東方生還録   作:エゾ末

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4話 ゴリラの嘘つき!

 

 

「編入試験は10日後らしいわ」

 

「試験とかあるんですか!?」

 

「当たり前よ、只で入れるとはおもわないことね」

 

 

 ツクヨミ様と別れてから士官学校のところまで行った後、永琳さんが編入について調べて来るまでにかかった時間はたったの15分。

 まさかツクヨミ様の家が士官学校の隣だったとは……しかし試験って何だよ。おれは試験と言うものは嫌いなんだ。だってほら、こう……試験って言うだけで手汗が酷くなるくらい緊張すんだよ。

 

 

「で、10日間の間貴方の住むところについてだけど」

 

「あ、そういえばそうですね。何処の公園で野宿すればいいんですか?」

 

「流石に私もそこまでは鬼畜ではないわ。

 編入までは私の家に来なさい。歓迎するわ」

 

「え?永琳さんも野宿なんですか!?」

 

「そんなわけないでしょ。いい加減そのつまらない冗談を止めなさい」

 

「はい、すいません。…………て、え?永琳さん家に泊まるんですか?!それって色々危ないんじゃ……」

 

 

 こんな美女と同じ屋根の下で暮らすなんて……おれの理性が持つか不安だぞ。

 

 

「ええ、いちいちホテルとかに泊まらせるのも面倒だし、まだ此処には慣れてないでしょう?

 丁度明日から2日間仕事が休みだから、案内してあげるわ」

 

「えぇ、悪いですよ。そんな迷惑かけられません」

 

 

 只でさえ、指を治してもらっている上に編入試験の手続きまでしてもらったんだ。これ以上、永琳さんに迷惑をかけるわけにはいかない。

 

 

「いえ、ここ最近実験とか仕事とかでストレスたまってたしいい気分転換ですることだしそんなに迷惑ではないわ」

 

 

 気分転換に男を家に泊める…………物凄く如何わしいな…………いや、永琳さんがそんな不純なことでストレス発散をするわけない!

 あ、でももし今おれが想像してしまったストレス発散法を本当にしているのなら、おれはいつでも大歓迎ですよ!

 まあ、冗談だけど。命の恩人とも呼べる人に欲情なんてするわけにはいかない。

 ん?今誰かおれの事チキン野郎って言った?

 

 

「……わかりました。永琳さんがそういうのなら、お言葉に甘えます」

 

 

 そう、欲情なんてしないのなら、別に泊まっても良いじゃないか。

 うん、そうだそうだ。それぐらいの抑制ができないでどうするんだよ。

 

 ……よし、取り敢えず洗濯係を積極的に請け負うことにしよう。

 

 あ、でもやっぱり女性と一つ屋根の下で暮らすってかなり恥ずかしいな。これまで彼女いなかったおれにとってはかなりハードルが高いような気がする。

 ……まあ、気にしないようにしよう。相手は大人だしたぶん大丈夫だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日が完全に消えた頃、おれは永琳さん家にお世話になることになった。

 やはり、お偉いさんの永琳さんの家は大きかった。

 執事みたいな人とかもいるし。これならおれ一人ぐらい泊めても問題ないだろうな。

 いや、がっかりなんてしてない。洗濯係になれなかったからってがっかりなんかしていないからな!

 

 ……そして永琳さんと別れた後、執事に連れられ、おれが一時の間宿泊することとなる部屋まで案内された。

 その後、執事から申し付けなどの説明を受けた後、おれはその部屋にはいる。

 うわ、ここも中々広い。学校の教室並みにあるぞ。

 

 でも、こんな広い部屋だと逆に落ち着かないな。

 そんなことを感じつつ、部屋の端にあるキングサイズのベッドに腰を掛ける。

 

 

「はあ、疲れた」

 

 

 そのまま、ベッドに仰向けの状態で倒れる。

 うお、このベッド柔らか!マシュマロみたいだ。マシュマロさわったことないけど。

 

 

「……なんか今日だけでいろんな事があったな」

 

 

 そしてベッドの上で今日一日のことを考えてみる。

 まず、橋から落ちて死に、何故か神に転生させられ、馬鹿なことして右の中指折れて、永琳さんに会って、未来都市に連れられてまたもや神にあって訓練施設へ手続きしに行き、こんな豪邸に泊まる事になった。

 

 一日にどんだけイベントがつまってんだよ!って大声だしそうになったが、他の人の迷惑を考え、心の中だけで留めておく。

 ほんとこれ、夢なんじゃないか?話がぶっ飛びすぎてる。

 いや、夢なら指が折れた時点で気付く筈だ。実際にかなり痛かったし。

 あ、そういえば忘れてたけどおれの中指って今どうなってんだ?

 

 …………。

 

 え、もう治ってるんだけど……指を何度も開け閉めしても全然痛みがない。副作用とかで体になにか異常がでたりとかすらない。

 ……永琳さんってほんと何者なんだ?

 まあ、そんなことは後々本人に聞けば良いか。

 それに明日は永琳さんに色々なところを案内してもらう予定だからさっさと寝よう。ああ、あんな美人と買い物なんて、明日が楽しみで仕方がない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~朝~

 

 

 おれの寝坊のお陰で予定より30分近く遅れて、永琳さんと出掛ける事になった。

 遅れたのは仕方ない、今日が楽しみであまり寝れなかったんだから。

 

 ……ふむ、時間的には前の世界の日本と同じ感じか。

 今は……9時過ぎぐらいか。

 

 

「今日は何処にいくんですか?おれ的にはゆっくり出来るところがいいんですけど」

 

「うーん、そうねぇ。本当は綿月家のところにいって貴方に綿月大和総隊長を会わせようと思ったのだけれど」

 

「え、いやですよ。行きたくないです。断固として拒否します」

 

 

 何が楽しくて会いに行かなくちゃいけないんだ。総隊長ってあれだろ?軍でも上の方の人のことだろ?絶対怖い奴だ、おれの勘がそう、呟いてる。

 

 

「あら、意外な反応ね。貴方としては未来の上司なんだし、会っといたほうがいいんじゃないの?」

 

「いや、絶対ゆっくりできないじゃないですか!おれは平凡と布団を愛しているんです。めんどくさいことを自ら起こすことなんてしたくありません!!」

 

「……とんだ怠け者ね」

 

 

 怠け者で結構!前に親から『お前の前世絶対ナマケモノ。これは確信をもっていえる』なんて言われるくらいおれは興味ないことはめんどくさがるんだ。自分でいってて悲しくなるけど!!

 

 

「じゃあ、図書館へ行きましょう。あそこは静かだし」

 

「あ、いいですねそこ。おれのためにあるようなもんですよ、図書館なんて」

 

「その理屈だと静かな場所全てが貴方のための場所になるわよ」

 

「冗談です」

 

 

 

 

 

 おれは今、あの時図書館に行くことになった事を後悔している。

 この言葉だけで大体は理解してくれるだろう。

 

 

「八意、この子がツクヨミ様がいってた子か?依姫と同じくらいだな」

 

 

 はい、何故か図書館に綿月なる総隊長さんがいたんですよ。畜生……

 

 

「コンニチハ、来週カラオ世話ニナリマス。熊口生斗トモウシマス。」

 

「はははは!そんなに緊張せんでいい」

 

「明日、大和隊長の家を訪ねようと思ってたのだけれど、手間が省けたわね」

 

 

 結局いってたんかい!!ていうかこの人でかくない?2メートルの巨体に服の上からでも分かるほどのごつごつとした筋肉。そして顔の彫りが凄い。まるでゴリラみたいだ。

 

 

「生斗君っといったかね?君には聞きたいことがあるんだが……」

 

「はあ、答えられる範囲ならいくらでも……」

 

 

 それから質問攻めされた。まあ、それくらいならまだ良かったんだけど……おれが予想だにしていなかった最悪の一言をこのゴリラは言い放った。

 

 

「どれ、どれぐらいの腕前か見てやろうではないか。外へでたまえ」

 

「ええ!!?」

 

「なに、これから訓練生となるから腕試し程度ぐらいだから。気楽にいこうじゃないか」

 

 

 このあと二時間くらいぶっ通しで組手をさせられた。腕前をみるだけじゃなかったのか?!全然気楽に出来なかったし!

 

 

 

 とりあえず今日ゆっくりする予定は見事にぶち壊れたことは確かだと言うことだ。

 畜生……明日は絶対一日中寝て過ごしてやる!

 


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