復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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アムロ「相手がザクなら人間じゃないんだ! 僕だって!!」


機械の巨人との思いで

「敵機多数! これ以上は持ちません!!」

 

 これは夢…そう、悪い夢…

 

「こちら第二大隊! 大隊長は戦死! 持ち堪えられない!」

 

「クソッタレ! 機動兵器の大軍なんて冗談じゃねぇぞ!」

 

 それはシュンの悪夢。

 彼とその部下達の目の前には、全長およそ18mか、20m程の”機械の巨人達”が、大勢で自分等の守る陣地へ押し寄せてくる。火力は圧倒的にシュン達の方が不利。機械の巨人達は、その圧倒的な火力と大きさで押し寄せてくる。シュン達は、携帯式対戦車無反動砲を撃ち込むも、直ぐに地響きのような弾幕で返され、それを諸に受けた兵士は、原形をとどめないほどの肉塊となる。

 絶望的だ。自分等が属する軍事組織には、あの”機械の巨人”と同じ兵器を敵よりも多く保有しているが、今のシュン達はそれを持ち合わせて等居ない。持っているとすれば、迫撃砲、携帯式対戦車無反動砲、携帯式対空ミサイル、対戦車地雷に対物地雷、様々な爆薬類、そして重機関銃。

 これでどうやって、圧倒的な火力で攻めてくる巨人達と戦えと言うか?

 砲兵の砲撃支援でもあれば別だが、通信機で何度要請しても「別戦区での砲撃支援のため、要請を受け入れられない」と答え、大砲の一門すら撃ってくれない。増援や航空支援を要請したところで、他にもシュンの陣地と同様な事が起きているのか、増援すら出してくれない。残された選択肢と言えば、撤退か死守だ。もちろん死守など論外だ。大多数の機械の巨人相手に、壊滅状態の一個大隊では、不可能に近い。彼らが選択したのは、もちろん前者だ。士気がこう低下してしまっては、戦線の維持など不可能だ。

 

「クソっ、もう持たねぇ! 連隊本部、こちら第2大隊大隊長代理! 戦線維持不能!

撤退する!」

 

 直ぐにでも撤退すると、戦死した大隊長や副隊長に代わり、シュンは連隊本部に告げた。当然ながら、連隊本部は撤退の許可を出さない。

 

『なに、撤退するだと? それでは戦線が瓦解する! 後十分以上は持ち堪えろ!!』

 

 十分は持ち堪えろ。

 今の状況と士気では、それほど持ち堪えることは出来ない。代理となったシュンは、連隊本部からの指示に逆らい、撤退を始めるともう一度告げ、受話器を強引に戻し、持ち運べない装備を破壊するよう指示する。

 敵に情報を渡さず、鹵獲して備品にさせない。撤退を行う際に、何処の軍隊でもやる常套手段だ。余裕があれば、重装備などを持ち帰ることができるが、シュン達にはそんな暇は無い。急いで撤退しなければ、”巨人が持つ銃”の餌食となる。

 

「全員撤退の準備は終わってます!」

 

「そうか! 撤退するぞ! 全員ばらけて走れ!!」

 

 シュンの指揮下に入った将兵等は、直ぐに撤退の準備を終えており、いつでも逃げ出せる状態であった。これを知ったシュンは、持ちきれない通信機を持ち込んでいたFN SCAR-Lの銃座で叩き壊し、全力で後方の予備戦線にまで撤退する集団に加わった。

 これ程早く撤退準備を終えたのは、彼らの兵種はレンジャーと呼ばれるドイツ軍の猟兵と同じ精兵である。意味は様々であるが、シュンが属している部隊の動きと、重装備の処分の速さ、それに混乱しない辺りからして、精鋭であることは否定できない。

 動ける負傷兵は自力で走り、動けない重傷者は無傷のレンジャーに抱えられたまま撤退の集団へと加わる。

 撤退の最中、誰も銃など撃ってはいなかった。それもその筈、彼らには機械の巨人に対抗できる武器を持っていない。持っているとすれば、歩兵を倒せる銃火器類だけだが、今攻めてきている敵部隊には、歩兵の一人すらない。機械の巨人だけだ。

 

「うわぁ!」

 

「一人やられた!」

 

「走れ! 走れぇぇぇ!!」

 

 無駄弾を使わせ、的を絞らせないように散会して撤退しているが、敵は数の多さを生かして凄まじい弾幕を浴びせ、殿になってしまった一人のレンジャーの命を奪った。下士官が大声でそれを知らせれば、シュンは構わず走るよう、同じくらいの声量で告げる。その間にも、一人、また一人と凄まじい連射力のある大口径の機関砲の餌食となる。

 僅か数分ほどで百人以上の部下が、機械の巨人達が持つ銃に吹き飛ばされた。シュンが後ろを振り返れば、身体の一部を失った骸が無惨にも転がっている。直ぐにでも仇を討ちたい所だが、今は巨人達に勝つ武器は持っていないし、壊してしまった。

 

「お前等の仇、絶対に取ってやるからな…!」

 

 後ろを振り返り、助けられなかった部下達に謝りつつ、残った部下達と共に、必死で味方の陣地まで走る。逃げるシュン達を追う敵軍の機械の巨人達は、逃げる敵をいたぶるのを楽しんでいるらしく、面白がるように、大口径の弾丸を撃ち込んでくる。

 そのシュン達を追い詰める足並みは遅く、まるで殺戮を楽しんでいるかのようだ。負傷兵を担ぐ兵士に対しても、容赦なく機関砲を撃ち込んだ。耳を塞ぎたくなるような断末魔がシュンの耳に入ってくる。

 

「畜生! あんなデカイのに乗りやがって!!」

 

「おい! 止めろ! 殺されるぞ!!」

 

 仲間を無惨に殺された怨みなのか、一人のレンジャーが無謀にも機械の巨人に挑んだ。彼の武器はAK103突撃銃にベレッタM92、それに手榴弾が三つ。この装備で挑むのは無謀であり、死に行くような物だ。しかし、彼は仲間をなぶり殺しにする敵に対しての怒りで冷静さを失っており、近くにいる機械の巨人に向けて銃を撃ち続ける。結果は当然の如く、そのレンジャーは一瞬で粉々にされた。

 

「クソ、俺の部下が…」

 

「走って隊長! うわぁ!!」

 

 先程の激昂した兵士が一小隊長の部下だったのか、足を止めてそちらへ振り返り、足を止める。そんな上官に対し、まだ生きている部下の一人が走らせようとしたが、近くに着弾した弾頭の爆風を受け、地面に倒れる。直ぐに立たせようとする小隊長であったが、部下の首には破片が突き刺さっており、傷口から大量の血が噴き出している。

 

「た、隊長…早く…」

 

「く、クソ…」

 

 死へ近付く部下を助けることも出来ず、小隊長はまだ息のある部下の言葉に従い、彼の身体をそっと地面に置き、シュン達と共に味方の戦線へ向けて走った。

 この間に一体何人死んだのだろうか?

 その疑問がシュンの思考を支配する。だがここで味方の戦線まで逃げ延びなければ、この地獄から脱することは出来ない。断末魔が聞こえようとも、シュンを含める生者達は必死に味方の戦線へと走る。

 

「もう少しだ…! みんな、頑張れ!!」

 

 死の時間の終わりに、味方の戦線と言う希望が見えた。

 もうすぐだ、もうすぐ俺達はこの地獄から解放される。

 そう希望に浸り、まだ残っている部下達と共に希望のゴールへ走るシュンであったが、突如と無く絶望の淵へ叩き落とされた。

 

「隊長! 砲撃だ!!」

 

「なっ、嘘だろ…!?」

 

 部下の一人が、やって来る絶望をシュンに知らせた。

 その絶望とは、天から雨のように降ってくる砲弾とロケット弾だ。恐ろしい死の音が聞こえ、徐々に大きくなっていき、近くに着弾して爆発する。

 

「走れ! 走るんだ隊長!!」

 

 我に戻った部下の一人が、降り注いでくる死の雨から逃げるように皆に告げるが、もう遅かった。その死の雨はシュン達のみならず、機械の巨人達にも平等に降り注ぎ、敵の命も奪っていく。砲弾とロケットは雨の如く目標に降り注いだ。

 無差別砲撃だ。敵味方関係泣くに死を打ち付ける。流石の機械の巨人達も、この死の雨を耐えられるはずもなく、シュン達と一緒に吹き飛ばされる。重砲数百門と連装型ロケット砲数百機分の防御砲撃である。放たれた第一射が着弾した途端に、凄まじい地響きが起こる。人の手によって起こされる人工の地震だ。

 まだ生き残っているレンジャー達は、凄まじい震動の余り、立ち上がれないで居る。シュンも同様であり、揺れの所為でまともに走れず、脱出できないで居た。

 

「クソッタレぇ!!」

 

 打ち付ける榴弾やロケットと言った死の雨の中で、獣のような叫び声を上げるシュンであったが、近くに重砲の砲弾が着弾し、その余波で吹き飛ばされ、彼は無差別砲撃の中で気絶した。

 

 

 

「うわぁ!?」

 

 酷い悪夢を見ていたシュンは、揺れるトラックの荷台で飛び起きた。

 今のシュンは、トラックの運転手に乗せて貰ってある目的で街へと向かっている。そのトラックの運転手も街を目指していた。

 

「おい、でっかい兄ちゃん、大丈夫か?」

 

「あぁ、大丈夫だ、おっちゃん。それより悪ぃな、乗せて貰って心配まで掛けちまって」

 

「良いって事よ、たまたま荷台が開いてたしな」

 

 運転席から心配を掛ける中年の運転手に対し、シュンは申し訳ない気持ちを表す。運転手の目的は、荷台に置いてある木箱やダンボールなどで分かる。

 だがシュンの目的は一体何か?

 それは、彼が持っている白い布で覆われた長方形の物で分かる。まだシュンの目的を聞いていなかったのか、運転手は額の汗を拭うシュンに、街に向かう目的を問う。

 

「所で兄ちゃん、街に一体何のようで向かうんだい? そんなでっかい布で覆ったもん持って」

 

 運転手からの問い掛けに対し、シュンは一切誤魔化さずに答えた。

 

「あぁ、これな。俺の得物だ、ちょっと街の闘技場で一儲けしようと思ってな」

 

「なんだ、剣闘士さんかい。精々死なねぇようにな」

 

 シュンの目的が分かった運転手は、彼が持ち込んだ物が剣だと分かれば、少し冷めた表情を浮かべた。どうやらこの中年の運転手は、人に危害を加える職業を嫌う人間のようだ。

 

「あぁ、死なねぇさ…俺には死ねない理由があるからな」

 

 そんな運転手に対しシュンは、真剣な表情を浮かべつつ、懐から取り出した写真を見て答えた。

 それから数十分後、トラックは街へ到着。街に着いたのを確認したシュンは、荷台から飛び降り、運転手に駄賃を渡す。渡した駄賃の両は銀貨二枚。安いように見えるが、この地域の価格では、パンが三十個も買えるくらいの価格だ。

 

「こ、こんだけ貰っても良いのか兄ちゃん?」

 

「あぁ、あんたが嫌いな事を言っちまったからな。その迷惑料だ。これでなんかやってくれや」

 

「す、すまねぇな。あ、有り難く貰うぜ…!」

 

 銀貨二枚を渡された運転手は、シュンに対して帽子を脱いで敬意を表し、礼を言ってからトラックの運転席へと戻った。

 

「さーて、一稼ぎとな…」

 

 トラックが過ぎ去っていくのを確認したシュンは、街に来た目的である闘技場へと向かった。

 その闘技場とは闇闘技場の事であり、表のルールが一切通じない死の闘技場である。

 何故そんな危険な闘技に参加するのかは、孤児院の子供達に贅沢でもさせてやりたい事である。

 もしくは自分の隊翌金だけでは孤児院の経営が難しいからだ。孤児院に出資してくれるスポンサーが居れば別だが、強面の男が経営する孤児院に出資してくれる資産家や企業は居ない。だから、見世物となって稼ぐ他ない。

 もう一つの理由は、未だに残る闘争心をここで晴らそうと言うことだ。常に死が隣であった戦場から自ら脱却しても、戦場で敵を倒した時の快楽は、シュンを解放することはなかった。

 だからそれを晴らすために、シュンは危険な闘技場に出るのだ。

 受付を済ませたシュンは、選手控え室へと入り、持ち込んだ装備を身に着け始めた。布に包まれていた得物を解放することも忘れない。布を剥がせば、覆われた物が露わとなる。

 

「おい、ありゃ大剣だぜ」

 

「なんで大剣なんか持ち込んでるんだ?」

 

「知るか。相当なアホだろうぜ」

 

 露わとなったシュンの得物を見た他の出場選手達は、口々に疑問や馬鹿にした事を吐き始める。

 その得物とは大剣。長さは180㎝程であり、刀身は一般的な両手剣よりも厚い。洋剣の特徴である重さで鎧ごと斬る事に適した物だが、この闘技場では身軽さが重視されており、相当な手練れか馬鹿でも無い限り、持ち込む者は少ない。だから他の参加者達が馬鹿にするのだ。

 

「おいおい、そこのマッチョマンよ。おめぇ馬鹿じゃねぇの? 死にてぇのか? あぁん?」

 

「今からでも棄権しても良いんだぜ? 聞いてんのか? おい」

 

 周りから馬鹿にする声が聞こえてくるが、シュンは全く気にせず、黙々と装備と自分の得物である大剣の確認を怠らない。それが澄めば、参加者用の武器屋に立ち寄り、そこで体験と同じ長物である対戦車銃を買おうとする。

 

「なぁ、おっさん。連発できる対戦車銃はあっか?」

 

「んぁ? あるならあるよ。シモノフPTRS1941がな」

 

「あぁ、それくれ。予備弾三つ分とC4二つも付けて」

 

「あいよ」

 

 シュンは中年のスキンヘッドの店主に札束を十枚ほど出して、ソ連の対戦車銃であるシモノフPTRS1941を十五発分と、C4爆弾二つを購入する。

 数秒後、禿頭の店主は重たい対戦車銃を担いでカウンターまで持って行き、それを上に置き、予備弾とC4爆弾と共にシュンに差し出した。

 

「はい、お待ちどうさん」

 

「あぁ、ありがとな」

 

 中年の男が苦労した対戦車銃を、シュンは小銃でも持つような感覚で手に取り、武器屋を後にした。それから控え室も後にして、暇潰しに廊下が彷徨き始める。

 

「おい、姉ちゃんよ。俺達と一緒に気持ち良いことしねぇか?」

 

「ローブで隠しちゃいるが、中々の上物だぜぇ、こいつぁ」

 

「下心を出すなっての。姉ちゃんやぃ、報酬は弾むぜぇ?」

 

 ローブで顔を隠した鮮やかな金色の髪を持つ女性が、三名の出場選手らしき男に絡まれているのが見えた。

 

「おいおい…」

 

 巻き込まれぬよう知らん顔をして立ち去ろうとするシュンであったが、心では見捨てることが出来ず、頭を掻きながら助けようとしたが、ちょっと目を離した隙に、女性はいつの間にか自分の目の前まで居た。

 

「あ、あんた…」

 

「ねぇ、この娘知らない?」

 

 シュンが驚きの声を上げている事も気にせず、フードで顔の見えない金髪の女性は懐から出した写真を見せ、写真に写る人物のことを問う。

 フードから女性の顔立ちが見えた。

 その女性の顔立ちは、青い瞳と綺麗に整った高い鼻、柔らかそうな唇、雪のように白い肌。見れば一生忘れないような絶世の美女と言って良いほどの物だ。

 そんな美女に問い掛けられたシュンは、少し顔を赤くした。写真に写る少女も、目の前にいる金髪碧眼の美女と同等の美しさを持つ美少女であった。しかし、シュンは写真に写る西欧人形のような美少女とは面識がない。少し照れながらも正直に答える。

 

「し、知らねぇ…」

 

「あっそう」

 

「おい、なんでそんな所に…ぐぇ!?」

 

 知らないとシュンが答えれば、美女は礼も言わずに立ち去ろうとする。そんな美女を逃がしてしまった男達は、直ぐにでも捕まえようとしたが、三人の男達は突如と無く全身から血を吹き出し、床に倒れて息絶えた。

 

「な、なんだ一体…」

 

 今起きたことを理解できないで居たシュンは、美女が立ち去った方向に視線を向けたが、彼女の姿は一切無かった。

 

『おい、あそこで悲鳴が!』

 

『何事だ!?』

 

「やべ!」

 

 遠くの方から、闘技場の係員らしき声が聞こえたため、シュンは直ぐにその場を立ち去り、控え室へと戻った。そこで熱りが冷めるまで、待っておくことにする。ある程度冷める頃には、自分が出場する試合を知らせるアナウンスが響き始めた。

 

『次の試合は人間対MS! 出場選手は直ちに会場に集合してください!!』

 

「うしっ、行くか」

 

 席から立ち上がり、シュンは自分の試合が行われている会場へと足を運んだ。彼が会場出入り口まで来る頃には、会場から歓声が上がっており、広い会場の中央には、司会がマイクを握り、観客達を盛り上げている。

 してシュンの相手とは、MS-06F ZAKUⅡ(ザクツー)。ジオン公国と呼ばれるスペースコロニー国家で開発されたモビルスーツと呼ばれる機動兵器の一種だ。一年戦争と呼ばれる史上最大の死傷者と第二次世界大戦とは比べ物にならない程の破壊をもたらした戦争に投入され、MSを持たない地球連邦軍を圧倒し、緒戦で連邦宇宙軍に凄まじい損害を与えた。

 全長17.5m、重量56.2t。どれもこれもが人間を遙かに上回る鉄の巨人だ。 そんな巨人と戦うためには、対MS用の武器を用意しなければならない。

 だが、シュンが持ち込んだのは、古いソ連の対戦車銃にC4爆弾が二つ、大剣が一本だ。どうみても無謀とも言える戦いに、シュンは身を投じた。

 

『なんだぁ? 生身で俺のザクとやり合おうってのかぁ?』

 

 会場で先に待っていたザクのパイロットは、操縦席にある拡声器を使って生身で挑んでくるシュンに対し、挑発的な言葉を掛ける。

そんな挑発にシュンは乗らず、対戦車銃を右肩に担ぎ、開いた左手で目の前の巨人を指差し、問い掛ける。

 

「なぁ、”Sマイン”は詰んでっか?」

 

 Sマインとは、ドイツ軍が第二次世界大戦で使っていた跳躍地雷だ。そもそもSマインこそが跳躍地雷の始まりであり、戦後各国がそれを模した跳躍地雷を開発し、更に発展させた。戦車などの近接防御兵器としても使える物であり、ザクを運用していたジオン軍も、MSに取り付こうとする歩兵対策にこの跳躍地雷を搭載した。

 Sマインが搭載していれば、シュンの人生の終わりであるが、幸いなことに対戦するザクの操縦者はそれを詰むことを怠ったようで、それを素直に答える。

 

『詰んでねぇよ、んなもん』

 

「そうか…なら、勝ったも同然だな」

 

『な、なんだとぉ~!?』

 

 答えを聞いたシュンは、相手に勝利宣言を行い、試合開始の合図があるまで待った。 それから物の数秒で試合開始のゴングが鳴り響き、シュンの勝利宣言に腹を立てたザクのパイロットが、先に攻撃を仕掛けてくる。

 

『挽肉にしてやらぁーっ!!』

 

 拡声器を切っていなかったのか、声が駄々漏れであり、パイロットの声が外に漏れる。ザクが手に持つ120㎜と言う大口径の専用のマシンガンが火を噴き、シュンが居た場所をクレーターまみれにする。これにパイロットは、シュンが粉々になった物かと思ったが、そこに大男の姿はなかった。

 

『ど、何処だ!?』

 

 機体のカメラをフルに使って、シュンを探したが、影も形もない。そんな時に被弾警報が鳴り、画面に敵の攻撃があった位置を知らせるマーカーが表示される。当たったのは、シュンが放った対戦車銃の弾丸だ。

 MSに対しては豆鉄砲同然だが、警報センサーが鳴らせる程度はある。直ぐにパイロットはそこへ、人間を木っ端微塵にするほどの火力を誇るマシンガンの弾丸を撃ち込む。

 

『そこか!』

 

 マシンガンが火を噴いた瞬間、まるで戦車の空薬莢が排出口から排出され、地面にゴンゴンと地響きを鳴らしながら落ちていく。数発ほど撃ち込んで、相手が死んだかどうかをカメラをズームさせて確認したが、煙が晴れても血の跡は確認できない。

一体何処にいる!?

 その思考がパイロットの脳内を支配し、冷静さを欠かせていく。

 焦るパイロットに空かさずシュンは14.5㎜×144㎜弾を移動しながら一発ずつザクに浴びせ、相手の冷静さを奪う。時代が進化しすぎてしまった所為で、貧弱な火力となった対戦車銃だが、MS相手には、言い陽動となる。

 何処からともなく撃たれる事に腹を立てたパイロットは、周辺に向けてマシンガンを乱射した。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

 画面に見える全ての範囲にマシンガンを撃ち込み、土煙を上げさせる。ザクの足下に大きな空薬莢の雨が降りしきる中、シュンは周囲から巻き起こる煙で姿を隠し、息を殺して相手に接近する。

 目標は大きいので派手に目立ち、更には鼓膜を破るような銃声で足音も消え、近付くのは容易であった。数秒後にはザクの足下に到着し、早速足をよじ上って、間接部にC4爆弾を設置する。C4爆弾は粘土型の爆弾なので、直ぐに間接部にピッタリと付いた。左足の関節部に設置すれば、右足の関節部まで一気に飛んで、懐から取り出した最後のC4爆弾を、左足と同じように設置する。後は離れるだけであり、起爆装置を手に、一目散にザクから離れる。

 相手が撃ち終えたのを確認すれば、直ぐに起爆装置のスイッチを数回押し、爆弾がちゃんと作動するのかを確認した。結果は見事爆発。巨体を支える足を両方失ったザクは転倒し、地面に這い蹲る形となる。それを確認したシュンは、直ぐにザクまで接近し、背中に担いでいる大剣を抜いて接近する。

 

「く、クソ!」

 

 パイロットは腕の操縦桿を動かし、シュンをザクの巨大な手で叩き殺そうとしたが、重装備の筈の彼は、それを軽やかに避け、近付いてくる。それに恐怖したパイロットは、操縦桿を動かして、シュンを追い払おうとしたが、全て避けられしまい、やがて近くにまで接近を許す。

 

「オラァ!」

 

 雄叫びを上げ、シュンはザクの左手の指を数本ほど切り落とした。重機関銃の弾丸すら耐える指の付け根であるが、シュンが持つ大剣には鎧と同様なようで、切り落とされた指は地面に落下する。

 

「オラァァァ!!」

 

 猛威と度雄叫びを上げてからシュンは地面を蹴って空に飛び上がり、滞空時間の合間にザクの頭部へ刀身を渾身の力を振り絞って振り下ろし、口には排気口に、パイプと一つ目と言った頭部を意図も容易く両断した。頭部を切り裂かれたザクは、両断された部分から火花を散らし、爆発寸前であった。直ぐにシュンは距離を離して、ザクの頭部が爆発するのを待つ。十数秒後、ザクの頭は爆発し、パイロットは視界を失ったが、それでも負けを認めようとはしない。

 

『くたばれぇ!!』

 

 残った右手でシュンを叩き潰そうとしたが、避けられてしまい、彼が持つ大剣で右手ごと切り落とされてしまった。

 

『ど、どうして大剣がそんな切れ味を!?』

 

「あぁ、この大剣はな、ゴーレムとか戦車なんかの斬る為の(もん)らしいわ」

 

 負けたパイロットからの問いに対し、シュンは自分の得物である大剣の切れ味を述べた。それから両手両足を失ったザクのコクピットに近付き、コクピットのハッチに大剣を突き刺し、無理矢理ハッチを潰してから、パイロットを引き摺り出そうとしたが、負けを認めないパイロットは、震える両手に握られた拳銃を、シュンに向けて撃った。

 

「うっ!?」

 

「俺は負けられねぇんだ! 死ねぇ!!」

 

 数発ほど撃ち込んだが、手が震えており、シュンの左肩にしか命中しなかった。

 

「てめぇ…!!」

 

「ゴベェ!?」

 

 それに堪忍袋の緒が切れたシュンは、パイロットを串刺しにしたままコクピットから引き摺り出す。

 

「た、たしゅけ…」

 

 パイロットからの命乞いを聞かず、観客席まで見えるようにすれば、一気に上まで上げ、刀身からパイロットの身体が抜けたのを確認すれば、宙を舞う男に向け、その大剣を無慈悲に振り下ろす。

 

『オォォォ!!』

 

『すげぇぞ!!』

 

 結果は観客達の歓声の通り、パイロットは空中で両断され、上半身とか半身だけとなった男の骸は、無惨にも会場に晒された。刀身の血を振り払ったシュンは、無惨に横たえる上半身のパイロットに向け、伝わらない言葉を告げる。

 

「済まねぇな、アンタには怨みはねぇが、俺ぁ機動兵器に乗ってる奴が大嫌いなんだ…」

 

 そう聞こえぬ相手に自分の気持ちを告げれば、自分の得物を担ぎながら会場を後にした。




地上にいるモビルスーツってさ、足やられたら終わりじゃね?
まぁ、二足歩行のロボット全部それだけど(笑)。

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