復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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これでリーチ編は終わりです。


戦艦オータム

 AIを収めたデータバンクを受け取ったノーブルチームの面々は、ソード基地のパッドに向かい、待機している二機のペリカンで脱出しようとしていた。

 ペリカンは二機あるので、チームは二手に分かれて脱出することになる。

 一方はハルゼイを乗せる機に。もう一方は戦艦と言うべき程に魔改造されたハルシオン級巡洋艦にデータバンク(容器に詰まっていることからチームはパッケージと呼んでいる)を届けるために向かう。

 カーターはハルゼイの護衛がT-elos(テロス)だけでは心足りないと判断してか、ジュンに護衛をさせる。

 

「ハルゼイ博士、3がキャッスル基地まで同行します」

 

「私では不満か?」

 

「いや、君はキャッスル基地の位置は知らないだろう。ジュンは知っている」

 

「同行者は必要ないわ」

 

 これにT-elosは自分だけでは不満なのかを問えば、カーターは基地の位置を知っているジュンが適任であると返す。だが、ハルゼイは必要ないと告げる。

 

「いえ、もしもの時に備えてです。まだ連中が貴方を狙っているかもしれない。ジュン、何があっても守り抜くんだ」

 

「了解です、リーダー。そちらも幸運を」

 

「お前もな」

 

 ジュンは敬礼してからハルゼイと共にキャッスル基地へと向かうペリカンへと向かう。

 途中、T-elosは一同の元へ戻り、ハルゼイの護衛が終われば戻って来ると告げる。

 

「お前たちだけでは心もとないからな。あの科学者の護衛が終わり次第、そちらに向かってやる」

 

「頼もしいね」

 

「そちらの敵を一掃してからにしろ。ジュンに余り負担を掛けないでくれ」

 

「分かっているとも」

 

 この要望にエミールは心強いと思って口にし、カーターはネオ・ムガルの存在を考慮しつつ、それらを全滅させてから来るように言えば、T-elosは承諾してハルゼイとジュンが乗るペリカンへと乗り込んだ。

 全員が乗り込んだのを確認すれば、チームのAIが届け先であるアソードの宇宙船解体場が激戦区であることを知らせる。

 

『アソード宇宙船解体場は惑星外への脱出が可能な唯一の場所です。護衛艦隊の多くが空爆による被害を受け、壊滅状態、あるいは敗走状態であり、まだ戦闘可能な艦艇が残って居るその解体場にコヴナントの大艦隊が向かっています。激戦区な事は間違いないでしょう。現在、UNSCのハルシオン級巡洋艦オータムが待機中です』

 

「楽なミッションでは無いな」

 

 届け先が激戦区であることが分かれば、カーターはペリカンを操縦しながら悪態を付いた。

 それと同時に二機のペリカンが離陸してそれぞれの目的地へと飛べば、ハルゼイのラボは自爆し、爆発の影響で崩落が始まった。

 このリーチの戦いでハルゼイの護衛に着いたジュンが唯一の生き残りであった。彼がハルゼイの護衛に着かず、そのままノーブルチームは全滅していただろう。故に、カーターの判断は正しかったと言える。

 

 

 

「後方よりバンシー多数!!」

 

 戦艦オータムへと向かっていたノーブルチームが乗るペリカンの背後より、多数のバンシーが襲い掛かって来た。

 どうやらこの一帯の制空権を守っていた航空部隊と防空網は全滅したらしく、獲物に飢えていた敵の航空部隊がハイエナの如く群がって来たようだ。

 

「ハッチを開けてくれ! 迎撃する!!」

 

「無茶はするなよ!」

 

 背後から寄って集ってくるバンシーを迎撃する為、エミールはハッチを開けるようにカーターに告げれば、彼は言われた通りに後部ハッチを開けるボタンを押した。

 シュンは軽機関銃を持ち、6は背中に付けたパッケージを守るために脇に避ける。残るギルアズとソウスキーも迎撃に参加する為、重火器を持って身構えた。

 

「撃て!」

 

 ハッチが開いた瞬間に、一同はプラズマ弾を撃ってくるバンシーに向けて撃ち始める。

 火力を集中すれば、通常のライフル弾を使う銃火器でも迎撃できた。

 しかし、ペリカンの背後に集って来るバンシーの数は多く、迎撃しきれない。そればかりか放たれたプラズマ弾が操縦席に居るカーターの右肩を貫いた。

 

「ぐぁ!?」

 

「リーダー!?」

 

「渓谷に入る! 撃ち続けろ!」

 

 右肩を撃ち抜かれながらも、カーターは機体を真下の渓谷に滑り込ませ、空かさずに指示を出した。

 渓谷の中に入ったが良いが、敵機はなおもしつこく追い回してくる。幾ら落とした所で諦めず、執拗にプラズマ弾を浴びせて来る。

 そればかりか、ここに来てお呼びで無い者の襲撃を受ける。

 

「ヘルメットが!」

 

「前からバンシーか!?」

 

「いや、実弾を放つ不気味な戦闘機だ!」

 

 一同が乗るペリカンの真正面から襲い掛かって来たのは、ネオ・ムガルの戦闘機だ。

 それもこの世界の実弾を使う戦闘機では無く、別世界のドップと呼ばれる不気味な形の戦闘機である。

 直ぐにカーターはその戦闘機に撃たれたと、ヘルメットを脱ぎながら知らせる。

 

「なんて奴らだ。ジオンの兵器を投入してきた!」

 

「きっとザクなんぞも投入してくるぞ!」

 

 キャノピー越しに見えるドップを見て、ギルアズは直ぐにネオ・ムガルがジオン軍の兵器を投入して来たことを知らせれば、ソウスキーはMSも投入してくるに違いないと言いながらライフルを追って来るバンシーに撃ち込む。

 

「十時方向より正体不明の大型兵器! 馬鹿デカい巨人だと!?」

 

「正体不明の大型兵器の反応? きっとMSだ!」

 

 負傷したカーターは操縦しつつレーダーを見ると、正体不明の反応が出たので、その方向へ視線を向ければ、そこに居た一つ目の巨人を見て驚きの声を上げた。

 その正体を知っているギルアズが反応すれば、一つ目の巨人ことザク・デザートタイプがザクマシンガンを一同が乗るペリカンに撃ってくる。

 120mmと言う口径は容易くペリカンを撃墜できるため、飛んでくる弾丸をカーターは出血している身体を酷使して避けた。

 数秒後、コヴナントは突如となく現れたネオ・ムガルを敵と認識し、周囲を飛んでいるドップを攻撃し始めた。

 

「コヴナントが正体不明の勢力と交戦中!」

 

「好都合だ。早くオータムの所へ行こうぜ!」

 

「駄目だ。奴らを引き連れて向かうわけには行かない! 徒歩まで行ける距離までに来れば降ろすぞ!」

 

 6がコヴナントとネオ・ムガルが交戦を開始したことを知らせれば、エミールは好都合であると言ったが、追跡の手は緩んでいないので、カーターは離れた距離に降ろすと告げた。

 降ろした後にどうするのかを、シュンは操縦しているカーターに問う。

 

「あんたはどうすんだ?」

 

「俺か? 空の敵を引き付ける。その間にパッケージをオータムへ!」

 

「死ぬつもりか? 俺が…」

 

「駄目だ! どのみちこの状態では戦闘は不可能だ。出来るだけ時間を稼ぐ。未来のために頼んだぞ」

 

「分かった…!」

 

 その返答に死ぬつもりだと分かったシュンは、自分が代わりに操縦すると言ったが、当にカーターの覚悟は出来ており、それと断って未来への希望を託した。

 彼の決意に故郷を守れずに死んだジョージを思い出したが、先に散った歴戦の勇士と同じく、カーターもテコでは動かない人物だと判断し、シュンは着陸に備えた。

 

「よし、この位置だ! 全員、飛べ!」

 

 飛び降りられる高さがある位置まで来れば、カーターは全員に飛び降りるように指示を出した。

 この指示に応じ、カーターを除く全員は飛び降り、受け身を取りながら地上へと降りる。

 全員を飛び降りさせたカーターは、上空に居る全ての敵機を引き付けるため、引き続き被弾したペリカンで空を飛び続ける。

 

『ノーブルチーム、上空の敵機は引き付ける。その間に戦艦オータムへ…!』

 

 二つの敵勢力の戦闘機に追い回されながらもカーターは指示を出し、パッケージを届けるために飛び続けた。地上に居る機動兵器からの攻撃も引き付けており、もう彼を助ける術はない。

 囮を買って出たカーターの犠牲を無駄にしないため、エミールは6が背負っているパッケージを待っているオータムを見て口にする。

 

「あれが戦艦オータムだ。行こうぜみんな」

 

 その言葉の後に、オータムへと殺到するコヴナントとネオ・ムガルの敵を突破しながら向かおうかと思ったが、囮のカーターを無視してオータムへ向かう機動兵器の一団をギルアズが見付けた。

 

「あれを見ろ! 奴等、とうとう周りを気にせずにやり始めたぞ! コヴナントの艦隊の攻撃を受けて数は減っているが、オータムを破壊するにはお釣りがくる程の数だ! 俺とソウスキーで奴らを足止めする!」

 

 ギルアズが指差した方向を見たエミールは、次々と起こる厄介な事態に悪態を付く。

 

「ちっ、コヴナントだけならともかく、ロボットアニメの連中とまで戦わなくちゃならねぇとは。でっ、生身で足止めするのか?」

 

「なに、こういう事もあろうかと奴らより大きいロボットを用意した。ソウスキー、お前もだろう?」

 

「応よ! あの蛆虫共をミンチにするために特別なロボットを持って来た」

 

「俺の分は無さそうだな」

 

 エミールの問い掛けに対し、ギルアズとソウスキーはその用意があると言ってオータムへと向かう敵機甲部隊を止めるために隊から離れた。

 彼らが言う辺り、科学的では説明できない巨大ロボットである事がうかがえるが、シュンはそんな物を持っていない。

 

「さて、行こうぜ」

 

「あぁ」

 

 オータムへと接近する敵機甲部隊はギルアズとソウスキーが使う巨大ロボに任せ、パッケージを輸送する6と共にシュンはオータムへと向かった。

 崖を飛び降り、コヴナントと交戦するネオ・ムガルの双方の敵兵を殺しながらオータムへと向かう中、二人で敵の機甲部隊の足止めに向かったギルアズとソウスキーの方へと視線を向ければ、二人の姿はそこになく、代わりにMSよりも大きい大斧を持ったブリキみたいな外見のロボットや、全身に武器を纏った巨大な戦闘ロボットが居た。

 大きさに見合うほどの重装甲であり、木製のブリキのような大斧を持ったロボットの装甲でさえ貫けず、ネオ・ムガルの機甲部隊は蹴散らされていく。

 その凄まじさは激しく、一同が居る場所まで敵兵が吹き飛ばされてくるほどだ。

 

「ガキの頃、あんなロボットが出て来るアニメを見たことがある。さぁ、あいつ等が本隊を抑えている間に行こうぜ」

 

 エミールが言えば、一同は遭遇するコヴナントやネオ・ムガルの無法者たちを倒しながら進む。

 ネオ・ムガルは蘇らせた通常の歩兵やATのみならず、マゼラ・アタックと呼ばれる自走砲のようなジオン公国の戦車、ASと呼ばれる機動兵器まで出て来る。歩兵はもうなりふり構っていられないのか、モヒカン頭や崩壊した世界の無法者たちまで投入していた。数の長はコヴナントよりも上だ。

 だがこの世界の戦士たちは彼らよりも遥かに強く、エリートやブルート、ハンターに次々と殺されている。

 

「退けぇ! 雑魚共ぉ!!」

 

 更にその大殺戮劇に、6やエミールのスパルタン、生まれながらのスパルタンであるシュンが交われば、激しさを増した。

装備と火力がコヴナントよりも勝っている筈のネオ・ムガルだが、一方は全盛期の宇宙最強の軍隊であるコヴナント、もう一方は超人的な強さを持つ三名のスパルタンなので、無法者達は一方的に殺されるだけであった。

 

「はじきも矢も効かねぇぞ!」

 

「ロケットランチャーを撃つ暇もねぇ! 逃げろぉ!!」

 

 しかもスパルタンやエリートのアーマーに銃弾も矢も通じないので、無法者達は逃げようとするが、ブルート等に虐殺される。

 マゼラ・アタックは戦車であるはずだが、砲塔が飛ぶと言う不気味な仕様の物であった為、コヴナントの戦車であるレイスや、エリートの肉薄を受けて次々と撃破されていくばかりだ。

 ATもASはエリートのエナジーソードを防ぐ事も出来ず、ブルートが振り回すグラビティハンマーも言うには及ばず、搭乗者は突き刺されたエナジーソードで殺されるか、ハンマーを叩き付けられて叩き殺された。

 更にはアーマーを着ただけのスパルタンにもいとも容易く破壊される。

 6がASのサページに張り付き、アーマーの握力で殴りつけるだけで装甲坂はへこみ、操縦席まで突き破れば、そこから手榴弾を投げ込まれ、内部爆発を起こして大破する。

 

「ぬぁぁぁ!!」

 

 エミールはバララントのATのファッティーに取り付き、握力で装甲坂を引き剥がし、露わとなった操縦者に散弾銃を撃ち込んで殺害した。

 シュンの方はと言えば、群がる強者たちを次から次へと大剣で惨殺して行き、屍の山を築いていく。

 三名のスパルタンの介入により、数分後にはコヴナントとネオ・ムガルの双方の将兵は物言わぬ屍となった。

 

「時間が掛かったな。急ごうぜ!」

 

 辺りに敵が居ないことを確認すれば、エミールは無法者の頭に突き刺していたククリナイフを引き抜き、刀身の血を拭ってから鞘に戻し、オータムへの道を急いだ。シュンも大剣の刃の血を振り払って、急ぐ6とエミールの後へ続く。

 幾度か敵と遭遇したが、オータムに殺到しているのか、それとも二機の巨大ロボに戦力でも集中しているのか、数は少なかった。

 敵を倒しながら進んでいけば、一気にオータムまで行ける‟足‟を見付ける。つまりマングースだ。

 

「足を見付けたぞ。ちょうど二台ある。6、運転してくれ。瀬戸、お前は一人だ」

 

「慣れてるさ」

 

 周囲に転がっている陸軍の兵士たちには不要なので、三名のスパルタンは二台あるマングースに乗ってオータムへと全速力で向かった。

 

「クソッ、一つ目だ! ジグザグに動け!!」

 

 全速で走っている最中、オータムを破壊するために向かっている三機のMS、ザクⅡJ型が二機、ザク・キャノン一機がこちらに気付くなり、手にしているマシンガンを撃ち込んで来る。

 迫撃砲弾クラスが何十発も飛んで着弾し、その衝撃波が飛んでくる。

 ジグザグに動いて的を絞らせないようにしているが、回避しきれずはずもなく、シュンが乗っているマングースが衝撃波を受けて横転する。

 

『瀬戸!?』

 

「大丈夫だ、行け! その届け物を優先しろ!!」

 

『くっ、生き残れよ!』

 

 エミールの心配する無線連絡に対し、シュンは大剣を杖代わりにしながらパッケージをオータムに届けることを優先するように告げ、自分にとどめを刺しに来る振り下ろされたザクのヒートホークを大剣の刃で受け止めた。

 

「うっ!? くそ、サウナに居る気分だな! 全く!!」

 

 高熱の刃を自分の得物で受け止めたシュンは、スーツ越しから伝わって来る身も焼けるような暑さに悪態を付く中、機械の巨人の力を押し返そうと左手を大剣の刀身に添える。

 もう隠す必要も無いのか、隠してあったバリアジャケットを発動し、握力を増大させて押し返し、ザクのバランスを崩させれば、地面を蹴ってザクの頭上まで飛び上がり、巨大な刀身を振り下ろす。

 振り下ろされた巨大な刃は、ザクの頭部を見るも無残な姿に変え、更には上半身の半分まで届き、爆発まで残り数秒となる。後はザクとザク・キャノンのみだ。

 

「一機め!」

 

 直ぐに爆発寸前のザクから離れ、高速で二機目のザクの股下に潜り込み、目にも止まらぬ速さで大剣を振るって両足を切り落し、地面に倒れる寸前のところで左脇腹にあるコックピットのハッチに大剣を突き刺してパイロットを殺害する。それと同時に一機目のザクが大爆発を起こした。

 あっと言う間に二機のザクがスクラップにされたところで、最後のザク・キャノンは右肩の大砲、対人や建物を破壊する時に有効な榴弾をシュンに向けて撃ち込んだが、バリアジャケットを纏った大男は拘束で動いてそれを避け、一気にザク・キャノンまで近付き、大剣の刀身を驚いて身動きが取れない敵機を連続で斬る。

 

「これで三機分のスクラップだ」

 

 シュンが地面に足を着け、大剣の刀身に付いた油を振り払った頃には、連続で切り裂かれたザク・キャノンの上半身はバラバラになり、残っているのは立ったままの下半身だけであった。

 直ぐに6とエミールの後を追おうとしたが、前方からネオ・ムガルの無法者共と、後方からコヴナント軍が迫って来る。

 

「ぺっ! 前と後ろから敵か。ベッドで肉付きの良い女二人なら嬉しいが。仕方ねぇ、ダンスパーティと洒落込むか!」

 

 前と後ろを向いて無数の敵が迫っていることに、シュンは死の恐怖も感じず、ただおのれの闘争本能に身を任せ、前方のネオ・ムガルの方へ走った。

 おそらく袋叩きにされるだろうが、何が何でも後の伝説であるマスターチーフを守らなければならないし、何より復讐の態勢であるネオ・ムガルの計画を潰さなくてはならない。

 そんな意気込みで雄叫びを上げながら自分と同じ未来から来たネオ・ムガルの無法者たちに向かったが、彼の頭上で凄まじい銃声が鳴り響いた。

 

「なんだ?」

 

 頭から降って来る無数の空薬莢にシュンは足を止めて頭上を見上げれば、あのT-elosが落下しながらKOS-MOSのように両手にガトリング砲を持ち、その弾丸の雨をネオ・ムガルの無法者たちに降らしていた。

 無数の弾丸の雨に無法者たちはバタバタと倒れて行き、屍の山を築く。

 地面に着陸した頃にはガトリング砲の弾は切れたので、背後から迫って来るコヴナント軍に向けて二つとも投げる。

 投げられた二つのガトリング砲は数体のグラントに当たり、無力化に成功した。

 

「ゴミ共、死ぬ準備は出来ているな?」

 

 地面に降り、立ち上がったT-elosは足を止めた無法者達に問い掛けた。

 

「おぅ、来たか。SFの住人らしく、後ろの方を…」

 

 一方でハルゼイを送り届け、こちらに合流して来たT-elosにコヴナントの足止めを頼もうとしたシュンであるが、顔面を殴られて地面に倒れ込んだ。

 

「生け捕りにして輪せぇ!!」

 

「獣共め。二度と蘇られないように消してやる」

 

 自分の姿を見るなり下賎な言葉を吐き、大挙して押し寄せて来る無法者の集団に怒りを覚えたのか、胸部に着いている装甲を開いた。KOS-MOSと同じくT-elosも相転移砲を放てるのだ。

 

「ウルティムム・テネリタース! 塵と化すが良い!!」

 

 目前の無法者の集団に向け、胸部に集中したエネルギー砲を放った。

 放たれたエネルギーは強力なビームとなり、前方に居るネオ・ムガルの部隊は全て跡形もなく消滅した。

 KOS-MOSと同じくT-elosも相転移砲が使えることを知ったシュンは、下品な言葉を呟く。

 

「あの姉ちゃんと同じくガングロ姉ちゃんもおっぱい砲を撃てるのか…」

 

「相転移砲だ。貴様も消されたいか?」

 

「いや、すまねぇ。でっ、連続では撃てないんだよな?」

 

「当たり前だ。連続で放てれば連中をコヴナント諸とも消し炭にしている」

 

 下品な言葉を吐いたが為に、T-elosに拳銃の銃口を向けられるシュンだが、相転移砲は連続で撃てないと問われれば、当たり前であると答える。

 

「だろうな。でっ、背後から迫るエイリアンの軍隊はどうする? これで足止めでもするか?」

 

「馬鹿か貴様? 連中はこの時代の雑魚共だ。早くスパルタン共の場所へと向かうぞ」

 

「あぁ、俺も相手はしなくて良かったよ。お前とは…あぁ、(わり)ぃ。もう言わねぇ」

 

 コヴナントの相手はせず、合流するとT-elosが告げれば、シュンはそれに従い、背後のコヴナントにバトルライフルを撃ちながら合流を急ぐ。その際にRPG-7対戦車火器を回収した。

 エミールと6が入った洞窟まで辿り着けば、シュンは途中で拾っておいたRPG-7の安全装置を外し、弾頭の安全ピンも外してから出入り口の天井へ向けて発射する。

 

「これで暫くは時間が稼げる」

 

 天井が崩落して出入り口が塞がったのを確認した後、予備弾倉の無いRPG-7を捨て、シュンはT-elosと共に6とエミールの後を追った。

 洞窟の中は天井に穴が所々に開いているおかげで明るく、警戒しながら進む6とエミールに直ぐに追い付くことが出来た。

 闇雲に足音を立てて近付いた為、前方を走る二人に敵と勘違いされてしまう。

 

「なんだ、お前らか」

 

「済まないな。この姉ちゃんを待っていた」

 

「そうか。スカラベやデカいロボットが撃ち合ってる。この隙に行っている所だ」

 

「悪くないな。それじゃあ急ごうぜ。いつこっちに気付くか分からん」

 

『ノーブル…! 少し…不味い状況だ!』

 

 味方だと分かれば、二人は銃口を下げた。

 シュンとT-elosと合流したエミールは、合流するまでに起きた状況を説明した。

 双方が潰し合っている間に一気にオータムへと向かおうとしたが、途中でカーターからの通信が入った。不味い状況と伝えたので、天井から空いた穴を見上げれば、ジオンの重MSであるザメルが居た。

 巨大なMSであり、右肩に備えた折り畳み式の巨大な主砲を展開させ、その主砲でスカラベを一撃で撃破する。この手法の威力は、オータムに取って脅威となるだろう。

 

「突破できます!」

 

『いや、援護無しでは無理だ。それにこいつは何としても撃破しなくちゃ駄目だ!』

 

「火力が足りませんよ!」

 

『火力ならここにある! とっておきのな!』

 

 ザメルを見たエミールは自分等だけで突破できると言うが、幾らT-elosと居てもあの巨大な機械の化け物を相手に奮闘は期待できないだろう。

 それを踏まえ、カーターはオータムの脅威であるザメルを早く破壊するには、自分が乗っているペリカンによる特攻しか無いと判断する。

 

「私がやろうか? 私ならあのデカいのをスクラップに出来るぞ。ただし、時間は掛かり、消耗は激しいが」

 

『いや、今はその力で温存しておけ。次の脅威の為にな!』

 

「了解した。お前とは短いが、その犠牲を無駄にしないように努めよう」

 

 特攻を仕掛けると分かったT-elosは、自分ならザメルを時間と消耗するが撃破できると言うが、カーターは次の脅威に備えて温存しろと言って断る。

 彼の返答を受けたT-elosはその犠牲は無駄にしないと約束すれば、カーターは感謝して自分を撃ち落とそうと対空砲を撃ってくるザメルに特攻を仕掛ける。

 

『あぁ、嬉しいね。では、後は頼んだぞ…!』

 

 その数秒後、カーターが乗るペリカンは対空砲を受け被弾しながらもザメルへと特攻し、物の見事にザメルを完全に撃破した。

 ノーブルチームはジョージ、キャットに続き、リーダーのカーターを失った。

 だが、悲しんではいられない。彼の為にも任務は継続すべきだ。

 そう思ったエミールは、ヘルメットのマップで裂け目を見付け、6やシュン、T-elosを伴ってオータムへの道を進んだ。

 

「東に裂け目がある、急ごう」

 

 カーターの死を無駄にしないため、エミールと6は先へと進んだ。

 左手を曲がり、宇宙船解体場へ向かう中、洞窟に入る前に地上で敵の大部隊を引き付けているギルアズとソウスキーの様子を確認した。

 

『あの二体のスーパーロボットはどれぐらい持つんだ?』

 

 足を止めて二体の巨大ロボが多数の敵を相手に奮闘している光景を眺めているシュンに、エミールはどれくらい持ち堪えられるのかを通信で問う。

 

「あの様子からして、十分は限界って所か。とにかく、急がなきゃ未来は連中の思うままだ」

 

「だったら急ごう」

 

 この問いに十分は限界だと答えれば、エミールはオータムへと急いだ。

 洞窟には四名の陸軍兵士の遺体が転がっていた。武器もそのままであり、彼らの遺体から武器弾薬を回収し、オータムへと急ぐ。

 敵が居ないわけでは無く、その気配を察知したエミールはハンドサインで止まれの指示を出す。

 

「ドローンだ」

 

「ウジャウジャ居るな。鵜飼いするか?」

 

「いや、強行突破だ。時間を無駄には出来ねぇ」

 

「俺もそう思ってた所だ。早くしねぇと後ろの方から追い付かれる」

 

 先頭のエミールがドローンを見付ければ、T-elosは熱源センサーでその数を把握して迂回するのかを問えば、強行突破すると答えた。シュンも同意見であり、背後のコヴナント軍を心配している。

 直ぐに一同は多数のドローンが待ち受ける洞窟に突撃し、天井から続々とくるドローンを排除しながら洞窟を駆け抜けた。

 

「クソッタレ共が!」

 

 エミールが散弾銃を撃ち、カーターを失った怒りを敵にぶつける。敵の数はそれほど多くなく、四名の戦闘力の高さにより呆気なく全滅した。

 洞窟を抜けて宇宙船解体場まで来れば、オータムの艦長からの無線連絡が入る。

 

『こちら戦艦オータムのキース艦長。ノーブル、こちらの発進準備は完了した。ドライドックのDへ進め。そこで私がパッケージを受け取る』

 

「直ぐ向かいます」

 

『頼むぞ。敵が迫っている。カウントダウンは中断しない』

 

 その通信の後、宇宙船解体場の前で戦闘している陸軍の部隊と合流した。

 友軍が交戦しているのはコヴナントでは無く、ネオ・ムガルの部隊であった。突如となく襲って来た同じ人類に陸軍の将兵らは困惑していたが、コヴナントと同じく自分等を殺しに来るので、敵と判断して砲火を交えている。

 

「スパルタン、こっちです!」

 

 一人の兵士が自分たちを呼び寄せたのを聞けば、直ぐに四人は自分等を呼んだ女将校の元へ行って状況説明を聞く。

 

「反乱軍でも無い何所からか来たかも分からない連中が占拠しています! 加勢してくれれば、海兵隊が居る場所まで行けます!」

 

「よし、一分一秒でも時間が惜しい。それと、このガングロの姉ちゃんは味方だ」

 

「あぁ、突っ込むぞ! このレーザー砲で援護を頼む!」

 

 状況が分かれば、T-elosを怪しんでいる兵士にシュンが味方であると言ってから遮蔽物を出てネオ・ムガルの敵兵等を殺し始めた。

 その次にエミールは拾ったレーザー砲を別の兵士に渡し、同じく飛び出した6と共に前線へと向かう。

 

「邪魔だ! この悪党共!!」

 

 散弾銃を撃ちながら突っ込み、自分に飛び掛かって来た無法者に対しエミールは、右肩のククリナイフで無法者の腹を刺してから引き抜いて首を斬りおとす。

 6は機関銃を持って前進するシュンの背後から迫る敵をほぼ全てを撃ち殺し、自分に斧を振り下ろして来た大男の斬撃を躱して頭にコンバットナイフを突き刺して無力化する。

 シュンは言うには及ばず、機関銃で複数の敵を撃ち殺し、大剣で向かって来る敵を次々と惨殺し、死体の山と血の海を作り上げる。

 一方でT-elosは、左手に手にした拳銃で次々と無法者らを一発ずつで撃ち殺しながら前へと進んでいる。6を襲ったような大男が相手でも、振るわれる戦槌か大斧を軽やかに躱して一度に両手に出したエナジーソードで二人も殺す。

 

「なぁ、俺たち…必要か…?」

 

「もうあいつ等だけで良いんじゃないかな…」

 

 圧倒的な強さを持つ四名の活躍に、陸軍の将兵らは自分たちが必要ないのではと疑問に思う。

 解体場の前に陣取っていたネオ・ムガルの無法者らはコヴナント軍よりも弱く、エミールや6、シュンにT-elosが参入して僅か八分で全員あの世に送り返された。

 敵が全滅すれば、海兵隊が居る区画へと進むために描いた以上内部へと突入する。

 そこにもネオ・ムガルの無法者や兵士たちが陣取っていたが、途中から乱入して来たコヴナント軍に攻撃され、あっさりと全滅した。

 

「顎割れめ!」

 

 流石のT-elosも全盛期のコヴナントを支えて来たエリートにはてこずっていたが、何とか動きを見極め、右腕のソードで腹を切り裂いてエリートを倒す。

 乱入してきたコヴナントの部隊は数が少なかったのか、何とか全滅させることに成功し、海兵隊が居るとされる区画までの道を切り開くことが出来た。

 

「おい、その…グノーシスとか言う幽鬼みたいなのを実体化できるだろ? 一応はそいつをやった方が良いんじゃねぇか?」

 

「それもそうだな。連中の事だ。グノーシスを大量にばら撒いているかもしれん。ヒルベルトエフェクト!」

 

 一度、銃の再装填の為に足を止めたシュンは、ネオ・ムガルがなのは暗殺と同様にグノーシスを投入していると予想し、T-elosにヒルベルトエフェクトの発動を要請した。

 これに一理あると判断したT-elosは応じてヒルベルトエフェクトを発動し、グノーシスを実体化させる。

 それから海兵隊員と合流すれば、シュンが予想した通りに数体のグノーシスが海兵隊員達とコヴナント軍と三つ巴の戦闘を繰り広げていた。

 

「俺の言った通りだ」

 

「スパルタン! 突破してください! 援護します!!」

 

 目前に居るグノーシスを見てシュンが自分の思った通りになったと呟けば、自分たちを待っていた分隊支援火器を持つ海兵隊員は、突破してくれと言って窓ガラスを割り、射線上に見えるグノーシスとエリートらに向け掃射する。この援護射撃を受け、四名はオータムへと続く道を行く。

 もう既に敵はオータム近くまで迫っており、解体場内部は激戦区と化していた。

 進む度に味方の兵士の遺体と、互いに潰しあって果てたコヴナント兵やネオ・ムガルの無法者や将兵らの死体が幾つも転がっている。

 指定された場所まで辿り着けば、そこに陣取っている海兵隊員にエミールは状況を問う。

 

「状況はどんなだ?」

 

「マスドライバーを上に取り付けました。他に援護が無いので、それを失えば脱出方法は無いでしょう」

 

 状況が分かれば、エミールはオータムのキース艦長に連絡を取る。

 

「ノーブルよりキース艦長へ。パッドに着きました」

 

『了解した。降下艇で向かう。LZを確保していてくれ。地上から迫る敵は、オータムの対空砲や副砲に排除させる』

 

「了解です。よし6、これで終わりだ。俺は砲台を動かしてハエ叩きをする。お前はパッケージを届けろ」

 

「了解」

 

 キースが取りに向かうためにランディングゾーンを確保するように指示を出せば、それに応じてエミールは了承した。

 上にあるマスドライバーを動かす為、エミールは6にLZの確保を命じれば、彼は命令に応じてシュンとT-elosと共にLZに使われているパッドを陣取っているコヴナント軍の排除を行う。

 陣取っているのはブルートの突撃部隊だ。降下艇から増援と合流した後、LZ確保のために前進して来たシュン等に突っ込んで来る。

 

『俺は砲台で出来るだけ降下艇を撃ち落とす。ジョージやキャット、カーターの分まで連中を一匹残らず撃ち落としてやる!』

 

 そのエミールの通信の後に交戦は開始された。オータムの対空砲や副砲、それにエミールが操縦するマスドライバーが火を噴き、コヴナントとネオ・ムガルの航空機が撃ち落とされていく中、シュンは大剣を引き抜いて次々と突っ込んで来るブルートを切り捨てて行く。

 6と海兵隊員等も奮闘し、押し寄せて来るコヴナント軍を排除してLZ確保に乗り出す。

 T-elosは先に散ったカーターの遺言通り、次なる脅威に備え、出来るだけ力を温存させつつ、続々と出て来る敵を排除する。

 

『キャットの分だ!』

 

 上空のネオ・ムガルの大型航空機を撃ち落としたエミールの叫び声が無線機から響いた後、直ぐにコヴナントの第二陣が来た。

 マスドライバーの砲撃を免れた複数のファントムが現れ、次々とブルートを中心とした突撃部隊を降ろしてくる。直ぐに一同は迎撃し、降下中のブルートやジャッカルを排除する。

 

「ハンマー持ちが降りたぞ!」

 

 全てを迎撃できず、グラビティハンマーを持ったブルートの降下を許してしまう。

 そのブルートは何発撃たれようが怯みもせず、複数の海兵隊員を撲殺した後、雄叫びを上げながらT-elosに殴り掛かって来る。

 

「獣が!!」

 

 振り下ろされた強力なハンマーを躱し、T-elosは左手のナイフをブルートの首に突き刺す。首元にナイフを突き刺されたブルートは、血を吹き出しながら倒れて動かなくなる。

 他のブルートはシュンの大剣の餌食になるか、6が持つマークスマンライフルを頭部に撃ち込まれて排除される。

 

『新たな敵部隊が接近! 例の連中だ! 気を引き締めろ!!』

 

「ネオ・ムガルの連中か」

 

「幾ら来ようと無駄だ」

 

『地獄に叩き戻してやる!!』

 

 キースがコヴナントの代わりにネオ・ムガルが突っ込んできたことを知らせれば、一同は続々と突っ込んで来る無法者や甦らされた何処かの軍隊の将兵らを始めた。

 敵は人型の物ばかりでは無く、グノーシスやAT、ASも続々と投入して来る。

 

「ぐぁ!」

 

「クソッ、アニメの世界へ帰れ!」

 

 一般の兵士である海兵隊員では化け物や機動兵器に敵わず、次々と倒れて行く。それでも彼らは勇敢に戦い、何匹か数機を道連れにする。

 ネオ・ムガルはこの場に通常兵器も含め、MSやゾイドなどの大型兵器も投入しているようだが、空はエミールのマスドライバーで手当たり次第に撃ち落とされ、地上はオータムの艦砲射撃で潰される。

 LZの確保はいつになるだろうか。

 そう思いながらシュンは次々と出て来るネオ・ムガルの刺客たちを大剣で切り裂く中、カーターが言っていたT-elosの力を温存すべき敵が出て来る。

 

『敵大型航空機が三機接近中! とても迎撃しきれん!』

 

『一機当たりにマスドライバーを三発もぶち込まないと沈められない! 何とかできるか!?』

 

「任せておけ。この時を予期して相転移砲のチャージは完了している」

 

 キースの知らせでジオンの超大型航空機である攻撃空母ガウが三機ほど接近していることが分かれば、同じくガウにマスドライバーを撃ち込んでいるエミールは迎撃しきれないと告げた。

 これに備えてカーターはT-elosの力を温存していたと分かり、彼女は直ぐにチャージが完了した相転移砲を、ビーム砲を撃ちながら接近して来るガウ三機に向けて放った。

 

「おぉ、すげぇ!」

 

「昔見たアニメみたいだぜ!」

 

「アダルトアニメ見てぇだ」

 

 放たれた相転移砲に、海兵隊員等は思ったことを続々と口にする。

 凄まじいエネルギーのビームは三機のガウを一度に撃墜し、ネオ・ムガルの戦力を大幅に削り取った。

 かなりの損害を受けたのか、ギルアズとソウスキーに攻撃していた部隊も含め、ネオ・ムガルは撤退を始める。コヴナントも同様であり、再編のために後退し始めた。

 これでパッドの確保に成功した。周囲に敵影が居ないことを確認したエミールは、キースにパッドの確保が出来たことを報告する。

 

『ノーブルよりキース艦長へ。パッドを確保!』

 

『了解、いま向かっている』

 

 報告を受けたキースは、ペリカンでパッケージを受け取りに行く。エミールはパッケージを持つ6に、それを届けるように指示を出す。

 

『6、行け。パッケージを届けろ。この星から脱出するんだ。俺が援護する』

 

 同時に自分が残って脱出を援護すると告げれば、6はエミールの気持ちを察し、キースが乗るペリカンが着陸するプラットフォームへと向かう。

 

「奴もこの星に骨を埋めるか」

 

「多少の干渉はあったが、時間に沿って進んでいる。助けようなどと思うなよ? 気持ちは分かるが」

 

 無線を聞いていたシュンは、エミールもまたここに骨を埋める覚悟をしていたことを知った。

 彼が戦死することを知っているT-elosは、干渉しないようにシュンに釘を刺す。

 T-elosはシュンの気持ちを分かっている。別の意味であるが。

 エミールが近付くコヴナントの航空機を撃ち落とし続ける中、キースが乗るペリカンがプラットフォームへと近付いてくる。

 

『こちらキース、プラットフォームデルタに到着する。パッケージを受け取ろう。ノーブル6』

 

 キースからの無線で6は彼が乗るペリカンの近くまで向かい、背中に引っ付けてあるパッケージを手に取る。

 生き残った海兵隊員等は共にやって来た別のペリカンに乗り込み、唯一の脱出手段であるオータムへと乗船していく。

 一方で6が待っているプラットフォームへとペリカンを駐機させたキースは、彼よりパッケージを受け取った。

 キースの隣に、右腰に二本の刀、脇差と大太刀を携えた侍の男が用心棒として立っている。シュンはその男を一目見て、自分と同じくアウトサイダーが送り出した者であると理解する。

 

「良くやってくれた。ハルゼイの言った通りだ」

 

「私だけの力では…」

 

「良いチームだった」

 

 パッケージを受け取ったキースは、事前にハルゼイより連絡を受けていたのか、ここまで届け物を守って来たノーブルチームの面々に敬意を示す。

 隊長を含め、先に散って逝ったメンバーを守れなかった6は自分を責めるが、キースはその犠牲は無駄ではないとなだめる。

 次に近くに立っているシュンやT-elosに、共に脱出しないかと声を掛ける。

 

「君たちも脱出するか? 行先は地球行きの最後の便だ」

 

 この誘いに乗り、シュンはキースが乗るペリカンへと乗り込もうとしたが、それと同時にコヴナント軍の巡洋艦がオータムに迫って来る。

 

「巡洋艦だ、オータムに向かっている。ノーブル4、あいつを攻撃しなければ脱出できん。聞こえるか?」

 

『そいつは任せてください』

 

 マスドライバーに乗るエミールに接近して来る巡洋艦を攻撃するように命じてから、パッケージを持ってペリカンの内部へと戻って行った。

 

「ブリッジ、こちら艦長。パッケージを確保した、オータムに戻る。対空監視厳だ!」

 

 指示を出しながらペリカンの操縦席近くまで行くキースに続き、6とシュン、T-elosは海兵隊員等と共に乗り込もうとした。

 だが、先にオータムへと向かおうとした別のペリカンは現れたファントムに撃墜され、後から乗り込もうとした6、シュン、T-elosは墜落して来たペリカンに阻まれて吹き飛ばされる。

 そのファントムは、対空射撃を続けるエミールが乗っているマスドライバーへと向かう。

 

「まずい!」

 

 直ぐにエミールを助けようと、6等はマスドライバーへと向かおうとしたが、ファントムのプラズマ弾を浴びせられ、阻まれてしまう。

 マスドライバーに取り付いたファントムは、決死隊である三名のエリートを降ろし、エミールを攻撃し始める。

 一体目のエリートに攻撃されるエミールであるが、返り討ちにして床へ叩き付け、散弾銃を撃ち込んでとどめを刺す。

 

「次はどいつだ!?」

 

 エリートのとどめを刺したエミールは次なる敵を探すが、その敵は背後から現れ、背中をエナジーソードで突き刺される。

 

「ぐっ!? お前も道連れだ!!」

 

 エナジーソードを刺されたエミールであるが、彼は自分の背中を突き刺したエリートに向け、自分の得物であるククリナイフを敵兵の頭に突き刺し、道連れにして散った。

 その後からキースが乗っているペリカンが戻って来る。

 

「さぁ乗ってください! 脱出しましょう!!」

 

 海兵隊員が手を伸ばすが、三名はオータムの脱出を援護するために残る。

 

「いえ、残ります」

 

 6が代表して言えば、キースは彼の気持ちを察した。

 

「幸運を」

 

「お前もな、6」

 

 彼の気持ちを察したキースは、オータムへと向かうように無言で指示を出した。三名を残し、キースを乗せたペリカンはオータムのハンガーへと向かっていく。

 

「さて、マスドライバーをぶっ壊される前に再起動するか」

 

「それもそうだな。ネオ・ムガルの連中が居るかもしれん。行くぞ」

 

 暫しの無言の中、シュンが代表して言えば、一同はマスドライバーを再起動させるために最上階へと向かった。

 そこへ向かうまでに、ファントムが降ろした決死隊のグラントが居たが、戦闘力が高過ぎる三名の相手が務まるはずが無く、次々と蹴散らされ、最後の砦として立ちはだかる赤いアーマーのエリート一体のみとなる。

 しかし、その赤いエリートが三名の相手が務まるはずが無く、一瞬にして殺されてしまう。

 

「よし、乗れ! 援護する!!」

 

 シュンは周囲警戒を行い、6にマスドライバーに乗るように指示を出せば、彼は砲座に乗り込み、次々と向かって来るコヴナントの航空機を撃ち落とし始める。

 

「ちっ、クソッタレ共のお出ましだ! ぶっ殺せ!!」

 

 マスドライバーだけでも破壊しようと、ネオ・ムガルが残る戦力を持って総攻撃を仕掛けて来た。

 それを知らせたシュンは、T-elosと共に向かって来る無法者たちの迎撃を行う。

 数機、数十機とバンシーやファントムが撃墜されていく中、未来からやって来た二人は無法者の屍の山を築き上げる。

 

「地上の連中はこれで全滅か」

 

「主力の殆どはあいつ等の方へ行っているからな」

 

 全身に爆弾を巻き付けた特攻隊を全て撃ち殺せば、ネオ・ムガルの部隊は全滅した。

 それから少しでも6の役に立てようと、観測手となって指示を出そうとしたが、ギルアズからの救援の要請が入る。

 

『シュン、T-elos! もうここは良いだろう! ネオ・ムガルの部隊が宇宙に来ている! このままではオータムが危ない! 早くこっちへ来るんだ!!』

 

「そっちでどうにか出来ないのか?」

 

『無理だから言ってんだろうが! 俺のロボットはボロボロなんだ! 予備のロボットじゃどうにもならん!!』

 

 主力を引き付けていたギルアズ達からの救援要請に、シュンはマスドライバーを操縦する6の方へ視線を向けた。

 

「二人とも行ってくれ! ここはもう良い!」

 

「お前はどうするんだ!?」

 

「大丈夫だ! 未来を守ってくれ!!」

 

「分かった!」

 

 6が未来を守るために行けと告げた。

 ジョージとカーターと同様、6も覚悟を決めたと分かったシュンは、T-elosと共にギルアズとソウスキーの救援に向かった。

 一人マスドライバーに残った6は、敵の巡洋艦に向け、主砲を撃つために巡洋艦がシールドを解除するのを待つ。

 その数秒後、シールドが解除された巡洋艦に向けてマスドライバーのエネルギー弾が発射され、巡洋艦を一撃で撃沈した。

 

『見事だ、スパルタン。全クルー、発進に備えろ』

 

 脅威が去ったのを確認したオータムは、直ぐに離陸して惑星を離脱し始めた。

 

『こちらオータム、離脱する!』

 

 オータムが大気圏を突破したのを見れば、シュンとT-elosは途中で乗り捨てられたマングースに乗り、ギルアズとソウスキーとの合流地点へと急いだ。

 

 

 

「着いたか! おーい、こっちだ!!」

 

 合流地点へと辿り着いたシュンとT-elosは、ギルアズとソウスキーの近くに寄った。

 ヘルメットを脱いだシュンは、巨大なロボットが無い事を問う。

 

「お前たちのデカいロボットは何所に行った?」

 

「仕舞ったんだよ、タコ」

 

 何かの装置の準備をしているギルアズに代わり、ソウスキーが悪態を付きながら答えれば、シュンは少し苛立ったか、怒りを抑えて次の質問であるどうやって宇宙にあがるのかを問う。

 

「でっ、どうやって宇宙へ上がる。見たところ、ロケットが一機も無いが?」

 

「飛ぶのはMSだ、いま準備している。さぁ、できたぞ」

 

 この問いに準備が出来たギルアズが答えれば、彼は広い場所へ向けて何かを投げた。

 現れたのは高機動型ザクⅡ一機と、別世界のドムであるドム・トルーパー、宇宙世紀が終わってから千年後のMSのマック・ナイフ、ガンダムに似た不死鳥の名を持つ人型兵器ヒュッケバインと、四機の機動兵器が現れた。

 

「俺はあの一つ目か?」

 

「質問の多い奴だ、お前はザクⅡR型だ。俺はマック・ナイフ、ソウスキーがドム・トルーパー。そこの姉ちゃんはヒュッケバインだ」

 

「中々良いセンスをしているな。見直したぞ、のろま」

 

 シュンは誰がどの機体に乗るのかを問えば、ギルアズは面倒くさそうに、シュンが高機動型ザクで、自分は奇形な姿のマック・ナイフ、ソウスキーがドム・トルーパー、そしてT-elosがヒュッケバインと答えた。

 自分の乗る機動兵器をヒュッケバインに推定したギルアズに、T-elosは褒め言葉を贈る。

 だが、大気圏突破できる装備がない事に疑問を抱いたT-elosはギルアズに問い質す。

 

「でっ、どうやって宇宙へ上がる? どうみても大気圏突破用の装備は無いが?」

 

「心配ご無用。機体に乗ってから衛星軌道上へワープする。そこで先に宇宙に居る一名と合流し、オータムをワープするまで護衛する。分かったか? さぁ、早く乗れ!」

 

 T-elosの問いに、ギルアズは宇宙へワープすると答え、早く機体に乗れと怒鳴り散らした。

 一同はそれに従い、それぞれ指定された機体へ乗った後、それを確認したギルアズは全機を宇宙へとワープさせる装置を起動させた。

 

『全員乗ったな? では、ワープするぞ!』

 

 ギルアズが装置を起動させれば、四機の機動兵器はコヴナントのガラス化攻撃で荒れ果てた惑星リーチから消えた。

 

 

 

 一方、オータムの脱出の支援のために一人で残った6は、マスドライバーから離れ、他の脱出手段を探さず、先代のスパルタンⅡや同期のスパルタンⅢたちの亡骸が転がる戦場へと来ていた。

 もう既に彼以外に戦っている者は居ない。死んだか、何処かへ隠れているかだ。

 そんな彼はマークスマンライフルを手に、空を見上げる。時間は夜中だと言うのに、まるで曇り空の昼頃のように明るい。その理由はコヴナント軍のガラス化攻撃の影響により、大気が汚染されているからだ。

 オータムから敵の目を自分に出来るだけ集中させるため、6はわざと目立つ場所に立ち、敵が自分を殺すために群がって来るのを待った。

 そして、彼は手の込んだ自殺のような戦いに、独り身を投じた…。




次回からは新章に突入です。

取り敢えず、決まらなかったら前作のIS世界でやったトランスフォーマー・ザ・ムービーのようなサイバトロンシティ戦をやってみたいと思う。
IS本編に介入すると言うことは無いけど(笑)。

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