱い奴がすることだぞ」と言う。

(何よ、人のこと馬鹿にしてるの?)という怒りは吹き飛んだ。

なぜなら、男の眼が一瞬、蛇、いや竜のそれのように見え、また、男が今した事が、できる人がほとんどいない、読心術だという事に気付いたからだ。

(今のは…表情からなんてことはないわよね。ポーカーフェイスなんてとっくに習得してるし。なら、こいつは何者なの?)

「そんなこたあ知らねえが、どうすんだ?言っとくが、この魔法陣はテレポートした先にも出てる。

敵さんにバレないウチに行かねーと罠だらけのとこに突っ込むことになるぞ?」

と、言ってくる。

「わ、わかってるわよ!じゃあ突撃よ。」

そういってわたしと男は、術式を使ってまだ見ぬ大物(?)の所へ転送された。

 

間章・壱

少年は怒りで震えていた。

父さん、母さん、帰ってきてよ。

どうして、どうして2人を殺した⁉︎魔術師‼︎

 

弍章・予兆

転移した先は、金属の板を組み合わせて作られた、小さな小屋だった。

すると、マッドサイエンティストと、下っ端ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ(もちろんモブ)が現れた。

俺の攻撃!敵全体に1ダメージ‼︎敵は倒れた。

「じゃなくって!」と、マッドサイエンティストは急にさけぶ。

「なんで私達が無条件で負けなの⁉︎というか、ふざけないでよ⁉︎」

だってその反応を見るのが一番の楽しみなんだもん。やめられるわけないじゃんか。

「心がねじ曲がってるわね……」

それを見て俺が、「あいつ、1人で喋ってんぞ?どうなってんだ?」とサラに聞くと、

「人体改造手術をしようとしたって前に逮捕された時にデータが取られてますね。」

「???」と、俺が理解できていないと顔から読み取ったのか、

「脳も改造しようとしたらしいです。」と、言う。

「しようとしたってのはどういうことだ?」

「失敗したらしいです。その後遺症がまだ残ってて、幻聴が聞こえているのかもしれません。」

「そうなのか。」

そうこうしていると、地の文との会話が終わったらしいマッドサイエンティストが、

「そうだったわ!どうしてここが分かったの?」と、俺たちに問いかける。

サラが答える前に俺が自分のこめかみを指して、

「まあ、ここの違いだな。」というと、サラも

「もう年貢の納め時ですよ?無名無脳のアラフォーおじさん★」と、追い込む。

俺も今気づいたような顔をして、

「ま、まさか、アラフォーのおじさんであの口調って……」

「うっ。バレてしまっては仕方ないわ。そうよ。オカマなのよ。悪い?」

「開き直った。というかそんな下手な発言したら(読者様の)批判が殺到するような難しい問題振るのやめてくれよ。」

と、答えると、

「ナニヨ!オトコナラハッキリシナサイヨっとっと。また発作だわ。」

「なら教えてやるよ。俺はな……」

「何よ‼︎」

「反吐が出そうなくらいオカマが嫌いなんだよ‼︎」

嫌いなんだよ‼︎なんだよ‼︎ナンダヨ‼︎ナンダヨ!

グサササササッ!

「そんなグスンそんなにはっきり言わなくてもグスンいいじゃない…」

「あれあれ泣いちゃったのかな?それに、さっきと言ってる事が違うんだけど?」

「何よ‼︎舐めてんじゃないわよ‼︎」

「誰がてめえなんかなめんだよ⁉︎気色わりー‼︎」

「頭にきたわ‼︎」

そう言うとマッドサイエンティストは、腰に差していた剣を抜き、襲い掛かってきた。

サラがインターセプトして剣をレイピアで受け止める。

しばらくの間、打ち合っていたが、男女(?)の差は大きく、サラは、レイピアを弾かれてしまった。

マッドサイエンティストはとどめとばかりに剣を逆手に構え、大きく振りかぶり……

 

鮮血が舞った。

 

 

 

「あれ?生き…てるんですか?」

そこで私は、全身に生温かい液体をかぶっている事に気づいた。

「ッ⁉︎」

視線を上げると、男の背から剣の切っ先が生えていた。マッドサイエンティストが剣を抜くと、大量の血を吐いた。

「わ、私を庇ったんですか?」

「さあな。だが俺にも一つだけわかる事がある。」

「???」

「女は戦うもんじゃない。護られるもんだ。そこで少し休んでろ。」

その言葉が私の耳に届くと同時に、紅蓮の炎の壁が、私と男の間に出来た。

 

 

 

 

「さて、これからは楽しい楽しい殺し合い(ゲーム)の時間だが、その前に尋問だな。

まあ、場合によっちゃあ拷問になるんだけどね。

なぜ俺を目覚めさせたんだ?答えろ。」

「嫌だと言ったらどうするつもり?」

「あんたも物分かりが悪い。場合によっちゃあ拷問だってさっき言ったろ?」

「分かったわよ。

“昔、白銀の騎士ありけり。その騎士危機に陥りて眠らん。

目覚めし時、その騎士、勧善懲悪の世界を顕現させん”

というか伝説があるのよ。あなたこそがその騎士なの。さあ、私の元へおいでなさい。」

「答えはノーだ。」

闘いの火蓋が切って落とされた。

 

 

断章・弐

 

 

「昔々あるところに魔術師を“優れている”とし、それ以外を“下等”とする国がありました。

そこに、両親とともに楽しく暮らす1人の少年が居ました。

彼の家は特に裕福ではありませんでしたが、1番大切なもの即ち平穏と幸せを手にしていました。

あの日までは…

ある日、少年の家に、何人かの男達が、鍵が外れるカチッという音とともに押し入りました。

「すいませ〜ん。お金や生活に必要なもの等々恵んでくださいませんか?」

リーダーらしい男が、下品な口調でヘラヘラ笑いながら要求しました。

「断る。この家に強盗にくれてやる物など無い。」

父親が拒否しました。

「あれぇ〜〜俺らは困ってるだけだから助けて欲しいだけなのになぁ〜それに」

と、男の顔から笑顔が消えて、代わりにその手に炎が宿りました。

「この通り俺たちは魔術師なんですよー」

少年の国では、魔術師に魔術師でない者が逆らった時には魔術師が直接裁いても良いことになっていました。

「さーあて反逆罪の処罰は何にしようかな?」

「それだけは、おやめください。」

母親が懇願しますが、それも虚しく、

「じゃあ二人とも死罪だ。」

そう言って男は両親を灰にしてしまいました。そして…

「あーれ割といい男の子じゃねーか。」

男たちは、少年を攫って、闇商人に売り払ってしまいました。

それから10年ほど経って、少年はついに反乱を起こしてその国を滅ぼしたのでした。

おしまい。」

「もう夜遅いですから寝なさい。」今さっきまで孫に読み聞かせをしていた老婆が言いました。

「わかったーおやすみー」孫はそう言ってベッドの上に横になりました。

老婆は孫に掛け布団をかけて自分も潜り込む。

そして2人は深い眠りについた。

 

参章・顕現

いやあやっぱり丸腰で手負いの状態で闘うのは少しキツイな。とはいえやるしかないよな。

「うおおおお!」「はああああ!」

マッドが振り下ろしてきた剣を左のコテで受け止め、右腕で殴る。一瞬相手がひるんだ隙に連撃を打ち込む。しかし相手もなかなかのもので俺の右肘に左手を、右拳に右手を添えて、勢いを受け流して投げ飛ばす。

「カハッ!」と、痛みにうめいている間に、剣を逆手に持って刺そうとする。

それを、地面を転がって辛うじてかわし、再度立ち上がると、

「力はいらぬか?そやつに打ち勝つ力はいらぬか‼︎」と、力強い男の声が聞こえた気がした。。それにすかさず、

「いる‼︎よこせ‼︎」と答えると、「その覚悟、とくと見た。」という返答が聞こえて、

背中に一対の翼と、右手に炎の渦が巻き起こり、渦が消えると、一振りの太刀が顕れた。

お互い驚いたが、両者すぐに立ち直り、戦闘を再開する。マッドも強いが、俺は翼のおかげで上からも攻撃できる。刃が見えないほどの速度での打ち合いは、俺が制した。そして、トドメを刺そうとしたときに、マッドが、

「待って、最後に言いたいことがあるわ。」

「聞こう。」刃はすでに止まっていた。

「お前の弱点はその甘さだ。」煙幕が吹き出る。逃げられた。つんざくような笑い声と共に声がする。

「名前はわからなかったけど、顔は覚えておくわ。また一戦交える日を楽しみにしているわ。

「クソッ」毒づくがもう遅い。今更のように腹に激痛が襲ってきて、俺は気を失った。

 

 

 

 

炎の壁が消える。私は男に駆け寄った。

炎の壁が消えた瞬間、男の髪は紅かった気がした。

そして、応急処置をしていると、救援が来て、私と男は救急車に乗って基地に戻った。

 

終章

基地に戻った俺は、手当てを受けてから衝撃の事実を知った。

 

 

 

 

「何⁉︎男の声が聞こえて太刀と炎の翼が出たじゃと⁉︎」

「あぁ。あんたが作った鎧の一部なんじゃないのか?」

「お主が万一さらに危害を加えたらまずいからのう。攻撃に転化できるような機能は全て切った。

しっかし〜お主、もしかしてもしかするのか?」

「何がだよ。」

「余談じゃが、ある時、ある所に、善に帰属し、最強と言われた7人の騎士達がいた。」

「関係あるのか?」

「聞けばわかる。

その騎士達は各々同じ武器職人に、最強かつ、能力(アビリティ)をもった、刀剣を作らせ、彼らは、その剣を振るうようになってから、更に強くなり、それらの刀剣はまとめて七聖剣と、彼らは七聖剣士と呼ばれた。」

「そうなのか。」

「互いに争うこともしなかった彼らじゃが、唯一勝てないものがあった。

なんじゃと思う?」

「え…?なんだ?」

「寿命じゃよ。いくら七聖剣士といえど、生身の人間なのじゃから老いることは止められなんだ。

自らの死期を悟り、もう聖剣を振ることすらままならなくなった彼らは戦友に一つの術をかけた。」

「術?」

「その強すぎる力が悪しきもの達に渡ってはならない。

そこで全員が同じ結論にたどり着いた。

自らの最後の生命の灯火を燃やして、自分で、「剣を所持する基準」を剣にインプットして、その条件を満たす者を持ち主とし、その者へと転移し、その者が死ぬと、またロストし、条件を満たす者が現れればまた転移する。過去の文献にも幾度となく登場しておるぞ。

また、歴代の持ち主の望んだ力が付加されておる。

その術は、複雑を極めたらしい。」

「でも複数の剣が同じ人に転移したりしねえのか?」

「それはない。他の聖剣を持っていないことが持ち主の条件に入っているからの。」

「そうか。」

「そして、七聖剣士の中に職人に太刀を頼んだ者がいた。

銘は。竜の血が流れている者に転移する。竜が絶滅してしまったためにすでに封印されたと思われていた。そしてその刀に付与された力が、紅蓮の炎を操る物と、それでできた翼で大空を自由に飛翔するという物なのじゃ。」

「そ、それってもしかして…」

「そう。お主の刀じゃ。」

「じゃあ俺は人間じゃないのか⁉︎」

「それは違う。完全に竜だったら獣のような姿になっていただろう。」

「そんな、ことって…」

「あるのじゃ。これで全て辻褄が合う。

お主の血がヒトのそれとは違ったこと。デモ版なのに剣を受け止められるほど鎧の出力が高かったことも。」

「え…え?」

「ワシが作る鎧は装着者の一定の割合の魔力を定時回収して使用する。使用者が相当な量の魔力を持っていない限り、あんな芸当は出来んはずじゃ。」

博士はもう一つの事実を突きつける。

「それと、鏡を見てこい。」

「なんで?」

「いいから。」

しばらくして、「ギエーーーーーッ」バタン

長い絶叫に続いて人が倒れる音がした。

 

 

 

 

博士に促されるままに鏡を見ると、

自分の眼が、蛇、いや竜の眼になっていた。

「ギエーーーーーッ」叫んでそのまま気絶した。

 

 

 

 

目を覚ました俺が見たものは、『ドッキリ大成功』とかいたプラカードを持ってお茶目に笑っている博士の顔と、少し見慣れた白い天井だった。(こんなこと、前にもあったよな。)と一瞬考えてから、深ーく息を吸って、

「おい‼︎なんだその茶目っ気たっぷりの反省の色0パーセントの笑顔は!

こちとらいまの話のあとだから竜の眼が発動したかと思ったろうが!」

「そこまで驚くとは思っておらなんだ。すまない。」クックック

「そうか…ってまだ笑ってんじゃねえか!やっぱ反省してねえだろ」

「もちろんじゃ。じゃが、竜の眼はおいおい覚醒するはずじゃよ。」

「うーわーなんかやだな。」

と、そこで、いままで黙って聞いていたサラが口を開く。

「これから行くところとかあるんですか?」

記憶もない。まして目覚めて数時間しか経ってないのに、行くあてなどある訳もなく、首を横に振る。

「やっぱり。あの、よければMSFに来ませんか?優秀な方のために私の推薦で養成学校に編入出来ますし、独り身の方には寮もあります。どうですか?」

サラは窺うように俺の顔を覗き込む。

「助かるよ。ありがとう。これからよろしくな。」

「良かった。有望な新人ゲットです‼︎」

「世話をかけるな。」「そんなことないですよ〜」「それなら名前が必要じゃな。」「あの炎すごかったんで、西欧神話にちなんでロキっていうのはどうですか?」「それいいな‼︎」

「 」「 」「 」

人間たちの日常は、緩やかに、けれども確かに等しく流れていく…

To be continued

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ボカロ曲の歌詞、わかりましたか?そして楽しんでいただけたなら幸いです。ノート3冊分以上の原稿をこのシリーズでアップしていきますので、温かく見守って下さい。

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