復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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ヒャッハー! 久々の大殺戮回だ!


地下の水晶

 あのレーザーヤークトより三日後、出撃の命があるまで基地内で待機している第666戦術機中隊、ドイツ人民地上軍の区画の元へ、フッケバインのシュタインホフ少尉が自国の新聞を持って現れた。他にもカティアの元同僚たちの少年少女らも見える。

 前回とは違ってかなり好意的であり、年相応な反応を見せて今にも手にしている新聞の記事をみんなに見せたがっている。

 テオドールが代表してそれを取って記事を読めば、隊員全員に見せた。

 

『海王星作戦に第666戦術機中隊、シュヴァルツェ・マルケンあり。麗しき中隊長アイリスディーナ・ベルンハルト大尉、東西の懸け橋となるか?』

 

 記事の内容は、三日前のBETA殲滅戦を華々しく宣伝する物だった。見出しでかなりでかでかと宣伝されている。

 東ドイツことドイツ民主共和国でも同様の新聞はあるが、「我らが祖国の誇る第666戦術機中隊の同志たちが要塞級を含めたBETAを打ち破った!」などと第666戦術機中隊があたかも単独で活躍したかのような書かれ方をしているだろう。

 それにくらべ、西ドイツことドイツ連邦共和国は民主主義であり、ある程度の真実は覗える様子だ。この記事を読む限り、それが分かるとシュンは西側の戦友達より貰った酒を飲みながら思う。

 ワルキューレの事についてだが、情報規制でも入ったのか、何所にも書かれていない。イサムも人間離れした活躍についても、何も書かれていなかった。

 隊長であるアイリスディーナを注目する記事や写真が掲載されている横に、アメリカ軍の兵士やソビエト軍の兵士と酔ってバカ騒ぎをする半裸なシュンの姿を映した写真が載っている。

 

「これ、バートルさん?」

 

「曹長、別の意味でベルンハルト大尉より注目の的じゃない! アハハハ!」

 

「うるせぇ! 畜生、誰だ撮った奴は? ぶっ殺してやる」

 

 その写真を見たカティアは直ぐにシュンことバートルであると分かり、小馬鹿にされているアネットは仕返しと言わんばかりにからかい始める。

 これにシュンは少し顔を赤くしながら、誰が取って載せたのかを調べるために、別の区画へ行こうとする。

 

「…俺の義父とシュトラヴィッツ中将の二の舞にならなきゃ良いんだがな」

 

 今、ここに居る他の隊員等が喜ぶ中、テオドールは素直に喜べず、記事を読んで自分の辛い経験とカティアの父の事を思い出し、義父や彼のような末路を辿らないことを祈った。

 どうやら、テオドールなりにカティアの父親の事を調べていたようだ。

 どんなに華々しい活躍も、ドイツ民主共和国や国家保安省に逆らえば、まるで最初からなかったかのように消される。

 そんな辛い過去と国家保安省の恐ろしさを思い出しつつ、テオドールはなぜ対立している筈のドイツ連邦が、自分等をこうも宣伝する訳をシュタインホフに問う。

 

「しかし、どういうつもりだ? 西がこんな大きく俺たち人民地上軍の部隊と事を取り上げるなんて。戦争こそしてないが、対立している間柄だろ?」

 

「そうね、先日の戦いで東とも上手く協調できると思ったんじゃないかしら? それはまだ不信感とかあるけど、BETAと言う脅威に対抗するには、協力出来た方が良いもの」

 

「うん! そうですね! きっと協力できますよ!」

 

「あぁ! そうだぜ!」

 

 宣伝の理由は、BETAと言う脅威の対し、西側が対立する東側との協調できるのではないかと言う可能性があるとの事とシュタインホフが答えれば、東西の講和と言う目標を持つカティアは無邪気に喜び、彼女の元同僚らも同調する。しかし、ワルキューレでの従軍経験のあるシュンや、シュタージの恐ろしさを知るテオドールは素直に喜べない。

 

「すまんな、シュタインホフ少尉と西ドイツの諸君。外してくれないか? こちらの連絡事項がある」

 

「あっ、はい。それでは失礼します。ほら、みんな。戻るわよ」

 

 そんな浮かれる東西ドイツの軍属の者達の元へ、グレーテルが難しい顔を浮かべながら現れた。

 こちらの軍事機密が漏れることを懸念してか、西側の者達に外すように告げれば、シュタインホフは皆を引き連れて自分たちの区画へと戻った。

 西側の者達が居なくなったところで、シュンはスキットルを懐へ戻し、彼を含める全員が姿勢を整え、尊敬もしていない政治将校であるグレーテルの連絡事項を待つ。

 

「同志大尉は協議中につき、政治将校である私が変わって連絡事項を告げる。話は三つだ」

 

 全員が自分の言う連絡事項を聞いているのを見れば、三つある一つの話を告げた。

 

「一つはこの作戦よりワルシャワ条約機構軍は当作戦を離れ、それぞれの国へと撤収することが決まった。ソビエト軍の一部が本国へと撤退を始めている。無論、我々ドイツ国家人民軍も帰還する」

 

「? 待ってください。作戦は確か三カ月の予定のはずですが?」

 

 ワルシャワ条約機構軍だけが外れると聞いてか、アネットはポーランドにおけるBETA殲滅戦の海王星作戦の予定はどうなるかを問う。

 

「理由を話してやる。ソビエト連邦から国連よりもたらされた情報によるものだ。衛星によるレーザー攻撃で大損害を受けたはずのベルラーシのミンスクハイブ周辺でBETAがこれほどにも無いくらいに増大している。現在は二十万だが、これから続々と増えて行くようだ。ワルシャワ条約機構軍はそれぞれの国の防御を固めるために撤収する」

 

 この作戦の目的は欧州における戦局の安定であり、ワルキューレの宇宙軍による攻撃でミンスクハイブは壊滅状態に至ったはずだが、本丸を叩けていなかったのか、かなりの数が増大しており、ワルシャワ条約機構軍はそれに警戒して自国の守備を固めるため、軍を退くしか無かった。

 海王星作戦の継続は残りの三軍のみで行うらしい。もっとも、圧倒的な物量を持つワルキューレが居るのでワルシャワ条約機構軍は不要とも思えるが。

 理由を答えれば、グレーテルは二つ目の話に入る。

 シュンはアイリスディーナの独断専行で行われたとの事で、処罰されるかと思ったが、グレーテルが口にしたのはそれどころでは無いどころか、恐ろしい物であった。

 

「二つ目は悪い知らせだ。作戦本部付きの政治将校より知らされた。我が国家人民軍の将校多数が国家保安省にクーデターの容疑で逮捕された。上層部は対応に追われ、恐慌状態らしい。帰還後の戦いは厳しくなる。総員、気を引き締めておけ」

 

「たく、何考えてんだ。あのSS共は」

 

 二つ目の知らせは悪いニュースであり、内容はシュタージが国家人民軍の将校多数をクーデターの容疑で逮捕されたとのことだった。

 BETA戦線を支えて来た参謀や優秀な人材も含まれており、人民軍の上層部はかなり混乱しているらしい。

 こんな絶望的な状況下で、このような愚劣な行いをするシュタージに、シュンは悪態を付いた。

 いずれかはアイリスディーナや第666にも手を伸ばしてくるのは確実。その為に彼女は今後の対策を練っているのだろうか?

 この場に彼女が居ないのを、それが理由であるとシュンが分かれば、グレーテルは三つ目の知らせに入る。

 

「最後の三つ目だが、バートル、お前の事だ」

 

「俺ですか? 一体なんです?」

 

 最後の三つ目はシュンに関する事だ。そうと聞いたシュンはグレーテルの言葉を待つ。

 

「同志曹長、一人で北東部の国境線の基地へと向かえとのことだ。滞在期間は二日。同志大尉の直々の命令だ。ここは盗聴器が無い事が確認済みだが、大尉は何の考えがあってかは知らんがな。訳は協議を終えた大尉にでも聞くが良い」

 

「あぁ、じゃなくて了解しました、同志中尉」

 

 アイリスディーナから北東部の国境線の基地へと移動し、二日ほど滞在しろとの命をグレーテルより聞いたシュンは、やや言い直してから人民軍流の見事な敬礼を行い、その場を後にしようとした。

 遂に、自分が求める物の探索の許可が出たようだ。

 

「以上だ。我々の帰還は明日の08:00(ゼロハチマルマル)。速やかに行動できるように、準備に掛かれ」

 

了解(ヤヴォール)!』

 

 グレーテルが帰還の日時を言えば、一同は敬礼してから直ぐに行動するため、荷造りを始めようとそれぞれの部屋へと戻ろうとする。

 シュンことバートルが隊を離れて北東にある国境地帯の基地へと向かうと聞いたので、疑問を抱いたテオドールはその訳を問う。

 

「おい、なんでお前だけが?」

 

「さぁ、休暇かな? 取り敢えず、命令だから行ってくらぁ」

 

 そんなテオドールの問いに、シュンは命令されたと言う曖昧な答えを出し、北東部の国境線付近にある基地へと向かう列車のある駅へと、予め作っておいた手荷物を持って向かおうとした。

 だが、ここに来て携帯式のラジオの事を思い出し、荷造りしようと部屋へと戻ろうとするカティアを呼び出し、手荷物の中にあったそのカセットレコーダーを直接渡す。

 

「おい、嬢ちゃん!」

 

「なんでしょ?」

 

「この前の土産物だ。信用できる奴には見せておけ。カセットテープの方は西の連中から貰っておけ」

 

「あ、ありが…」

 

「でかい声を出すな。取り敢えず、見られないように大事にしまっておけ」

 

「分かりました…」

 

 カセットレコーダーを手渡されたカティアは、感激の余り声を出そうとしたが、シュンに口を塞がれ、信頼できる者以外に見せないように注意されれば、それを了承してラジオを自分の鞄の中へと隠す。

 

「西側からなんか貰ったな」

 

 それを見ていたテオドールは自国では所持厳禁である西側の娯楽物であると直ぐに見抜き、カティアのためにも周りに誰も見ていないことを確認すれば、何食わぬ顔でその場を後にする。

 忘れていた物を渡すことができたシュンは、直ぐに目的地へと向かう列車がある駅へと足を運んだ。

 この時、リィズより妙な視線を送られていたが、シュンも含めて誰一人気付くことは無かった。

 

 

 

「さて、こいつが目的地への行く列車だな」

 

 暫くして、駅へと辿り着いたシュンは、北東部の国境線付近の戦線に向かう列車に乗り込む将兵らの列へ加わる。

 将兵達は所属するドイツ国家人民軍の者達を含め、西側のコートで身を包み、手荷物を持ったワルキューレ陸軍の歩兵師団に属する将兵らの姿が見える。

 長きに渡るBETAとの戦争のおかげか、男の兵士よりも女の兵士が半数近く多く見える。ワルキューレの方はと言えば、男の姿など何所にも見えず、女ばかりが目立っているが。

 

『おい! お前、あん時の大男だろ!?』

 

 いざ、そんな列車へと乗ろうとした時に、聞き覚えのある声に呼び止められた。

 声がした方向へと視線を向ければ、そこに居たのはあのイサム・ダイソンであった。

 

「お前は空軍の…!」

 

「正確には、新統合宇宙軍大尉だがな。でっ、復讐を終えた後、どうするかどうか考えたか?」

 

 発車前の列車を降りて顔を合わせたシュンに対し、イサムはこの前の問いをぶつける。

 

「それか。そいつはまだだ。まぁ、傭兵になろうかと思うが」

 

「傭兵かよ。やれやれ、物好きなこったよ。戦場で野たれ死ぬつもりか?」

 

「どうせ俺には戦うこと以外の事は出来ねぇよ。戦争依存症って奴だ。俺の垢は決して落ちないのさ」

 

戦争中毒者(ウォーズジャンキー)ね。俺も似たようなもんだがな」

 

 この問いにシュンは、復讐の後は傭兵になると答えた。無論、適当に答えただけでまだ復讐の後の事は全く考えてない。

 そんな答えを聞いたイサムは酷く呆れた様子だが、自分も似たような物なのでシュンのことは言えなかった。

 

「そんじゃ、俺も急ぎの用事とかあるんでな。帰るぜ」

 

「おぅ、またどっかでな」

 

 これ以上、話すことは無いので、二人はそれぞれの目的地へと向かうために別れた。

 シュンはまた何処かでと言ったが、ここは過去の世界なので、イサムと再会することは到底ないだろう。

 そんなことを知らずに、シュンは満席の列車へと乗り込み、目的地である東ドイツとポーランドとの国境線付近にある場所へと向かった。

 

 

 

 それから数時間後、目的地へと着いたシュンは、基地には滞在せず、アウトサイダーが示した自分のデバイスの強化に必要なアイテムがある城跡へと辿り着いた。

 そこは前の大戦か、BETAの侵攻による物か、僅かにそこに城があったと言う証拠がある床しか残って居ない城跡だ。

 

「さて、大尉には感謝しなくちゃな」

 

 シュンはここへ来る手筈を整えてくれたアイリスディーナに感謝してから、地下へと続く出入り口があるかどうか辺りを探し始めた。石造りの床を手当たり次第に踏み、空洞が無いか探す。

 

「そうか。そう言えばこいつをここらで置けってあったな」

 

 途中、アイリスディーナからのここへ来る際の条件を思い出したのか、懐より彼女より渡されたビニール袋に入った手紙を取り出し、それを先ほど踏んだ床の隙間に突き刺してから再び床を踏んで地下への道を探す。

 

「おっ、ここだ」

 

 それから数十分、遂に地下への出入り口となる場所を発見した。

 取っ手を探し回すが、BETAにでも踏み潰されたか、それとも迎撃部隊の車両にでも潰されたのか壊れており、無理に抉じ開けるか破壊するしか方法は無い。

 ここでシュンが取った行動は後者の方であり、ベルトのコアより取り出した工具用のハンマーで、思いっ切り床を叩き、破壊して外よりはマシな地下へと入った。

 

「長い間、誰も入っていないようだな」

 

 暗い地下へと入ったシュンは、持ち合わせていたライターで壁に掛けられている松明に火を灯し、辺りが誇りまみれであることから、長期間に渡って誰もこの地下へ足を踏み入れていないと判断した。

 その松明を手に取り、出入り口が分かるように予め拾っておいた外の小石をばら撒きながら進んでいると、錆びた金属が転がる音が鳴った。

 

「どうやら、四十年くらいは誰も入ってないようだ」

 

 自分が蹴った錆びた金属を拾い上げ、それが前大戦で旧ナチス・ドイツ軍全般に使用された7.92mm弾だと分かれば、地下の経過年数を割り出す。

 城跡の地下、かつて城だった建造物は迫り来るソ連赤軍に対する防衛施設として、ドイツ国防軍に運用されていたようだ。その証拠に、国防陸軍の注意書きや空の木箱が置かれている。シュタールヘルムも幾つか転がっている。

 重装備の類が破壊されている辺り、ここを放棄して撤退した様子だ。

 地下に置かれているとはいえ、置かれている銃が作動するかどうか分からないので、試しに忘れ物のkar98k小銃を手に取って、照準器に重なるような構造にされている安全装置のレバーを横に倒してみる。

 

「おっ、行けたな。弾は、使えるかな?」

 

 四十年以上経過しているにも関わらず、すんなりとレバーが動いたので、布で覆われているにもかかわらず、忘れられた弾薬箱から一クリップ分のライフル弾を取り、ボルトを引いて銃本体に装填する。

 手近に空のガラス瓶に向けて引き金を引いて撃ってみると、強い反動が右肩に走り、銃声が響いて狙ったガラス瓶が砕けた。

 

「問題なしだ」

 

 銃がちゃんと作動することが確認できれば、次にサブマシンガンであるエルマンゲMP40短機関銃を手に取る。

 これも錆び付いていないことを確認し、引き金が引け、ボルトが動くことが分かれば、弾倉を抜いて弾が装填されていることを確認する。

 安全装置を外してどこか適当な的へ撃ち込んで作動を確認した後、部屋中にある忘れ物を集めて装備を整えた。柄付き手榴弾も、数本ほど忘れずに持っていく。

 

「StG44があれば良かったが…」

 

 ドイツ国防軍が忘れて行った武器弾薬類で装備した後、シュンはドイツ軍が発明した兵器の一つ、突撃銃であるStG44を強請ったが、残念ながら弾も含めて全て持っていかれたようだ。それもそのはず、各戦線では重要な銃なのであるから。

 BETAの勢力圏外にも関わらず、何故シュンが武装した理由は、この世界にネオ・ムガルの存在があっての事だろう。

 こういう地下に限り、ネオ・ムガルの刺客が潜んでいるかもしれない。

 そう判断して、シュンは身を固めて若干の警戒心を抱きつつ、他に何かないか調べる。

 

「大尉の土産物なら、これが良さそうだな」

 

 辺りを調べ回す中、シュンはアイリスディーナの土産物として、陸軍の将校が忘れて行った制帽を手に取った。丁度、この帽子の持ち主も大尉なのか、彼女の土産にはぴったりであった。それを持って来た鞄に仕舞い、同じく忘れ物の略帽を被る。

 しかし、片手で銃を撃てる腕力があると言え、左手に松明を持ちながら銃を撃つのは心許ない。そこで置き忘れているランタンを取り、ライターで火を灯してから腰に吊るした。

 

「さて、行くとするか」

 

 準備が整った所で、シュンは目当ての水晶を探しにランタンの灯りを頼りに進んだ。

 ここの地下通路は迷路のようには出来ていない構造なので、小石をばら撒く必要は無かった。小石をばら撒くのを止め、暗い地下の中を良く目を凝らしながら進む。

 

「遺骨だ。この軍服の穴からするにして、ここじゃ助からない程の重傷を負った様子だな」

 

 途中、認識票を抜かれて放置されたドイツ国防軍の将兵の遺体が見えたが、既に終戦から四十年近く経っており、完全に白骨化していた。

 近くに捨てられている軍服に空いた穴で、シュンは助かる見込みがないほどの重傷を負った物と推定する。

 今、自分が居る場所は救護所か野戦病院として使用されていたのか、助かる見込みがないと判断され、戦友達に最後の施しとして銃で撃たれた負傷兵等の遺骨が数十体以上も残されていた。

 火葬してやるべきだが、ソ連軍が迫っていたためか、施しのみで済まされたようだが、ここにはソ連兵たちは乗り込んでこなかった様子だ。その証拠に銃撃戦の痕跡が一切無い。

 空薬莢はあるが、どれもルガーP08やワルサーP38などの自動拳銃に使用されている9mmパラベラム弾の空薬莢ばかりだ。将校や下士官が撃ったのだろう。

 勲章の類を探そうと考えたが、どれも皆、ソ連兵達の略奪を恐れて全て持ち帰った様子だ。

 そんな地下で最期を迎えた負傷兵等に、シュンは元であるが、軍人として敬礼した後、自分が求める物を探した。

 

「持って帰ってねぇだろうな」

 

 おそらく中間の辺りまで来た後、ここを大隊本部か連隊本部として使ったドイツ軍の将校が持ち帰っていないかどうか心配になって来た。

 だが、ここまで来て土産物だけ持って帰るには行かない。

 なにせアウトサイダーがあると言うのだから、誰にも見付からずに残って居る可能性が高い。

 そうあの神と悪魔が入り混じった存在を信じ、シュンは暗い通路の中をランタンの僅かな灯りを頼りに進んだ。

 

 

 

「奴はここか?」

 

はい(ヤー)、この城の地下へと入った様子です」

 

 シュンが地下へと入った城跡にて、コートを着込み、M56ヘルメットを被り、Mpi-K突撃銃やVz61スコーピオン短機関銃などで武装した集団が現れ、地下の出入り口に集まっていた。

 軍装からしてドイツ人民地上軍の歩兵に見えるが、残念ながら正規軍では無く、シュタージが保有する準軍事組織であるフェリックス・ジェルジンスキー衛兵連隊に近い。

 そんな正規兵顔負けの一個歩兵小隊の隣では、とても東側の将兵とは思えない雑多な小火器で武装した無法者の集団が見える。挙句の果てに、体長が250㎝もある巨漢すらいる。

 

「よし、先に同志が紹介した無法者共を突入させろ!」

 

「ヤヴォール! 行け、お前ら!!」

 

「うぃーっす! よし、行くぞ野郎共!」

 

『応っ!』

 

 指揮官の指示の元、無法者の頭は手下たちを引き連れて各々の得物を手にして地下へと入って行く。

 皆が血に飢えており、標的にしているシュンをどのように殺してやろうか楽しみにしている。

 そんな彼らの正体は、ネオ・ムガルが前回の暗殺計画を失敗に追い込んだシュンを抹殺するための刺客たちであり、その誰もが十人以上を殺した冷酷な殺人鬼だ。

 何故、ネオ・ムガルがシュタージと関係しているかは、何らかの条件をネオ・ムガルが持って来たからだろう。

 実戦経験が殆ど無い衛兵連隊の将兵らは、先にいった殺人鬼の集団のおかげで自分等の出番が無いと思い、身体を温めるために持って来た携帯式珈琲などを啜って身体を温め始めた。

 

 

 

「さーて、俺ならどこへ隠すか」

 

 背後より血に飢えた刺客たちが迫ってきているとは知らず、シュンは宝物である水晶を自分ならどこへ隠すかと、辺りを見渡しながら一人呟いた。

 ここに来るまで、様々な部屋に入って探したが、どれもここを本部として使用した軍の将兵らの手が加えられ、目ぼしい物は撤退の際に持ち去られていた。

 そんな時に隠し部屋があるはずと思い、シュンは空洞になっていそうな壁を手当たり次第にライフルで叩く。

 空洞を見付ければ、即座に腰に吊るしてあるハンマーで壁を叩き潰し、隠し部屋の中を灯りで目当ての物を探す。

 

「ここじゃないな」

 

 水晶が無いので、壁を少し崩して目ぼしい物を掴み取り、制帽を入れた手提げ鞄の中へ放り込む。

 次にまた空洞になっている壁を発見したら、同じように壁をハンマーで破壊して中を拝見、珍しい物や宝石の類などを見付ければ、即座に掴み取って鞄の中へまた放り込む。

 やっていることはまさに盗賊その物だ。

 だが、シュンは何の罪悪感も無く、先にここを見付けて放棄して撤退したドイツ軍の将兵らが見付けられなかった物を手当たり次第にシュタージや党の役人を買収するために奪っていく。

 

「あんまりやると、重くなりそうだな」

 

 これを繰り返すほど四回、鞄が重くなってきたので、略奪はこれぐらいにしておき、目当てのデバイスの強化に必要な水晶を探す。

 それまでにこの地下が持つかどうかは不明だ。

 

「やっと見つけたぜ」

 

 壁を破壊し続けること数十分、ようやくシュンは水晶を見付けることに成功した。

 柱の中にあるかもしれないので、柱を壊そうかと思ったが、壊れそうなので止め、隠し部屋探しに専念していれば、ようやく見つける事が出来た。

 手に入れた水晶をさっそく地面に叩きつけて割り、紫色の煙がデバイスに吸い込まれて、何らかの強化されたことを知らせる音声がデバイスのベルトより聞こえて来る。

 

『耐久力と防御力が強化された。戦艦の主砲くらい防げるぞ』

 

「おいおい、一体どんな鎧だ」

 

『鎧では無い。バリアジャケットだ、このタコ』

 

 強化されたのは耐久力と防御力だ。デバイスが言うには、戦艦、おそらく大口径の主砲、それも世界最大の戦艦クラスの主砲をも防げる物だとか。

 これにシュンはツッコミを入れれば、デバイスは皮肉を込めて返してくる。

 そんなことも気にせず、シュンは目的を達成できたので、待っている第666中隊の面々に土産を持って帰る為、この場を後にしようかと思ったが、あのネオ・ムガルが送り込んだ冷酷非道の殺人鬼集団の足音が聞こえて来た。

 

「っ!?」

 

 集団の足音に気付いたシュンはカンテラを消し、柱に隠れて様子を窺う。

 

「シュタージの連中か?」

 

 そう思って物陰から無数に見える電球の灯りが見える方に視線を窺うと、ラフな格好をして特徴、もう無法者と言っていい格好のガタイの良い男達がそれぞれの得物を片手に自分を探していた。

 

「(モヒカンに雑多な鉄砲、ありゃあネオ・ムガルのクソ共だな)」

 

 彼らの統一されていない服装と特徴的な髪形を見て、シュンは即座にここへ足を踏み入れた男達はネオ・ムガルの刺客と見抜いた。

 動きは身体に染み付いた殺しのテクニックでやや無駄が無いが、統制は取れていないので、奇襲を仕掛けてやれば即座に混乱するだろう。

 そうと判断したシュンは、持って来た柄付き手榴弾の安全装置を兼ねているキャップを全て外し、信管の紐を引き抜いて三秒ほど数えてから固まっている場所へ投げ込もうとする。

 

「(三、二、一…!)」

 

 心の中で秒数を数えた後、敵が集中している方へ投げ込んだ。

 この柄付き手榴弾は、第一次世界大戦より改良を加えて使用され続けたドイツ軍伝統の手榴弾だ。タイプは破片を撒き散らす物では無く、爆風を起こす攻撃タイプ。今は携帯性を重視して廃れ、生産などされていないが、その火力は折り紙付きである。名前はM24柄付手榴弾。

 イギリス軍の将兵からは、形からジャガイモ潰し器(ポテトスマッシャー)と呼ばれた。

 三秒から四秒ほどで爆発するので、足元に転がったその手榴弾に気付いた男達は、叫ぶ間もなく手足が吹き飛ぶ。

 

「こ、攻撃だ!」

 

 一人が叫んだ瞬間に、シュンはもっと混乱させようと思い、続けて手榴弾を投擲した。

 効果は絶大。敵は更に混乱し、四方八方に向けて闇雲に銃を乱射して誤射をしている。

 その隙を窺うシュンは、この場で効果を発揮する短機関銃のMP40の安全装置を外し、仲間を撃つように叫んでいる男を射殺する。

 

「畜生! 何所だ!?」

 

「闇雲に撃つんじゃない! 奴の思う壺だ、がっ!?」

 

「間抜け共が」

 

 混乱する男達に向け、シュンは一人ずつ機関銃で撃ち殺しながら、小さく呟いて暗闇を利用して場所を変える。

 同じ場所に居れば、いずれかはばれてしまうだろう。短機関銃の弾を全て撃ち切った所で、今度はkar98kライフルに取り換え、RPD軽機関銃を乱射しているモヒカン男に狙いを定めて撃ち込む。

 

「クソッタレが! 手榴弾をばら撒け!!」

 

 たった一人の男を相手に引っ掻き回されて苛立ったのか、仲間ごと巻き込む勢いで大量の破片手榴弾が投げ込まれる。

 

「やべっ」

 

 再び物陰に隠れて二つの銃の再装填をしていたシュンは、ここではほぼ取り回しが悪い小銃を近場で乱射している男に向けて投げ、短機関銃を抱えながら安全な場所まで走る。

 連続して手榴弾が爆発して破片が飛び散り、突入した男達が飛んでくる無数の破片に突き刺さって死ぬ中、シュンは地面に伏せて出入り口に居る男に向けて機関銃を撃ち込んで射殺する。

 

「向こうに居るぞ! ぶっ殺せ!!」

 

「見付かったか!」

 

 出入り口に居た男を殺した瞬間に見付かってしまったようだ。

 銃の下部に付いてあるフラッシュライトの灯りに照らされ、一斉に銃弾が放たれる。

 これをシュンは即座に立ち上がり、いらなくなったライフル弾を捨てながら柱の方へと移動し、物陰に隠れてベルトを実体化させて変身しようとする。

 コインを取り出し、それをベルトコアの上にある挿入口に入れ込めば、右側のハンドルを回してここでは無敵なバリアジャケットを全身に身に纏った。

 

「さーて、今度はこっちの番だぜ」

 

 スレイブを待機状態から元の状態へと戻して背中に担ぎ、代わりにこの室内において有利な太刀をベルトのコアより取り出し、それを鞘から引き抜いてから恐れおののく男達に向けてこちらが攻撃する番だと宣言した。

 この場で大剣やプラズマ式ボウガンを使わないのは、場が狭い事と地下室の崩壊を恐れての事である。

 ここで大剣を思う存分に振り回し、強力なプラズマ式ボウガンを撃ちまくれば、崩壊して生き埋めになることは確実だ。その為にシュンは日本刀の太刀を選び、銃を撃ってくる男達に目にも止まらぬ速さで近付き、一人を一瞬の内で斬り殺す。

 

「畜生が!」

 

 血飛沫を上げながら息絶える仲間を見て、仇と取ろうと刀身から高周波を放っているナイフを抜いたモヒカン男は、それを突き刺そうとしたが、避けられてナイフを持っている左腕を斬りおとされ、更に頭部の上半分を斬りおとされた。

 切断面より血飛沫が再び上がる中、シュンは続けて周囲に居る男達を刀で斬り続ける。

 一秒に一人ずつ致命的な部分に斬りこんで確実に殺していく。途中、殺すのに三秒ほど掛かった者もいるが、それでも気にせずに刀の刀身を壁に当てないように振るい続け、自分を殺そうとする者を殺しながら進む。

 

「おっ、良い銃じゃねぇか」

 

 途中、一人の男がM870散弾銃を持っていたので、撃つ前に斬り殺し、手から離れた散弾銃を空いている左手で取り、斧や様々な凶器で自分を殺しに来る男達を撃ち始める。

 M870はポンプアクション式の散弾銃なので、片手で撃つのは至難の業だ。そこでシュンは背後より鉤爪で斬り掛かって来た男の頭に刀を突き刺し、柄から手を離してポンプを退いて次弾を薬室へと送り込む。刀を突き刺された男は、両膝を床へ付けたまま息絶えている。

 この狭い空間における散弾銃は、更に威力を増す。故に襲って来る者を一度に二人も倒すことが可能である。

 弾切れになるまで撃った後、弾切れとなった散弾銃を再装填もせず、鈍器のように折れるまで振り回してから、再び刀を引き抜き、更に刺客たちを殺し続けた。

 

「ば、バケモンだ…! 畜生が!!」

 

 余りにも強過ぎ、普通の攻撃では倒せないと判断した男は、重火器であるRPG-7対戦車発射器を持ち出し、仲間を殺し続けるシュンに向けて遠慮なしに放った。

 弾頭は対戦車用の物であるが、戦艦、それも大和のような超ド級戦艦の主砲すら耐えられることができる黒の甲冑のようなバリアジャケットを貫けるはずが無く、受け止められてしまう。

 

「よぉ、早速だが返すぜ」

 

 弾頭を掴み取ったシュンは、それを放った男に向けて投げ返し、射手を粉々に吹き飛ばした。

 

「は、話が違い過ぎる! 俺たちが使ってる武器は魔導士のバリアジャケットを紙切れのように斬れるもんだぞ!!」

 

「あいつ等、普通のを渡して来たんじゃねぇのか!?」

 

 ここに来るまで、魔導士を容易く殺せる武器を渡され意気揚々としていた刺客たちが、先の強化するための水晶を手に入れ、防御力が増したシュンのバリアジャケットを貫通できなかったことに、戸惑いと恐れを見せ始め、戦意が損失して行く。

 

「お、俺はおりぎゃっ!?」

 

 一人が逃げようとした時、体長250㎝ばかりの人間とは思えない肥満体系の巨漢が現れ、彼の頭を掴んでまるでトマトのように握り潰した。

 

「どいつもこいつも情けねぇ野郎だ。んなオモチャに頼るからいけねぇんだ。頼りになる最大の武器は、やっぱり腕っぷしだ」

 

 味方の頭を握り潰した巨漢は一切の武器を持たず、己の拳のみこそ絶対の武器だと力説し、向かって来た刺客たちを全て斬り殺したシュンに視線を向けて標的がどうかを問う。

 

「お前がボスの暗殺計画を台無しにした馬鹿か? 俺たちネオ・ムガルに逆らうとは、良い度胸じゃねぇか」

 

「なんだ、今度はデカい豚か。丁度いい肉切り包丁があったな」

 

 現れた巨漢の問いに対し、シュンは豚と表して挑発で答える。その時にシュンはもう出入り口前に来ていると判断して刃毀れまみれの刀を捨て、大剣を引き抜いて構えた。

 

「肉の塊だと…!? この野郎、俺を豚呼ばわりしやがって…! バラバラにして食ってやる!!」

 

 大剣を構えたシュンに豚呼ばわりされた巨漢は怒り出し、重たい足音を鳴らしながら周りの刺客たちを吹き飛ばしながら彼を殺そうと掴み掛る。

 その腕力は恐ろしい物であり、背後より襲って来た男の胴体が引き千切られるほどの威力であった。飛んでいなければ、先の男のような末路を辿っていたかもしれない。

 だが、巨体の所為か動きは鈍いようで、目にも止まらぬ速さで大剣を腕に向けて振るえば、容易に左腕を斬りおとすことに成功した。

 左腕を斬りおとされた巨漢は、みっともないうめき声を上げながら切断面から噴き出る血を必死に止めようと、残っている右手で抑え始める。

 

「ひっ、ひやぁぁぁ!? お、俺の腕が!?」

 

「なんだ、ネオ・ムガルの連中は。こんな奴らで俺を殺そうとしてたのかよ。たくっ、俺も舐められたもんだぜ」

 

 自分に敵わない刺客を送り込んで来たネオ・ムガルに対し、シュンは自分をこの程度の雑魚で十分だと判断している彼らに怒りを募らせつつ、巨漢のもう一本の手を瞬時に斬りおとした。

 

「ギヤァァァ!? う、腕が!? 俺の両腕が!?」

 

「さて、地上には、誰が居るんだろうなぁ!!」

 

 両腕を斬りおとされた絶叫する巨漢を、天井を突き破る勢いでシュンは大剣に多大な力を籠め、力一杯に叩き込んだ。

 

 

 

「お、おい…! 銃声が続いているぞ?」

 

 一方、地上では、もうシュンを殺しているだろうと思い、呑気に珈琲やココアなどで体を温めていたシュタージの兵士らは、銃声が止まないことに不安を覚えていた。

 将校もそれに気付き、銃の安全装置を解除して部下たちに地下へ出入り口に銃口を向けるように指示を出す。

 

「奴が出れば、一斉射撃だ。良いな、焦って撃つんじゃないぞ」

 

 そう細かく指示を出せば、自分も震えながらVz61短機関銃を地下の出入り口に向ける。

 息を呑むこと数秒間、出入り口から標的らしき人物が慌しく出て来た。

 出てきた男は複数であり、先に入って逃げて来た刺客たちであるが、待ち構えていた将兵らはシュンだと思ってしまい、一斉射撃を彼らに浴びせてしまった。

 

「撃ち方止め! 撃ち方止め!!」

 

 死んでいるのが刺客だと分かった指揮官は、顔を真っ青にしながら射撃中止命令を出す。

 撃ち終わるまでに数秒ほど掛かってしまい、逃げ出した刺客たちは味方であるはずのシュタージの準軍事組織の将兵らに全員撃ち殺されてしまった。

 標的の死体が無いかどうかを、指揮官は一人に命じる。

 それを受けた一人の兵士は応じ、銃を持つ手を震わせながら、シュンの死体が無いかどうか調べる。

 その瞬間である。突如となく床が謎の大爆発を起こし、確認に向かった兵士を吹き飛ばした。床の石が飛び散り、それと同時に血の雨が降り、内臓まで降って来る。

 

「な、なんだ!?」

 

 血の雨や内臓が降って来るのを初めて見た指揮官が驚きの声を上げる中、その正体が落ちて来た上半身の巨漢の死体と共に現れる。

 

「やっぱりシュタージ(ゲシュタポ)共だったか…!」

 

 破壊されて土煙を上げる城跡より現れた正体は、刀身に血が付いた大剣を持ったシュンだ。

 先の吹き飛ばされた兵士は、飛んできた瓦礫が頭部に当たったのか、既に息絶えており、雪原の上に横たわっている。

 約一個小隊分の人数に銃を向けらながらも、シュンは動じることなく彼らの前に姿を見せ、コートの下に着こんである制服の襟に付いてある階級章で、国家人民軍の物ではなく、シュタージの準軍事組織の部隊であると見抜く。

 獰猛な刺客たちを惨殺し、巨漢を惨たらしい肉塊に変えたシュンに、シュタージの歩兵小隊は目前に居る化け物を殺そうと一斉射を浴びせる。

 

「撃て! 撃て!!」

 

 恐ろしいほどの弾幕をシュンは浴びせられたが、彼が身に纏う黒の甲冑のようなバリアジャケットには全く効かない。恐怖心で何度も撃っている者もいるが、無駄弾であった。

 

「この程度で終わりか? お返しと行くぜ」

 

 そう言ってプラズマ式ボウガンを左腕のガントレットに装着し、逃げようとする武装した小隊に向けて掃射した。

 火力は凄まじく、一瞬の内で白い雪原が一個小隊、約四十人分の血で赤く染め上がる。

 僅か十秒ほどの掃射で動いているのは、片足を失った中尉階級の小隊長のみであった。彼以外の将兵らは、手足が吹き飛んだり、胴体が引き千切れたりと色とりどりな死体に成り代わっている。

 そんな小隊長にシュンは近付き、ボウガンを元の位置へ戻してから大剣の刀身を右肩に担ぎ、シュタージの誰が自分を殺すように命じたのかを、小隊長の失った右脚の根元を踏み付けながら問う。

 

「おい、俺を殺すように命じた奴は誰だ?」

 

「お、お前などに教える物か…!」

 

 傷口を踏み付けられようとも、何も吐かないシュタージの小隊長に対し、シュンは左腕に向けて大剣を突き刺して切断する。

 左腕を切断された小隊長は声にもならないほどの絶叫し、激しい痛みでショック死し掛ける。

 

「どうだ、喋る気になったか?」

 

「言うか…! 間抜け…!!」

 

「そうかい…」

 

 どうせ殺される。ならば言わず死のう。

 そう思っているシュタージの小隊長に対し、シュンはコアより電動ドライバーを出して針を額に突き付け、引き金を引こうとする。

 とても恐ろしい殺し方だ。こんな苦しみを感じながら死にたくはない。

 引かれようとする引き金に恐怖した小隊長は、自分にシュンを殺すように命じた上官の名を口にした。

 

「べ、ベアトリックスだ! 武装警察戦術機大隊の長のベアトリックス・ブレーメ少佐だ! ノィエハーゲン要塞で生き残っているお前を殺せと命じられた! ほ、本当だ!!」

 

「ほぅ、あの黒髪の姉ちゃんか。一発ヤってみたかったが、仕方ねぇな」

 

 命じた人物の名を口にした小隊長に、シュンは約束を守る形でドライバーを戻し、代わりに拳銃を取り出して即座に額へ向けて引き金を引き、一瞬の内であの世に送った。

 

「こいつは、裏を取らねぇとな。すっ呆けるだろうな」

 

 自分を殺せと言ったのが、武装警察の戦術機大隊の長であるベアトリックス・ブレーメであると分かれば、ゲスな笑みを浮かべながらバリアジャケットを解除して大剣を待機状態へと戻し、シュタージに襲われたことを中隊に報告する為、凄まじい惨状が広がっているこの場に何の後処理もせずに去った。




ここからネオ・ムガルが介入してくる予定。

もうゾックを出そうかな?

そんでシュンとベアトリックスがずっこんバッコンしてる短編SSを…うわっ、なにをするやめr

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