ダンジョンに錬金術師がいるのは間違っているだろうか 作:路地裏の作者
第13話 かつての絆
「――エド。一体、何と戦ってきたのだ?」
エド・エルリック
LV.1
力:H=149 → H=149
耐久:H=178 → G=272
器用:C=688 → A=843
敏捷:D=522 → C=673
魔力:B=731 → B=731
≪発展アビリティ≫
なし
≪魔法≫
【ホーエンハイム】
≪スキル≫
『
……驚きの上昇率だった。ダンジョン外だったため魔力を使っていなかったが、それでも三つのステイタスがトータル400もの上昇である。耐久と敏捷はともかく、器用が上がったのは、前日から行っていた可動モンスター人形作りも反映された結果だろう。
「……やっぱあのバケモン花、深層のモンスターだったのか?」
「……少なくとも、私が潜ったところまでじゃ、そんな妙なモンスターは知らない」
先輩冒険者のナァーザ先輩も知らないんじゃ、少なくとも18階層より下か、あるいは未知のモンスターかも知れない。ドロップアイテムも出なかったため、確かめようもなかった。
「こうなると、焼き尽くしちまったのは、マズかったな」
「珍しくて高値で売れるアイテムだって出たかも知れないのに……魔石に至るまで、焦げ焦げ粉々にするのはやり過ぎ」
「まあ、良いではないかナァーザ。そんな強いモンスターと戦って、エドが無事だったのだ。喜ぶべきことではないか」
「…………」
ミアハ様のその言葉に何か納得できないのか、ナァーザ先輩は横で平気な顔をしているエドをじろりと睨みつけた。
「……エドは、新しい装備は買わないの?」
◇ ◇ ◇
「……まさか、本当に買う羽目になるとはなあ」
あのステイタス更新から数日後、今現在の場所はヘファイストス・ファミリアの
実のところ、エドは大抵錬金術でその場で装備を作るため、ダンジョンに持って行くのは全部ギルドの支給品の払下げ品。まともに購入したのは、赤いフードコートのみという状況だった。
そんな状態で、『ヘスティア・ナイフ』という名前の新装備を手に入れたベルと一緒にこれまで進出していなかった7階層まで行ってみたところ、ベルの担当アドバイザーのエイナさんから雷を落とされる結果となった。ベルが現在のステイタスを見せて納得してもらったものの、装備が心もとないということで、わざわざ購入する羽目になったのだ。
「正直、余り買う金はねえんだが……」
「零細ファミリアは、お互い大変だよね……」
意気揚々と向かうエイナさんに対し、少年二人のテンションはとてつもなく低かった。ヘファイストス・ファミリアは第一級冒険者垂涎のブランドで、高いものは住宅地の家一軒分にも相当するのだから、当然だろう。
「まあまあ、大丈夫だから、早速こっちへ――」
「いらっしゃいませぇー! 今日は何をお求めですか♪」
エイナさんの話の途中で、横の店内から、どこかで見覚えのあるツインテールのロリ神が赤い制服を着て出てきた。と、いう、か……
「なにやってんですか、神様…………」
「………………」
ベルのところの主神、ヘスティア様だった。
「バイトの掛け持ち!? 最近余裕出来たって言ったじゃないですか?!」
「ベル君、君は何も見なかったことにして、家に帰るんだー!!」
「……あ、あいかわらず変わった神様だね」
「……ウチもこれ以上、財政難にならないよう気を付けなきゃな」
主に、目の前の神と
「しかし、何でヘスティア様は急にバイト増やしたんだ? ベルは何か聞いてないのか?」
「ううん、何も……」
どう考えても、金で困らない限りはバイトを増やしたりしないだろ。その上でベルに言えない、最近の出来事…………そこまで考えて、ベルの持つ【Hφαιστοs】のロゴが入ったナイフに視線をやる。
(…………すまん、ベル。ウチは金銭面では力になれねえ!)
想像通りなら、現在のミアハ・ファミリアをはるかに凌ぐであろう
その後たどり着いたバベル8階。ヘファイストス・ファミリアの中でも新人鍛冶師の作品を取り扱うフロアだった。何でもファミリアの新人の奮起と、他のファミリアの新米冒険者を将来の常連として獲得するため設けている一角だとか。
「へええ……」
ベルやエイナさんと別れた後、エドが見ていたのは槍のコーナー。もっとも普通の槍使いとは明らかに着眼点が違っていた。
「穂先も柄も、可能な限り同一素材で……良質な金属を多量に含んでいて……変形させやすそうな……」
手を加える気、満々だった。結局、壁に立てかけられている上質な槍ではなく、傘立てのようなものにまとめて刺さっていた一本を購入した。
「あとは……籠手でも見るか」
そう考えて防具の中でも、盾などの腕に装着するものを取り扱っているコーナーへ行くと、そこには先客がいた。
「あれ、エイナさん?」
「エド君?」
先に来ていたエイナさんは、棚に置いてあったものの中でも、
「ベルへのプレゼントか?」
「なっ……!」
思い切り動揺していたが、その反応が半ば答えだった。それに苦笑しつつ、すぐ横の籠手の並びを見る。
「……そういうエド君は?」
「
そう言って右腕を目の前で振ると、とたんに表情が曇った。
「………………エド君は、手足の状態が
「…………」
ダンジョンに入り始めてすぐの頃、手足のことを知られて、何度も止められていたことを思い出す。
「あー、まあ無茶はしないさ。当時のアドバイザーにも何度も言われたからな」
「……担当した三か月、延々と『危険だからやめなさい』しか言わなかったけどね」
半年前、出合い頭に言われてから三か月、本当に顔を合わせればそればっかりだった。
「ベル君もそうだけど……エド君だっていなくなって欲しくないんだからね。
「へっ。オレも寿命で死ぬまでは、死ぬつもりはないからな。ベル共々生き残ってやるさ」
「はあ……まったく……」
そんなことを言いつつ、口元に笑みを浮かべ、互いに見つけた防具を手に、ベルの元へと向かった。
いわゆるデート回。エドの最初の担当アドバイザーはエイナでした。もっとも三か月だけですがw
籠手も槍もそうですが、錬金術って、とことん鍛冶師の制作物と相性悪いですね。魂込めて作った作品を弄繰り回してる……ウィンリィが怒るのも無理ないww