そんでもってマクロスプラスの超人パイロットで主人公なイサム・ダイソン回です。
人類のBETAに対する反攻作戦、海王星作戦が開始される同時刻、宇宙において、アメリカやソビエトとは違う人類の宇宙艦隊が地球の軌道上に集結していた。
この世界の科学力では建造できない程の巨大な宇宙艦艇を所有しており、更には存在しないはずのMSやバルキリーを多数保有している。
船体には、ワルキューレ宇宙軍を示すマークが描かれていた。
『各大隊へ、降下準備』
「もうこんな時間か。さて、標的はエイリアンの作った巣(ハイブ)か。デス・スターのように、奥に反応弾でぶち込んで一気に片を付ければ良いのにな」
作戦が開始されたのと同時に、衛星軌道上に展開しているバルキリー部隊に降下命令が伝達された。
その内の一機、それもVF-19Aエクスカリバーのコックピット内に居る自由奔放な男は、降下命令を聞いてヘルメットを被り、計器のボタンを押して機体を起動させる。
それから物の数秒後に、宇宙軍艦隊の提督の演説が無線から聞こえて来た。
『諸君らバルキリー隊の任務は、ミンスクハイブの半壊にある。その際に諸君らは極めて危険な対空弾幕に晒されることだろう。だが、諸君らはその対空弾幕を避けきれる機動性を持つ機体に乗り、更には訓練も受けている! 諸君らは作戦地域に降下し、作戦を成功させた後、三か月間ほど空軍の管轄になるが、私は一人も欠けずに我が艦隊攻撃機隊への復帰を望む。以上だ』
「やれやれ、自分はお優しい指揮官様ってアピールかよ。どうせ死んだら、遺族に勲章やら死亡保険を渡して、彼は良いパイロットでしたとか抜かして後はお終いだろうよ」
提督の演説に対し、パイロットは冷ややかな意見を口にする。それが聞こえていたのか、彼の上官からのお叱りの無線連絡が入った。
『イサム・ダイソン大尉、その言葉の意味、分かって言っているだろうな?』
「おっと、これは言葉が過ぎました。大隊長殿」
自分が属する大隊の長よりお叱りの言葉を受けたイサム・ダイソンと言うパイロットは、何も反省する様子も無く、掌を相手に見せるイギリス空軍式の敬礼をしながら謝罪する。
イサムは謝罪した後、上官に対してこれから降下地点で待ち受けるBETAの光線級による対空砲火の中を飛ぶ気分を問う。
「でっ、これからシューティングゲームのように、レーザーが雨あられと飛んでくる対空弾幕の中を飛ぶ気分はどうですか? いくらマクロスキャノンで馬鹿デカい目ん玉をある程度始末できても、VF-19やVF-22で編成された二個大隊の残機がどれくらい残るか分かりませんぜ? 大隊長殿も、撃ち落とされて死ぬかもしれない」
『ほぅ、この俺が死ぬと? 俺はお前より二十年は宇宙を飛んでいる。それとシューティングゲームと聞いて、俺のスコアを抜いたのはお前だな? 誰にも抜かれないように、定期的に記録を更新していた筈だが』
「ご名答です、大隊長殿。あんなゲーム、餓鬼でも出来るイージーゲーですぜ。あのレーザー弾幕を抜けるなんて朝飯前だ。みんなそうだろ?」
イサムに問われた大隊長は、自分はお前より長く飛んでいると答え、自分のシューティングゲームのスコアの記録を塗り替えたのは、彼であることが分かって睨み付けた。
それを聞いたイサムは、ご名答であるとジェスチャーを取りながら答えれば、全員の士気を高めるためか、大隊に属する全員にBETAの対空網を抜けることは容易であるかを問う。
『あぁ、ゲームみたいなもんだ。ルーク・スカイウォーカーより早くデス・スターを破壊してやる』
『目を瞑っても避けれます』
「みんな余裕だそうです」
『ほぅ、貴様、口が上手いな。この分だと、俺の大隊は貴様に乗っ取られるやもしれん。頑張って潰さねばな』
大隊のパイロット達の士気を高めたイサムの手際良さに舌を巻いた後、大隊長は人型変形したマクロス級戦艦を見た。
この超巨大戦艦は多数の対空火器やミサイルに火砲、主砲にはマクロスキャノンと言う強力過ぎるエネルギー砲を装備し、艦内には兵器や物資生産設備を備え、更には多数の艦載機を収容できる格納庫や発艦設備も備えている。
たった一隻で、一個機動艦隊分の火力と艦載機を誇る巨大戦艦なのだ。
そんな巨人サイズのような船から巨大なロボットへと変わったマクロス級が両肩の主砲の発射態勢を取ったのを見ていたイサムは、ヘルメットの紫外線対策用のバイザーを起動させ、発射するのを待った。
発射が終わってから地表へ降下し、ハイブの奥深くまで反応弾を搭載している特務仕様の可変戦闘機であるVF-22シュトルムフォーゲルⅡを護衛するようだ。
『マクロスキャノンの発射終了後と同時に、VF-22シュトゥルムフォーゲルⅡを中心とする中隊が先行して降下する。我々VF-19エクスカリバー大隊はその後へ続いて地表に降下する。地表へと降下後、マクロスキャノンで出来た渓谷内へと突入。それと同時に離脱する際に、生き延びた光線級などを掃討しながら目標まで進む。地上のサソリやトリケラトプスなどには構うな。要塞級も無視して構わん。光線級や重光線級のみを狙え。分かったな?』
「了解、了解。目玉をスクランブルエッグにすれば良いんですね」
『はっはっはっ、異世界から来た奴は面白い事を言うな』
マクロス級が主砲発射態勢を取る中、大隊長がブリーフィングで行った発射終了後の降下についての手順をここに来て改めて部隊全員に言えば、イサムは光線級排除をスクランブルエッグと表する。これに同じ大隊に属するベテランのパイロットが聞いていたのか、イサムの例えを面白いと笑い始める。
『レッド12、私語は慎め。では、各機、発射終了後まで待機しろ』
そのベテランを注意すれば、大隊長は発射まで待機しておくように告げてから出撃の時を待った。イサムも発射まで待機し、マクロスキャノンが発射するまで待つ。
そんなマクロス級を眺めるイサムに対して、先のベテランのパイロットがプライベート用の無線連絡で話しかけて来た。
『おい、ダイソン中尉。そんなに珍しいか? 自分の世界の兵器なのに』
「あぁ、確かにマクロスは俺の世界の兵器だが、実戦でマクロスキャノンを撃ったのは初めてだ。いつもの標的は、馬鹿デカい鉄屑さ」
『そっちの世界は殆ど戦争をやってないか。俺たちの所はしょっちゅうさ。それにマクロスキャノンの標的は鉄屑と変わらない炭素で出来た化け物共だ』
「毎日が第一次星間大戦並だな。そんなことやってて、不安にならないのか?」
『なぁに、上は余り大きくならないようにしているさ。おっ、時間のようだ』
待機中の時間つぶしに、イサムとベテランパイロットは雑談を交わした後、遂にマクロスキャノンが地球のミンスクハイブに向けて発射された。
発射されたエネルギーは真っ直ぐと標的へと向かって行き、地表に居る大多数のBETAを焼き払う。
『よし、良いぞ! みんなぶっ殺しちまえ!』
『バーベキューだ! もっと焼き払え!!』
『その調子で俺たちを楽させてくれよ!』
「やれやれ、四六時中戦争をやってる奴らは」
ハイブ周辺の地表を焼き払うマクロスキャノンを見て興奮したパイロット達の無線を聞いて、イサムはこれを苦笑いしながら野蛮と表する。
それから物の数秒後に宇宙艦隊のミサイル攻撃が開始され、マクロスキャノンの掃射が終わったと同時にVF-22の中隊が先行して地球へと降下し始める。
出撃の合図だ。直ぐにイサムが属するVF-19を中心とするレッド大隊にも出撃が命じられた。
『レッド大隊各中隊、降下開始! オルカーン中隊に続け!』
「いよいよか! さぁ、行くぜ! カワイコちゃん!!」
出撃命令が下れば、イサムは気合いを入れて操縦桿を握り、続々と先行した中隊へ続く僚機の後へ続いて地球へと降下した。
可変戦闘機は他の機動兵器とは違い、専用の装備無しでも大気圏突破能力を持っており、大気圏の降下も可能だ。初期段階の可変戦闘機のVF-1バルキリーは専用のロケットが無い限り不可能だが、大気圏の降下は可能である。
『レーダーに光線級の残存あり! 各機、対空砲火に注意せよ!!』
物の数秒後で多数の可変戦闘機が地球へと降下し、そのまま目標のミンスクハイブへと向けて降下し続ける。
先行した部隊より、マクロスキャノンやミサイル攻撃を生き延びた各光線級によるレーザーの対空砲火に注意するようにとの無線連絡が入る。
『艦隊の連中め、余り減らせてねぇな』
『レッド14、油断するな。奴らは知能を持っている』
『ケッ、笑わせんじゃ…』
『各機散会しろ!』
「貧乏くじを引いたな!」
先行した部隊からの無線を聞き、悪態を付いたパイロットは、飛んできたレーザーに撃墜された。
直ぐに大隊長は散会の指示を出し、イサムも指示に応じて散会し、飛んでくるレーザーを避けつつ、目的地を目指す。
『メーデー、メーデー! こちらレッド19、被弾した! 墜落する! 墜落…』
「クソッ、ハイブに着くまでに何機失うんだ!?」
標的のミンスクハイブに近付くにつれ、光線級の数も増え、脱落していく機体も増えて行く。先行しているVF-22も同様で、十二機中、六機がレーザーの対空砲火で撃墜されていた。
他の大隊も降下しているが、損害もかなりの物である。言っても、他の大隊のバルキリーは、VF-11Bサンダーボルトであるが。
幾らVF-19やVF-22と言う高性能機とは言え、強力なレーザーによる対空砲火には耐えられない。
光線級の対空網を抜け、地表まで辿り着いた頃には、最初の五十機以上の高性能可変戦闘機は三十機以上にまで減っていた。
『三十三機中、残存は二十三機か…! オルカーンは残存機六機以上…! これがこの世界の敵の対空網か! ただの化け物と侮ってはならんようだな…!』
一度、人型のバトロイド形態へ変形させて地に足を着けた後、残りの残存機が予想より遥かに減ったことに、BETAの対空網を侮っていた自分に情けなさを感じつつ、迫って来る戦車級や要撃級、突撃級に手にしているガンポッドを向けた。
「おいおい、マクロスキャノンを叩き込んだのに湯水のように湧いて出て来るぞ!」
『クソッタレが! 俺が全部ぶっ殺してやる! かかって来い! このモンスター共め!!』
向かって来るBETAの集団に対し、先行した中隊も含め、残りの可変戦闘機部隊はガンポッドを掃射する。
サイズの関係上、VF-19の使用するガンポッドの口径は戦術機の突撃砲より小さいが、連射力は技術力の差を遥かに凌いでいるため、容易に突撃級や要塞級の皮膚を貫通できる。
『よし、弾を無駄にするな! 目的地まで急ぐぞ!』
ある程度一掃して全機が代えの弾倉に取り換えれば、大隊長は率先して機体を一度ガウォーク形態に変形させて浮かせ、それから戦闘機形態のファイター形態へ変形させて目的地まで向かった。
「よし、デス・スターと行くか。場所的にはホスだがな」
イサムも他の僚機と同様に機体をファイター形態へ変形させ、ハイブ内へ向けて突入して行く隊に続く。
『予定のコース通り、マクロスキャノンで出来た渓谷内へ入る! 各機、計器に目を配れ!』
レーザーによる対空砲火を避けるため、大隊はマクロスキャノンの掃射によって作り出された渓谷内へと入る。
先行して大隊長機やVF-22の部隊が渓谷内へと入れば、イサム等も渓谷内へと突入し、ぶつからないようにしながら先行する編隊の後へ続く。
マクロスキャノンで出来た渓谷内は、夥しい数のBETAの屍が幾つも見られたが、生き残っているBETAは死を恐れず、高速で移動するバルキリー部隊に襲い掛かって来る。それに光線級も何匹か生き延びており、バルキリー部隊を見るなりレーザーを撃ち込んで来る。
「おっと! スターキラーだったか!? だが、この俺には当たらねぇよ!」
飛んでくるレーザーを避けたイサムは、機体をガウォーク形態に変形させて減速して、そのまま自分に向けて第二射を放とうとする光線級をガンポッドで始末する。
再びファイター形態へと戻せば、今度は十時方向に現れた光線級がレーザーを撃つ前に急接近してからバトロイド形態へと変形し、右手にエネルギーを込めて殴り込むピンポイントバリアパンチを打ち込んで肉塊へと変え、続けて周囲に居る光線級も同等に始末して行く。
「スターウォーズに、こんなグロイ死に方や生物は居ないぜ!」
全てを始末すれば、向かって来る他のBETA集団に向けてガンポッドを撃ちながら高速で後退し、目的地まで進む編隊へ合流する。
『おい、単独行動が過ぎるぞ。あいつ等に囲まれたら、一溜りも無いぞ』
「フェアプレイ重視ってか? けっ、飛んでる奴が居なきゃ、張り合いが無さ過ぎるんだよ」
この勝手な行動に対し、自分の所属している中隊の長から注意されるが、イサムはBETAに対して張り合いが無いと、右側面に見える要撃級に向けて中指を立てながら答える。
他の機も、光線級を見付け次第、ガンポッドかマイクロミサイルを撃ち込んで排除していたが、イサム程の掃討はできていない。
実戦経験なら自分より上なワルキューレの面々には敬意を表するイサムだが、慎重に自分等の被害を抑えて光線級を始末する彼らに苛立ちを覚える。
「たくっ、お前らビビり過ぎなんだよ。このB級映画のモンスター共は、超早いレーザー対空砲を持ってるだけだろ。一気に近付いてぶん殴るだけだろ。飛んでる蠅見てぇなのが居ねぇのにな」
相手にしているBETAが余りにも手応えがないので、下に見える要塞級と戦おうと思ったが、大隊長や他の僚機に狙われそうなので、止めておく。
そんな時に、上から戦車級が大量に振って来た。
『赤蜘蛛だ! 大量に振って来るぞ!!』
『うわぁ!? 取り付かれた! た、助けてくれ!!』
「おいおい、今度は赤蜘蛛の雨か? 全く、地にへばり付きやがって。そんなに地上が大好きなのか、BETAって言う化け物共は」
上から振って来た戦車級に、無線での報告が入れば、回避が遅れた一機が取り付かれて撃墜された。
これにイサムは、BETAがよほどの地上好きな生物と言って、振って来る戦車級を回避しつつ、バトロイド形態へ変形して、取り付こうとした戦車級を拳や蹴りで弾き、それから編隊の後へ続く。
「雨は止んだな」
『十二時方向より重光線級! 全機散会…』
「今度は大目玉か!」
振って来る戦車級が止み終えれば、次に重光線級による強力なレーザー攻撃が来た。
またしても数機が犠牲となり、消滅した機体や火を噴きながら墜落して、大爆発を起こす機が出る。
「さて、スクランブルエッグと行くぜ!」
これ以上の損害を出されれば自分の癪に障るのか、イサムは編隊の前に出て重光線級に接近した。
周りには他の光線級も居たが、イサムには撃つ方向が分かるので、撃つ前にガンポッドやミサイルを浴びせて一掃すれば、素早くガウォーク形態へ変形させ、それから激突寸前にバトロイド形態へと変形して目玉にピンポイントバリアパンチを打ち込んで無力化する。
返り血を浴びて機体は真っ赤になるが、イサムはそんなことは気にせず、右こぶしを引き抜き、ガンポッドを手に取って目に見える光線級の排除を続ける。
『よし、目標を確認!』
『オルカーン中隊が標的まで辿り着いた! 全機、光線級を掃討しつつ、離脱せよ!!』
イサムの活躍もあってか、五機までに減ったVF-22の中隊は目標まで辿り着き、反応弾を搭載しているミサイルの発射態勢に入る。
これに大隊長は向かって来るBETAを倒しつつ、残りの部隊に指示を出す。
ハイブの一部であって、BETAの数は凄まじい物であったが、ここに来て脱落する機はおらず、向かって来た全てが屍となるばかりであった。
『反応弾発射!』
『よし、作戦に参加している全バルキリー隊は作戦空域を離脱後、西ヨーロッパ方面に退避!』
「さて、地上で羽を伸ばすか」
やがて反応弾を発射したのと報告を受ければ、作戦に参加している全バルキリー部隊は退避を始めた。
僚機が続々と空へ向けて飛んで行くのを見ていたイサムも、迫って来るBETAをある程度排除してから機体をガウォーク形態へと変形させて上昇し、作戦空域を離脱して行く部隊の後を追う。
同じく降下した他のバルキリー部隊のおかげもあってか、光線級による対空砲火は無く、反応弾を発射したVF-22部隊も含め、難なく作戦空域を離脱に成功した。
「はぁ、つまらねぇ化け物だったな。飛んでる奴が居れば、最高だがな」
『おい、何所がだ!? 俺たちが何人死んだと思ってる!?』
「お前らの反応速度が悪いんだよ」
光線級の射程外まで高度を上げた後、イサムは一息ついて自動操縦に切り替え、シートに寄り掛かりながらBETAの物足りなさを口にすれば、それが聞こえていたのか、無線機より他のバルキリー部隊のパイロットから怒りの声が響いてくる。
周りを良く見れば、火を噴いている機や飛んでいるのが奇跡な機体が目立っている。彼らは実戦経験こそイサムより上であるが、彼のような化け物染みた操縦技術は持っていない。
そんな彼らに対し、イサムは悪気も無しに反応速度が悪いと答える。
『なんだと!?』
『よせ! 次に地上任務が待っている! イサム・ダイソン大尉! これ以上彼らを逆なでする発言はするな!! 分かったな!?』
「はっ、失礼しました! 中佐殿!! けっ、レーザー弾幕はスリルがあったが、受けるんじゃ無かったぜ」
イサムの答えに更に激情するパイロット達であったが、大隊長は彼らを宥め、彼に注意した。
これにイサムは申し訳なさそうな表情をして謝罪したが、通信が切れた途端に不機嫌な表情へと戻り、暫く雪雲を眺め、自分等の帰投先である基地に着くまで待った。
ワルキューレがこの世界のBETA戦争に参加したのは宇宙軍だけでは無い。
陸軍や海軍、空軍の部隊も多数参加し、この世界には無い機動兵器を多数投入していた。
相手がBETAであって、その数は大規模な物であり、火砲や戦闘車両、艦船、航空機の数を遥かに上回っている。
第二次世界大戦の前期に行われたナチス・ドイツを初めとする枢軸国軍によるバルバロッサ作戦よろしく、人類の連合部隊より大規模な反攻作戦がワルキューレの手によって行われた。
反攻作戦の最初は、多数の榴弾砲やロケット弾による準備砲撃で行われる。沿岸や海上に近い方では、付近に展開する艦隊による艦砲射撃だ。
恐ろしい対空兵器である衛星で捉えた光線級を排除するための物だが、大多数がレーザーで迎撃される。だが、迎撃しきれない程、それも第一次世界大戦並の砲弾の量であり、ロケット弾は第二次世界大戦並で、ソ連赤軍が砲撃の際に撃ち込んだ数に匹敵する量である。
辺り一帯を更地にするほどの砲撃であり、迎撃が間に合わず、付近に居るBETAもろとも砲撃の雨に晒され、無残なミンチになる。
対空設備を担当する光線級が排除されたのを確認すれば、砲撃は止み、次に爆撃が開始される。
大多数のBETAが密集地底地点を発見すれば、即座に爆撃機の大編隊は爆弾を雨のように頭上から降らせ、一瞬の内で後列の集団を前列の集団のように死臭の漂う死体の山へと変えた。
「機動兵器部隊、前進開始!」
爆撃が終われば、指揮車両に乗る指揮官の指示に従い、大多数のMSやゾイド、ASの機動兵器部隊による大攻勢が開始される。
前列を装甲の厚い旧ヘリック共和国系や旧ゼネバス帝国系の大型ゾイドが固め、その背後からはMSや中型ゾイドの混合部隊が固める。後列は小型ゾイドやASなどの小型タイプの機動兵器だ。更にその背後には車両部隊が続く。
地上主体の作戦であるため、総兵力投入数三百二十万の内、陸軍が二百二十万を占めている。残りの百万は海軍と空軍の派遣部隊が占めていた。海軍六十万に空軍四十万だ。
余りにも凄まじい砲撃や爆撃により、雪は全て取り払われ、地面が見えてしまっており、その上には原形をとどめないほど損壊したBETAの屍が転がっている。
それらの大多数の屍の横をワルキューレの大規模な地上部隊が前進し、迎撃にやって来るBETAと交戦を開始した。
初めて見る異界の戦術機に当たる兵器に対し、BETAの集団はいつものように数の暴力で捻り潰そうとしたが、突撃砲の弾丸でも無いレーザーやビーム、プラズマ弾の雨を浴びせられて蹂躙される。突撃級の前面の皮膚を容易く貫通するので、一方的な虐殺とも言える攻勢が行われた。
「私達の出番、あるかな?」
『あるに決まってるでしょ。航空支援要請確認! 二時方向から!』
「了解!」
陸軍の大規模な機動兵器部隊によるローラー作戦により、蹂躙されていくBETAの大群を見て、近接航空支援のために対地ロケットなどで爆装し、要請がいつでも来ても良いように滞空していた空軍所属のVF-11Bなどのバルキリー部隊の一パイロットは、出番が無いと口にした。
だが、ここのように一方的な蹂躙とはならず、航空支援を要請する無線連絡が入り、即座に現場の方へと戦闘爆撃機仕様のVF-11Bの編隊は向かう。
これらの航空支援は一部を限定してワルキューレのみであり、人類側はこんな時にも拘らず、未だに冷戦の影響もあって、資本主義陣営の西側は共産主義陣営の東側の要請により兵器の制限を受け、ワルキューレほどに前進で来ていない。
沿岸に近い方では、人類の連合艦隊やワルキューレの艦隊による更地にする勢いの艦砲射撃が続けられ、その後から残りカスの掃除と言わんばかりに対地爆弾を搭載した初めの可変戦闘機と言うべきVF-1バルキリーが艦載機として空母から続々と発艦した。
眼下に見える物がBETAやなんであれ、動く物があれば爆弾を落として殲滅する。
これには流石の人類軍も、形振り構わずに自分たちの土地で圧倒的な火力を行使してBETAを吹き飛ばしていくワルキューレに対し、懸念の目を向ける。
大規模な兵力を派遣してくれるのは良いが、このままでは東ヨーロッパ全土を更地にされるのではないかと。
そんなことを気にせず、ワルキューレから派遣された二つの軍集団と三個艦隊、二個航空軍団の大規模な部隊は、ただ総軍司令部より言い渡された命令をただひたすらと働き蜂のように実行した。
「ほぅ、随分と凄い物量だな。よくもまぁ、これだけの物量を温存していたもんだ」
この海王星作戦には東側陣営のソビエト連邦地上軍を初め、同盟国の連合部隊であるワルシャワ条約機構軍も参加している。即ち条約軍の傘下に入っているドイツ国家人民地上軍も参加しているのだ。第666戦術機中隊、通称シュヴァルツェ・マルケンにもお呼びが掛かり、本部として使われる基地に飛行しながら向かっている。
隣国ポーランドのグダンスク湾の近くを飛んでいるので、西側諸国の艦隊が目に入り、シュンはありのまま自分の思ったことを口にした。
ファムはまだ傷が癒えておらず、後方でコマンドポストを担当し、その穴を補充員であるリィズが埋める。ファムが戦死していないので2(ツヴァイ)のコールサインはいつでも戻ってきていいように開けたままだ。
『これが西側諸国だ。良く目に焼き付けておけ』
「ヤー、
先頭を飛ぶアイリスディーナより、西側海軍の艦隊を目に焼き付けておくようにとの指示が来れば、シュンは遠くの方で、上陸部隊の支援のために艦砲射撃や艦載機の発艦や着艦を繰り返すワルキューレ海軍の艦隊に目を向けた。
「(なるほど、ここでワルキューレが戦術機を手に入れたって訳か)」
カメラより見えるワルキューレの艦隊を見て、シュンはここでワルキューレが戦術機を手に入れたと確信した。
「前衛小隊はエーベルバッハ少尉、ホーゼンフェルト少尉、バートル曹長の三名だ。後衛小隊はイェッケルン政治将校中尉、ホーエンシュタイン少尉、ヴァルトハイム少尉。中隊本部小隊は私とクリューガー中尉、シルヴィア少尉だ」
仮説基地へと着いた際、アイリスディーナは中隊の再編成の構成を中隊メンバーに告げた。前の戦闘でもファム抜きで出撃したが、今回は編成を変えて出撃する。シュンは格闘戦が得意なため、前回に引き続き前衛を務める。
「書類は全員に渡ったな? では各自、強化装備に着替え、ブリーフィングを行う。それから訓練だ。行け!」
『了解!』
編成を告げ終えれば、アイリスディーナは指示を出した。一同はそれに従い、ブリーフィングと訓練を行うため、強化装備に着替え始める。
外では近くに砲兵基地でもあるのか、砲声が四六時中聞こえ、シュンは左耳を穿りながら更衣室へと向かう。
「たくっ、うるせぇな。四六時中、榴弾砲をぶっ放しやがって」
「お兄ちゃん、一緒に行こ!」
やや砲声にイラつきながらも、シュンが更衣室へと向かう中、同じくそこを目指すテオドールの背後から、義妹であるリィズが抱き着く。
「一緒に行こうにも男女別に完全に別れてるんだ。カティア達と一緒に行けよ」
じゃれついてくるリィズに対し、テオドールが引き剥がして注意すれば、シュンはトンデモない発言をする。
「なんだ、ストリップか?」
「ぶぅ! お前なんて嫌いだ!」
「おい、ゴリラ。それは無いだろ」
「なに、追い払うには丁度いい」
セクハラとも取れるこの発言に、リィズは苛立ちながら下がれば、テオドールはシュンを注意する。
だが、シュンは何の悪気も無く、追い払ってやったと言って再び更衣室を目指す。
それから中隊はブリーフィングと訓練を行い、暫しの休息の後、司令部より出撃命令が下されば、前線へと向けて出撃した。
ワルキューレの派遣軍の装備
MS編
ジム
言わずと知れたガンダムに出て来る連邦軍の量産型MS。
その本編やられっぷりから、量産機が試作機よりも弱いと言う印象を世間に与えた。
ここでもわんさか登場し、ビーム兵器を持ってるから火力で圧倒しているが、やられまくってる。
ジムキャノン
右肩に大砲を括りつけたジム。MSVに出て来る。
ジムと同じくわんさか登場するが、次にやられまくる運命。
ジム寒冷地仕様
ガンダムのOVA、ポケットの中の戦争に出て来る寒いところ専用のジム。
ステンガンに似たマシンガンを持ち、やられる。
柴犬も冬のドイツを舞台にしているので、ジムと同じくわんさか登場してやられる。
ジム改
OVAの0083に出て来るジムの高性能量産機。後期型とか改とかよばれてるややこしいやられMS。
ここでもわんさか登場するが、本編でもお察しの通りにやられる。
陸戦型ジム
OVAの08小隊に出て来るジムの陸戦仕様。つっても、陸戦用ジムとか紛らわしい奴が出て来る。
普通のジムより硬いが、ジムなのでやられる。
ジムⅡ
Zガンダムに出て来るジムの近代化改装機。
つっても、旧式化してるのでやられる。ここでもわんさか登場する。
バルキリー編
VF-1バルキリー
超時空要塞マクロスの主人公機である三段変形する可変戦闘機。
ここでは海軍や空軍が運用しているが、敵に飛んでる奴が居ないので、モデルにされたF-14の如く爆装して攻撃機扱い。
VF-11Bサンダーボルト
OVAであるマクロスプラスに登場するVF-1の後継機。マクロス7では後継機のC型が出て来る。
同じく飛ぶ奴が居ないので、戦闘爆撃機扱い。やられ役である。
VF-19Aエクスカリバー
高性能バルキリー。
超人パイロットであるイサム・ダイソンが搭乗している機もあるが、彼以外が乗る機体は光線級のレーザーに撃ち落とされまくる。
VF-22A
特殊作戦用の高性能バルキリー。
ガルドが乗るタイプとは違う量産特化型。だが、ここでも落とされる。
ゾイド編
マンモス
共和国の初期ゾイドの一つ。読んで字の如くマンモス型ゾイド。
厚い装甲を持っているため、前面に立たされるが、後の象さんゾイドよりも弱いので、やられ役である。
断じてあの貧弱な骨型ゾイドを投入すれば、パイロットが可愛そう。
ゴドス
共和国初期ゾイドの一つであり、アニメ三作品に出たレギュラー小型ゾイド。
小型版ゴジュラスとも言うべき高性能ゾイドであるはずが、アニメではレイヴンが乗らないと弱いやられやく。
アイアンコング
帝国の初期ゾイドの一つ。ゴリラ型ゾイド。
装甲が厚いので前面に立たされた。何気にアニメ三作品に出て来る知名度の高い奴。
AS編
M6ブッシュネル
フルメタルパニックに登場する西側諸国のアームスレイブ。
原作にも登場し、そしてやられる。