時の庭園の内部へと突入すれば、無数の敵が待ち受けており、入って来たなのは達やシュン達を見るなり一斉に凶器片手に襲い掛かって来る。銃を持つ者は撃ち、刃類や鈍器を持つ者は殴り掛かる。ハンターにグノーシス、傀儡兵は数に任せて突っ込んで来る。
「内部もどっさり居るな!」
「どんだけ悪党共を連れ込んだんだ? 顎割れ野郎は」
最初に突入したなのはとフェイトが、遮蔽物に身を隠しているのを確認すれば、バウアーは目前で銃を撃ちながら突っ込んで来る無法者を数名ほど撃ち殺してから、全員に向けて言う。
これにシュンは、アービターがどれほどの地上戦力を時の庭園内に入れたのかの予想を始める。
そんな状況を覆すべく、KOS-MOSはシュン達に援護を頼む。
「Xバスターで一掃します。援護をお願いします」
「腹ビームでやるのか。よし、なのはも手伝え」
強力な搭載ビームでやると告げれば、シュンは同じような威力を誇る魔法を持つなのはにやるように告げた。
「え、私は…」
「お前のは非殺傷設定だろう。安心しろ、そこらで気絶とかするだけだ」
これになのはは自分に殺させようとしていると思ったが、シュンは非殺傷設定だから気にしなくて良いと告げて安心させる。
「よし、やるぞ! ぶっ放せ!」
無数の敵が援護射撃を受けて突っ込んで来る中、シュンは銃を持つ者達と共に、機関銃で援護射撃を始め、突っ込んで来る敵を一掃した後、強力な技を放つ時間を稼ぐ。
「Xバスター!」
「シュート!」
シュン達が稼いだ時間の合間に、技を放つことが出来たなのはとKOS-MOSは、彼らの期待に応えるように、目前の敵に大打撃を与える技を放った。
放たれた二つの強力な技は、防衛線を築いていた敵に大打撃を与え、混乱すら与えた。
この隙を逃さず、シュン達は突撃して体勢を立て直そうとする敵を打ち倒す。
「グェ…!」
敵を撃ち倒しながら進むシュン達に対し、重傷を負っていた一体のジャッカルは、まだ動く身体を動かして、手にしているプラズマ弾使用の狙撃銃を構え、なのはを撃ち殺そうとする。
「っ!? 行けない!」
これに気付いたユーノは、即座に自分の魔法でそのジャッカルを無力化した。
「ほぅ、良く気付いたな。中々の勘の鋭さだ」
「は、はい…ありがとうございます…」
「殺したと思っているのか? 大丈夫だ、奴はもう死に体でいずれ死ぬ運命だった。介抱したと思ってやれ」
それを褒めるヴェセミルだが、ユーノは殺してしまったと思っているようだ。そんなユーノの信条に気付いたヴェセミルは、苦しみから解放したと思うように言えば、先に行くシュン達の後へ続いた。
上階へ続く扉を抜ければ、下に妙な空間がある通路へと出た。そこでも絶え間なく襲い掛かって来る無法者達が来た。これにヴァールを持ち替えたイムカが彼らを吹き飛ばせば、吹き飛ばされた無法者らは下の空間へ叫びながら落ちて行く。
「なんかヤバそうな空間だな。クロ坊、こいつは何だ?」
「エイミィめ、余計なことを…これはとても危険な空間だ。落ちれば、イムカさんが吹き飛ばした先の柄の悪い男達のように、無限に落ち続けることになる。それに飛べる魔導士でも飛ぶことが出来ず、彼らのように落ちることになる。貴方がた英霊たちでも一溜りも無いだろう」
「まるでブラックフォールね」
「おっかない穴だな。奈落の底と言う訳か」
下の空間が何なのかを、シュンがクロノに問えば、彼は自分の渾名を付けたエイミィに少々怒りを露わにしながらも、落ちれば一巻の終わりであると答えた。
これにシオンは、自分たちの世界にあるブラックフォールを思い出し、ヴェセミルを初めとする面々も恐れおののき始める。
そんな彼らの背後より、先ほど破壊したはずの傀儡兵たちが大挙して押し寄せて来た。
「こいつ等、さっきスクラップにした傀儡共じゃないか!」
「やはり何かの魔法で操られておったか!」
「何度来ようと、破壊してしまえば問題ない!」
これにバウアーらが驚き、再び傀儡兵たちを破壊するが、物の数秒で元に戻り、再び襲い掛かって来る。
「あの女、何て厄介な物を!」
「どうやらこの傀儡を動かす動力源が、この建物内にあるようだ」
「それを壊さねば、この傀儡共は何度も復活すると言う事だな! よし、その動力源とやらを潰すとしよう!」
傀儡兵を使役するプレシアに怒りを露わにするアルフに、クロノは傀儡兵を無限に再生させる動力源が、この時の庭園内の何処かにあると、戦いながら気づき、それを壊さねばキリが無い事を一同に告げる。
それが分かったのか、ヴェセミルはそれを破壊しようと告げる。
だが、全員でそれを破壊しに行くのは効率が悪い。
そこで、クロノは二手に別れての作戦行動をシュンに提案する。
「二手に別れよう! 僕の感知魔法ならば動力源のありかが分かる! そこにもあの異世界の無法者達が、確実に配置されているだろう! だから何名かを僕に!」
「良いぜ! ヴェセミル爺さんにバウアー大尉、アホ毛、エンジニアの姉ちゃんはクロ坊について行ってやれ! 残りは俺について来い!」
「了解した! 餓鬼の子守は任せておけ!」
「私はアホ毛じゃ無い! イムカだ!」
クロノが動力源を破壊し行くと告げ、何名かの戦士を随伴させてほしいと頼めば、シュンは戦闘力の高いヴェセミルにバウアー、イムカ、メカ系統に精通しているシオンに随伴しろと指示する。
この際に、シュンはイムカの見た目で付けた渾名で呼んだので、彼女は激怒したが、四の五の言っている状況では無いので、彼の指示に従う。
その矢先、時の庭園内全体で強い地震のような振動が起こる。
「おっ!? 地震か!」
「兎に角、急いだ方が良さそうだ! 貴方にはこれ以上頼りたくなかったが、頼んだぞ!」
「任せとけ、クロ坊! 行って婆と顎割れ野郎をぶん殴る! 心配すんな!」
突然の揺れに、ヴェセミルがバランスを崩して尻餅を付けば、クロノは先を急ぐ必要があると行って、シュンが送った四名と共に動力源の制圧に向かった。
これにシュンは、心配御無用であると告げてからなのはとフェイト等を引き連れて主の間へと向かう。
ドアを蹴破り、その先を出れば、おそらく主の間へと続く螺旋階段へと出た。
「ここを下ればもう少しです! 私について来て!」
この先がどうなっているのかを、時の庭園を知るフェイトの後へ続く。
「死ねやぁー!!」
やはりここにも敵戦力が配置されていたのか、無数の無法者やエリートを初めとするコヴナントの主力歩兵、グノーシス、傀儡兵が押し寄せて来る。
それにフェイトは臆することなく先陣を切り、手にしているバルディッシュで得意の近接戦闘を行い、風邪のような速さで敵を一掃する。
「私だって!」
なのはも負けに劣らず、レイジングハートを手にして己の得意な射撃魔法で、フェイトを撃ち落とそうとする銃を持った敵を正確な射撃で次々と倒す。
もはや、二人だけでどうにかなるんじゃないかと思うくらいの速さで、階段を下る事に敵が減っていく。
「おい、俺たち必要じゃねぇんじゃねぇか?」
「いえ、そうでも無いようです」
「大将、直々に挨拶って所か…!」
これを見たシュンは、自分等が居なくとも、なのはとフェイトだけで突破できるんじゃないかと思ったが、ネオ・ムガルの暗殺部隊の現隊長であるアービターが直々に出て来る。
拳銃を片手に敵を一掃しているKOS-MOSの知らせで気付いたシュンは、エナジーソードを持って斬り掛かるエリートを機関銃で撃ち殺してから、銃身の焼き付いたその機関銃を捨て、背中の大剣を抜いた。
「遂にここまで来たか! 褒めてやろう。だが、貴様らの終点はここだ!!」
直々に前線へと出て来たアービターは、両手にエナジーソードを構え、なのは等に向かって斬り掛かる。
今まではただの人間の小娘と見ていたようだが、先のスターライトブレイカーの一件で、彼女を驚異と判断したようだ。
その斬撃を、なのはは助けに戻ったフェイトと共に防ぐ。
「顎割れ野郎め! 負け過ぎて狂ったか!?」
「違うな! この小娘は将来、俺が再建するコヴナントの脅威となる! 先の小娘が放った破滅の一撃で判断した! ここで小娘、否! 悪魔を消さねば、我らに安泰無し!!」
「「わっ!?」」
シュンの罵声に、アービターはスターライトブレイカーで完全になのはを今後の脅威と悪魔であると返し、力任せに自分の斬撃を防ぐ二人を吹き飛ばした。
吹き飛ばした後に、追撃を掛けるアービターであるが、ユーノや獣形態のアルフに阻まれる。
「なのははやらせない!」
「フェイトはやらせないよ!」
「雑魚共が! 邪魔だ!!」
「ぐぁ!」
ユーノからは右手に拘束魔法を掛けられ、アルフには左腕を噛み付かれているが、歴戦練磨のアービターに敵うはずも無く、吹き飛ばされてしまう。
アルフは蹴り飛ばされ、力任せで拘束魔法を振り解いた右手に持つエナジーソードで、ユーノを斬ろうとする。
だが、ユーノは機転を利かせ、フェレット状態となって斬撃を躱し、そこから元の状態へと戻って再び拘束魔法を掛けようとした。
しかし敵はフェレット状態になった時にそれを長年培って来た感で予期しており、ユーノの小さい脚を掴んで壁に叩き付けた。
「うっ…!」
なんとか魔法で致命傷は防いだが、一瞬動けなくなってしまう。
邪魔をされたくないアービターは直ぐにでもユーノを殺そうと、エナジーソードを突き刺そうとしたが、フェイトにバルディッシュによる斬撃で妨害される。
バルディッシュで圧力を強めながら、フェイトは母であるプレシアと組んで何を企んでいるのかを、両手のエナジーソードで防ぐアービターに問う。
「母さんと組んで、何をしたいの、貴方は?」
「何がしたいだと? ふん、先に言った通り、ジュエルシードとやらでアルハザードと言う古の都へ行き、そこでコヴナントを再建することよ。それに風のように素早い貴様もそこの悪魔と同じくコヴナントの脅威だ! 死ねぇ!!」
思いっ切り力を強め、フェイトを怯ませれば、一瞬にしてエナジーソードを突き刺そうとする。
無論、なのはが黙って見過ごすはずが無く、空かさずに腹に向けて強力な射撃魔法を撃ち込んで親友を助ける。
攻撃はシールドの所為で防がれてしまうが、シールドを機能停止に至らせるまでの火力である。シールドが切れたが、アービターはそれすら気にせず追撃を掛けようとして来る。
「また貴様か…! 貴様に関わった所為で、あの時の倍以上の屈辱を味会わされたぞ!!」
「そんなの私には知らない! 貴方がやろうとしているのは、みんなに迷惑を掛けている事なの! だから、私、いや、私達は全力でそれを止めるの!!」
「小娘風情が、歳に合わん事を口にするな!!」
なのはに関わった所為で、生前に死ぬ間近に味会わされた屈辱的な敗北を超える物を味会わされたのか、アービターはその身勝手な怒りを彼女にぶつけた。
だが、なのははそんなことは知らない。
目前の宇宙人が、自分等の世界だけでなく、他の世界にまで被害を及ぼすようなことをしているので、ここで止めねばと自分の思いをぶつけ返す。
これに更に激情したのか、アービターは渾身の一撃をなのはに浴びせようとした。
「おい、小娘風情には興味が無かったじゃ無かったのか?」
「お前…!? まずは、お前からだ!!」
無論、シュンが黙っている筈も無い。周囲に居る雑魚をある程度殺し、残りをKOS-MOSに任せれば、シュンはアービターの渾身の一撃を大剣で防いだ。
その瞬間に手にしている右手から血が噴き出したが、今のシュンにはそれより重要なことがある。
『俺が吹き飛んだ瞬間に、お前らの同時攻撃を奴に叩き込め。勝負は一瞬だぞ』
『え、いや、分かりました! 私とフェイトちゃんで…!』
『うん、あの時の同じように…!』
背後で何とか立ち上がるなのはとフェイトに向け、念話で自分が吹き飛んだ瞬間に、同時攻撃を仕掛けるように言えば、二人はそれを承諾し、攻撃に備えた。
「死ねぇ!!」
「グッ…! 流石は選ばれた戦士って所か?」
「煩い黙れ!!」
同時攻撃を気付かれないように、シュンはアービターを煽れば、怒り心頭の彼は更に頭に血を登らせ、恐ろしい斬撃を連続で打ち込んで来る。
これを受ける度にシュンの全身の骨が軋み、いつ折れるかどうか分からない。
おそらく長くは持たないだろう。
だが、同時攻撃の準備が終わるまで、アービターの怒涛の連撃を数秒間も耐えなくてはならない。
『出来ました!』
『よし!』
数秒が一時間にも思えるような攻撃を防ぎ続けた後、なのはの念話から準備ができたとの報告を受けた。
それを受けたシュンは、わざと負けたフリをしてアービターに吹き飛ばされる。
「どうした!? もう出任せは言えんのか!?」
「けっ、もう少し冷静でいるんだったな…!」
「なにっ!?」
吹き飛ばされた瞬間、シュンは勝利を確信した発言をした。
その意味を理解したアービターであったが、時は既に遅く、シュンが吹き飛んだ瞬間に、杖を合わせて同時攻撃を行おうとするなのはとフェイトの姿が見えた。
もう放たれる瞬間であり、直ぐにそこから逃げようとするアービターであるが、もう逃げ切れる距離ではあらず、強烈な一撃が放たれる。
「「シュート!!」」
二人が同時に叫んだ瞬間、レイジングハートとバルディッシュの杖の尖端より放たれた強力な魔法がアービターへ向けて放たれ、避け切ることが出来ない彼はそれを背中に受けた。
威力は庭園の壁でさえ突き抜ける程であり、そのまま庭園の外まで吹き飛ばされる。
「こんな敗北は、こんな敗北は! 俺は認めんぞォォォ!!」
そう敗北を否定する言葉を吐きながら、落ちれば二度と戻れないブラックフォールのような空間へと吹き飛ばされるアービターであるが、もう成す術も無く、その空間へと落ちて行く。
生前は、一人の海兵の機転を生かした策で倒されたアービターであるが、次は二人の、それもまだ十代にも満たない少女に負けたと言う彼に取って屈辱的な敗北を迎えてしまう。
幾ら咎人とは言え、この空間より逃げ切ることは出来なかったようだ。そのままビームが消えるまで空間へと落ちて行く。
これを見て居たシュンは、なのはとフェイトに労いの言葉を贈る。
「良くやったぜ。俺がやりたかったが、お前らに譲る」
そう労いの言葉を掛ければ、二人とユーノとアルフの道を開くために前に出る。
「た、大将が…!」
「あ、アービターが…!」
アービターを打ち倒したことが、余ほどに彼らの士気に影響したのか、戦意は崩れ始めていた。物の数秒ほどで、彼らはシュンやなのは達の前から逃げ出し始める。
だが、プレシアの操る傀儡兵や、意思を持たないグノーシスは未だに襲い掛かって来る。
そればかりか、最終関門とも言うべきスカラベ以上の巨体を持つ四足歩行の傀儡兵まで姿を現す。
「傀儡に並び、グノーシスはまだ来るようです」
「まぁ、意思のねぇ雑魚共が減ったくらいは良しとするか。次は、俺たちの番だ!」
先の攻撃でやや疲労しているなのはとフェイトに代わり、シュンとKOS-MOSは向かって来る傀儡兵やグノーシスを蹴散らしながら、巨大な傀儡兵に向け、雨あられと放たれる魔弾を避けつつ突撃する。
迫り来る漆黒の剣士と碧い髪の戦乙女に対し、巨大な傀儡兵は、右前足で踏み潰そうと踏み付けるも、避けられた挙句、その足をシュンの大剣によって斬りおとされる。
注意が完全にシュンに向いてしまった所為か、更にKOS-MOSの二振りのビームソードで左前脚を斬りおとされ、バランスを崩して床の上に倒れ込んでしまう。
接近を妨害するべく、胴体の発射口より魔弾を乱射するが、もう既に至近距離まで接近された後であり、二人同時の左右の突きで動力源まで突き刺されて無力化された。
「よし、婆の顔を拝見と行くか。お前ら、行くぞ」
胴体より大剣を引き抜いたシュンは、なのは達を引き連れ、主人の間へと続くドアを蹴破って中へ突入した。
「もう崩壊が…」
突入した先は、主人の間と思いきや、ジュエルシードの暴走の影響による崩壊が進み、蟻地獄のようで、床の隙間から奈落の底が見える不気味な空間へと変貌していた。
その光景を目にしてユーノが言えば、中央の辺りに自分の愛娘が入った培養液を守るように立っているプレシアの姿が見えた。
「おい、婆。児童虐待罪だ。ここでお前を叩き殺…」
「母さん!」
プレシアの姿を見るなり、シュンは大剣の剣先を向けて斬り掛かろうとしたが、フェイトが前に出た為、迂闊に手を出せない。
前に出て来たフェイトに対し、プレシアは哀れみの視線も向けず、突き放すような視線を向けてここまで来た理由を問う。
「貴方、どうしてここまで来たの? もう何所へなりとも行きなさいと言ったはずなのに」
「それは…」
「お前をぶん殴りに来た。違わないか?」
いざ、本人の前に立ったフェイトは、緊張したのか、上手く言葉が出なかった。
それを代行してか、シュンは殴りに来たのかとフェイトの代わりに答える。
「…貴方には聞いていないわ。それよりも、どうして生きているのかしら? ちゃんと殺傷設定にしたと言うのに」
「さぁな。あんたが弱ってるからじゃないのか?」
「言うわね。良いわ、今度こそ息の根を止めてあげる。後で後悔しても…がはっ!?」
「母さん!?」
代わりに答えるシュンに対し、なのはとフェイトの決戦が終わった後に放った敗者に向けての攻撃を受け、殆どダメージを受けていないシュンに何故、生きているのかを問うプレシアであるが、彼は挑発で答えた。
これに少し癇に障ったのか、今度こそシュンを消し炭にする勢いで強力な魔法を使おうとしたプレシアであったが、それを放つ前に、吐血し始める。
「もう限界のようですね。投降を進めます」
「投降…? まだよ…まだ私は…!」
「なんだ、死にぞこないか。やれやれだ。俺が手を出す間もねぇな」
吐血し始めたプレシアに対し、シュンはやる気を失い、KOS-MOSは投降を進める。
投降を拒むプレシアはまだ諦めず、抵抗をしようとするが、身体が思うように動かない。
そんな彼女を哀れんだシュンは、フェイトの背中を押して、プレシアと話し合わせようとする。
それと同時に、動力源を潰したクロノたちがこの場に突入してきた。
「傀儡の動力源は潰したぞ!」
「降伏しろ! 魔女に国際法が通じると思うかどうか知らんが、悪いようにはせん…ん?」
動力源を潰して来たクロノたちは、揃いも揃って血だらけであり、並々ならぬ激戦を潜り抜けたと見えた。
だが、当の大将の一人であるアービターはなのはとフェイトの同時攻撃で倒され、もう一人のプレシアは、吐血して満足に動けない様子だ。
もう既に、決着はついていたのだ。
一応、追い詰められた彼女が何をするか分からないので、一応、イムカは手にしている銃をプレシアに向けておく。バウアーは、懐から煙草の箱を取り出し、一本を口に咥え、先端にライターで火を点けて一服しつつ、手にしている突撃銃を向けた。
一方でフェイトは、瀕死のプレシアに近付き、自分の思いを打ち明ける。
「今さら何をしに来たの? 消えなさい。貴方にはもう用は無いわ」
拒絶するプレシアに対し、フェイトは頑固にも思いを告げる。
「母さん、いえ、貴方に言いたい事があってここに来ました」
少し区切ってから再び口を開く。
「私はアリシア・テスタロッサではありません。貴方にとってはただの人形でしれない。だけど、私は、フェイト・テスタロッサとして貴方に生み出され、育てて貰った貴方の娘です」
全ての想いはこの胸にある。どれだけ否定されようが拒絶されようが、これだけは紛れも無い真実であると、プレシアに告げる。
しかし、その反応は冷ややかな物であった。
「あははは! だから何? 今さら貴方を娘と思えと?」
「貴方がそう望むなら。それを望むなら、私は世界中の誰からも、どんな出来事からも貴方を守ります」
言葉を誓いにして、フェイトは本音をぶつける。
「だって私が、貴方の娘だからじゃない。貴方が私のたった一人の母さんだから!」
本音をぶつけた後、倒れ込んだ母であるプレシアに手を差し伸べたが、これだけの想いをぶつけても、彼女はフェイトを拒絶した。
「…下らないわ」
「えっ…?」
フェイトを否定したプレシアに対し、イムカはヴァールを向けようとしたが、ヴェセミルに無言で止められる。
どうやら、プレシアは呪縛に未だ繋がれたままであり、その声も手も届かなかったようだ。
「私は向かう! アルハザードへ! そして全てを取り戻す!! 過去も、未来も、たった一つの幸福も!!」
そう狂言を叫んだプレシアの足元の瓦礫に、急速に亀裂が入り始めた。
「っ!? 母さん!!」
このままでは母が落ちてしまう。
そう思ったフェイトは再び母に手を伸ばそうと近付いたが、突き飛ばされる。
「さようなら、フェイト。もう何所へなりとも行きなさい。そして…」
最期の母としての優しさを見たフェイトは、一瞬涙してしまうが、もう既に手を伸ばすには遅すぎ、プレシアは培養液の中のアリシアと共に、無限の落下へと続く奈落へ落ちて行く。
フェイトに対して別れの言葉を告げたプレシアであったが、最後の言葉が聞き取れなかった。だが、口の動きからして、あのプレシアとは思えない謝罪の言葉であった。
「母さん! いやぁ!!」
「駄目ぇ! フェイトちゃん!!」
それでも助けようと、手を伸ばそうとしたフェイトであったが、なのはがそれを止めるために彼女の手を掴む。
しかし、亀裂は二人の足元まで及んでおり、二人共々奈落の底へと落ちてしまうだろう。
崩れ始めようとしたところで、シュンは咄嗟に駆け付け、なのはの手を掴んで落下を防いだ。
「たくっ、二人揃って世話の掛かる嬢ちゃんだぜ!」
「早く引っ張り上げろ! 崩れるぞ!!」
「こちらに手を!」
「おらぁ!」
すんでの所で二人の落下を防いだシュンは、崩れゆく時の庭園内を見たヴェセミルの催促に従い、なのはとフェイトを力一杯に足元まで引っ張り上げる。
二人をKOS-MOSを受け止めれば、一同はジュエルシードの暴走によって崩壊しつつある時の庭園内より脱出を始める。
フェイトは母を失った悲しみで泣き喚いているが、そんな彼女に構っていては共に奈落の底へ落ちてしまうので、KOS-MOSに抱き抱えさせて脱出させる。
「先に突入したトーシロー共はどうした!?」
「アースラに転移させた! 奇跡的、全員生きている!!」
「よし、俺たちも!」
先に突入した武装局員らはどうしたと問えば、クロノはアースラの転移装置で回収したと答えた。
これにシュンはもう忘れ物はないと思い、自分等も転移させるように告げた。
だが、その答えは予想を遥かに上回る物であった。
「それが、出来ないんだ…!」
「なんだと…!?」
自分等は転移できない。
その絶望に満ちた答えを聞き、シュン達は絶望の表情を浮かべた。
後一話、後日談でなのは第一期編は終了です。
いや、もう劇場版公開終了してるんだろうな。
円盤出たら、借りて見るか。Xメンとか帰って来たヒトラーと一緒に