東方生還録   作:エゾ末

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7話 妖怪の山へ行け?無理です

「妖怪の山?なにそれ」

 

「ああ、なんか天狗が支配する山らしくてね。面白そうだから乗っ取ろうって事になったのさ」

 

「鬼の思考回路がよくわからん。なんで面白そう=攻めようって事になるんだよ」

 

「だって天狗だよ?強そうじゃないか。」

 

 

いつもの縁側でだらだらしていたら急に萃香が出てきてこんな話をしてきた。やっぱり萃香の能力はチートじみてるな。因みに萃香の能力はおれが能力を教えたときになぜか教えてくれた。

 

 

『密と疎を操る程度』の能力。要するに物を萃めたり散らしたりできる能力らしい。自分の能力はなるべく教えない方が良いと言うのに萃香はウキウキとした表情をしながら色々見せてくれた。

まず、自分を散らしたり巨大化したりでっかい岩を萃めて俺に投げつけたり、きわめつけにはブラックホールみたいのを作り出して皆を引き付けたりしたりもしていた。

 

はっきりいって万能過ぎますね、これは。なんだよ俺の能力、リスクを負わなきゃ強くなれないとか……

まあ、別に不満がある訳じゃ……やっぱあるな。かなりある。

 

 

「それで?それをおれに話してなんになると思ってるんだ?」

 

「うん、大有りさ。生斗には妖怪の山へ行ってこの書状を届けてもらう」

 

「…………行くとおもう?」

 

「これはもう会議によって決まったことだよ」

 

「鬼の会議なんてどうせ『妖怪の山面白そうじゃね? 攻めようぜ攻めようぜ! いいねぇ!』的な感じだろ」

 

「…………流石にそれはないよ。ちゃんと四天王と鬼子母神とで決めたことさ」

 

「はあ?茨木さんも賛成したのかよ」

 

「説得するのに時間がかかったよ……まあ、してたのは勇儀なんだけどね」

 

「で、なんでおれが妖怪の山なんて名前からして恐ろしそうな所へ行かなきゃいけないんだよ」

 

「いやぁ、ここらの鬼は強いやつが現れると目的を忘れて暴れまわるようなやつしかいなくてね。そこで冷静沈着で物事を的確に判断できてグラサンがとても似合う生斗様に頼もうって事になったんだけど」

 

「お?おう。そうかなぁ?おれってそんなふうに見えちゃう?そうかぁ、おれってそんなふうにみられていたか…………よし、良いだろう!この書状を妖怪の山へ持っていってやろう!」

 

「うんうん、天魔ってやつに渡してきてねぇ(なにこれ、ちょろすぎる!)」

 

 

よし、このグラサンが良く似合う冷静沈着なおれがこのミッションをなんなく遂行してやるぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しまった」

 

おもいきって飛び出したのはいいけどちょっとやっちまった感があるな。

まず翠を置いてきた。そして食糧がない。妖怪の山への地図は萃香から預かった手紙と一緒にあったので辛うじて大丈夫だった。

戻ろうか…………でもこの地図によるともう着いたんだよなぁ。後は天魔って言う天狗を探せばいいんだけど……

 

 

「うーむ、まず天魔ってどんな奴なんだろうか……」

 

「天魔様はこの妖怪の山、及び我々天狗界のトップだ。」

 

「うん、ご丁寧にどうも」

 

「礼には及ばん、どうせすぐに消え行く者のなんてな」

 

「そうかそうか。……まさかとは思うけどおれの背中に突きつけている剣をどうするのかな?」

 

そう、今現在ちょっと面倒な状況だ。急に後ろからおれの独り言に介入してきたと思えば剣を突きつけてきたんだ。なんだよこいつ、背中に翼なんて生やしおって。なんかかっこ良さそうじゃねーか

 

「侵入者には容赦するなと仰せつかっているのでな。悪く思うな」

 

「はあ、なんて攻撃的なやつなんだ。…………けど、

 

 

 

おれと剣術で勝負するのはちょっと危ないんじゃないか?」

 

「ふん、ぬかせ。もう勝負はついてい…………っ!」

 

ずっと後ろで構えられるのも気分が悪かったので取り敢えず爆散霊弾を牽制で放ってみた。そして避けられるかと思っていたけどまさかのクリーンヒット。まじかい……

 

「が……はっ」

 

「おいおい、まじかよ。折角おれの剣捌きを見せてやろうとしたのに」

 

「くっ……この……この私が、人間ごときに負けるなんて……あ、ありえない!」

 

「今現在負けているじゃないか。それにもう休んでおけ。もう立っておくのも辛いだろ」

 

「それは…………哨戒天狗として、の……プライドが!……許さない……、のだ」

 

「はあ、じゃあおれは行くな」

 

食糧もないから今日中に終わらせたいんだよな……

 

「な、○○がやられているぞ!」

 

「なに!?あいつは哨戒天狗の中でも上位に入るんだぞ!」

 

「あの人間がやったのか!」

 

「殺せぇ!あいつを生かせておくか!」

 

「○○の敵討ちだ!」

 

うおい、空から犬耳やら翼を生やしたやつやらが大量に来たぞ…………

まさかこれを相手にしろってことですかね?

 

 

「あ、あのぉ、わたくし、天魔という天狗を探しているのですけど……」

 

「な!?まさか天魔様の命を狙っておるのか!!」

 

「なおさら生かせておけんぞ」

 

「殺せぇ!」

 

あ、駄目だこれ。話を聞いてもらえる気がしない。

 

「面倒だけどやるしかないか…………おら、(たぶん)天狗ども、相手してやるから『一人ずつ』かかってこい」

 

「一斉にかかれぇ!!!」

 

「「「「「うおぉぉ!!!」」」」」

 

「一人ずつって言っただろうが!」

 

ああ、くそ。仕方ない。精神的にきついが七霊剣で相手してやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、はあ……やっと終わった」

 

「くっ……殺せ」

 

かなり時間がかかったが全部撃破することに成功した。代わりにすんごい疲れた。体力的にも、精神的にもな。

 

「ま、まさか傷一つつけられないとは……」

 

「ふん、刃の部分を潰してやったんだから感謝しろ」

 

「なっ、まさかハンデまであって負けたと言うのか……」

 

「く、我が生涯に、取り敢えずたくさんの悔いあり……!」

 

「おい、なんかそれどっかで聞いたことあるぞ」

 

しかも悔いあるんかい!

 

「取り敢えずおれは行くぞ。さっさとこの手紙を渡して帰りたいんだ」

 

「くっまて!…………くそ、動けん」

 

「そこで大人しくしてな」

 

「それは貴方よ」

 

「ぐえっ!?」

 

 

急に首辺りに物凄い衝撃が来た。あ、これは気絶もんだわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ん~、あれ?ここどこ?……つーか腹減った」

 

「おい!天魔様の御前で無礼であるぞ!」

 

「ん?天魔って……」

 

あら、両手両足縛られてるな。つーか今、なんか読んでるのが天魔かな?なんか他の天狗より着飾ってるからたぶんそうだろう…………ってあれおれが渡そうとした手紙じゃないか。

 

「ん、……起きたか。侵入者よ」

 

「あ、こんにちは」

 

「挨拶などいらん。それよりお主に聞きたいことがあるのだ」

 

「おあ、はい、なんでしょう」

 

「この書状は鬼の物で間違えないのか?」

 

「ああ、はい。そうです。その書状を渡すのがおれの役目ですね」

 

「あの悪名高い鬼が人間なんぞにこの書状を託すとは……堕ちたな」

 

「がはははっ!天魔様の言う通りですな!」

 

まさか鬼の悪口を言ったのか?後々困ることになるぞ……

 

「さて、本題だが……これにはここの山を来週に乗っ取りに行くと書いてあるのだが」

 

あ、そのまま書いちゃってるんですね。

 

「ああ、はい、たぶんそうだと思います」

 

「ふむ、これを無効に出来ることはできないのか?」

 

「いや、無理だと思いますよ。もう皆ヤル気満々でしたし」

 

おれが里を出ていく途中とかもうお祭りムードだったし

 

「そうか……それならば仕方ない。宣戦布告と行くか」

 

「はい?」

 

「この者の首を切り落として鬼の里へ放り投げておけ」

 

「承知致しました」

 

 

え?まじかよ。

おれ、首切られちゃうの?

ちょっとまて、殺されて体が離れてたらおれどうやって再生するんだろうか?ちょっと気になるが絶対に試したくはないな……


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