復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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スターライトブレイカー回でございます。

そんでもって、無双回でもありまする。

結構、見たのはちょっと前なので、違った所があるかも。


英雄を守れ

 シュンが新しく四名を仲間に加え、ネオ・ムガルに対する迎撃準備を協力しているアースラの面々と行う中、時の庭園に居るプレシアは、暫くカプセルの中で浮かぶ愛娘を見ていたが、何か行動を起こすべきだと判断してか、フェイトを起こすべく、彼女の元へ向かう。

 

「フェイト…」

 

「はい、お母さん」

 

「ジュエルシードを取って来てくれる?」

 

「はい…」

 

 プレシアは自分を母親だと思っているフェイトに、再びジュエルシードを持ってくるように頼んだ。

 これにフェイトは何の断りもせず、使い魔のアルフが居なくなっていることも気にしないで愛する母親の頼みを聞き、罰で受けた体を動かし、バルディッシュを起動してバリアジャケットを全身に纏った。

 全身に黒の装束を纏ったフェイトは、母が命じるがまま、その母の悲願であるジュエルシードを集めるべく、時の庭園を出た。

 そんなフェイトを、プレシアはただ見守るだけだった。

 

 

 

 それから数十分当たり、何の妨害もなされていない時間軸は、予定通りに進んだ。

 月夜の光が照らす中、白と黒の魔導士が互いの信念を胸に抱き、向かい合う。

 その後世の英雄を守る者達は、それが起きるのを待ち、二人を殺そうとする者達を待ち受ける。未来を守るために…。

 

「フェイト…もうやめよう。あんな女の言う事を聞いたって、不幸になるだけだよ。お願い…今なら助かる…だから…!」

 

 元のフェイトの使い魔であるアルフは、瞳に涙を溜めながら説得を試みるが、元主の決心は揺るがず、杖を突き付ける。

 

「ごめんね、アルフ。私は止まれないの…」

 

 愛する母のため、フェイトは自分の友人とも言うべきアルフを棄てる覚悟だ。

 決心が揺るがないフェイトを見たアルフは、まだ幸せだった頃のことを思い浮かべたが、今の彼女にはその面影はない。

 母の悲願に従い、それを実行しようと覚悟を決めた娘の姿だ。説得は通じないだろう。

 

「逃げれば良いってわけじゃない。棄てて何かが変わるって訳じゃないよね」

 

 フェイトの思いを理解したなのはは、かつての自分と彼女を重ねた。

 彼女もまた、己が誰よりも必要とされたいと思った過去を持っていた。

 そんな過去を持つことから、フェイトに同情の念を抱いたのだろう。

 故に、ここで己の想いを、彼女にぶつけようと言う心構えだ。

 

「私達はお互いの想いをぶつけ合うしかないけど、それでも! フェイトちゃんが止まれないのなら、私が止める!」

 

 そうフェイトに向けて宣言したなのはは、最初にバリアジャケットを展開している彼女と同じく、白いバリアジャケットを展開し、愛杖であるレイジングハート共に、武で挑んだ。

 それが、フェイト・テスタロッサを解放する唯一の方法だから。

 ここに、後の英雄となるまだ幼い白の魔導士と黒の魔導士の戦いの火ぶたが切って落とされた。

 この戦いは起こるべくして起こった事、邪魔をしようとする者がいるなら、その者達から守る他ない。

 歴史を守るべく、この過去の世界に呼び出された六人の戦士たちは、刺客たちに備えた。

 

 

 

「おっ、始まったようだな」

 

 なのはとフェイトの対決のために作り出された管理局の模擬戦闘用の結界内にて、先にそこへ入り、対決を邪魔し、二人を殺そうとするネオ・ムガルの迎撃に備えていたシュンは、二人がこの空間へと同行者らと共に入り、交戦を始めたのを見て、アメリカのM240機関銃を組み立て始めた。彼も既に黒の甲冑のようなバリアジャケットを身に着け、背中にスレイブを背負って臨戦態勢を取っている。

 物の数秒で組み立て終えれば、弾帯ベルトを装填してから蓋を閉め、右側のボルトを引いて初弾を薬室へと送り込む。

 銃はシュンが手にしている機関銃だけではない。

 他にはロシア軍に採用されているロケット弾数発や、アメリカ軍のM134ミニガンにその他諸々の小火器から銃火器まで色々だ。

 バウアーやイムカの方にも、第二次世界大戦中に連合国や枢軸国によって使用されたレプリカの銃火器が幾つかある。

 ヴェセミルやシオン、KOS-MOSの物は無いが、それぞれに武器があるので、敢えて持って行かなかった。ちなみに、ヴェセミルに対してだけは、霊薬や爆薬の類の素材を持って来ている。更には調合用の鍋すら用意して、老ウィッチャーを助けている。

 

 何故、これ程までに銃がある理由は、シュンがデバイスを纏って世界中を飛び回り、目に付いた物や気に入った兵器を盗んで来たからだ。

 そのシュンの手当たり次第は凄まじく、2003年の北朝鮮からミサイルを一発くすねたのだ。今ごろ彼の国は、大騒ぎになっていることだろう。当の盗んだ本人は、全く気にも留めずに、彼の国よりも恐ろしい勢力の迎撃に備えているが。

 ちなみにその盗んだミサイルは、彼のベルトのデバイスの中に保管されている。

 ミニガンは技術者であるシオンの手によって自動砲台となり、数台がシュンやなのは等以外の者に向けていつでも撃てるよう起動している。センサーの範囲内に入った者に対して、自動的に痛みすら感じさせない程の弾丸を浴びせる仕組みだ。ロシア製のロケットは、ボタンを押すだけでいつでも発射できる。これでシュン達は中隊規模の防衛戦力を手に入れ、準備は満タンだ。

 この装置を作る為に、エイミィも協力したが、管理局が禁ずる質量兵器を使うので、彼女は犯罪の片棒を担がされているのではないかと、同じ気持ちを抱くクロノと思った。

 だが、彼らでなければなのはやフェイト、それに自分たちだって守り切ることは出来ない。

 ここは敢えて、見逃しておくことにする。艦長であるリンディやクロノ、そして同じアースラの乗員たちと共に。

 

「おっと、忘れていた。眼帯の兵隊さんよ、あんたの祖先は確か騎士だったな? これを持っていけ」

 

 防衛に備える中、シュンはあることを思い出したのか、一本の両手剣をデバイスより取り出し、それをバウアーに向けて投げた。

 それを手に取ったバウアーは、鞘から刀身を抜いて、刀身が黒で塗られた剣であると確認し、この両手剣が何なのかを問う。

 

「瀬戸、この剣は一体…?」

 

「ドイツの倉庫で埃を被ってた剣だ。あんたに合うだろうと持って来た。接近戦に使ってくれ。試し斬りしたら、凄い切れ味だ」

 

「うむ、是非に頂いて行こう」

 

 シュンより渡されたかつて祖先である黒騎士が使っていたとされる黒い両手剣を手に入れたバウアーは、刀身を鞘に仕舞ってからそれを腰のベルトに付けてぶら下げた。

 それから物の数分後に、通信機からエイミィの知らせが入った。

 

『みんな! 例の次元犯罪者集団がこの仮装訓練空間に来るよ! 大勢でしかも質量兵器も一杯!』

 

「やれやれ、サメみたいな奴らだ」

 

「死体に群がる蠅みたいにくるな…しかも、鉄の船や空飛ぶ鉄の船も一緒だ…」

 

 エイミィからの知らせで、次元の亀裂から大挙して押し寄せるネオ・ムガルの部隊を見て、シュンとヴェセミルは特に驚きもせずに呟く。

 やって来たのは大勢の悪党達やネオ・ムガルの戦闘兵二個中隊分、そのネオ・ムガルによって召喚されたと思われるアラビアンナイトの集団、グノーシス、バギーにバイク、それにヘリ、コヴナント軍の陸と空を含める兵器群、極めつけは駆逐艦一隻にフリゲート四隻だ。

 これには似たような経験をしているバウアーや、イムカも驚かずにはいられない。

 

「なんと、駆逐艦まで来るとは…イワンよりもマシとは言え、宇宙人の戦闘機だけにして欲しいぞ」

 

「初めての経験だ…私の経験上、一個連隊くらいしか相手にしたことが無い!」

 

 戦時下の世界で死闘を繰り広げていた二人の戦士が言えば、世界を救う戦いをしていたシオンも反応する。

 

「私もあれだけの数は相手したことは無いわよ。でも、やるしかないって事よね?」

 

「あぁ、やるしかないぞ。わしも初めてだ。怪我の一つや二つ、するかもしれん。覚悟を決めろ!」

 

「むしろ、死人の一人や二人、出るかもしれんぞ」

 

 敵の圧倒的な物量を見て、身震いしているシオンが周りに問えば、ヴェセミルは逃れることは出来ないと答える。

 それにバウアーは冗談であれだけの数は誰か死ぬかもしれないと言えば、シオンは尚更怖くなったが、ここで退けば、幼いなのはとフェイトがどんな目に遭わされるか分からないので、何とか踏み止まり、左手のデバイスを押して戦闘衣装を身に着け、自分の得物であるマルチウェポンを右腕に着けて敵の襲来に備えた。

 彼女によって作られたKOS-MOSは、相転移砲の発射準備を行う。それをイムカは、何度も見た経験があるのか、顔をしかめている。

 

「さぁて、おっぱじめるぞ! 戦争をな!!」

 

 各々の迎撃態勢が取れたのを確認すれば、シュンはデバイスより彼の国より盗んだ大型ミサイルを出し、それを右手に持って開戦を宣言した後、デバイスの力を借りて思いっ切り力を込めて一個師団相当の敵に向けて投げ付けた。

 

 

 

「相転移砲、発射!」

 

 シュンがミサイルを敵の集団に向けて投げ付けたと同時に、KOS-MOSは相転移砲を同じ敵集団に向けて発射した。

 強力な破壊力を誇る物体が飛んで行く中、投げられたミサイルはエンジンを起動させ、標的にした駆逐艦へと飛んで行く。それに合わせ、イムカはヴァールを近くに置き、狙撃銃使用のモシン・ナガンM1891を構え、兵を引き連れて前に出ている指揮官クラスを狙撃する。

 数名の指揮官が狙撃で倒れ、指揮系統が混乱する中、シュンが投げたミサイルは真っ直ぐと標的にした旗艦である駆逐艦に向けて飛んで行く。

 直ぐに駆逐艦と四隻のフリゲートは対空弾幕を張って迎撃を試みるが、ネオ・ムガルの投入した艦船は対空ミサイルを搭載しているが、この年代の艦船とは違ってミサイルに対しての対空能力はそれほど高くなく、ミサイルが当たって旗艦の駆逐艦は大破する。

 

「ちっ、生きてるか。あれがあるしな」

 

 まだ生きている旗艦だが、もう戦闘の続行は不可能に近く、一発の大砲を撃つだけで沈むだろう。そのとどめと言わんばかりに、KOS-MOSが放った相転移砲を受けて四隻のフリゲート諸共消し飛ぶ。

 本部や旗艦として機能している駆逐艦と、四隻のフリゲートを沈めたものの、敵は退くどころか突っ込んで来る。

 

「敵本部を無力化しましたが、敵は衰えることなく突撃してきます」

 

「敵も本気って訳だな。やれやれ、嬢ちゃん二人を殺すのに必死だな」

 

 KOS-MOSの知らせで、特攻する勢いで突っ込んで来るネオ・ムガルの悪党や将兵らを見て、シュンは幼いなのはやフェイトを殺す為だけに必死さを知って呆れ返った。

 通常の攻撃が難しいグノーシスも居るので、対応策を持っているKOS-MOSは直ちに幽霊のような化け物であるその集団を実体化させるヒルベルトエフェクトを発動する。

 

「ヒルベルトエフェクト!」

 

 彼女がそれを発動すれば、投入されたグノーシスは実体化し、通常の攻撃手段でも倒せるようになった。

 似たような物との交戦経験があるヴェセミルは、ただ起動するだけで幽鬼のような容易に攻撃させる手段を持つKOS-MOSに感心の声を上げる。

 

「どんな魔法か知らんが、わしが生きている時代に欲しかったな」

 

 ヒルベルトエフェクトを欲しいと言うヴェセミルに対し、バウアーは無理な物であると告げる。

 

「爺さん、ありゃあ機械だ」

 

「なに、機械なのか? はぁ…それなら、使えんな」

 

「多分、貴方が死んで数百年後辺りに機械は出来ると思うわよ。私からすれば、原始時代みたいな物だけど」

 

「遥か数十世紀先の若い女は、老人に対して遠慮なしにキツイことを言う。わしが生きている時代では、数えるくらいしか居ないがな」

 

 バウアーが魔法では無く機械であると告げれば、ウィッチャーであるヴェセミルは使えないと言えば、気でも紛らわせようとしたのか、シオンは死んでから機械は出来るだろうと言った。

 これにヴェセミルは、老人に対して手厳しいことを言う若い女性は自分が生きている時代は数えるくらいしか居ないと言ってから、大挙して押し寄せて来る敵に向けて剣を構える。

 敵はミニガンの射程距離にまで迫っており、凄まじい銃声が響けば、シュンは全員に迎撃態勢を取るように怒号を飛ばす。

 

「バルカン砲が火を噴いたぞ! もう間近まで来てる! 接近戦に備えろ!」

 

 もう一挺の機関銃を出しながらシュンが言えば、一同はここまで敵の雄叫びが聞こえて来るので、銃火器を持つ者達は銃を構え、剣のみで戦うヴェセミルは接近戦に備える。

 ミニガンは数百名の敵兵を次々と射殺したが、流石に重装甲兵器には適わず、用意していた六門のミニガンは蹂躙された。

 だが、これは予想の範囲内であった。直ぐにシュンは次の手であるロシア軍より盗んだロケット弾を使おうとする。範囲内まで敵の機甲部隊が入って来ているため、かなりの損害を与えられるだろう。

 そう思ったシュンがスイッチを押せば、即座に全てのロケット弾は発射され、着弾範囲に居る敵部隊に命中する。

 

「どうだ? 当たったか?」

 

「あぁ、命中だ。これである程度は削られただろう」

 

「削られたが、まだまだどっさり居るな」

 

 イムカに命中したが問えば、ある程度の機甲戦力は削られたが、一個中隊を潰した程度なので、シュンは二挺の機関銃の安全装置を外し、KOS-MOSは対空攻撃を行うべく、二挺のガトリングを展開する。

 敵にかなりの損害を与えられる距離まで入ったのを確認した後、銃火器の類を持つ者達は直ぐに引き金を引いて発射した。

 たった一度に引き金を引いただけで、MG3やM240等の機関銃が唸り声を上げ、夥しい数の無法者たちが一瞬で倒れ、後続の者達も吐き出された弾丸を受けて倒れていく。

 上空を飛ぶ航空部隊は、KOS-MOSが持つ二門のガトリング砲で次々とハエ叩きのように落とされるばかりだ。

 バタバタと倒れていく敵兵達であるが、その数は機関銃に一度に搭載できる数を超えており、弾切れになっても、多数の味方の屍を超えて突っ込んで来る。

 

「イワンより多いぞ!」

 

「接近戦だ! 剣を抜け!!」

 

 バウアーは熱くなったMG3の銃身を抜きながら間近まで敵が迫ったことを知らせれば、ヴェセミルは一人を対人用の剣で斬り殺した後、全員に近接戦闘に備えるように怒号を飛ばす。

 その手際は良く、剣に負担を掛けさせないような斬り方で次々と無法者やネオ・ムガル兵、アラビア風味の兵士達を殺していく。

 

「異世界の化け物か! 腕が鳴るな!」

 

 数名を次々と斬り殺したのち、ヴェセミルはグノーシスに遭遇する。

 始めた対峙する異世界の幽鬼とも言うべき存在に対し、対人用の剣を仕舞い、対怪物用の銀の剣を抜き、攻撃を避けて懐に飛び込み、腹に剣を突き立ててそのまま息絶えるまで突き刺す。

 完全に動かなくなったのを確認すれば、硬くなる前に即座に剣を抜き、襲い掛かって来る別のグノーシスの対応に当たる。

 

「あの爺さん、やるな!」

 

「なら、俺は東部戦線流にやらせて貰うぞ!」

 

 シュンが大剣でエリートやコヴナントでは歩兵扱いされているグラントやジャッカルをバラバラにしながら、ヴェセミルの戦いぶりを見て関心の声を上げれば、バウアーも負けに劣らず、MG3で敵兵の一人を殴った後に、Stg44突撃銃を持ち、自身が生身で経験した東部戦線で行った戦法を行う。

 フルオートにセレクターを素早く合わせ、数名を撃ち殺しながら前進し、卵型手榴弾のピンを抜き、その数秒後に敵集団に向けて投げる。

 時間を置いて投げたがため、敵は逃げる間もなく手榴弾の爆風に呑まれ、数名が破片か爆風で死んだ。

 

「んっ!? 弾切れか!」

 

 それから数名を撃ち殺しながら敵を蹴散らしていたバウアーだが、もう一人を撃ち殺そうとした時に運悪く弾切れを起こしてしまった。そこへ標的にしていたターバンの男が、サーベルで斬り掛かって来る。

 

「剣術は久しぶりだが、出来るか…?」

 

 これにバウアーは、腰に吊るしてある剣で対処することに決め、鞘から刀身を抜いて敵の攻撃を防いだ。

 敵兵は力任せに剣を押し付けて来るが、バウアーはこれをチャンスと捉え、敵の腹を蹴って思いっ切り刀身を頭に振り下ろした。

 兜を貫いて刀身は敵の頭を割り、その個所から勢いよく血が噴き出る。

 返り血が顔にまで飛んできたが、ヴェセミルのやり方を思い出し、直ぐに剣を抜き、背後を警戒した。

 

「死ねぇや!!」

 

案の定、背後より無法者が棍棒で殺しかかって来た。これにバウアーは先ほど抜いた黒い長剣で対処し、無法者の身体の右半分を斬りおとすことに成功する。

 

「中々の切れ味だな」

 

 血を吹き出しながら倒れる無法者の屍を見て、手に入れた長剣の切れ味の凄さに感心の声を上げたが、また背後で爆破音が聞こえ、直ぐにバウアーは拳銃を抜いて警戒した。

 

「剣に気を取られて疎かになっているぞ」

 

「おぅ、すまんな」

 

 自分を助けたのは、ヴァールを持っているイムカであると分かれば、バウアーはStg44を再装填しながら礼を言う。

 

「無事なら良い。私は向こうに回る」

 

 バウアーを助けたイムカは、ヴァールを手にしながら自分の担当地区へと向かった。

 ここでイムカはある程度の敵を減らしていたが、ほんのわずか離れただけで、元に戻ったような数が殺到していた。

 

「餓鬼を殺せ!!」

 

「この程度の数、問題は無い!」

 

 無数の無法者らに対し、イムカは怯むことなくヴァールの小口径弾を撃ち、向かって来る無法者らを殺す。

 ヴァールの連射力は高いが、無法者らの数は多く、迎撃しきれないため、イムカは接近戦をするべく、ヴァールの持ち方を変え、剣のような持ち方をした。ヴァールは全長173㎝の銃に対戦車機能、近接機能を備えた武器だが、大変バランスが悪く、設計した本人であるイムカ以外に扱いきれない代物だ。

 しかし、設計した本人であるからこそ、この武器を自分の手足のように自在に動かせるのだ。

 それに彼女は近接戦闘能力も高く、無法者達など全く相手にならず、次々と鋭利な刃で肉を切り裂かれ、肉塊と化すばかりだ。

 襲って来た無法者らを皆殺しにしたイムカは、コヴナント軍の戦車であるレイスが接近していることに気付き、直ぐに対戦車火器の再装填を終え、向かって来る宇宙人の戦車に接近した。

 

「戦車に近付けるな!」

 

 流石に戦車は単独では行動せず、随伴歩兵であるエリートやグラント、ジャッカルが戦車のプラズマ機銃の援護を受けつつ、プラズマ銃でイムカを迎撃するが、彼女は恐ろしく早く、一瞬でヴァールによって打ち倒され、戦車の背後に回られる。

 

「正面に回る前に破壊する!」

 

 砲塔が旋回できないため、正面に回頭しようとするレイスに向け、イムカは容赦なく対戦車弾を背面に撃ち込んだ。

 特殊な徹甲弾を使用しているため、レイスの動力源にまで貫通し、内部爆発を引き起こして戦車は大破した。

 

「敵戦車撃破、次!」

 

 戦車を撃破したイムカは、即座に索敵を行った後、ヴァールの再装填を終えてから次なる敵の迎撃へと向かった。

 

 

 

 アウトサイダーの手によりこの過去の世界へ召喚された三人の戦士が、軍勢を相手に奮闘する中、守護者として呼び出されたKOS-MOSと、そのアンドロイドの製作した開発者の一人であるシオン・ウヅキも、多数の無法者やエイリアン、それにアラビアンナイトのような兵士たち相手に奮闘していた。

 この戦場で眼鏡は不味いのか、シオンはコンタクトレンズに変えて戦闘を行っている。

 

「これ程の数、生きて帰れるかどうか分からないわ!」

 

 だが、シオンは六人の中で一番戦闘力が低く、アラビアンナイトの男が振るうサーベルに苦戦していた。

 無法者やグラント、ジャッカル、ネオ・ムガル兵相手なら何とか相手に出来るシオンであるが、戦闘力が高いアラビアンナイトやエリート相手には苦戦することは間違いない。

 

「やった! きゃっ!?」

 

 何とか一人のアラビアンナイトをシールドとエネルギーソードを兼ね備えたマルチウェポンで倒したシオンであるが、更に手強いエリートのエナジーソードの攻撃を受けて倒れ込む。

 

「この!」

 

 そこから反撃を試みようとするが、相手は子供のころから一人前の戦士になるように育て上げられたエイリアンの戦士であり、出せる手は全て読まれ、エリートが敵に対しての最大の敬意であるエナジーソードにより突き刺しを受ける所であったが、寸での所でKOS-MOSに助けられた。

 

「あぁ、ありがとうKOS-MOS」

 

「今の任務は高町なのはやフェイト・テスタロッサを守る事ですが、私は貴方を守るアンドロイドでもありますから」

 

「そう言えばそうだったわよね。てぃ!」

 

 手のキャノン砲を消した後、元の世界で自分の役割を言えば、シオンはそれを思い出しつつ、向かって来た無法者を蹴り付け、とどめに左手に出した2003年代における最新型の拳銃でとどめを刺す。

 そこからはシオンとKOS-MOSによる無双が始まる。

 

「弾幕を張ります」

 

「後に続くわ!」

 

 最初にKOS-MOSが小型ミサイルによる弾幕を張れば、続いてシオンが突き進み、怯んだエリートやその他諸々の敵をソードで切り裂く。

 他に様々な武装を使い、敵を倒せば、今度は連携技を行う。

 KOS-MOSがブレードを展開したのを合図に、シオンは一撃目を先頭に立つエリートに食らわせる。

 

「忍ぶれど!」

 

「築く屍」

 

「修羅の道!」

 

 シオンが最初に言えば、KOS-MOSが続いて二名のアラビアンナイトをブレードで一度に切り裂く。

 一気に三体以上の敵を倒した二人だが、追撃の手は緩めず、そのまま無数の敵を斬り続ける。

 

「月みし度に」

 

「涙ながるる!」

 

 この二言の間に、三体から七体の敵兵が一気に屍と化した。

 だが、ここでKOS-MOSの攻撃は終わらない。

 シオンが一体のエリートを一刀両断にした後、KOS-MOSは空高く舞って、眼下に見えた飛行しているバンシーや地上のローカストと呼ばれる四足歩行の小型兵器にある人物の言葉を言い放つ。

 

「月国之姫君、使為和之世、四獣之巨神!」

 

 そう言い放った後、KOS-MOSは右目の身にバイザーを展開させ、右手に大振りの鎌を召喚して手に握り、眼下に見える全ての敵に斬撃を放った。

 その瞬間、斬撃を受けた全ての敵兵器はバラバラに斬れて爆発して行く。これで敵は更に戦力を減らし、士気が低下する。

 

「敵戦力、大幅に低下」

 

「兄さんの技だけど、私にも出来てうれしいわ」

 

 KOS-MOSが爆発する敵の兵器を背にして言えば、シオンは剣豪とも言うべき自分の技が出来て満足に思う。

 二個中隊相当の敵を掃討した二人は、更に敵の戦力を減らすべく、ここを突破しようと集結している集団に向かった。

 

 

 

「呼んで正解だったな」

 

 一方で、一人で一個連隊に近い人数を相手にしているシュンは、他の五名が百倍以上の戦力を掃討しているのを見て、呼んでおいて良かったと思い、目前の集団に左腕のボウガンから放たれるプラズマ弾の雨を浴びせる。

 シールドを持たない者達は一瞬で雨を浴びて肉塊となり、エリートはシールドが直ぐにオーバーヒートして先の死体の仲間入りを果たす。

 その掃射を終えれば、今度はダネルMGLと呼ばれる南アフリカで開発された六連装のグレネードランチャーをデバイスより取り出し、それを目前に見える集団に向けて撃ちまくる。

 一度引き金を引けば、即座に榴弾が銃口より発射され、一発で複数の敵兵を爆風に巻き込んで殺傷する。

 グレネードランチャーに詰め込んだ榴弾は、シュン自家製の殺傷能力が極めて高い物であり、例え殺せなくとも、四方を引き千切ることは出来る優れものだ。

 そんな物を六発も連射すれば、一瞬の内で敵兵等は肉片と言う絵具となって地獄絵図が作り上げられる。

 

「オラァ!」

 

 弾が切れれば即座に捨て、今度は自家製榴弾に負けに劣らない地獄絵図を描くことが出来る筆である大剣のスレイブを背中より抜き、目前に見える士気が低下した敵に向けて容赦なく叩き込む。

 彼がその筆を敵の集団に向けて振った瞬間、見事にグレネードランチャーには劣らない地獄絵図を描けた。次は横へ振り、斜め、立て、また横へと連続で振り続ければ、おぞましい光景が広がる。

 最終防衛ラインを担当しているユーノやクロノ、アルフが見えれば嘔吐することは間違い無しの光景だ。故に、ここに来させるわけには行かない。

 

『突破されたぞ!』

 

 ヴェセミルの知らで、何名かの敵兵が防衛線を突破したが、最終防衛ラインを担当しているユーノやクロノ、アルフによって無力化される。シュンを含める六人とは違い、殺せないので、マシだと思えるが、彼らはこの時代の人間では無いので、何らかの力で殺されてしまうだろう。

 

『分隊規模の敵がなのはとフェイトの交戦空域に侵入しました』

 

『なに!? 助けねば!』

 

「ほっとけ。嬢ちゃんたちの戦いに巻き込まれるだけだ」

 

 更になのはとフェイトの対決の場に、敵が侵入されたとの報告がKOS-MOSよりもたらされた。

 これにヴェセミルは直ぐにでも助けに行こうとしたが、シュンに心配いらないと答える。

 

『おぉ、巻き込まれている!?』

 

「言ったろ。あの嬢ちゃんたちは並じゃねぇ戦いをしているのさ。俺たちは、小隊規模の敵だけの侵入を防げば良いだけだ」

 

 彼の言う通り、侵入した敵部隊は激闘を繰り広げるなのはとフェイトの戦いに巻き込まれてやられていた。

 これにヴェセミルは驚きの声を上げ、シュンは五十人以上の敵の突破を抑えるだけで良いと、大剣で数名の敵を惨殺しながら、この防衛戦に参加している者達全てに告げる。

 

「この敵のビビりっぷり、一個旅団分は殺ったな。さて、もう一個旅団…」

 

 一個師団、およそ八千人編成と見込んで半数近くを殺したと想定したシュンは、もっと多くの敵を殺そうと前に出たが、ここで敵の大将とも言うべきアービターがこの戦場に到来した。

 

「見付けたぞ、漆黒の剣士!!」

 

「顎割れ野郎の大将か!」

 

 現れて早々、アービターはシュンに向けて二振りのエナジーソードの斬撃を食らわせる。

 これにシュンは大剣で防ぎ、このエリートさえ殺せば、敵は瓦解すると判断して相手を突き飛ばしてから距離を取る。

 

「テメェさえ、()りゃあ、勝ったも同然だぜ」

 

「ふん、人間風情が。その強化服を纏った所で、この俺を殺すことは出来ん!」

 

 シュンはアービターを殺せば、この戦いに勝利できると宣言すれば、その当人の相手である最強のエリート、否、サンヘイリである彼は、これを挑発と捉え、大剣の男が動き出す前に、先制攻撃を仕掛けた。

 今回も入れて三度にも渡る戦いの末、アービターの動きを読み切ったシュンは、銃弾のような速さで迫る斬撃を防ぎ、カウンター攻撃を浴びせる。

 

「その程度では死なん!」

 

 アービターもシュンの動きを読んでか、これを避け、再び連続の斬撃を彼に浴びせて来る。

 

「どうした? 俺を殺して勝つんじゃなかったのか?」

 

「うるせぇ! この顎割れ野郎が!!」

 

「ぐっ!?」

 

 斬撃を浴びせた後、大剣を斬りおとそうとする勢いでエナジーソードを押し付け、シュンに向けて挑発を仕掛けたアービターだが、思わぬ頭突きによる反撃を受け、思わず仰け反ってしまう。これに怒りを覚えたのか、更にアービターは攻撃を強める。

 

「貴様ぁ…! ふざけているのか!?」

 

 先ほどよりも連撃は激しくなり、機関銃のように連続した突きが幾つも繰り出される。

 

「…ちっ」

 

 その恐ろしい速さの攻撃を経験したことがあるシュンは、幾度も大剣で防ごうとするが、全ての突きを防ぎ切ることは出来ず、横腹にエナジーソードを掠め、軽い火傷を負う。

 

「バリアジャケットは、なんでも防ぐんじゃ無かったのかよ」

 

『文句言うな、脳筋』

 

「脆弱な強化服だな。俺が生きていた頃に戦っていたスパルタンと言う強化体の人間は、その強化服よりも一級品なアーマーだったぞ。お前とは違ってな」

 

「へぇ、随分と贅沢だな。着てみたいぜ、そのアーマーをよ!」

 

 コヴナントの武器に対してのバリアジャケットの防御力の無さに、シュンが文句を言えば、デバイスは汚い言葉で言い返す。

 このやりとりを見て、アービターは生前に戦ったスパルタンと呼ばれるマスターチーフのような兵士たちと死闘を繰り広げた記録を思い出し、シュンのバリアジャケットよりも一級品の物を身に着けていたと挑発を交えて告げる。

 それを聞いてか、シュンは同じく挑発で返し、凄まじい高速移動でアービターに迫り、大剣を目にも止まらぬ速さで振り下ろす。

 

「っ!? 早い!?」

 

「テメェをぶっ殺して、そいつを着に行く!!」

 

 三度、剣を交えて動きを呼んだつもりだったアービターであったが、シュンが見せた思わぬ速度に驚きを隠せず、押し込まれる巨大な実体の刀身に対し、防御に徹するしか無かった。

 その巨大な刃をサンヘイリに押し付けるシュンは、冗談では無く本気だったのか、ミニョルアーマーを着るために、アービターを倒すと言いながら連撃を打ち込んだ。

 

「ふざけるな人間! 勝つのは、この俺だ!!」

 

 強敵相手の攻めは続かず、アービターの反撃である蹴りを受けて吹き飛ばされる。

 吹き飛ばされたシュンはやり返さず、無法者が集まる方面へと逃げる。

 

「待て! 逃げるつもりか!?」

 

 これにアービターは更に激怒し、無法者を殺しながら逃げるシュンを追跡する。

 

「あ、あいつだ! 逃げ…」

 

「邪魔だ!!」

 

 無法者の人混みの中に紛れて姿を晦ましたシュンに対し、恐れおののいて戦いもしないで逃げようとする無法者らを殺しつつ、アービターは戦いを侮辱している漆黒の剣士を探す。

 

「っ!?」

 

 戦意を失って逃げる味方を殺しながら、悲鳴や断末魔の声を頼りに探す中、背後より巨大な刃が、数十名を突き刺しながら迫り来る。

 これを咄嗟の判断で回避したアービターは、即座に反撃しようとしたが、エナジーソードを突き刺す前に、シュンは姿を消し、代わりに無法者の胸を貫いただけに終わる。

 

「こ、こいつからも逃げ…」

 

 次にアービターにも恐怖した無法者らが逃げようとする中、ここに来てシュンが目前の彼らを大剣で殺しながら現れる。

 振るわれた大剣を避け、即座に反撃が出来たアービターであるが、シュンは近くで逃げ遅れた無法者でその突きを防ぎ、大剣で人達を浴びせることに成功した。

 

「ぬぉ…!? 貴様…!」

 

 一太刀を浴びたが、シールドを完全に削いだだけであった。

 これに更に怒り、周りに居る無法者らを殺しながら突き進もうとして来るアービターであるが、背後で自分に取って信じられない事態が起こる。シュンもこれには攻撃を忘れ、目前で起こった光景に目を奪われていた。

 

「な、なんだあれは!?」

 

 思わず攻撃を止め、シュンと同じく起こっている光景に目を向けて驚愕する。

 それは、なのはの最大火力の砲撃魔法にして奥義、その名もスターライトブレイカー。

 非殺傷設定とはいえ、恐ろしい威力であり、それを受けるフェイトが生きているかどうかさえ疑わしい物だ。

 

「完成させやがったのか…!」

 

 遂に完成させたのかと、関心の声を上げるシュンであるが、その威力は余りにも高過ぎた。

 その効果は敵味方を圧倒するだけでなく、スターライトブレイカーを放ったなのはに対し、彼女の命を狙う大勢の刺客たちは畏怖する。

 

「あ、あれが九歳の嬢ちゃんの技なのか…!?」

 

「む、無理だ…勝てっこねぇ…!」

 

「死にたくねぇよ!!」

 

 畏怖を与えることなく、なのはのスターライトブレイカーは刺客たちから戦意まで奪った。

 シュンやKOS-MOS、新たに送られた四名を含め、士気を低下させる程度しか出来なかったが、なのははそれを遥かに上回る戦意を奪い事に成功している。

 戦意を損失した大勢の刺客たちは、静止の声を上げる指揮官を無視して我先にと逃げ出し始める。

 

「嫌だ! あいつ等を含めてあんなおっかない嬢ちゃんも相手をしたくねぇ!!」

 

「死にたくねぇよ!!」

 

「と、止まれ! 止まらんと撃つぞ!!」

 

「逃げる奴は銃殺刑にしてやる! みんな銃殺刑だ!!」

 

 やるなら今がチャンスであるが、主戦力の無法者やアラビアンナイト、蘇ったコヴナント軍の面々等は完全に戦意を損失しており、勝手に撤退、否、逃げ始めている。幾ら殺した所で崩壊を止められず、これ以上の戦闘は不可能であった。

 

 

 

「敵はもう瓦解寸前だ! 一気に突き崩すぞ!!」

 

 更にとどめを刺そうと、ヴェセミル等は敵の指揮官クラスを重点的に排除し、更に敵の士気を挫こうと攻勢に出る。バウアーが返り血塗れで怒号を出せば、一同はそれに続いた。

 

「指揮官を狙え! 直ぐに分かるぞ! 味方を撃ち殺している奴だ!!」

 

 ヴェセミルが言えば、銃を持つ一同は指揮官や下士官を撃ち殺し、敵を混乱状態に陥らせる。

 敵の中で戦意を損失してないのは、ネオ・ムガル兵やエリート、グノーシスのみであったが、主戦力である雑兵らがもう戦いもせずに逃げ始めているので、焼け石に水であり、次々と排除されるばかりだ。

 これ以上の戦闘は存在を増やすばかりと判断してか、エリートとグノーシスは戦闘を中止し、撤退し始めた。

 

「おのれ、たかが小娘ごときに…!」

 

 最後まで一人残って居たアービターは、未だに戦う気であったが、KOS-MOSのビーム砲が付近に命中し、吹き飛ばされる。

 

「で、どうする? お前はまだやるか?」

 

「クソッ…! 覚えておけ! また殺しに来るぞ!!」

 

 形勢逆転、アービターの戦いも今は無意味に等しく、ここに留まっていては、六人の戦士に八つ裂きにされるか、管理局に捕まるかの二択であった。

 どちらも戦士である自分にとっては屈辱的な物なので、第三の選択肢である撤退を選び、アービターは他の刺客たちと共に退却を始めた。

 

 

 

「やっと…終わったか…わしは疲れたぞ…」

 

 戦闘が終わり、左肩を負傷したヴェセミルは、出血している場所を右手で抑えながら尻餅を付いた。

 この戦いで傷付いていない者は、最終防衛ラインを担当している二人の少年と使い魔のみであり、全員が何らかの負傷を負っている。

 

「全く、どっちが守られているのやら…」

 

「あぁ、全くだ。あんな物を放つ少女は、今まで見たことが無い」

 

 バウアーが出血している頭部の傷口を抑えつつ、激闘を終えて息を整えているなのはを見ながら言えば、この戦い以上の激戦を経験しているイムカは、スターライトブレイカー以上の物を放つ少女は見たことが無いと言う。

 

「これで、最後にして貰いたいわね…」

 

「はい、今の状態で敵の攻撃を受ければ、我々が敗北する確率は100%です」

 

「あぁ、コスモスの言う通り、今攻め込まれれば、皆殺しにされるのは確実だな。兎に角、今は、強い酒が欲しい…」

 

 同じく負傷して疲労困憊のシオンが、これで最後にして貰いたいと言えば、KOS-MOSは今攻撃を受ければ敗北は確実だと計算して出した。

 それを聞いてか、ヴェセミルは今の状態で攻撃でも受ければKOS-MOSの出した計算通りになると告げ、酒が欲しいと呟いた。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「うん、私は。フェイトちゃん、大丈夫かな?」

 

「あんなもんをぶっ放したお前が言う事かよ」

 

 自分等の戦いを終えたシュンは、同じく戦いを終えたなのは等に近付き、無事であるかどうかを問う。

 これになのはが元気よく答えれば、フェイトが無事であるかどうか心配になるが、シュンは殺す気とも見える攻撃を行った本人にそれを指摘しつつ、倒れ込んでいる彼女に近付いて無事かどうか確かめる。

 

「安心しろ、殺してない。気絶しているだけだ。普通なら粉微塵に吹き飛んでるはずだがな。お前の腕が良かったか、どうかは知らんが」

 

「良かった…」

 

 あれほどの攻撃を受けて、気絶程度で済んだことに驚きつつ、それをなのはに知らせれば、彼女は安心しきって地面、ではなく海面へと降り立った。

 

「おい、起きろ。ルールはルールだったな。ジュエル何たるとかを…」

 

「え…? 私、負けたんだ…」

 

 なのはも疲れていることを確認すれば、シュンは気絶しているフェイトを起こし、約束通り、持っているジュエルシードを全て渡すように告げた。これにフェイトは自分が負けたと分かり、持っているジュエルシードをなのは達に渡そうとした。

 だが、この敗北を認めず、何者かがこの訓練空間に向けて魔法による攻撃を行う。

 

『高出力の魔力反応! こっちに転移して来る!!』

 

「っ!?」

 

 エイミィからの知らせで、一同は即座に戦闘態勢を取り、シュンは背中に戻していた大剣を即座に抜いて警戒したが、既に攻撃はフェイトに向けて来ていた。

 もう間に合わない。

 そう一同は思っていたが、近くに居たシュンは、フェイトをなのはの居る方向へ投げ飛ばし、身代わりとなってその攻撃を受けた。

 

「瀬戸さん!?」

 

 フェイトの身代わりとなって、その強大な魔力を自らの身体で防いだシュンは、恐ろしい光に呑まれ、悲鳴一つも上げることなく海面の上に倒れ込んだ。

 身代わりとなって攻撃を受け、生きているかどうか分からない海面に浮かぶボロボロのシュンの元に、なのはとフェイトは近付いて無事を問う。

 

「あぁ…そんな…!」

 

「瀬戸さん、しっかりして! 瀬戸さん!!」

 

「い、生きているのか!? 奴は生きているのか!?」

 

「分からん! どうなんだコスモス!?」

 

 二人の少女に続き、ヴェセミルとバウアーも生きているかどうかをKOS-MOSに問う。

 自分等のリーダーとも言えるシュンの生体反応を確認すべく、KOS-MOSは生きているかどうかセンサーでスキャンし始める。

 

「大丈夫です。瀬戸シュンは生きています。バリアジャケットのおかげでしょう」

 

「全く、しぶとい奴だ! 驚かせやがって!」

 

「あれで生きてるなんて、もう化け物ね」

 

 スキャンし終えて、生きていることが分かれば、バウアーは彼の身体を叩きながら安心し、シオンはあの攻撃を受けてまだ息のあるシュンに驚きを隠せないでいる。

 そんな時に、エイミィからではなく、アースラの艦長であるリンディからの報告が通信に入る。

 

『みんな、無事でいるみたいね。労いの言葉を一つ言いたいところだけど、先の転移攻撃でその座標は捉えたわ! 詳しくは、傷を癒しながら聞いてちょうだい!』

 

「どうやら、敵陣に乗り込むようだな。もっとも、あの無法者共の巣窟では無いが」

 

 リンディからの報告を受け、バウアーは敵陣に乗り込む時が来たと言ったが、ネオ・ムガルの暗殺部隊の本部でなかったことを残念がる。

 

「あぁ。だが、今の我々には、休息と傷の手当てが必要だ」

 

 これにヴェセミルも賛同したが、今の自分等には休息と手当てが必要であると、気を失っているシュンを見ながら一同に告げた。

 こうして一同は、自分等も含めるフェイト達の待遇も改善して貰う事も画策しつつ、アースラへと帰還した。

 

 

 

「し、失敗だ…玉砕覚悟の突撃…それを失敗してしまった! 私は、後五時間後に暗殺作戦失敗の責任を取らされ、リガン様によって部下諸共に粛清される! もう駄目だ! お終いだ!!」

 

 その頃、玉砕突撃とも言うべき暗殺とは言えない作戦に失敗したネオ・ムガルの暗殺部隊の指揮官である懐中時計の男は、ネオ・ムガルの首領、リガンに失敗の責任を取って殺されるのは確実であり、自分の余命は後五時間であると、懐中時計を見ながら絶望していた。

 そんな彼の隣にある棚には、四つのジュエルシードが保管されている。

 そう、見付からない四つは暗殺部隊がリガンの手み上げとするために回収していたのだ。

 殺されるのは時間の問題であると嘆く指揮官の元へ、先の戦いで大敗北を決したアービターが部下を連れて司令室へと入ってくる。

 

「な、何をしに来たこの役立たずめ! まさか脱走を図ろうと言うのか!?」

 

 入って来たアービターに対し、指揮官は部下らと共に拳銃の銃口を向け、脱走を企てているのかと問い詰める。

 

「止めておけ! 我がネオ・ムガルの死霊使いからは逃れることは出来ん! 例えかこの世界であっても! 名前すら知らされぬこの私が言うのだ! 間違いない!!」

 

「違う、俺は逃げるつもりは無い…無能なお前に代わり、任務を遂行しようと言うのだ」

 

「な、なに…!?」

 

 何かを企んでいると見抜き、指揮官は咎人らを蘇らせ、ネオ・ムガルの主戦力として使役している死霊使いからは逃れられないと告げたが、アービターは企てが脱走では無いと返し、自分が代行者となると彼に告げる。

 これに、指揮官はアービターが何を考えているのか理解できなかったが、左右に立つ部下が背後よりエナジーソードで貫かれてようやく反乱であることに気付く。

 

「き、貴様! 裏切るつもりか!?」

 

「ふん、裏切るのではない。俺が代行者となるのだ。無能な貴様や部下共に代わってな」

 

「貴様ぁ!!」

 

 反乱であると分かった指揮官は、せめてアービターを道連れに拳銃を撃とうとしたが、背後には既に姿を消しているステルス状態のエリートが控えており、彼のエナジーソードで背中から胸を貫かれて息絶えた。

 こうして、指揮系統を完全に乗っ取ることに成功したアービターは、この場に居る全員の部下たちに指示を出す。

 

「ネオ・ムガルの連中は全て殺せ。宝石に囚われている咎人達を解放しろ。俺は、この時代の者と手を汲みに行く。丁度、条件はここにあるからな」

 

 アービターは部下たちに複数の指示を出した後、棚に保管されていた四つのジュエルシードを奪い、それを持っていけば自分に確実に協力する者の素材として、懐へと仕舞った。




この戦いに爆豪少年やヤミ団長、フリーザ様を投入すればもっと凄い地獄絵図と化すと思うんだ…

つっても、こいつ等を投入したらイメージが全快に崩壊すると思うけどww
いや、確実になるww

取り敢えず、次回はなのは第一期最終決戦。
リメイク前の艦艇が登場予定。

さぁ、一子相伝の大戦争を!!

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