「ふぅ、やっとついたか……」
「まあな。……取り敢えずようこそ、大和の国へ」
昨日野宿をしてから次の日。おれと道義は森を出て、近道とやらを通って大和の国へ来た。
「へぇ、広いもんだな」
「当たり前だ。ここを何処と心得ている?」
「はいはい。そんな堅物キャラぶらなくていいから。
取り敢えずこの手紙誰に渡せばいいんだ?」
「そ、そんなこともわからず此処へ来たのか!?」
「だって仕方ないじゃん。急遽決まってそのまま軽い準備してから出たんだから」
「それでもここら周辺の国なら誰もが知っているお名前であるんだぞ……」
「知らんもんは知らん!おれをそんじゃそこらの常識人と思うなんてお門違いだぜ!」
「なぜ怒鳴られたのかは知らんが……いや、怒鳴りたいのはこちらの方だぞ!わが主である神奈子様の名を知らぬ無礼者など」
「ん、神奈子様っていうのか。よし、いこう」
「あ、こら!私の話を聞かんか!」
「ほらほらぁ、さっきからここの通行人が不愉快がっているよぉ~。……通行の妨げになってるのを気付きなさい。」
「くっ、宮司である私がここまでこけにされるとは……」
ぎゃはははぁ!愉快愉快!!……道義には悪いがおれはいつもいじられるよりいじる方なんだ。それなのに最近は早恵ちゃんや翠にいじられっぱなしでストレスが溜まってたんだ。なのでちょっと発散させて貰った。
……我ながら屑だと思うがおれは気にしない!
そのあとおれは道義に連れられて大和の国の奥の方にあるかなり大きい神社の前まで来た。
「さて、案内はここまでだ。後は自分で行けるだろう」
「ああ、別に案内を頼んでなかったのにあんがとな」
「ふっ、気にするな」
そしておれは門の前に立ちこう叫んだ。
「たぁぁのぉもぉぉぉ!!!!!まいねーみんぐいず生斗 くまぐぅちぃ!! 書状を持ってきたので開けてくださぁぁぁいぃ!ってぃだぁ!?」
「…………」
顔真っ赤にして額に青筋をたてた道義が無言でぶん殴って来た。
やべ、ふざけすぎた。
「くくくっ……それで?くくっ……私んとこの神社の前で奇声を発していた不届きものというのはこいつか?……くくっ……」
「神奈子様!何を笑っておるのですか!!こんな無礼者、晒し首にしてもまだ足りぬほどの事をしでかしたのですぞ!」
「まあまあ、いいじゃないか道義。そんな怒らなくても」
「お・ま・え のせいなんだからな!それよりもなぜくつろいでいる!!神の御前なのだぞ!!」
「ほう、熊口生斗といったか。なかなか肝が据わってるねぇ」
「よく言われます」
まあ、現在は無事、神奈子様の処へいくことが出来たが、実際は結構色々あった。
まず、おれが叫んだ瞬間、神社の中からめっちゃ兵が出てきておれを取り押さえようとして来た。捕まる道理もないので空を飛んでそれを回避。中から出てきた兵は空を飛べないようで悔しそうな顔をしていた。なぜかそれが滑稽だったので指をさして笑ってたらいつの間にか後ろにいた道義が抜刀して切って来た。
それに気づいたおれは霊力剣を生成して間一髪で受け止めたけど……あれは危なかった。まさか抜刀してくるとは……
まあ、そのあと神社の中から強大な神力が感じられておれ以外の皆がひざまずいた。なんなのだろうと思ってたら中から神奈子が出てきてそのまま祭壇のあるところまで呼ばれたという感じ。
「さて、ここに来たのは返事を貰えるということかな?洩矢の使者よ」
「よくご存じで。取り敢えずこの書状をお聞きください。」
そういったあと、おれは諏訪子が書いた書状を読み上げた。
「ふざけた書状だな。こんなの我らが受けるとでも?」
「道義には聞いていない。おれは今神奈子様に聞いているんだ」
「……」
「どうですか?」
「確かにふざけた事を言っているな。普通ならこんなのは破り捨てる」
やっぱりか……
「だが、最近は国攻めばかりしていて兵たちも疲弊している。少し休ませたいとも思っていたところだったんだけど」
「そ、それなら!」
なんてグッドタイミングなんだ!緊張して損したぁ
「ああ、受けてやらんでもない。しかしただそちらの申し出に応じるのではつまらないしねぇ……」
と、神奈子さんは道義を見て……
「よし、決めた!私んとこの宮司である南方道義を打ち負かすことが出来たらこの書状の件について了承してやるとしよう!!」
「「ええぇぇぇ!!!?!?」」
道義とハモった。まあ、そりゃそうだろうな……
現在おれは大和の国の中心部にある広場で道義と睨みあっている。
観客はこの国の民。殆どが『道義様~』『あんなやつやっつけてぇ』と道義コールが飛び交っている。
はあ、イケメンめ。必ずや滅してやる。
「これから模擬戦を開始する。時間は無制限。どちらかが気絶するか参ったをしたらそこで試合終了とする。
それでは!始めぇ!!!」
「ああ、くそ。めんどくさいことになったな!」
「無駄口叩いている暇があるか。一瞬できめてやる!」
そう言って道義は一瞬で消えた。
はあ、瞬間移動系の能力か。まあ、妖怪ブラザーズのときにも見せびらかすように使ってたしたぶん合ってるだろう。
そういうのは……
「とっくに攻略済みだ!」
「なっ?!」
後ろに回り込んでいたであろうことを予測し、回し蹴りを放ったら見事クリーンヒットした。
「な、道義様の瞬間移動が見切られたぞ!?」
「そんなことができるのか?!」
ふふ、皆おれが何故今のが反応できるのかというと、実は小野塚との対戦で対処法はばっちしなのだ!はっはっはぁ!
まあ、要は瞬間移動するとき、移動する場所がちょっと歪むからそれを見極めてるだけなんだけどな。今回は何処にも歪みが無かったからたぶん後ろだろうと予測したけど。
取り敢えずこの対処法のことを道義にそのまま説明してやった。
なんで態々相手に教えるのかというとちゃんとおれにも策があっての事だから気にしないでくれ
「くっ、なら私のこの剣でお前を切り刻んでやる!」
「ばーか。能力が見切られた時点でお前の負けは決定してるんだよ。」
「はあ、はあ、くそっ。何なんだいったい……」
「なんだあいつ……!?道義様が全く歯が立たないなんて……」
今、道義は満身創痍なうだ。それもそのはず、おれが出した『玲瓏・七霊剣』(早恵ちゃん命名)により両方向から繰り出される7つの剣を防ぎきれず、傷だらけになっているんだから。
「お前は自分の力を過信し過ぎてんだよ。だから自分の能力を誰構わず見せびらかした。それがお前の一番の敗因だ、道義。」
「神奈子様。申し訳ありません……」
「さて、この勝負はどちらかが参ったというか、気絶させないと終わらないんだよな」
「な、私は決して参った等しない!」
「ん、そうか」
「ぐはっ?!」
取り敢えず刃を潰した霊力剣で頭をぶっ叩いた。
まあ、死にはしないだろう。
「しょ、勝負あり!」
「「「「ワアァァァァ!!!」」」」
一気に歓声とが上がった。
「よくやった、道義よ。」
「お、神奈子様。大丈夫ですよ。気絶させただけですから。」
「見れば分かる……まあ、あっぱれだった。約束通りこの書状について了承しよう。」
「ありがとうございます。」
よし、おれの仕事は終わりだ!……後は諏訪子次第だ。
まあ、大丈夫だろう。
取り敢えず風呂に入って早く寝たい。