「やあ。……よく無事で帰ってこれたねぇ」
「勇儀、これが無事に見えるか?」
「なに、ただ服がボロボロになっただけで目立った外傷はないじゃないか」
「そ、それはそうなんだけど……」
日が暮れ始めた頃、鬼の里に帰ってきた。そして里の入り口には勇儀がいた。
どうやら待っていてくれたらしい。おれが帰るのを待ってくれるなんて、滅茶苦茶優しいではないか!
そして現在、おれと勇儀は家へ帰る途中だ。
「で、天狗達の様子はどうだったかい?」
「ああ、書状を渡した後、首を切られかけたよ」
「ほうほう。まあ、妥当な対応だろうね」
「ほぉ~う、それをわかってておれに行かせたと言うことかな?」
「やっぱり頭脳明晰で物事を的確に判断できる熊口に任せるのが適任だとおもってねぇ」
「あ?そ、そうかぁ?やっぱおれってそんな風に見えちゃうか。やっぱりな、自分でも薄々気付いてたんだ。」
「そうさ(萃香のいうとおり滅茶苦茶ちょろいじゃないか…………これをうまく使えばまた熊口と戦うことができるかも…………ふふ)」
「うっ……なんか今悪寒がしたんだけど」
「気のせいさね」
いや、絶対今した。一瞬勇儀の目が獲物を刈る獣の目をしたのをおれははっきりと見た。
「ま、取り敢えず今から宴会だ。ほら」
と、勇儀の指差す方をみれば広場で鬼達が酒を飲み交わしている姿が見えた。
「え、帰ってるんじゃなかったのか?」
「妖怪の山乗っ取りの前祝いさ、ほら彼処の方に萃香と翠もいるよ、行ってきな」
「ん、勇儀はどうするんだ?」
「ああ、私は今から鬼子母神のところへいって報告しに行くよ」
「はあ、面倒だな」
「ま、それが終わればすぐに来るさね、さ、萃香がこっちに気付いたようだね。」
「生斗!おかえり!」
「うお!?萃香」
萃香と結構な距離があったと言うのにいつの間にかおれの後ろにいた。うーむ、やっぱり萃香の能力は便利だな。小野塚と道義がかわいそうになるな……
「じゃあな、勇儀ぃ」
「ああ、またすぐに来るよ」
そういって勇儀は鬼子母神という鬼全ての母とやらのところへ向かっていった。
「ほら、おかえりの印として私の酒をあげるよ~」
「おいおい、萃香、お前の酒は洒落にならんでしょ」
「あれぇ?翠はバリバリ飲んでたんだけどねぇ」
「え!?」
翠が?咄嗟に翠がさっきいた場所を見てみる。
…………うん、鬼達の間接をきめていらっしゃる、ありゃあ完全に酔ってるな。
翠は酔うと誰彼構わず間接をきめてくるからな。初めて翠が酔ったときのことはよく覚えている。おれだけじゃなく諏訪子と神奈子の腕まできめたからね、あいつ。
しかも尋常じゃない力できめてくるから下手すれば折れるからな……
「あー、男衆どもだらしないねぇ………まあ、私もきめられたときは正直焦ったけど」
「こらぁー!かかってこんかい野郎共がぁ!!!お前らキ○タマついてんのかボケナスぅ!」
「ありゃ完全に酔ってるな、口調が完全におかしい」
「生斗はあんな悪酔いはしないのにねぇ」
「おれとあいつを一緒にするな」
おれは酒が弱い方だから飲んだらすぐ寝てしまうからな。ん?他の主人公とかは悪酔いとかして大暴れとかして面白いって?悪かったな、主人公体質じゃなくて!!
「んじゃ、この度数がよっっっわぁ~いほぼ水と大差ない酒で乾杯しようか」
「…………お前らからすればそうだけどおれにとっちゃ丁度いいんだよ」
「まあまあ、ほら」
「ん、あんがと」
盃を貸してもらい、萃香にお酌してもらう。うん、見た目幼女と飲むのは犯罪くさいが、今はそんなものはない。気にせず飲もう
「んじゃ乾杯」
「乾杯」
次の日、宴会後にも関わらず鬼達は妖怪の山に総攻撃をしかけた。 因みに翠は案の定二日酔いになったのでおれの中で寝ている。
まあ、感想を言うと圧倒的だったな。速さと団結力で防衛をしていた天狗達にたいして、鬼達はそれを全て力でねじ伏せていった。大天狗とやらも出てきていったが、それも鬼の四天王達に呆気なくやられていた。
おれは傍観してただけだからよくわからなかったけど一番善戦してたのは射命丸だったんじゃないかな。
唯一鬼と渡り合えてたし…………
「どんまい、射命丸。」
「あ、変態!助けなさいよ」
そして現在、鬼達諸々天魔のいる屋敷にいったのを確認した後、射命丸が木に引っ掛かっているところに来た。
「変態じゃないっていってるだろ。つーか一人で降りられるだろ」
「力が入んないの!ほら、この私が頼んであげてるんだから変態は大人しく従っていればいいの!」
「…………」
カッチーン、こいつめ、言わせておけばいい気になりやがって。目にもの見せてやる。
ということで射命丸の周りに無数の霊弾を生成した。
「なっ!?」
「さて、射命丸君。今ならこの私を変態といったことを許してあげないことはない」
「だ、だからなによ!」
「まあ、許してあげないこともないが…………『目上の人』にたいしての礼儀を伝授させてもらおうか」
「ふん!人間の言うことなんてだ、誰が耳を貸すもんですか!」
「いつまでそうやっていられるかな?」
実際おれも目上の人に対しての礼儀はなっちゃいないが、たぶん大丈夫だろう。おれがこれまでツクヨミ様にたいしての礼儀を教えてやればいい。
それから数時間、鬼達が天魔の家から撤収するまでおれの個人レッスンは続いた。うむ、我ながら上出来だ。やや洗脳ぎみになったけど
「わかっかね?射命丸」
「はい!熊口先生!目上の人には敬語を使う、そして目上の人だからって頭をペコペコするだけでなく、時には図々しくすることが大切ということですね!!」
「そのとおり!」
うん、ちょっとやり過ぎたかな?昔永琳さんから習った洗脳術をやってみたけど効果覿面だったな。
自分でも驚くほどだ。おれにはこんな特技があったなんて!
「熊口先生!そろそろそこらじゅうに張り巡らされてる弾幕を解いて私を助けてもらえませんか?」
「お、それもそうだな」
そういっておれは霊弾を消して射命丸の服に引っ掛かっていた木の枝を折って射命丸を下ろした。
そうした瞬間
「いだっ!?」
急に頭に衝撃が来た
「ばーか!あんたの言うことなんか誰が聞くもんですか!一昨日来やがれ!」
そう、射命丸がいい、物凄いスピードで飛んでいった。
「……………………」
んーと、これは……
「や、やられたあぁぁぁ!!」