東方生還録   作:エゾ末

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第八話 以外と優しかったな

 

「……は!……ここは?」

 

起きたらベッドの上で見慣れない洋風な部屋にいた。

あれ?おれさっきまで妖怪と戦っていたような…………あ!そういえばあのときあの妖怪の極太レーザーをもろに受けたんだった!それにしては目立った外傷がない。確かに受ける直前おれは全ての霊力を防御に回して受け止めたがそれ程度じゃ無傷で済むはずがない。

 

「ま、まさか!死んだのかおれ!?!」

 

心の中で念じて確認してみる。…………

 

「よし、10個あるな。」

 

「と、するとなんで傷がないんだろうか……」

 

「あら、起きたの?」

 

「うわ?!」

 

考えに耽っていたせいで妖怪の接近に気づけなかった。

 

「ふふ、なんで傷がないのか疑問に思っているんでしょう?

大丈夫よ、私が治したから」

 

「は?なんで治したんだ?妖怪なら普通食うか殺すはずだけど……」

 

「貴方のような人間を見たのは初めてなの。こんな珍しいの殺すなんて勿体ないじゃない?」

 

「はは、それは良かった……でもアンタ本気を出してなかっただろ」

 

「それは貴方も一緒でしょ?」

 

「まあ、そうだけどさ。おれの場合リスクが大きいんだよ」

 

「あら、冗談でいったのに本当だったの?それじゃあ家からでてまたやりましょ」

 

「え?!」

 

「ふふ、冗談よ。外傷はないけど内臓の方はかなり痛んでいるからあまり動かない方がいいわ」

 

く、この野郎。まさか弄ばれてるのか、おれ……

 

「で、気になったんだけどここってアンタの家?」

 

「ええ、そうよ。まあ、季節が変わればまた何処か花があるところに行くけどね」

 

「へぇ、旅人か?」

 

「まあ、そんな感じよ。花があるところを転々としているわ」

 

「花が好きなんだな」

 

「花妖怪だから当たり前なんだけどね」

 

「……」

 

「なによその顔」

 

「いや、ちょっと驚いただけだ。てっきり戦闘のためならなんでもやる残虐妖怪だと思ってた」

 

「……ほんとに殺すわよ?」

 

「ごめんなさい!」

 

まあ、おれを助けてくれた辺りからそんなんじゃないのは薄々気づいてたけどな。……まあ、おれを怪我させた張本人だけどね。

 

「それじゃあ名前を教えてくれないかしら?

 

私は風見幽香。花妖怪よ」

 

「ああ、おれの名前は熊口生斗。人間さ」

 

そういうと幽香はおれをみて満面の笑みでこんなことをいってきた。

 

「熊口生斗ね。わかった。一生忘れないわ」

 

これは喜ぶべきなんだろうか?確かに美女からこんなことを言ってくれるのはかなり嬉しいことなんだけど……でもその笑顔が新しい玩具を見つけたみたいな顔をされていたら全然嬉しいとは思えない。

 

「そ、それじゃあもう日も暮れてきたしかえるとしようかなぁー!」

 

「ええ、そうね」

 

「え?!?」

 

「え?驚くところかしら?」

 

「いや、てっきりここから出られるとでも思ったのかしら?、と言われて戦闘に持ち込まれると思ってたんだけど」

 

「……それもいいわね」

 

「ごめんなさい!」

 

本日二回目の土下座!!!

 

「冗談よ、今の貴方とやっても楽しめそうにないし。それに……」

 

「それに?」

 

「デザートは後に取っておく方なの」

 

そういわれた瞬間、おれは震え上がった。

 

「へ、へぇ、でも妖怪って長生きなんだろ?そんなに待っていたらおれ死んでるかもよ?」

 

「ふふ、私を騙せるとでも思ったかしら?貴方、命を複数持っているんでしょう?」

 

「え!?なんでそれを!?!」

 

「さっきこの部屋に入る前に貴方の独り言が聞こえたのよ。もしかしてと思って聞いたけれど図星のようね」

 

「……」

 

くぅ、またしてやられた……!こいつ読心術のスペシャリストなんじゃないのか?……て今回はおれが独り言で呟いていたのが原因か……

 

 

「それじゃあまたいつか会いましょう。たぶん私あと一ヶ月もすれば他の処に行くから暫く会えないけど」

 

「はは、おれとしちゃあ命をすり減らずに済んでよかったよ」

 

「ふふ、今回は許すけど次あったときは本気を出しなさいよ?じゃないと次は本気で殺すから」

 

「……精進します」

 

 

 

この言葉を最後におれは新しい知り合いの妖怪、風見幽香と別れて家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~生斗の家~

 

 

 

「さあて、今日はさっさと寝て明日あの野郎にお仕置きしないとなぁ!」

 

「はあ、やめた方がいいと思いますけど」

 

「止めるな翠、男にはやらなければならないことがあるんだ。」

 

「ま、まさか!早恵ちゃんに性的な事をしようと……!!そんなことさせませんよ!」

 

「お前……なぜいちいちおれを変態扱いしたがるんだ?」

 

「現に変態じゃないですか!私のお尻を何回も触ってきたくせに!」

 

「あれはお仕置きだ!しかも直接触ってない!棒でケツバットを10本程度しただけだろう!」

 

「乙女に何て事を?!とんだ屑ですね!!」

 

「ああもう!ただでさえ体がくたくたなのにお前のせいで精神的にも疲れたわ!」

 

そう言っておれは毛布の中にくるまった。

 

「ちょっ、熊口さん?」

 

「…………」

 

「何無視してんですか変態!」

 

「…………」

 

「もう!早く出てきてください!」

 

「…………」

 

「え、熊口さん?」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「う、うぅ、なんで寝てしまうんですか……」

 

「…………(うん?)」

 

「……私はただ、話し相手が欲しかっただけなのに……」

 

「……(おいおい……)」

 

 

ちょっと無視したらどうなるかと思って布団の中にくるまって隙間から翠を観察していたらいつの間にか泣いていた。

 

「(まじか。これぐらいで泣くか?……普通)」

 

「うう、一人ぼっちはもう嫌……」

 

「(うわ、そういえばこいつ死んでから1度も誰ともまともに話せていないとか言ってたな。たぶんそれが関係しているんだろうか……)」

 

くぅ、人を泣かせるなんておれはなんて最低な奴なんだ……

 

「すまん!泣かせるつもりは無かったんだ!」

 

布団から飛び上がって取り敢えず翠に謝った。

そうした瞬間翠は泣き止み

 

「ふふ!騙されましたね!私の泣き真似に!!」

 

「……」

 

「凄いでしょう!」

 

こいつ……

 

「よおし!またケツバットでもするかなぁ!」

 

「やめてください、お願いします」

 

 

 

影女といい、この世界の人はみんな泣き真似が上手すぎるだろ!!


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