シュラアート・オンライン   作:メガネザル

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御注意下さい。

ここから原作とクロスさせていきますがオリジナル展開になります。

オリジナルが終わり次第、原作に戻りますが、ここからオリジナル要素が増えていきます。

予めご了承くださいm(___)m




助ける理由

 

___2023年2月1日___

 

 

第一層攻略から約2カ月、フワは第八層の迷宮区タワーへと向かっていた。

 

攻略の為ではない。

 

昨日、第八層のフロアボスは攻略組の手により討伐されている。

 

次の第九層へ向かう為にフワは直接ボス部屋の転移門へと向かっていた。

 

未だフワを指すカーソルは犯罪者の《オレンジ》で街の転移門を使う事が出来ないからだ。

 

『第九層の特徴はエルフの国が二つある事ダ。一つはダークエルフと呼ばれる者の国、もう一つは森エルフと呼ばれる者の国がある。この二つの国は不仲でコレに共なったキャンペーンクエストも特徴の一つダナ。そして最も大きな特徴は《カルマ浄化クエスト》が受けられる事ダ!コレをクリアするとカーソルの色が犯罪者の《オレンジ》から一般的な《グリーン》へと戻るゾ!誤ってカルマ値が増えて《オレンジ》になった者達は是非とも受けるべきクエストダ!!』

 

第八層の村で無料配布されていた《アルゴの攻略本》には第九層の紹介が簡単に書かれていた。

 

「ようやくカーソルの色を戻せるけど・・・・キリト達の攻略も順調だし、無理に戻す必要もないかな?」

 

フワは小さく呟きながら迷宮区タワーへと向かっている途中で、清流が流れる川へと出て水を掬って飲んだ。

 

『幼かった頃の生活と大して変わらないし、このままでも・・・・』

 

フワは姿勢を戻して視線を森へと向けてしばらく見続けると、人らしきモノが《エストック》と呼ばれる細い片手剣を手にして飛び出してきた。

 

「くっ・・・・!この無礼者共!私に触れるな!!」

 

高いソプラノ声に怒りを含みながら叫ぶエストックを構えた女の前に、鎧の上にフードケープを羽織った騎士風の男が三人前に立った。

 

「・・・・そう仰らないで下さい、私達には貴女が必要なんです。いいかげん素直に御同行願います」

 

並んだ三人の真ん中に居る男が有無を言わさないように言いながらにじり寄った。

 

「っ・・・・!そ、そこの者!頼む!手を貸してくれ!!」

 

並んだ男達の後ろで此方を見ているフワを見つけた女は助けを求めた。

 

女の声でフワの存在に気が付いた男達は各々武器を構えながら振り向いた。

 

「っ!?・・・・薄汚い人族がぁ・・・・!」

 

三人を指す緑だったカーソルが俺を見つけて赤色に変わった。真ん中の男が何かを思い出しているのか、怒りが漏れ震えながら呟いた。

 

「私があの者を消す、お前たちは姫の確保をしろ」

 

真ん中の男が左手にカイトシールド、右手に長剣を構えてフワと相対した。

 

「ん?《フォレストエルブン・ハロウドナイト》?アンタ等エルフ・・・・みたいだな」

 

フワと相対した男がフードを取ると、人には無い尖った耳を持っていた。

 

フワの視界に映るエルフを示すカーソルは薄い赤。

 

相手の強さは赤色の濃淡で分かり、薄い赤色は今のフワのレベルからしたら少し弱い相手だった。

 

「一人でいいのか?レベルだけ見ても俺より弱いよ、アンタ」

 

言われたエルフは怒りで顔を歪ませて口を開いた。

 

「わっ私が人族よりも弱いだと・・・・?っふ、ふざけるなぁっ!!」

 

怒号と共に右手に構えた長剣を真横に翳してソードスキルを発動させた。

 

___片手剣ソードスキル《ホリゾンタル・スクエア》___

 

 

右から左へと横薙ぎ、止まる事無く左から右への横薙ぎ、横薙ぎの勢いを殺す事無く身体を回して再び左から右への横薙ぎ、最後に振り切った右から左への横薙ぎ。

 

スカイブルーの輝きと共に放たれると最後に正方形を描く四連撃が特徴のソードスキル。

 

エルフがシステムによる高速化で移動するよりも速くフワはエルフとの間合いを詰めた。

 

「っ!?こ、この程度で・・・・!」

 

エルフは驚きながらも《ホリゾンタル・スクエア》を止めずに右から左への一撃目を放った。

 

が、フワが懐に入った時点でエルフの死は決まっていた。

 

フワは当たり前のようにエルフの剣を握っている右手の手首を掴むと同時に身体を廻してエルフを巻き込んで背に背負い《ホリゾンタル・スクエア》の勢いそのままに投げた。

 

そして投げながらフワも重心を下げて右肘をエルフの眉間に添え、河原の岩に叩きつけて後頭部を砕き、同時に肘で眉間を砕いた。

 

エルフは叩きつけられ後頭部と眉間を砕かれた瞬間、手足を一瞬だけ__ビクンッ__と動かしてポリゴンの破片へと変わった。

 

「__不破圓明流《流颪(ながれおろし)》__」

 

フワはポリゴンの破片へと小さく呟くと立ち上がり、三人の方へと向き直った。

 

「死にたいなら掛かって来い、嫌なら今すぐ失せろ」

 

その言葉に残った二人は顔を青くさせて森へと逃げ込んだ。

 

「はぁ、注文通り助けたぞ。アンタも無事そうだな、それじゃ俺はこれで」

 

女エルフを見て無事だと分かるとフワは再び迷宮区タワーへと歩を進め始めた。

 

「まっ待ってくれ!助けた礼を何か」

 

フワは歩を止めて右手で腹をさすると女エルフの方へと振り返った。

 

「・・・・飯とか持ってる?」

 

フワの言葉が予想外だったのか、女エルフは少し呆けていたが自分の持ちモノを確認した。

 

「ほ、干し肉と黒パンなら少しあるが・・・・」

 

「そっか、ならソレと俺の魚も出すから一緒に昼飯食べないか?」

 

フワが笑みを浮かべて言うと、女エルフは意味が分かったのか笑って快諾した。

 

「願ってもない、追われていた所為で私も何も食べていなかったんだ」

 

そう言ってフードを脱いだ女エルフは整った顔立ちに意思の強そうな瞳、長い金色の髪を邪魔にならない様に後ろで縛っており、佇まいは気品さえ感じるモノだった。

 

「私の名前は《エルミア》だ。私を助けてくれた事に感謝する」

 

エルミアは微笑みながらフワへと礼を言った。

 

「どういたしまして、俺のプレイヤー名はフワだ」

 

 

    

           ▽

 

 

 

二人で持ち寄った食材で少し豪華な昼食を食べ終えるとフワは満足して息を吐いた。

 

「ふ~、久しぶりに魚と山菜以外を食べたな・・・・」

 

フワの言葉にエルミアは可笑しそうに笑っていた。

 

「ふふふ、長い間サバイバルでもしていたのか?」

 

「まあ、そんな所だけど・・・・アンタを呼んでいる声が聞こえるんだが」

 

二人してくつろいでいると不意にフワが森へと目を向けると、微かに野太い叫び声が聞こえた。

 

「姫様!何処におりますか姫様ッ!!お返事下さい!」

 

その声を聞いてエルミアは嬉しそうな顔をして言葉を返した。

 

「此処だメリュジート!私は無事だ!!」

 

すると森に逃げた二人と同じ方向から、鎧を着た騎士と言うより傭兵と呼ぶに相応しい男のエルフが声に釣られて森から出てきた。

 

「無事でしたか姫様。ところで隣の人族は一体・・・・?」

 

メリュジートと呼ばれた男はエルミアの無事を見て安堵したが、すぐにフワを怪訝そうな顔で睨みつけた。

 

「私の恩人のフワだ。無下に扱わないでくれメリュジート」

 

エルミアがフワを庇うように前に立って言うとメリュジートは剣を収めてフワへと頭を下げた。

 

「そうでしたか、姫様を助けて下さった事に深い感謝を」

 

「別にいいさ、アイツ等が勝手に襲いかかって来たのを撃退しただけだ。それに礼なら既に姫さんに貰っているから気にしなくていい」

 

フワは頭を下げたままのメリュジートに感慨もなく言った。

 

「保護者も来た事だし、俺は行くよ。まだ恩を感じてくれるなら再開した時に飯を御馳走してくれ」

 

「す、すまないフワ殿。少し話を聞いて貰ってもいいだろうか?」

 

そう言ってフワは二人から別れようとするとメリュジートが止めた。

 

「・・・・まだ何か用でも?」

 

フワの視界にはメリュジートの上に!マークが現れていた。

 

「もしかしてフワ殿はカルマ浄化を望んでおりませんか?」

 

メリュジートはフワを示すカーソルを見ながら問いかけた。

 

「まあ、どちらかと言われればそうだけど」

 

「すでにお分かりでしょうがエルミア様は森エルフの姫様、姫様のお言葉があればカルマの浄化など__」

 

「それで、アンタ等は俺に何を望んでいるんだ?」

 

フワはメリュジートの言葉を遮る様に問いかけた。

 

「私達が向かおうとしている第九層の《聖樹の大聖堂》まで付いて来てはくれないか」

 

「聖樹の大聖堂ねえ、そんなの人族の俺に頼む事か?」

 

メリュジートの言葉にフワが反論するとエルミアもフワに賛同した。

 

「そ、そうだ!既に一度助けて貰っている恩人に何を頼んでいるのだ!?」

 

メリュジートは姫様へと顔を向けた。

 

「姫様は現状況を理解しておいてか!?すでに誰が裏切り者で何時誰が姫様の命をお奪いになるか分かりませんぞ!!」

 

そう言ってメリュジートは再びフワに頭を下げた。

 

「どうか!どうか我々を助けてくれ!!」

 

「__________」

 

風が草木を揺らす音が大きくなった。

 

エルミアも一喝されて口を閉ざし、メリュジートは頭を下げたまま沈黙していて二人ともフワが口を開くのを待っていたから。

 

「依頼は以上か?」

 

断られる、エルミアはそう思って目を閉じた。

 

「はい」

 

メリュジートは顔を上げないまま小さく答えた。

 

「その依頼を受けるよ、報酬はカルマ浄化だな」

 

ピコンと音を立ててフワが依頼であるクエストを受諾した。

 

「っ______」

 

メリュジートは立ち上がってフワに感謝の言葉を言っているが、エルミアは理解するのに時間が掛かった。

 

敵が誰かも分からず、どれくらいいるのか数も分からない状況で自分を守ってくれる事に考えが辿り着かなかったから。

 

「しっかりしろよ姫さん、ここから迷宮区タワーまでは丸一日は掛かるから呆けられてると困るぞ」

 

「っそ、それくらい問題ない!」

 

フワの言葉で正気に戻ったエルミアは慌てて取り繕った。

 

「だが、本当にいいのか?言った通り、私を狙う敵の数さえ分からない状況なのにフワは私を守ってくれるのか?」

 

「それが依頼内容だろ?なら守るさ、何か不満でも?」

 

気にした風の無いフワの態度にエルミアは不意に胸が苦しくなった。

 

「礼はいいから早く行かないか?のんびり出来るほど余裕はないだろ」

 

そう言ってフワは森の中へと入っていった。

 

その後を追う様にエルミアとメリュジートも森へと入っていった。

 

 

 

           ▽

 

 

 

「キリトとアスナ、二人とも聞いてくれ・・・・マズイ事になった・・・・」

 

浅黒い肌を持った女ダークエルフが黒いコートを着たキリトと赤いケープを羽織ったアスナの二人に頭を抱えそうな雰囲気で話しかけた。

 

「キズメル?い、一体何があったんだ?」

 

キズメルと呼ばれたダークエルフの尋常じゃない雰囲気を恐れながらも問いかけた。

 

「二人と同じ人族の集団がフォールンエルフと手を組んでダークエルフを襲い秘鍵を奪った・・・・」

 

「「っ______」」

 

キズメルの言葉に理解が追い付かず、無意識の内に息が止まっていた。

 

「もしかすると、森エルフの一部がフォールンエルフ共と手を組み、秘鍵を全て揃え封印を・・・・」

 

キズメルの状況報告にキリトとアスナは必死に正気へと戻した。

 

「そんな、まだ第九層に来てから一日しか経ってないのに・・・・」

 

アスナの言葉にキズメルは苦虫を噛んだような顔をした。

 

「おそらく、九層に上がる前から人族の者達と計画を練っていたに違いない。もう少し念入りに情報収集してさえいれば・・・・」

 

キズメルの悔しそうな声をキリトが拳を地面に叩きつけて遮った。

 

「ど、どうしたの?キリトくん・・・・」

 

アスナとキズメルは二人とも同じ心配そうな顔で地面に拳を叩きつけたキリトを見た。

 

「襲撃したプレイヤーに心当たりがある。第三層の時に俺はそのプレイヤーと戦った・・・・」

 

二人ともハッとしてキリトへと詰め寄った。

 

「その人族がどんな奴だったか覚えているか?」

 

「ああ、メインアームは片手斧で鎖頭巾を被り、変な敬語を話す奴だ」

 

キズメルの問いにキリトが淀みなく答えるとキズメルは報告を再開した。

 

「・・・・明後日に森エルフの王城に総攻撃が始まる。森エルフが保持している秘鍵を回収する為に・・・・」

 

キズメルの言葉にアスナが驚いて立ち上がった。

 

「そんな!既に秘鍵が持ち出されていた場合はどうするの!?」

 

アスナの言葉にキズメルは怒りを抑えながら答えた。

 

「軍の上層部はそんな事は考えていない、戦争の大義名分を手に入れたと浮かれていてな」

 

何処の世界でも同じような答えにアスナは妙に納得してしまい腰を落とした。

 

「だが、女王様は私と極一部の騎士に密命を与えられた」

 

キリトとアスナの視線が自分に向いた事を確認してキズメルは言葉を続けた。

 

「これは極秘だが、私達の女王様は森エルフの王女様と懇意にしておられたんだ。そして、今回の事件が起きて直ぐに女王様は森エルフの王女に事件の事を知らせると同時に秘鍵を持ち出して欲しいとお願いされたのだ」

 

ここまで話すとキリトとアスナは理解したのか言葉の続きを口にした。

 

「その王女様の保護が密命の内容なんだな」

 

「ああ、その通りだ。・・・・情けない事だが頼む、手を貸してくれ。フォールンエルフや森エルフの襲撃は確実にある。その時に密命を言い渡された少数の騎士では・・・・」

 

アスナが言葉を発していたキズメルの口に指を添えて止めた。

 

「私達はキズメルが好きなの。それなのに助けない、そんな訳ないでしょ?」

 

キズメルはキリトとアスナの二人を抱きしめた。

 

 

 


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