ダンジョンに錬金術師がいるのは間違っているだろうか 作:路地裏の作者
第29話 神会(デナトゥス)
開店準備中の≪ミアハ・ファミリア≫
『青の薬舗』の今現在の主要商品は
ただ、普段は開店準備のため、忙しく動きつつも、それなりに和気藹々とした空気を醸し出している店内は、この日ばかりは違っていた。
「はぁ~~」
「…………」
「…………」
主に、先程から溜息ばかりついている、錬金術師のせいで。
「はぁ~~~~……」
「「エドうざい」」
「ひでぇ!」
(ひどくねーよ)
四面楚歌だった。
「はぁ……全くエドは、ミアハ様が
「大丈夫……ミアハ様なら、きっとカッコイイ二つ名を貰ってくる……」
「…………」
エドがこんなに沈んでいる理由、それは他でもない「二つ名」にあった。冒険者は、一人前と認められるLv.2に到達すると、直近の
…………なんというか、
(どうか、あまり痛くない二つ名でありますように…………)
人、それをフラグと言う。
◇ ◇ ◇
それから数時間後、所変わって、
「それじゃー、≪セト・ファミリア≫のトコのセティ・セルティ君は、『
「「「
「うわ、うわぁああああああああ!!」
面白がって、他神のところの眷族に痛々しい二つ名をつけたり。
「タケミカヅチんとこのヤマト・
「「「済まない、
「て、手塩にかけて育てた
むしろ主神への嫉妬全開で痛い二つ名を送ったり。
「んで、ドチビのとこのベル・クラネルは『
「「「だって、フレイヤのお願い聞いちゃったんだもん」」」
「だもん、やないわー!!」
「良かった、無難で良かった……」
他の神からの介入で、一命を取り留めた者もいた。そして、最後のファミリアの番が来た。
「で、最後は――へえ、ミアハんとこやな。名前は「エド・エルリック」……って、コイツも早いなあ。半年でランクアップやないか」
「うむ。よろしく頼めるか、ロキ」
「……一応聞くけど、あんたの所、
「使うわけなかろう。もっとも歯がゆく思ったことは、一度ならずあるがな」
その言葉に、流石にロキもこれ以上の追及は避けた。直前のヘスティアは、あまりにも短い一か月のランクアップゆえに、
「この子も資料あんまり多くないけど……大体半年間1~2階層で戦闘の要領をつかんで、その頃にベル・クラネルとパーティーを組む、ってまたドチビのとこかい」
「ああ、エド君はいい子だよ。時々じゃが丸君を買っていってくれるしね」
「うむ。俺のところにも来てくれるぞ」
「それはどうでもええわ、タケミカヅチ。んで、大体一か月前にミノタウロスに襲われ、
ちなみにこの場では、9階層に登場した件のモンスターの一件を追及するものは誰もいない。それと言うのも、つい先程中座したフレイヤに同じ美の女神であるイシュタルが突っかかった折、どうにもファミリア間のいざこざでああなったようだ、と出席者全員が察したからである。イシュタルは今も歯ぎしりしているが、それを聞いていたミアハも、どちらに原因があるにせよ、大切な眷族が死にかけたのだから、今回ばかりは助け舟を出す気もなかった。
「で、ちょっと話出たし、同じファミリアやから先に名前出しとくで。同じく今回Lv.2になった「リリルカ・アーデ」ちゃんや。元は≪ソーマ・ファミリア≫やったみたいやけど、ミアハのところに
この発言と、リリの容姿が美少女であることも手伝って、男神たちは沸きに沸いた。
「一撃必殺とか!」
「燃え系ヒロインキタコレ」
「しかも、素手だったらしい!」
「「「ニンジャナンデ」」」
「……頼むから、妙な二つ名だけはやめてくれるか」
彼女ら二人の主神としては、それは誠実な願いだったのだろう。実際その言葉で若干頬を染めていた女神連中は味方に出来た。但し――――
――――その場の過半数以上を占める男神を、敵に回した。
「だが、断る!!」
「タケミカヅチもそうだが、ミアハ、テメーが駄目だ!」
「我らは涙を飲んでも……正義のために為さねばならぬ!」
ここに、如何に痛い二つ名をつけるかの対抗戦が勃発した。
「順序変えてリリルカたんから行くか。『
「おお、中々やるな、『
「『
「「「それだ」」」
「ミ、ミアハ? 大丈夫かい?」
「あ、ああ。大丈夫だ、ヘスティア……」
次から次へと出てくるとんでもない「二つ名」に、ミアハは表面上澄ました顔だったが、手に持った紅茶のカップが痛ましい程に震えていた。今まさに、愛しい
「エド君の方はそうだなぁ……『
「『
「『
「「「はい決定」」」
「待たんか!!?」
ところが、ここで物言いが入る。
「あー、そのコらなんやけどな……なんかウチんとこの団長が、贈りたい「二つ名」あるらしいねん」
ロキのその言葉に、一同が驚愕の表情で固まった。
「……ロキ。どういう事だ? あの子らからは、おぬしのところのフィン・ディムナと面識があるなど聞いていないのだが……」
「ウチかて知らんわ。なんかギルドに報告出した時に、わざわざ伝言の形で残していきよったんやで? 遠征中やって言うのに……」
もっともロキは実のところ、こんな事態になった理由に検討が付いている。この冒険者たちは、
「……ちなみに、どんなのなんだい? 君のところの団長も、酷いセンスだったりするのかい?」
「ざけんなや、ドチビ。いいか、耳かっぽじって聞けや。『――――』と『――――』や」
「ほう……」
その「二つ名」は、ミアハからしてもそこまで酷くなく、充分に許容範囲内だった。
「なら、それにするか」
「そうだな。『
「しかし…………少しばかり残念だったな。せっかくどこぞの天然ジゴロへの復讐の機会だったというのに」
「「「せやな」」」
「お、おぬしら、天然ジゴロとはなんのことなのだ……?」
こんな感じで
◇ ◇ ◇
その日の晩、≪ミアハ・ファミリア≫
「……うーん。これだとエドというより、グリードの「二つ名」のような……」
「……でもフィン・ディムナの推薦らしいし、無下に断れない」
「すまぬな、エド。他にまともなものもなかったのでな…………」
ちなみにその「二つ名」を聞いた同居人は、心の中で高笑いしていた。
『がっはっはっは! 悪いな、ガキ! 俺の方が目立っちまってよぉ!!』
「うるせーぞ、グリード!!」
エド・エルリック、二つ名『
二つ名命名回、終了。エドはあの右手に着目するとどうしても本家エドと同じになるので、グリードの方に着目してみました。リリの二つ名は、指輪物語の武器名からです。
最初の方で何気なく普段の開店準備やりましたが、エドのフィギュアも売れ行き好調です。特にガネーシャガネーシャ言う人が買って行きますw
今回一番時間かかったのが二つ名だったり……ちなみに最初、エドの二つ名は、『