東方生還録   作:エゾ末

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16話 前世より長くこの世界にいるな

 

 あの事件から20年が経った。

 あのとき、Aクラスの皆はおれが死んだと思って門付近で殆どが泣いていた、正直嬉しかった。

おれのことで泣いてくれるくらいの存在だってわかったから。まあ、3分の1はもらい泣きだって言われたけどな……たぶん照れ隠しだろう、うん。きっとそうだ。因みに影女は泣いていたが、それはもう一人死んだ女子の方への涙だった。

 

 それで死んだと聞かされていたおれが門まで帰ってきたとき皆目を丸くしてたな。え?なんで生きてんの?って顔で。

 

 あとあの鬼は綿月親子で倒したらしい。

 といっても、おれの爆散霊弾によって致命傷を負わされていたから、楽に倒すことが出来たとか。

 

 

 まあ、そんなことも全てが悪かったことではない。だって能力が判明したからな。

 

 

『生を増やす程度』の能力。これは5年周期で命を増やすことができるとても便利な能力だ。

 今、ストック(命)は7つある。ん?20年間に1度も死んでないのかって? あれから1度も死んでませんよ、そんな何度も死んでたまるか。

 

 まあ、そんなことより神が言ってた綿月隊長やあの鬼をも越える能力と言ってたが、それについてはもう検討はついてる。

 ただ使う気にはなれない。いや、むしろ使いたくない。なぜなら、それにはとてつもない代償があるとわかったからだ。

 おそらく、これを使うときは本当にピンチの時だけだろう。つまり最終兵器というやつだな。

 あまり使いたくはないが……

 

 

 

 

 それじゃあ、20年の間にどのようなことがあったか話そう。

 

 

 

 まずおれは部隊長になった。すごいだろ?

 おれの下に沢山の部下がいるんだ。皆生意気だがつるんでて楽しい奴らだ。

 

 

 まあ部隊長になったことで国の南側を任されることにはなった。

 依姫は副総隊長となり、ゴリラの右腕となっている。

 あ、そういえば依姫の姉の豊姫さんは幹部だったよな。豊姫さんはいい人だ。

 よくおれらが警備をしている途中にお菓子の差し入れを貰ったりする。自分の仕事をサボって。おれもサボろうかな…………

 まあ、そんなことしたら部下に示しがつかないからしないけど。

 

 

 

 あと小野塚もおれと同じ部隊長となり、トオルは能力を活かして門の見張りを任されている。

 ついでに言うとトオルはあの影女と付き合ってるらしい。

 やめとけっていったけどトオルは聞く耳を持たず、こんなことまでいってきた。

 

 

「結構可愛いところもあるんだよ」

 

 

 そう言われたとき、おれはそんなわけあるか! って怒鳴ってしまい、初めてトオルと喧嘩した。

 

 

 それと驚きなのが、この国の皆、恐ろしく寿命が長いということだ。おれは能力で不老だから歳はとらないが、皆も20年も経っているのに全然歳をとっていないように若々しい。

 それについては穢れとかいうものが関係しているらしく、月に行けば穢れを完全に取り払われ、もっと長く生きられるとのこと。

 

 

 さて、これからが本題だ。

 今言った月に行くというのは前々から予定されていたものだ。

 その『月移住計画』が、今年の終わりに実現するらしい。

 永琳さんが前に言ってた転送装置の設計図を元に色々な事が行わられ、遂に去年、転送装置が完成して今年の末に、住民の移動を開始するといことだそうだ。

 その転送装置はどでかい半円状の門の形をしたワープゲートで、その中を潜れば目的地の月まで行けるとの事だ。

 しかし、その転送装置は見た目に反して、あまり同時に転送させることは出来ず、1度に転送出来るのは多くて十数人程度らしい。しかも、その時の装置の具合にもよっては同時に転送できる数が一桁まで減ったりと、未だ不安定要素があるのだとか。

 その不具合を払拭するために年末に大移住をすると決定したらしいが、その不具合を直すのは少し難しそうだな。

 今じゃ、半ば諦め状態で、その日に同時転送できる数を測定する装置まで作られているぐらいだし。

 

 

 まあ、その不具合が起きなければ3日で大移住は完了するだろうってなところだ。

 因みにおれらは最後に転送される予定だ。もし転送中に妖怪が攻めてきたら大変だからな。

 そして全員の転送が完了した後、本部にある時限爆弾が作動し、この国の技術をまるごと抹消するって訳だ。

 そこまでする必要はないと思ったが、技術者側からしたら、真似られるのはたまったもんじゃないらしい。

 

 

 そんなこんなで着々と月移住の計画が進められている。

 映像で何度か月の景色を見たことがあるが、とても美しく、月から見る地球はぜっけいだったな。

 それに月での生活がどんなものか気になるし、是非いってみたいな、というのがおれの考えだ。

 

 今は色々な建物を建築業の人達が月で建設中だから、移住の時になれば、おれ達が住めるぐらいには出来上がっているだろう。

 少し楽しみだ。

 

 

 

 ま、取り敢えず地上に居られる最後の8ヶ月間。名残惜しみながら過ごすとしましょうかね。

 

 

 

 

 




今回の回は短いながらも、結構重要な回です。
特に月移住の所についてです。
もし、この後の話が分かりにくかったら、この回を読み直してみるとわかると思います。

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