やはり俺は間違っている(凍結)   作:毛利 綾斗

2 / 10
第2話

 

俺は今中学校に向かっている。

何故かと言われればそこに小町が居るから、としか言いようが無い。

妹に頼まれたら断れない、いや断る気が元々ない。千葉の兄ってそんなもんだろ。

 

俺が中学校に着くと門にもたれ掛かっていた小町が走ってきて

 

 

「いつもありがとう。じゃあ帰ろっか」

 

 

といい荷台に腰掛ける。相変わらずの可愛さだ。妹じゃなかったら告って振られちまうぜ。って振られちゃうの決まってるんだな、俺。

 

買い物に行くぞ、そう小町に言って急いで中学校から離れる。

何故急いで離れたのかって?それはあれだ、周りの中坊がこっちをずっと見て何かひしめきあってるからだ。

 

 

「なあ小町、いいのか」

 

 

「もー、お兄ちゃんは心配性だなー。お兄ちゃんが思ってる事は絶対にありえ無い事だからだーいじょーうぶー。寧ろ優越感を味わえてるんだよ。

これ小町的にポイント高い♪」

 

「ハイハイ、高い高い」

 

優越感を味わえる意味は分からんが小町が大丈夫と言うなら大丈夫なんだろう。まあ小町だからな。

つか何であれだけで通じあえるんだよ。こっちの方が俺からしたらポイントたけぇよ。

 

 

小町が中学に入ってからは一緒に買い物に行くようになった。

社交的な小町のお陰で安くしてもらえるのだが若夫婦の様だとからかわれてしまう。

俺は気にし無いが顔を真っ赤にしていた小町に、嫌だったら来なくてもいいんだぞ、と言うと、此れだからゴミいちゃんはと怒られてしまい、それ以来ずっと一緒に買い物に行っている。

 

何故貶されたのか全くもって分からん。

 

 

「今日は何を作るん?それに何で遅かったの?小町に言ってみ、言ってみ」

 

 

俺は小町にありのままを話す。

それを小町は相槌を打ちつつ笑ながら聞いている。

 

 

「へぇ〜。それでお兄ちゃんは明日も行くの?」

 

 

「まあそうだな。行かないと平塚先生にボコされそうだしな」

 

 

と答えると、此れから小町も部活に行くね〜、といいニヤニヤと笑い企んでいる。

 

 

「小町よ。俺としてはすごい有り難いんだが勝手には来れないだろ。俺からお願いしとこうか?」

 

 

「ううん、小町自分でなんとかするよ」

 

 

などとたわいもない会話を続けた。

 

 

 

次の日、いつも通りに学校に行き、いつも通りに読書をして1日を過ごした俺は小町がどうやってくるのかを気になっていた。

 

まさか無断で入り込むわけ無いよな。そうだとあの女生徒がなんか言ってきそうだし。

かと言ってお兄ちゃんに会いに来ましたって言って入れるわけ無いし。

 

コンコン、とノックし扉を開けると同時に身体の右半分が温かく柔らかいものに包まれる。茫然自失としている俺に

 

 

「ねぇねぇお兄ちゃん。あの美人な人誰?あの人が昨日言ってたもう1人の部員なの?・・・はっ、もしかして小町の義姉ちゃん候補!」

 

 

「落ち着け、妹よ。彼奴は、えーっと、誰だっけか?まあいいもう1人の部員だ。名前は知らん。」

 

 

つかお前の兄妹は俺だけだよ、と続け女生徒を見ると溜息をつき額に手を当てている。

不覚にも、そう不覚だがそんな仕草も絵になると思ってしまった俺がいる。

 

「何にも聞いてなかったのね。私は雪ノ下雪乃よ。おそらく私の事を知らないのは貴方ぐらいね。あとこの部活の部長をしているわ。其方の可愛らしい子は誰かしら?誘拐谷君紹介してくれるかしら」

 

「誘拐なんかしてない。こいつは俺の妹の小町だ。だからその手に持っている携帯をしまってくれ」

 

そう、雪ノ下は3プッシュした携帯を持っている。おそらく、いや確実に今の俺には不利でしかない状況だ。

 

 

「初めまして雪乃さん。私は比企谷八幡の妹の小町です。仲良くしてくださいね」

 

 

「ほら。これでわかっただろ。つか何で俺の名前を知ってるんだ?平塚先生からか」

 

 

「ええ。部活で預かる備品だもの。知らないと不便でしょ」

 

 

そう言って携帯をしまう雪ノ下。

 

 

「ちょ、おま、備品って。せめて人扱いしてくれよ」

 

 

「嫌よ。他の人に失礼だわ。それに貴方友達いないでしょ」

 

 

「あぁ、いねぇよ。お前も友達なんかいないだろ」

 

 

「へぇ、やっぱり友達はいないのね。少なくとも女の子が貴方の周りに来ると思っていたのだけれど。この際私の事はどうでもいいわ」

 

 

ちょっと雪ノ下さん。どういう事ですか。俺の周りに女子が来るって嘲笑いにって事ですか、はいそうですね。

最初の頃はよく来てましたよ。

次第に来なくはなったけど時々名前が挙がってる気がするんですよね。

 

 

「それに貴方噂を知らないの?国際教養科まで流れてきてるのよ」

 

 

「はぁ。さいですか。俺は噂を持ってくる友達なんかいないからな」

 

 

「かわいそうな人ね。大丈夫よ私が矯正してあげるわ」

 

 

矯正?そんなの要らん、と答えると貴方は矯正されないとマズいでしょ流石に、と返されそこから一方的な罵倒が始まる。

 

 

「すみません。流石にほぼ初対面なお兄ちゃんの扱い酷くないですか。雪ノ下さん」

 

 

不味い。小町の雰囲気が少し変わったぞ。

 

それに雪乃さんから雪ノ下さん呼びに変わった。結構怒ってるな。俺のせいで小町の評判を落とす訳にはいかん。

 

 

「兄は変わらなくていいんです。皆さんは知らないだけなんですよ。そりゃ兄はボッチですし、捻くれてます。......」

 

 

小町さんや。流石に妹に言われると辛いのですが、はい。

 

 

「でも、本当は凄い優しい兄なんです。全然知らないのに兄を悪く言わないでください」

 

 

そういって小町は雪ノ下に詰め寄って行く。

マズい、何がマズいって小町が俺の事そんな風に思っていたなんて。

いつもごみいちゃん、ごみいちゃん言われてるし、超嬉しい。

 

でもそろそろ止めないとな。

 

 

「小町、そんな風に思ってくれてたんだな。ありがとう。でも俺の事でそんなに怒るな俺は気にしてないから」

 

 

「で、でもボッチになった原因の一つには......」

 

 

「小町!これ以上は言うな!」

 

 

俺の剣幕に驚き身体を震わせた小町に、ありがとなと言いながら小町を後ろから抱きしめてやる。

ボンッ、と音がしたが気にしない。

 

向き直ってから更に頭を撫でて表情を見ようとすると顔を背けられるがこのリアクションなら大丈夫だろう。

 

 

「雪ノ下も悪かったな。まあ俺としてはこんな兄思いの妹に育ってくれて凄い嬉しいんだが。ほれ、小町も謝れ。雪ノ下は悪くないんだぞ」

 

 

「雪乃さん。暴走しちゃってすみませんでした」

 

 

雪ノ下は小町の雰囲気が元に戻ったのに気づいたのかホッと息を吐くのを俺は見逃さなかった。

 

 

「お前だってあったんじゃないか?自身の事を碌に知らないくせに悪意を向けられた事を。そしてその辛さを知っている、違うか?」

 

 

だから雪ノ下は今もここで一人、なんだろう......。

ガタッと音を立てながら勢いよく立ち

 

 

「今日はここまでよ。鍵は私が返しておくからもう帰って」

 

 

と言う雪ノ下は今にも泣きそうな顔をしている。

俺と小町は黙って部室を出たのだった。

 




雪ノ下と八幡の絡みが難しいです。
進みが亀で申し訳ありません。次でガハマさんまで行けると思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。