やっぱ永遠にやれるゲームって言われることはあるね。俺はまだ序盤だけど。
どのくらいの部隊が、この陥落が確定した惑星リーチより撤退に成功したのだろうか?
リーチは時の流れに沿うようにコヴナント軍の大艦隊の侵攻を受け、その地表の上に長い年月を掛けて築かれた街や田畑、施設、宇宙港が一瞬にして破壊されていく。
戦争とは残酷な物である。特に第二次世界大戦では、街と言う街が二つの陣営の競争で開発された兵器で破壊尽された。これらを立て直すのに、戦争で使われた同じ費用と歳月が使われた。
だが、コヴナント軍は惑星を幾つも破壊する火力を持っている。いずれこの星は、再生不可能な程のダメージを負う事となるだろう。
「6、ブラック、ギアーズ、報告は後で聞く。コヴナントが全通信を妨害している。キャットの作戦に協力してくれ」
海岸で回収されたシュン、ギルアズ、6の面々は、リーダーであるカーターの元へと返された。
彼が居るビルの屋上に降り立った三名は、休む間もなくカーターより指示が出される。
ジョージは残念であったが、部下で戦友である三名が自分の元に戻ってきたことに、カーターは安心する。
「無事でよかった」
この言葉に6はジョージの事を思い出し、止められなかったことを悔やみながら謝罪しようとする。
「ですがジョージは…」
「チームの誇りだ」
カーターは6の事を責めず、彼は自分達ノーブルチームの誇りであると言って、自分の任務に向かった。
三名はキャットが立てた作戦に従い、数名の陸軍の兵士を伴ってコヴナント軍の通信妨害装置を破壊に向かう。
天候は戦闘の影響で悪化したのか、雨が降りしきっていた。
この高層ビルのジャングルの上空を飛び交うための移動手段は、多目的二発機であるファルコンだ。三人はそれぞれの目標に向かい、先行した部隊と合流して通信妨害装置を破壊する。
早速、キャットより状況説明がなされる。
『状況を説明するわ。コヴナントは街のありとあらゆる高層ビルにジャミング装置を仕掛けた。ホランド大佐からの通信が途絶えた。完全にね。各部隊がジャミング装置の破壊に向かっているけど、守りが硬いわ。全滅してなきゃ良いけど。私が目標を確認したら、攻撃を掛けて。一気にね』
キャットからの通信が終わったのと同時に、一番近くにあった高層ビルが倒壊した。上の流れ弾か、落ちて来た残骸に耐え切れずに倒壊したのだろう。
それでも構わず、コヴナント軍は攻撃の手を緩めず、人類に必要な程の追撃を続ける。
またジュンとエミールの姿が無いが、二人はカーターかキャットと行動を共にしているのだろう。
三名はそれぞれ三方に別れた。シュンは一番危険な中央、6は病院側、ギルアズは安全な東の高層ビル群だ。
シュンはファルコンの操縦をパイロットに任せつつ、携帯式対空ミサイルで撃ち落とそうとして来るバンシーの迎撃に当たる。
対空ミサイルは一撃で敵を葬り去る威力があり、撃つたびにバンシーは火達磨となって墜落していく。
攻撃を避けながら目標のビルへと辿り着けば、ファルコンからの援護の元、シュンは単独でジャミング装置があるビル内部へと突入する。
「誰も居ねぇ…あるのは死体だけか」
ビル内部へと突入したシュンであるが、敵や味方は誰一人居らず、あるのはただ撃ち合って全滅した陸軍の兵士たちとコヴナント兵の死体だけであった。
照明が破壊されでもしたのか、それとも発電装置でもやられたのか、自爆部隊が居たビルのように真っ暗で静まり返っている。歴戦練磨のシュンは、経験上からしてこれを罠だと臭いで分かった。直ぐにこのことをキャットへ報告する。
「副隊長、こちらノーブル7。ビルの中は真っ暗で敵どころか味方も居ない。死体ばかりだ。多分、破壊に向かった連中の成れの果てだろう。敵が出てこない限り、罠かもしれない。指示を請う」
『あなたが言うなら罠の可能性が高いわね。でも、ジャミング装置を破壊しなくちゃならないわ。罠に警戒しつつ、ジャミング装置の破壊に向かって』
「了解した、ノーブル2。ノーブル7、アウト」
キャットに報告し、それから新たに通信妨害装置の破壊を指示されたシュンは、罠を警戒しつつ、ジャミングの電波が強い方へと向かった。
その途中、生き残りの兵士を一人発見したが、彼はかなり錯乱しており、恐怖の余り拳銃を側頭部に押し付け、自決しようとしている。だが、引き金を引く勇気が無いのか、拳銃を持つ手を震わせ、シュンの問いにも応じずに狂言を吐き始める。
「エイリアンだなんて話が違うぜ! 俺は止める!! エイリアンと戦うのか!? 反乱軍の次はエイリアンだって!? 冗談じゃない! 俺はごめんだぜ! 良いか? 絶対に噛まれるな、小さいのに噛まれたら同じ姿になっちまうんだ! 俺たちも小っちゃな化け物になっちまうんだ! タンクを背負わされて奴らの仲間として戦わされるんだ!! 俺はごめんだ、捕まるなんて嫌だぜ! 岩の顔をした化け物になってたまるか! これがサルみたいなブルートの正体だ! あれは俺らなんだ!! コヴナントになって、自分たちと戦う俺らなんだ!! 畜生ぉぉぉ!! まさか冗談だろ!? 俺は嫌だ! やだ、やめろぉ! やめてくれぇぇぇ!!」
どうやら彼は自分をブルートだと思っているので、錯乱して撃たれないうちにこの場を後にした。
通信妨害装置は、意外と近くにあった。
あの男は知らないようだが、これ程の近かったのなら、装置を破壊してから気が狂って欲しい物だ。
そう思ったシュンは、罠を警戒しつつ、装置を破壊した。
「っ!?」
『気を付けて! やっぱり罠よ!!』
装置を破壊した瞬間に、蠅のような外見を持つドローンと呼ばれるコヴナントの種族が大量に現れる。
キャットからの通信が来た後に、シュンは背後から迫るドローンの一体を殴り殺し、続けて回し蹴りで数体を握力で纏めて蹴り殺す。
「四の五の言ってる場合じゃねぇな!」
素手だけで現れた全てのドローンを片付けたシュンであるが、尚もドローンは増殖中であるので、背中の大剣を抜いて柱やビルの事を気にせずに遠慮なしに思いっ切り振り回した。
周りを気にせずに暴れまくる所為か、現れた大量のドローンは無残な姿となり、柱は振るわれた大剣で壊れる。
どうせこのビルも破壊されるので、後の時代に影響はない筈だが、シュンのやり方はやり過ぎと言う物であり、今にもビルが倒壊しそうだ。
「少し暴れすぎたな」
ともあれ、ドローンを全滅させたシュンは大剣を背中に戻し、急いでファルコンの元へと戻った。
ヘリパッドで待機中のファルコンの兵員室へと飛び込めば、右手の機関銃手より注意される。
「おい、あんた。中で暴れすぎじゃないのか? ビルがもう直ぐ倒壊しそうだぜ」
「いいんだよ。どうせぶっ壊れるんだ。早かろうが遅かろうが俺には知ったこっちゃねぇ」
その注意にいい加減な理屈で答えた後、ファルコンで次なる目標へと向かった。
遥か上空をコヴナントの巡洋艦クラスの艦艇が轟音を立てながら通過し、地上へ向けて強力なレーザーを撃ち込み、地表を焼き尽くす。
次の通信妨害装置の破壊に向かう中、シュンが乗るファルコンに救援要請が出された。
『こちらはODSTの第十一部隊のパック曹長だ。サル共が俺の部隊を足止めしてる。誰かエスコートを頼む』
ODSTのパックと言う男の救援要請であった。その要請を聞いたキャットは、一番近くに居るスパルタンに彼の支援を命じる。近くに居るのは、生まれながらのスパルタンであるシュンだ。
『こちらノーブル2。救援要請を受信。スパルタンなら…うちの二人目の新人さんなら空いてるわ』
『スパルタンか。助かる! では、鬱陶しいのを排除しながらついて来てくれ』
『聞こえたわね? 出番よ』
「了解した。ODSTの護衛に回る。運ちゃん、OSDTの後へ続け」
キャットからの指示を受けたシュンはそれに応じ、ファルコンのパイロットにODSTのパック曹長が乗るファルコンに着けるように指示を出した。
指示に応じてODSTが乗るファルコンの背後へ着ければ、そのまま彼らが乗るヘリの後を追って飛行する。
『来たぞ! ファントムとバンシーのセットだ! ありったけの弾を浴びせろ!』
先頭のファルコンに乗るパックより、ファントム一機とバンシー四機がこちらに飛来してくることを知らせが入った。直ぐに一同は向かって来る方向へ向けて機銃やロケット弾を浴びせる。
持てる火力を最大にして浴びせれば、大型のファントムの撃墜は出来なくとも、バンシーは全滅させることは出来た。
残るファントムはファントム二機とシュンの対空ミサイルによる集中砲火を受け、火を噴きながら下へと落下して行った。
『コヴナントのこんがりローストの出来あがりだ!』
火を噴いて墜落していくファントムを見てパック曹長が言えば、一同は笑みを浮かべ、引き続き迫り来るバンシーの迎撃を行い、数機以上を撃墜していく。
他にも占領したビルの屋上から対空砲や強力なプラズマ弾を撃ち込んで来るコヴナント兵が居たが、精鋭とスパルタンが乗るファルコンに敵わず、機銃掃射を浴びてハチの巣となる。
『見付けた! あれが俺の部下だ! ハンターに狙われている! 当てないようにぶち込め!!』
パックの部下が居るビルまで辿り着けば、屋上で彼の部下たちが二体のハンターに襲われているのが見えた。他にもブルートが複数見える。
直ぐに二機のファルコンは機関銃を浴びせ、兵員室に居るシュンは、再装填したロケット弾を撃ち込む。
幾ら重装甲のハンターと言え、真正面から凄まじい弾幕を浴びせられれば一溜りも無く、周りのブルート諸ともハチの巣となり、無残な死体と化す。
『流石はスパルタンだ! ありがとう! これで全員脱出できる! 感謝するぞ!』
部下を救出してくれたシュンに、パックは礼を言った後、自分のファルコンに部下全員が搭乗すれば、直ぐに飛び立って惑星リーチから脱出する輸送船がある場所へと向かった。
パックもネオ・ムガルに狙われるほどの大物であるはずだが、彼も後にスパルタンとなる人物であり、シュンが知らない間に襲って来たネオ・ムガルの暗殺部隊を部下たちと共に全滅させたようだ。
そうとは知らず、シュンは次なる通信妨害装置の破壊に向かった。
向かっている最中に、また救援要請が入って来る。
『4チャーリー2-7より司令部へ。ハンターに押されている! 至急、援護を要請する!』
『2-7、どうぞ』
『現在地はバイランドテレコムタワーだ! ジャミング装置の前にハンターが居る!』
『了解、応援を送る。6、7、8。バイランドタワーよ。彼らの援護に向かってちょうだい』
要請を聞き入れたキャットは、動ける人材であるシュンやギルアズ、6に通信妨害装置の破壊に向かっている部隊の救援を命じた。
「こちらノーブル7、了解した。直ちに向かう」
三名はそれに応じ、目標のビルへと急行する。
シュンが言っていたビルとは違ってまだ先行している部隊は生きており、内部で通信妨害装置を守るコヴナントの部隊と交戦中であった。
一番近くに居たシュンは、到着次第にファルコンから飛び降り、手にしている分隊支援火器で集まって来るグラントやジャッカル、ブルートに向けて無数の銃弾を浴びせる。
残る6とギルアズも到着し、凄まじい銃撃をファルコンと共に放てば、ビル内部へと進む道が容易くできた。直ぐに一同はビル内部へと突入する。
「スパルタンだ!」
「こっちです!」
ビル内部はクラブハウスだったのか、派手な内装であったが、今はグラントやジャッカル、ブルートがうようよしており、更に危険なハンターが二体以上も居る。踊る事は出来ないだろう。無論、この場に居る全員は踊るつもりも無いが。
スパルタン三名の増援を受けた先行部隊は、三人をこちらへ呼び寄せ、コヴナントと激しい銃撃戦を行う。
「ハンターか。他は任せるぞ」
「了解!」
ハンターを確認したシュンは、素早く倒せるのは自分の大剣だけだと判断し、他の始末は6とギルアズに任せ、自分は背中の大剣を抜いてハンターに向かった。
近付いてくるシュンに対し、ハンターは強力なプラズマ弾を浴びせて来るも、幾度となく戦って来たのでパターンは読めており、それを躱して相手が殴りに掛かって来た時を見計らって避け、その隙に大剣を振り下ろしてハンターを切り裂く。
案の定、片方がやられたハンターは怒りに任せてシュンに体当たりを仕掛けて来る。
これにシュンは、真横に転がって避けてから床を蹴って一気に近付き、大剣を振り下ろし、二体目のハンターを倒した。
「ハンターを倒したぞ! 一気に押し込め!!」
ハンターが倒されれば、後はブルートのみとなり、そのブルートが全て倒されれば、このクラブにおける戦いに決着はついた。
先行部隊の兵士は、応援に来てくれた三人にお礼の言葉を述べる。
「助かりました! 弾切れ寸前でした。ジャミング装置は上の階にあります」
「あぁ、良くやった」
礼を言った兵士にシュンは自分達が来るまで耐えた彼らに称賛の言葉を告げた後、通信妨害装置を破壊にしに上の階まで上がった。
守備隊は全てこちら側に出て来てくれたおかげで楽に通信妨害装置を破壊することが出来た。
それを破壊すれば、キャットより通信妨害が無くなったとの報告が無線機より来る。
『ノーブル2からノーブルリーダーへ。全てのジャミング装置の破壊を確認』
『了解、ノーブル2。新しい命令だ、全隊員をONIのビルから退避させろ。良いな?』
『了解、全員をONIビルから全員を…ぐっ!』
報告を受けたカーターが新しい命令を伝えれば、キャットが本部に使っているビルが敵の攻撃を受けた。
『ノーブル2! 状況を報告せよ!!』
『コヴナントが本部を攻撃! おそらく私の通信を傍受されたみたい!』
『直ぐに避難しろ!!』
『了解! 6、ブラック、ギアーズ! そちらで避難用の降下艇の援護を! 急いで!!』
キャットは攻撃されていることを告げれば、自分も応戦するために通信を切った。
直ぐに一同はキャットが本部としているONIのビルへと向かい、避難用のペリカンを撃ち落とそうとする周囲の対空砲の排除を始める。
流石に撃ち返してくるが、タレットの耐久力は低いようで、射手共々に爆散する。
ファントムが周囲のビルの屋上に着いた瞬間に対空砲を配置しているが、直ぐにシュンが持つ対空ミサイルを撃ち込まれ、火を噴きながら墜落していく。
そのままバンシーに撃たれ、対空砲が撃ち返してくる対空プラズマ弾を受けつつ破壊して行けば、避難船の安全航路は確保された。
『こちらウィスキー3-5! そろそろ限界だ!』
『もう良いわよ、3-5。離陸して良し!』
『了解した! 感謝する!』
対空砲を破壊し続ければ、ビルより避難船が続々と離陸して脱出していく。
それから全ての対空砲を破壊した後、最後のペリカンがビルより飛び去った。
周囲に対空砲の反応がない事を確認したキャットは、外に居る全員に戻ってくるように指示を出す。
『良くやったわ。ランニングパッドを出す。戻ってちょうだい』
指示に応じ、一同は本部に使われているONIのビルへと展開されたランニングパッドに着陸した。
ビルへと戻ったシュンと6、ギルアズであったが、もう残って居るのはノーブルチームのみであり、内部は攻撃を受けていたのか、窓ガラスが割れ、滅茶苦茶になっている。
キャットは無線機を修理して、カーターは修理が終わるのを待ち、ジュンは外の監視を行い、エミールは床に腰を下ろし、銃の整備を行っていた。
そんな三名もその場で腰を下ろして、銃の整備を行う。
「見ろよ。綺麗な街だったのに…今じゃ見る影も無い」
外を監視していたチームのスナイパーであるジュンは、全員に街の様子を見るように促した。
彼の言う通り、栄えた都市はコヴナント軍の総攻撃を受け、この世の終わりのような光景となっている。その時にジュンは、戻ってきた面々に気付く。
「よぅ、無事だったか」
「感動の再会ってわけだ」
ジュンが気付けば、エミールは茶化した言葉を投げ掛ける。
そんな二人に向け、6はジョージの認識票を取り出したが、エミールは受け取るのを断る。
「持ってろ、お前のだ。俺もあいつを忘れない」
自慢の得物を握りながら言えば、ジュンはジョージがリーチ出身だと知っていたのか、そのことを告げる。
「リーチはジョージに取って特別な所だ。あいつの故郷だしな」
「ハハハ! センチな大男だ」
エミールが聞いて外見に似合わない主義だと笑えば、カーターは注意するかの如く入って来る。
「故郷のために命を捧げたんだ。本望だったはずだ」
そう言いながら立ち上がり、外の様子を窺う。そんなカーターに、ジュンは他のスパルタンのチームが本職以外での任務に就いたのかを問う。
「リーダー、複数のスパルタンチームが民間人の避難作戦に投入されたって本当ですか?」
ジュンの問いに反応したカーターは、それが佐官以上の者しか知りえない情報だと口にする。
「お前たちには知りえない情報だぞ。誰が漏らした?」
「そんなことよりなんでスパルタンを防衛任務に配置するの?」
誰がそのことを言ったのかをカーターが問う中、キャットは通信機を修理しながら上官に問うた。
カーターはこれに応えず、はぐらかすように通信機がいつ直るのかを聞き始める。
「そんなことより通信を繋げ。いつ直るんだ?」
この催促に、キャットは苛立ちながら答える。
「やってます。このコンソールは、トランシーバーよりややこしいの。で、質問の答えは?」
「劣勢か知りたいか?」
「劣勢なのはわかってる。もう終わりかどうかってこと」
通信機を直しながらキャットが質問の答えを問えば、カーターは答えずに無言のまま、遠くで行われている戦場を眺めるだけだ。
そんな時に、通信が繋がる。通信相手はカーターが連絡を取りたがっていたホランド大佐だ。
「ホランド大佐だわ。なぜオープンチャンネルで?」
「確かめろ」
盗聴の恐れがあるオープンチャンネルであるが、カーターはそれを気にせずに通信を開くように告げる。
これに応じ、キャットは音量を上げて全員に聞こえるようにする。
『街の南西部だ。聞こえるか? シエラ2-59、応答せよ。この通信については、セキュリティープロトコルを無視しても構わん!』
「回線は安全か?」
「安全かどうかは保障できないわ」
聞こえて来るホランド大佐の指示に、カーターは敵に聞こえていないかどうかを問うが、キャットは保証できないと断言する。
「コヴナントが探知することは?」
「ありえる」
次の問いに、キャットは確実に盗聴されると告げた。
そんなことを気にせず、ホランド大佐は指示をノーブルチームに伝える。
『ノーブルリーダー、これは最優先事項だ。聞こえているなら、直ちに応答せよ』
聞こえているなら応答しろと言うホランド大佐に対し、キャットは通信機から受話器を取り、カーターに渡した。
「手短に」
通信を手短に済ませるように告げれば、カーターは無言で手に取り、ホランド大佐との通信を始める。
「ノーブル1、カーターです。はい…はい、大佐。はい…」
受話器は全員に聞こえていないので、カーターがどんな指示を受けているか分からないが、外を監視していたジュンは、都市に進出していたコヴナントの車両部隊が全て後退したことを知らせる。
「複数のコヴナントの車両が持ち場を離れています。急いでいるようだ」
「優勢のコヴナントが理由も無く撤退すると思うか?」
「砲撃で街を吹っ飛ばす気か?」
「それもありえる」
ジュンの知らせに、エミールはコヴナントが優勢なのに撤退するのが、何かあると告げれば、シュンは砲撃で街を吹っ飛ばすのかと問えば、彼はそれもあり得ると答えた。
その理由は、直ぐに来た。キャットが放射線反応を探知できる端末を手に、上がる数値を皆に知らせる。
「放射線反応あり、強い! 4000万レントゲン!」
放射線が上がったのと同時に、ホランド大佐からの通信が切れ、カーターがどういうことなのかを問う。
「切れたぞ! どうなってる!?」
「原子励起で通信が乱れてます。どんどん上がってる! 9000万!!」
「何所から?」
電場が乱れたのが電子励起であると答えれば、カーターは何所からその反応が来るのかを問う。これに、キャットは空を見ながら答えた。
「空から、近い!」
これに全員の視線が空へと向く。次にどのくらいの距離なのかをカーターは問う。答えを聞こうと、全員と視線が空からキャットへと向いた。
「どのくらい?」
カーターが問うた直後、上空で大爆発が起こる。
その爆風でビルが倒壊し、足場が揺れて全員が倒れた。
「これくらいよ!!」
いま起こっている倒壊が威力であると答えれば、キャットはヘルメットを掴んで皆と一緒にこの部屋から飛び出る。
「一体何が爆発したんだ!?」
「さぁ、核爆弾か?」
「それなら俺たち放射能でやられるぞ!」
倒壊するビルから脱出する中、ギルアズが何が爆発を起こしたのかを問えば、シュンは冗談を交えて答えた。
揺れで中々立てないギルアズを抱えつつ、シュンは脱出するノーブルチームの面々に続く。
エレベーターに来れば、6とキャットが乗った方へと乗り込む。
先に乗ったキャットが全員乗ってから退避豪がある階のボタンを右腕の義手で押そうとしたが、一回ほど押し間違える。
このキャットの様子に、シュンは彼女が強い光を浴びて視力が落ちたと察した。
「初めて?」
「あぁ、初めてです。こんな強い揺れは地震以外に感じたことも無い!」
「地震ならまだマシだわ。それに私も初めて。心配ないわ」
キャットからの問いにギルアズが答えれば、彼女はヘルメットを被りつつ、心配はないと告げる。
エレベーターが目的の階へと降りて行く中、キャットは放射線レベルに適した核シェルターに入るのが的確だと皆に告げる。
「この放射線数だと、サブレベル2の核シェルターがベストね」
視力が戻ったのか、左腕のアーマーに着いた端末を操作しながらシェルターの位置を確認する。
「北東96mよ。ホランド大佐からの指示は?」
『ソード基地に向かえとのことだ。破壊命令だろう』
『ソード? コヴナントが占領してますよ!?』
次にキャットがホランド大佐の指示がどんな物なのかを問えば、カーターはソード基地の破壊であると答えた。
敵の占領下にあるソード基地に向かえと聞いたジュンは、本気なのかと問い始める。
『先ほど言った通り、基地の破壊だ。ハルゼイ博士の発掘データを守るためだ』
命令がハルゼイ博士の発掘データを守るための物であるとカーターが告げれば、エレベーターは目的の階に着き、ドアが開けば一斉に飛び出す。
「まだそこにあればね」
「大佐の話では、コヴナントはまだ何か探しているようだ」
カーターが走りながら告げれば、キャットはわざわざデータを破壊するために敵地に自分たちを向かわせるホランドに対する悪態を付こうとした。先にカーターとジュン、エミールがシェルターに辿り着き、仲間たちの到着を待っている。
「基地の破壊が最優先任務なんて…」
言い終える前に、キャットは頭上から来た狙撃で頭部を撃ち抜かれ、即死して床へと倒れ込んだ。
「っ!?」
「上だ!!」
6が撃たれたキャットを抱えつつ拳銃を撃ち、ジュンが自分等の頭上に彼女を狙撃したエリートが乗るファントムが居ることを告げれば、全員が一斉にファントムへ向けて持っている銃を撃ち込む。
ジャッカルが数体ほど撃たれて落ちれば、ファントムはその場から離脱する。この隙に、カーターはこちらへ来るように叫ぶ。
「早く乗れ! 急げ!!」
これに応じ、シュンとギルアズは6と共にキャットを抱えてシェルターへと飛び込んだ。
全員が入った後、シェルターのドアは完全に閉められた。
数時間後、ノーブルチームの面々がシェルターから出れば、とても現実に起きているとは思えない光景であった。
核戦争後に人が住めなくなった都市のようだ。自分たちは死んでしまったのかと勘違いしてしまうような光景であるが、今もこうして地獄と化したリーチの上で生きている。
そんなことも気にせず、カーターはホランドの命令を実行するため、青色の煙幕を焚いて、回収艇を待った。
やっぱりセル・ヴァダムと戦うのは止めた方が良さそう。
後のアービター、お兄様みたいなチートスペックだからリボルゲインを食らっても生きていそうだし(笑)。ぶっちゃけ公式チートだし(笑)。