海を渡りし者たち   作:たくみん2(ia・kazu)

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主催者の匠先生です。書いてたらいろいろ矛盾していたところを直していたら更新が疎かになってしまいました。申し訳ないです。こんごともつっかえるかもしれませんが待ってもらえるとありがたいです。




匠先生


第二話 ~人徳を重んじし者~

俺が着任した日の夜の話である。6人で夕食を食べに鎮守府の食堂へ行った。今日は俺や能代たちの荷物を自分の部屋に運ぶ作業に追われ、みんな疲れきっている。さらに、俺の私物が入っている段ボール十数個を俺の執務室まで運ぶのまで手伝ってもらった。手伝ってくれたお礼と前祝いで今日は俺がみんなに夕食をおごることになった。

 

 

 

食堂は夕食タイムを過ぎていたおかげでガラガラだった。今夜のメニューは俺の提案ですき焼きをすることになった。しかし、残念ながらあまり会話がない。とりあえず俺から話を振ってみる。

「みんな、どうだい?おいしい?」

するとすぐに雪風が

「こんなおいしいすき焼き初めてです。とてもおいしいです」

「おう…なんかうれしいな」

雪風は何かを察したのかフォローしてくれた。そんな雪風に見て、他の駆逐艦たちが

「島風ちゃん、食べるの早いよ」

「だっておいしいんだもん」

何気ない会話だか場の空気をどうにかしようと手伝ってくれた。しかし、軽巡の二人はあまり話してくれない。こんな感じになっていたのは会った時からだった。“おーーー”と言ったのも心の底から嬉しそうな感じではなかったのだ。まさか、この前の提督に対しての疲れがたまっているせいなのか、俺の活動が気に入らないのか、とてもネガティブなことを思いながら箸を進めていた。もし疲れているなら早く休ませてあげなければ…。

その後、駆逐艦達と話をして10分がたった。みんなの箸も止まっているので早く帰ることにした。帰り道では駆逐艦の3人は俺に絡んでくれている。相当うれしかったのであろう。しかし、問題なのは軽巡の二人である。さてどうしたことか…。

さて、自分の宿舎兼執務室に帰ってきて、次は風呂の時間である。どうしても俺と入りたいと言い張っていた雪風は、島風や時雨に連れていかれ、結局は一人で風呂に向かうことになった。さすがのここでも男女関係は重要だと思いながら、提督用の風呂の暖簾をくぐる。

服を脱いで風呂に入ろうとすると、何かおかしいことに気が付いた。

扉の向こうから女の声がする。あれ幻聴かな?と、俺は思いながら扉を開けると…。

アッツ!!

急にお湯が飛んできたので、俺は驚いたし、とても熱かった。本来はそうでもないはずであるが、予想だにしないことであったために、熱く感じてしまった。

そして、かけたと思われる張本人と目があった。なんと、そこにいたのは風呂桶をもった暁だった。どうやら俺の目の前に倒れている雷にお湯をかけようとして、暁がお湯をぶっかけてきた訳だ…。それよりとにかく言いたいことは一つ。

「なんでここにいるの?」

「あの…えーーと…」

困ったような感じで後ろを向くと

「あっ、ごめんね。暁が悪いことしたかな?」

風呂に浸かっていた一人の男とみられる人と2人の小さい影が出てきた。水蒸気でよく見られなかったが近づいてくるにつれ相手の姿が見えてきた。それは

「白亜提督!?」

 

 

 

「どうしてもみんなが風呂に入ろうって言うからさ。混浴許されているのはこの提督の風呂だけなので…」

「は、はい…」

艦娘に頼まれたら一緒に風呂入っていいのか…ずいぶんと自由な鎮守府だな。

「暁、ちゃんと謝ったの?」

「雷は黙ってて」

暁はモジモジしながら

「ご、ごめんなさい」

とてもかわいい。白亜め、こんなにかわいい子の提督なんて…ふざけるんじゃないよ!!

「匠提督も風呂の時間ですか?ご一緒にどうです?」

俺は誘われ、戸惑いつつもいっしょに浸かる。相変わらず雷と暁は遊んでいて、響と電は静かに話をしていた。

「どうだい?ここの生活は?」

俺が彼女たちをぼんやりとみていると、急に声をかけられる。

「あのー。まだ一日も経ってなくてよくわからないことだらけですけど…何というか、良いと思いますよ」

「そうかい。それはよかった」

「あと、俺を呼ぶときは 匠 でいいですよ」

「以後、気を付けます」

そしてしばらく間が悪と、白亜提督は不意に

「匠。君、悩み事があるんじゃない?」

と聞いてきた。その質問は唐突でストレートに聞かれたため、先ほどの返事が嘘だと顔に出てしまう。

すると、白亜提督は少し笑みを浮かべた。

「わかってしまいました?」

「そんな感じがしたので。でどんな悩みですか?」

ここははっきり言うしかないと思い、俺は思い切ってすべてを語った。

「ふむ…そんなことがありましたか。確かに噂は耳にしています。とてもブラックな鎮守府で、過労が原因により大破、中破となる艦娘が多かったらしいですね。ですから、提督に対しての気持ちが複雑になってしまうのは仕方ないのかもしれません」

「やっぱりそうですか…」

「でも匠は、それに気づけた。さらに、仲良くしようと努力している。着任初日からそのことに気が付いて行動できる人なんてそうそういないと思います。まぁ、とりあえず僕からのアドバイス。自分なりの方法を考えてやってごらん。きっと2人は振り向いてくれるさ」

自分なりに考える…そういうことを俺にできるのかと言うことが心配である。すると、白亜提督は時計を見た。

「そろそろ寝る時間だ。お先に失礼するね」

「ばいばーーーい」

白亜提督が立ち上がろうとすると俺が止めた。

「あの!」

「ん?」

「今の話、聞いてもらってありがとうございます。しかも、艦娘と仲がいい白亜提督にアドバイスをもらえてとてもうれしいです」

「おい、そういうなのはやめてくれよ」

そうは言うもの、白亜提督はとても照れていたように見えた。

「最後に一つ言っておきます。私の事は白亜提督以外の言い方で呼んでくれるとうれしいな」

こう言って、白亜さんと響、暁、雷は風呂から上がっていった。

そして電が上がっていくときに俺に

「私の司令官さんもがんばって、私たちを元気付けてくれたです。だからあなたもきっとできるのです。がんばってください…なのです」

といって、電は上がっていった。

一時間後、風呂から上がり完全にのぼせていた。足元がふらつく中、なんとか宿舎へと帰ってくることができた。

みんなは、各自の部屋で、私物の整理していた。俺は「十二時には寝ろよ」と声をかけて、一足早く自室のベットに飛び込んだ。

初日から大変だったなぁ…。俺はそんなことを思いつつ、すぐに深い眠りへと落ちた。

 

 

 

“バシッ!”

イッタイ!誰だ!?こんな夜中に起こす野郎は? 

心ではこう思っているが、大体目星はついている。人影の方を見ると案の定、大正解であった。

「しれぇ、寝れない」

雪風だ。彼女は枕を持って、半分涙目になっていた。

「そんなのしらねぇや。早く寝ろ」

「だから寝れないって」

「じゃあ一緒に寝るか?」

少しだけ間を空けると、雪風は静かにつぶやいた。

「そうしていい?」

俺は頷くと、雪風が隣へと入ってくる。

それからしばらく時がたち、俺はふと思い出した

「なあ…雪風は軽巡の2人をどう思う?」

「いい人だとは思いますけど?」

「そうじゃなくて、どうやったら仲良くやっていけると思う?」

雪風はにこっと笑い、こう答えた。

「しれぇは頑張ってるんだけど、自分からやってあげようとしてるんだけど…多分届いてない…かな…」

「やっぱりそうだよな…。じゃあ、俺はどうすればいいんだ…」

しばらく沈黙の時間があった。すると、

「私にいい考えがあります」

そうして雪風が提案してくれた作戦の会議後二人はすぐに寝た。

 

 

 

こうして、軽巡好感度アゲアゲ作戦が決行された。

作戦は至ってシンプル。女の子ならだれでも好きなケーキ、これを作ってプレゼントするのだ。

この作戦に雪風はもちろん、時雨や島風も手伝ってくれた。朝ごろから作業を始めると、なんとか昼飯までには作ることができたのだった。

そして昼飯後、二人を自室へと呼んだ。軽巡の二人は、いったいどうしたのだろうかと、不思議そうな表情で並んでいた。

「能代、酒匂。二人にプレゼントがある。雪風、持ってきて」

雪風はケーキを冷蔵庫から白い箱を取り出してきた。どれも売っていてもおかしくないくらいの出来である、ホールのショートケーキだ。

「朝早起きして、作ってみたんだ。まぁ駆逐艦のみんなに手伝ってもらったんだけど…」。

俺はケーキを取り分けて小皿2つに1つずつのせた。2人は軽くお辞儀をして皿を取った。

「食べてみてくれないかな?きっと、おいしくできたと思う…」

2人は顔を見合わせると、フォークに手を伸ばし一口サイズにカットすると、ゆっくりとショートケーキを口へはこんだ。

「ど…どう?おいしいかな?」

俺が恐る恐る聞いてみると同時。二人の顔色が明るく変わった。

「「おいしい!!」」

俺はすぐさまガッツポーズをする。作るのを手伝ってくれた駆逐艦たちも一緒に喜んでくれた。

「提督、ありがとうございます。どこか…勇気がでました!」

「私も同意です!」

雪風の考えた“女子が大好きなケーキを作ってサプライズ”作戦が上手くいったようだ。

そのおかげで、二人は明るい表情になっていた。昨日の昼に頑張ろうといった場面では、少々作り笑いのような2人だったが、今回は違う。本心から嬉しそうな表情となっている。俺は、それがとても喜ばしかった。

その後、みんなでケーキを食べながら楽しく会話を始めたのだった。

 

 

さて、“女子が大好きなケーキを作ってサプライズ”作戦は大成功に終わり、俺は満足な思いで満ちていた。これからは、いっそう隊員に好かれる提督となろう。そのためにも、俺はもっと努力をしなければならない。

俺はそんなことを思いつつ、意識が薄れていく中、今日も雪風が部屋へと入ってきた。

「しれぇ、寝れない」

またかと思いつつ、今回もベッドに入れてやった。断るといろいろうるさいだろうし、先ほど好かれる提督になると決めたばかりだ。断れるわけにもいかないだろう。

「しれぇ、今日の作戦は大成功でしたね」

「う…うん」

「どうしたんですか?元気ないですよ」

俺の気持ちが入っていない返事を気づかれてしまったようだ。

「もろばれたか…」

「ばればれですよ。で、どうしかしましたか?」

「これで2人は明日からも明るくやっていけるのだろうか…」

主時期、今日だけとても無理して元気にやっていた可能性だって十分あることを考え出してしまった。もし、そうならばとても心配である。すると雪風がくすくすと笑いだした。

「な、何笑ってんだよ」

俺は何が面白いのかさっぱりわからない。なにか言ったか…。

「しれぇは心配しすぎですよ。本当は私たち、しれぇの事が大好きなんですよ。そんなしれぇにずっと暗く接していくわけないじゃないですか」

急に恥ずかしくなった。

「そ、そんなこと言うなよ。照れるじゃないか。ていうか俺もみんなこと大…」

雪風を見ると眠っていた。今日も大変な一日だったから疲れているんだろう。俺は微笑みながら目を閉じた。

「おやすみ…雪風」

 

 

 

次の日、提督室の扉を開けると

「提督、おはようございます!」

笑顔の2人が待っていた。

 

 

― 人徳を重んじし者 

俺が思い描く提督は、こういう人なのだ。

 


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