やはり俺は間違っている(凍結)   作:毛利 綾斗

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第5話

俺は今、ソファの前に正座させられている。

その目の前には小町、依頼人、それと少し肩身の狭い雪ノ下の3人だ。

なぜ正座させられているか、そんなの決まってるだろ。約束の時間を30分も遅れたせいだ。たったそれだけのはずだ。

手を繋いでいるのを見つかった時にさらに眼光が鋭くなったのは気の所為のはず.........。

 

 

「あのー、小町さんや。俺は一体いつまで正座を続ければいいのでしょうか?」

 

 

小町はその問いに答える事なく

 

 

「お兄ちゃんはさ、なんで遅れたのかな?

自分で時間を言ったのに待たせるってどうなの?

ねぇ、ねぇ?反省してるのお兄ちゃん?」

 

 

ごもっともだから何も反論出来ん。つか小町さんや、貴方はヤンデレじゃないですよね。いつもの可愛い小町に戻って下さい。

 

助けを求めるべく雪ノ下を見るが目を逸らされる。とその瞬間顔を鷲掴みされる。

 

 

「何目を逸らしてるのさ、お兄ちゃん。今お話してるのは小町だよ」

 

 

すみません、と謝ると依頼人が小町を止めてくれる。助かった。

 

それからクッキー作りを開始したのだがヤバい。何がヤバいってあの依頼人がヤバい。レシピ見ずに作ろうとするんだぜ。隠し味とか言って色んなものを入れようとするし.........。

つか一回言われたら止めてくれよその暴挙。

ソファでくつろいでる小町と雪ノ下に援軍を頼みたいぐらいだ。

 

 

「そういえば何でお前は俺の家を知ってたんだ?小町と面識があったのか」

 

 

依頼人にそう尋ねると苦笑いが返ってくる。

 

 

「あれ、お兄ちゃんに言ってなかったっけ?結衣さんはお菓子の人だよ」

 

 

お菓子の人?意味わかんねぇな。

 

 

「因みにだけど彼女は貴方と同じクラスよ」

 

 

そうなのか。確かあのトップカーストのグループにこんなのがいた気がする。まあどうでもいいが。

 

 

「え.....ちょ......比企谷君私のこと覚えてないの?私は由比ヶ浜結衣です、よろしくね」

 

 

ちょっと待てよ。小町の事だから自分の友達は友達というだろう。なのにお菓子の人って呼んでいるのはおかしい。

次に俺に関係する事は確定している。そうじゃないと小町は、言ってなかったっけ?って俺に言わないからな。

それを踏まえて友達がいない俺にお菓子を届けてくれたって事は.......

 

 

「.......由比ヶ浜、お前があの犬の飼い主だったのか」

 

 

いつの間にか由比ヶ浜は隣におらず、ソファに座って雑談している。誰にも聞かれていないようだし安心する。俺も気にしていないしもう終わった事を蒸し返す事はなかった。

 

俺は油断していた。考えを纏めている間に由比ヶ浜から目を離してしまったのだ。その後も特に気を留めずに片付け、昼食の準備に取り掛かる。

 

「今から昼飯作るけど何たべたい?」

 

2人は驚いた顔をして小町は頻りに頷いている。

困ったような顔をして話し合っている2人を見た小町は、パスタ、パスタが食べたい、と一言。2人もそれに乗っかり由比ヶ浜と雪ノ下がカルボナーラ、小町と俺はベーコンとキャベツの和風ベースに決定する。

 

 

「小町や、バケットを買ってきてくれないか?ちょうど切らしてるんだ」

 

 

小町がいつも通りにかしこまちー、と言う前に雪ノ下と由比ヶ浜が手を挙げ2人で行くといいだす。

客を買い出しに行かせるのは本意ではない。本当ならリビングでくつろいでいて欲しいが、ここは譲らないっと目が語っている。

 

じゃあ頼む、と言って玄関まで送り雪ノ下が出た瞬間に由比ヶ浜の腕を掴み耳元で

 

 

「雪ノ下は方向音痴だから頼むぞ」

 

 

と言った。由比ヶ浜は顔を真っ赤にさせてコクコク頷くと出て行く。外からは由比ヶ浜の元気な声が。

これならきっと大丈夫だろう。

ただ問題があるとしたら後ろから感じる視線だ。ここで選択をミスれば俺は死ぬ.........気がする。

 

 

「こ、小町さん。手伝ってくれるか?」

 

 

小町からの視線が和らぐがまだミスは出来ない。まずはカルボナーラから。

味を整えるために時間が少しかかるからな。やはり小町はすごい。俺が出した材料を見ると俺が欲しいタイミングで欲しいものを用意してくれる。

思ったよりも早いペースでパスタの味を整えた俺と小町は休憩に入る。

 

 

「小町、ありがとな。おかげで早く支度が終わった。それに........あれだ.......何時もだが欲しいものを欲しい時に渡してくれる、以心伝心的なの俺的にポイント高い」

 

 

そう言いながら頭を撫でる。

顔が熱い、熱すぎる。やっぱこんな恥ずかしい事は言うんじゃなかった。これで小町に引かれたら死ねるまである。

小町は顔を前に向けているため表情が読めない。でも撫でるたびに見える耳が真紅に染まっているのが見える。

 

 

「当たり前じゃん!お兄ちゃんに合わせられるのは小町だけなんだから。小町じゃないとお兄ちゃんは支えられないんだからね!」

 

 

そう言って振り向く小町の熟れたトマトのような赤顔は見る人を惹きつける弾ける笑顔だった。

不覚にも、そう不覚だが胸が高鳴ってしまう。

自分も恥ずかしいくせに何を言ってるんだよ、小町は。

 

俺は更に赤面した顔を見られないように背けつつ強めに頭をクシャクシャにしてやる。

結論、やはり俺の妹は可愛い、つか可愛いすぎる。そして小町は誰にもやらん。

 

 

 

その後はご察しの通りだ。雪ノ下と由比ヶ浜の帰宅に気付かずに甘やかし続けた俺は

 

ガタッ

 

という音のする方に顔を向ける。

とそこには口をOの字にして突っ立っている由比ヶ浜と携帯を構えている雪ノ下が。その2人の視線の先を見ると表情を蕩けさせている小町がいる。

俺は無言で料理の続きに入りテーブルに皿を並べる。途中から正気に戻った小町が顔を真っ赤にしながら手伝ってくれた。

 

マジでなんで無言なんだよ。ここまできたら罵ったりしてくれた方がありがたいよ。

べ、別に俺はMなんかじゃないんだからね!

 

 

クッキーは真っ黒に焦げていた。原因は設定温度のミス。由比ヶ浜は温度を上げれば時間を短縮できると思っていたらしい。もうキッチンには立って欲しくはないが、仕方ない。俺は本通りに何も手を加えずに作れ、と一言告げるともう一度材料の準備をする。

これまで以上に冷たい声になっていたのだろうか、由比ヶ浜はアレンジを全くせず写真通りのクッキーを作って見せた。

 

一通り終わった後に俺は雪ノ下から怒られ、弁解しつつ謝り丸く収まった。説教の内容?精神衛生上何があったなんて教えられん。何よりもう思い出したくない。

 

 

今は小町の命により由比ヶ浜を送っている。雪ノ下も迷子になるといけないので一緒に来てもらっている。家は遠からずも近からずという距離らしい。土曜の午後ということで沢山の子どもで公園が埋め尽くされていた。

少し先の公園の入り口からボールが転がりだす。車との距離も十分ある。これなら運転手も気がつくだろう。

 

そう思ったが嫌な予感がする。嫌な予感はよく当たる......。俺はある光景を目にし、二人を置いて走り出した。




コメント、マイリストありがとうございます。
それを糧に頑張って書かせてもらっています。

基本半オリジナルとなっていますがこのまま半オリジナルの作風で書き続けてもよろしいでしょうか?宜しければコメント下さい。


7/3 加筆修正入りました。

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