ダンジョンに錬金術師がいるのは間違っているだろうか 作:路地裏の作者
――――地獄なら、とうに見た!!
「はぁ、はぁ……リリ…………」
「……ぅ、ん、エド……」
二人の息遣いだけが響く迷宮内。その狭い世界で存在を感じることが出来るのは、確かに二人だけだった。
「いくぞ……リリ……」
「はい……エド……」
そして、意を決し、二人は…………。
「突撃ーーーーッ!!」
「突破します!」
周囲を囲むヘルハウンドとアルミラージの群れへと突っ込んだ。
「うらぁッ!」
まずはエドが左手に付けた発火布で一群の一角を焼き崩し、続いて槍を突き出して何体か魔石を貫く。すると脅威を感じたのか、アルミラージが三体、空中に飛び上がって襲い掛かった。
「ふっ!」
エドの気合一閃、空中の三体に回し蹴りを放つと、三体すべての上半身と下半身が泣き別れとなった。エドの両脚に注目すると、向こう脛の辺りから、仕込みナイフが飛び出していた。これが戦闘用
『ギィイイイイイイ!』
「グリード、交替だ! 右腕『硬化』!」
「おう!」
空中から今度はバッドバットが急降下してくる。ソレに対し、グリードは無造作に右手を突き出し、その手で握り潰した。続いてやって来た他の蝙蝠は、コートの肘のスリットから飛び出した小太刀によって斬り裂いた。右腕の
この右腕と両脚は、『中層』以降に出てくる火炎などの特殊攻撃の熱伝導を考えて、炭素繊維を多く含み軽量な『寒冷地仕様』にしてある。しかし、試しにグリードが出てきたところ、
「そっちは大丈夫かよ、リリルカ!?」
「問題、ありません!!」
対して、こちらはリリ。言うが早いか、ヘルハウンドの中央の一体に『ファング・バリスタ』の矢が突き刺さる。そこには五芒星の錬成陣がぶら下がっていた。
「はっ!」
リリが脚に履いた『ドラゴグラス』で地面を踏みしめると、錬成反応がヘルハウンドへと駆け抜け、矢が刺さったヘルハウンドは一瞬ぶくっと膨れ上がった後、黄色がかった液体へと変化し、周囲の仲間へと降り注いだ。
「衝撃、来ます!」
次の瞬間、視界が真っ赤に染まった。リリがヘルハウンドから錬成したのは、『油脂』。それが周りのヘルハウンドの火炎に引火し、一気に燃え盛ったのだ。
「このおッ!!」
ヘルハウンドの爆炎を気にせず、襲い掛かって来たアルミラージの胴体を右腕で『分解』し、魔石を奪い取る。舞い落ちる灰を振り払いながら、再び敵の集団を見据える。
「キリがありません! 一度飛び越えて、奥の横穴へ!!」
「おう! 足場は任すぜ、ションベンガキ!」
リリの言葉に、交替したエドも敵集団から抜け出し、走りながら両手を合わせる。対してリリは、手を合わせることもしない。しかし、走り抜ける彼女が纏う『ドラゴグラス』の足裏には――――『五芒星を描く錬丹術の錬成陣』が描かれていた。
「【ホーエンハイム】!!」
「せああッ!!」
エドは、両手を地面について作り上げた伸びあがる石の柱。リリは足裏の錬成陣で築き上げた、未だ所々ボロボロと崩れた箇所がある石の足場。それでも役割はやり遂げたようで、何とか敵集団を飛び越すことに成功する。
「リリ、
「分かってますよ!!」
走りながら
◇ ◇ ◇
「申し訳、ありません……!」
≪ミアハ・ファミリア≫
自分たちを助けた結果、恩人が窮地にあると知り、桜花も
「…………エドやリリが、最善と思い行動した結果だ。気に病むでない」
「………………」
主神であるミアハの言葉と対照に、顔を曇らせているのは、団長を務めるナァーザ。彼女にとって二人はやっと出来た後輩なのだから、胸が張り裂ける思いだった。
「……ベル君も、相変わらずのお人好しを発生させた結果だしね。ボクも憎みはしないよ」
ヘスティアもまた、自身の眷族の底抜けのお人好し具合を思い、彼らを許した。
「エドもリリも死んではいない。私が与えた『
「うん、ボクもだよ。ベル君がそう簡単に死ぬもんか!」
「眷族の数が多くて少し大変だけど……大丈夫ね。私の方も、減ってはいないわ」
これにより、捜索隊が結成される運びとなった。捜索隊に志願したのは、≪タケミカヅチ・ファミリア≫から、桜花、
「オレも協力するよ、ヘスティア!」
そこで話に入って来たのは、≪ヘルメス・ファミリア≫の主神ヘルメス。一緒に連れているのはファミリアの団長であり、稀代の
「ヘルメス!? お前何しに来た!」
「ご挨拶だなぁ、タケミカヅチ。
そう言って懐からギルドに貼り出されていた
ヘルメスが応援として提供できる人員は、『
(………………)
これら全ての話の流れを、ナァーザは歯痒い思いで見ていた。
彼女は、かつて
(エド……リリ……)
エドはやんちゃ盛りと言った感じで、時折無鉄砲だが、実はすごく仲間思いで、ファミリアを支えるために色々なことをしてくれた。リリはまだ入って1か月程だが、勉強熱心で、自分の製薬技術を受け継いでファミリアを支えようと頑張っている。
二人とも、大事な後輩だ。ならば、自分はこんなところで足踏みしていていいのか?そこまで考え至ったナァーザは、自身の主神のミアハとヘスティアに、自分の決意を告げた。
「――――――ミアハ様、ヘスティア様。私も、行く」
これに驚いたのは、ミアハだ。彼女がどうして冒険者を引退したのか、これ以上なく知っていたのだから。
「ナァーザ、何を言うのだ?! お前は、冒険者時代のあの事件で、モンスターと正面から向き合うことも出来ぬではないか!」
「……っ、それでも!」
ミアハの反論に、ナァーザは珍しく声を荒げた。いつも眠そうな様子が、まるで別人のようだった。
「エドも、リリも…………私の大事な仲間……!」
その言葉に、瞳に燃える意思に、ミアハは黙り込み、歯噛みし――――そして、決めた。
「私の愛しい
ここに捜索隊が結成した。内訳、神ヘルメス、神ヘスティア、神ミアハ。≪ヘルメス・ファミリア≫よりアスフィ。≪タケミカヅチ・ファミリア≫より桜花、千草、
ベル達に遅れること一日。彼らもまた、ダンジョンへと出発した。
なんと、ナァーザとミアハ参戦!この後を考えると、ナァーザさんも、そろそろ復帰しとかないと、かなりヤバイので……文字通りの荒療治となりますwしかし、この展開のせいで、ミアハ・ファミリアには、『負債』という最大の敵が……!前書きはエドの『石』を求める決意の言葉ですね。
そして、エドのオートメイルは腕の方はバッカニア大尉やランファンの奴のハイブリッド。脚はパニーニャの装備を両脚にしたもの……まあ、つまり、両脚のもう一つの機能って、『アレ』なんですがw
そして、リリのドラゴグラスに付けた、足裏錬成陣……イメージはホーエンハイムや『お父様』のノーモーション錬成ですね。後は……「足だ!足でか○はめ波を!!」って感じですww