復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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後、2~3話でリリカルなのは第一期編を終わらせる予定です。


未来のコンビ

 ユーノに取っての祈願で、フェイト等に取って最悪の事態である管理局の一部隊である次元航行艦アースラを旗艦とするリンディ隊の介入により、傾きはなのは等に向いたが、管理局に取って違法レベルのデバイスと、ロストギア級の大剣である「スレイブ」を持つシュンは、その所持の容疑で捕まってしまう。

 このシュンの拘束は、なのはとユーノに取って、いつ襲ってくるか分からないネオ・ムガルとの戦いでの心理的不安を招いたが、やや幼いものの、正規の執務官であり、それに似合う実力を持つクロノの存在もあって、何とか不安を振り切ってジュエルシード集めに奮闘する。

 だが、ここでただアースラの拘留室で大人しくしているシュンでは無い。数日間の拘留期間で練りに練った脱出計画を、即座に実行した。

 

「おい! 煩いぞ!!」

 

 まずは壁を思いっ切り叩いて大きな音を立て、看守を呼び寄せた。

 それから数秒後、ベッドの上に座り、注意しに来た看守がドアの前に立つのを待つ。看守がドアの前に立った瞬間に、苦しんだ振りをする。

 

「グッ…腹が…!」

 

「おい、どうした!?」

 

 拘留期間にシュンは、苦しんだ演技は一切行わなかった。何故ならこの日に備えて敢えてやらなかったのだ。罠に引っ掛かった看守は、ドアを開けてシュンの様子を見に来る。その隙を狙い、看守を羽交い絞めにした。

 

「うっ!? 貴様…!」

 

「殺さないだけマシって思え」

 

 そう言って看守を気絶させれば、拘留部屋より出て、自分の装備と大剣を取り戻す為、シュンは手近にあるパイプを力任せに引き抜き、それを武器としてから押収品を収めている倉庫を探すために通路へ出た。

 少し歩いて当てずっぽうに探し回る中、どちらの方向に押収品を収めている区画が分からないため、たまたま通り掛かった乗員を捕まえ、パイプの尖った部分を突き立てながら押収品を収めている区画が何所にあるか問う。

 

「おい、俺の装備を収めてる倉庫は何所にある?」

 

「ひ、左だ! 左の通路を曲がって…」

 

 少し脅すだけで、乗員はあっさりと倉庫のある場所を吐いた。

 それが分かった後に彼を気絶させ、人目の無い場所に探してからその場所へと通路を歩く乗員らの視線を掻い潜りつつ向かう。

 

「よし、ここだな」

 

 見付からずに倉庫まで辿り着いたシュンは、手慣れた手付きで、道中で気絶させて奪った女性乗員のヘアピンを使ってピッキングを行い、数分で開けることに成功した。

 どうやら、アースラには一度も侵入者が入ったことが無いようだ。

 シュンに取ってはありがたい事であり、入れば真先に自分のデバイスと装備、大剣を取り戻す。

 

「さて、返して貰ったぜ。そんじゃ、お礼にここいらのもんを頂戴して行くか」

 

 自分の装備を取り戻すことに成功したシュンだが、いきなり来て自分を捕らえた管理局に対して少なからずの恨みを持っていたのか、他の押収品を頂戴することにした。

 まずはRPK軽機関銃風味の機関銃と予備弾薬を拾い上げ、ベルトに収められるかどうか問う。

 

「おい、こいつを収められるか?」

 

『あぁ、収められるよ。間抜け』

 

「一言余計だ、クソッタレ」

 

 一言余計なことを発するベルトのデバイスが、収められると言ったので、試しにベルトのコアの部分に銃を近付けてみれば、銃はコアの中に吸い込まれるように消えた。ついでに弾薬も近付ければ、銃と同じように吸い込んでしまう。

 この様子を見ていたシュンは、倉庫にある銃の押収品を見て、にやついた表情を浮かべながら呟く。

 

「こりゃあ、バーゲンセールだな」

 

 そう言った後、機関銃などの小火器やロケットランチャーなどの重火器、手榴弾や迫撃砲の弾頭を手当たり次第にベルトの中に収めて行く。

 こうして、アースラの隊が押収した物の半分を回収したシュンだが、局員たちが放っておくはずが無く、背後より武装局員の声が聞こえて来る。

 

「動くな!」

 

 遂に見つかってしまったが、ここで大人しく捕まるシュンでは無い。両手を上げて投降した振りを見せ、手錠を掛けに来た武装局員の顔面に肘打ちを食らわせ、怯ませた後に腹に強力な蹴りを食わらせて気絶させる。

 

「抵抗したな!」

 

「気絶させろ!!」

 

 一人を気絶させたのを見た武装局員らは、手にしている杖で非殺傷設定の魔法をシュンに向けて撃って来た。

 無数の魔弾を避けつつ、手近な局員に接近して顔面にパンチを食らわせて杖を奪う。

 魔法は使えないが、武器として使うことは出来る。長物での訓練を思い出し、自分の杖を取り戻そうと飛び掛かって来る局員を杖で急所を突いて気絶させ、次なる局員に近付き、急所を的確について彼も気絶させる。

 

「気を付けろ!」

 

 三人目に近付いた際には、敢えて気絶させず、無数に飛んでくる魔弾の盾として気絶するまで使い、気絶させれば近くの隊員に向けて投げ付け、背後より羽交い絞めにしようと近付く隊員の腹に柄を打ち込む。

 怯んだところで、直ぐに追撃を掛け、頭に最後の一撃を打ち込んで気絶させてから、背後を見せた隙に向かって来た二名にも急所に打ち込み、無力化した。

 

「く、クソォォォ!!」

 

 残った一人は、破れかぶれにシュンに突っ込んで来たが、コアの部分で何度も腹を突かれ、意識を失ってその場に倒れ込む。

 

「久しぶりに棒術なんてやったな。まぁ、この程度の相手はこんなもんか」

 

 武器にしていた杖を捨て、シュンはそう呟いてから倉庫を後にした。

 彼が過ぎ去った倉庫では、捕縛しようと立ち向かった武装局員らが気絶するか、余りの激痛で呻っていた。

 そんな彼らを放置して倉庫を出たシュンは、なのはと人の形態であるユーノが転移装置のある方へと向かって行くのを偶然に目撃する。

 

「嬢ちゃんとエロ餓鬼か。あの後について行けば逃げ出せるな」

 

 これをアースラからの脱出と捉えたシュンは、直ぐになのは等の後を追う。

 当然ながら、応援の局員がシュンを捕らえようと掴み掛って来たが、歴戦練磨の戦士に太刀打ちできるはずが無く、壁に投げ飛ばされて気絶させられる。

 

「あれ? 瀬戸さんは捕まってたはずじゃ…!? どうしてここに?」

 

「まぁ、あちらが出してくれた」

 

「そ、そうなんですか。じゃあ、瀬戸さんが居れば百人力ですよ!」

 

 自分よりはるかに身長が高い大男に気付いたユーノは、何をやっているのかを走りながら問う。これにシュンは嘘で答えれば、心強い味方が来てくれたことになのはは大喜びだ。

 脱獄したとは知らない大男を仲間に加えた未来の英雄は、同じ未来の英雄を救うべく、転送装置を動かし、彼女が苦戦している現場へと急行した。

 

 

 

「クッ…!」

 

 一方、高町なのはと同じ未来の英雄、フェイト・テスタロッサは、海上で強制発動させたジュエルシード四つを獲得すべく奮闘していたが、一人では到底に無理であった。

 他のアルフとKOS-MOSと言えば、四つのジュエルシードが生み出した化け物たちに阻まれてフェイトを助け出せないでいる。

 

「フェイト、危ない!」

 

「…っ!?」

 

 彼女らが苦戦する中、フェイトの背後より強力な波が打ち付けられようとしていた。

 アルフの声で気付いたフェイトであったが、避ける間もなく、この攻撃を受けて水に取り込まれて窒息死か、良くて数か月間の昏睡状態の運命を辿るかと思った。

 だが、それは思っても居なかった相手に、窮地から救われる。

 

「…なのは…ちゃん…?」

 

「うん、私だよ」

 

 自分を窮地より助けたのは、敵であるなのはであった。彼女の他には、見慣れない人の状態であるユーノと、自分を守るKOS-MOSと同じなのはの守護者であるシュンが完全武装状態で居る。

 これ程までに心強い味方はいないと思ったフェイトだが、何かの作戦と思って警戒する。

 

「大丈夫だよ、フェイトちゃん。私達は戦いに来たんじゃない。助けに来たの」

 

 フェイトの警戒心を解くため、なのはは戦いに来たのでは無く、助けに来たと告げる。

 なのなの目を見て戦意が無い事を確かめれば、フェイトは共闘の意を見せる。

 

「分かった。でも、半分子ね。ジュエルシードは四つ、だから一人二つで」

 

「良いよ。それなら文句は無い。じゃあ…」

 

『行こうか!』

 

 発動した四つのジュエルシードが生み出した海の化身を倒せば、半分ずつを分け合うことと合意すれば、なのはとフェイトは共闘して海の化身に挑んだ。

 これが最初の共闘と言うのだろう。

 無論、この後に、強い友情で結ばれた者同士になることなど二人は知らない。今はただ、目前にある四つのジュエルシードを封印するまでだ。

 目前の障害を排除しつつ、初めて共闘するとは思えない連携を見せ、なのはとフェイトは本体にまで近付く。

 その様子を見て居たシュンは、アースラより盗んだ押収品の銃を確かめながら感心する。

 

「中々良いコンビじゃねぇか。あれなら、最強のコンビになれるぜ」

 

 そう感心するシュンに、KOS-MOSはネオ・ムガルの接近を察知したのか、そのことを彼に知らせる。

 

「瀬戸シュン、我々にも戦うべき相手が来たようです。約一個中隊の人数が、こちらに向けて接近中!」

 

「来たな、ロリコンの異常者共。よし、雌犬とエロ餓鬼、嬢ちゃんたちの御守りは任せたぞ!」

 

「雌犬って…! おい! 私は使い魔だ!!」

 

「エロ餓鬼…!? あれは不可抗力だって!!」

 

 KOS-MOSの知らせで自分がすべき仕事が来たため、シュンは自分が思った名前でアルフとユーノになのはとフェイトのサポートを任せた。

 これにアルフは怒り、ユーノは顔を赤くしながら不可抗力であるとシュンに言ったが、当の本人は向かって来る刺客の集団に、KOS-MOSと共に向かった後であった。

 

 

 

「空中攻撃兵一個分隊、来ます!」

 

 ネオ・ムガルとの戦闘を開始したシュンとKOS-MOSは、先行してきた空中攻撃兵と会敵し、交戦を開始した。

 KOS-MOSが両手に出しているガトリング砲を撃ちながらシュンに知らせ、散開が遅れた数名を挽肉へと変える。報告を受けたシュンは、くすねた軽機関銃でKOS-MOSの撃ち漏らしを仕留める。

 

「動き回れ! 的を絞らせるな!!」

 

 これに分隊長は指示を出すが、シュンが逃すはずが無く、分隊長は軽機関銃でハチの巣にされ、残兵もKOS-MOSが何所からともなく出した二挺の拳銃で残らず撃ち殺される。

 

「なんとしても突破しろ!!」

 

 二人が展開した防衛ラインに対し、後続の部隊を率いる部隊長は突破を命じるが、たった二人の防衛ラインにしては強固過ぎ、次々と肉塊となるか、血飛沫を吹き出しながら海へと落ちて行く。

 

「機影確認! ヘリと異星人のVTOLらしき物が多数接近中!」

 

「おいおい、あいつ等はんなもんまで持ってんのか! たく、骨が折れるぜ!」

 

 歩兵では突破できないと判断してか、航空戦力として無法者らが乗るヘリ部隊や、エリート族らが保有する航空機類を投入する。数は二個中隊程だが、たった二人で防衛ラインを維持するシュンとKOS-MOSにとっては脅威だ。

 レーダーを内蔵している彼女の知らせで、シュンはベルトより使い捨てのロケットランチャーを取り出し、文句を言いながらも、エリート族が保有するバンシーと呼ばれるコヴナント軍の軽戦闘機に向けて撃ち込んだ。

 放たれたロケット弾は、シュンが未来予測射撃を行ったためか、吸い込まれるように標的に命中して、異星人の軽戦闘機は爆散する。

 他にもゾロゾロと押し寄せて来るが、KOS-MOSの両手のガトリング砲による弾幕で蠅のように海に落ちて行くだけだ。

 

「モヒカン共のヘリには、こいつだ」

 

 エリート族の航空部隊を囮に、回り込もうとする無法者らが乗るヘリ部隊に対しては、シュンが担当することとなった。彼らの排除を担当するシュンは、ベルトのコアから取り出したある物を手にしながら、それが効果的であると一人呟く。

 そのある物とは、迫撃砲の砲弾だ。砲弾本体には赤い線が入っている。左腕の防具で信管を叩けば、それを手にしながらヘリ部隊へ接近する。

 

「来たぞぉ! ぶっ殺せぇ!!」

 

 単独で近付いてくるシュンを見た無法者らは、手にしている小火器で彼に向けて銃弾の雨を浴びせた。

 凄まじい数の弾丸のシャワーを浴びるが、バリアジャケットを身に着けているおかげで全て弾くことが出来る。

 尚、シュンは無法者らと同じ境遇を、ワルキューレの属していたころに経験した事がある。

 その時の装備はボルトアクション式小銃で、酷いことに質の悪い銃弾と貧弱であったが、弾の質とは関係無いようだ。

 十分な距離まで接近すれば、砲弾をヘリ部隊の頭上へ向けて投げた。

 ある程度の高さまで飛んだのを確認した後、シュンは自分が投げた砲弾に向けて機関銃を撃ちまくる。これを無法者らは、何の意味か分からずに無駄弾と馬鹿にした。

 

「へへへ、あいつ馬鹿じゃねぇのか! おかしな方向へ撃ってるぜ!」

 

 一人がそれを言えば、他の無法者らもシュンを馬鹿にしたが、この後に彼らは悲劇的な最期を迎える。

 機関銃より放たれた弾丸は数発が砲弾に命中し、中に詰まってあるある物が無法者らのヘリ部隊に向けて白い物が撒き散らされた。

 その白い物を浴びた無法者らの身体は突然発火して、彼らを瞬く間に火達磨にする。

 シュンが投げた迫撃砲の砲弾は、白燐弾だ。

 充填された白リンが、大気中に自然燃焼がすると吸温して透過性の極めて悪い五酸化ニリンの煙を発生させることに利用する。

 第二次世界大戦では、アメリカ軍の戦車が使用し、ドイツ軍の戦車や対戦車砲に撃ち込んで将兵に大火傷を負わせた。

 主に対人用兵器として使用されたようだが、現代では旧式化し、発煙や煙幕弾として使用されている。シュンが使った物は、古いタイプの白燐弾のようだ。

 管理局が危険な質量兵器として押収したのが、目前で行われる光景を見て納得ができる。

 

「ウワァァァ!? 熱い! 熱いぃ!!」

 

 全身火達磨となって燃え上がる無法者らは獣のような悲鳴を上げ、悶え苦しみながらヘリから海へと落ちて行く。

 操縦者を失ったヘリは次々と海へと墜落し、爆発して屑鉄となって沈んでいった。

 海へ落ちた無法者らは助かったと思われるが、落ちる途中で焼け死んでしまったのか、焼死体が浮いている。運が良い者はまだ生きていたが、既に助からない状態であり、これにシュンは無情にも彼らに向け、手にしている機関銃の銃弾を浴びせて止めを刺す。

 

「モヒカン共は全員ドザエモンになったな」

 

 海の上で誰も動いてないのを確認すれば、一人で防衛線を支えるKOS-MOSの救援に向かうべく、シュンは全速力で元の位置へと向かった。

 彼が飛び去った後には、かつてヘリだったガラクタや、それに乗っていた無法者らの焼死体が浮かんでいた。

 

 

 

「大丈夫か、あのエロサイボーグは? おっ、航空機だけじゃなくて船まで来てるじゃねぇか」

 

 KOS-MOSの救援に向かったシュンは、航空機だけでなく、知らぬ間に現れた船までの迎撃におわれる彼女の姿を見て、目前のバンシーを大剣で切り裂きつつ急いで向かう。

 三機を大剣で切り裂いて撃墜した後、コヴナント軍の重武装の兵員輸送機であるゴーストに向けて大剣を突き刺し、刃を前方に動かしながら走って空へ飛び込み、そのまま会場を走る無法者らが乗った船に飛び降りる。

 

「やっちまえ!」

 

 船に降り立った瞬間に、乗っている無法者らが一斉に襲い掛かって来たが、シュンが行った回転切りで飛び掛かった全員がバラバラにされる。

 それでも怯まずに何名かが銃を撃ったり、鉈で斬り掛かったりして来るも、シュンに敵うはずが無く、次々と殺されるばかりであった。

 操艦手以外の無法者たちを皆殺しにした後、こちらの船に付けて隣の船から乗り込んで来る無法者らに対し、シュンは大剣を背後より釘バッドで殴り掛かろうとした男に投げた後、ベルトのコアより普通の迫撃砲の砲弾を取り、信管を左腕の防具で叩き、それを乗り込んで来る無法者らの船に向けて投げた。

 結果、当然の如く軍用船でも無い船は一発で沈み、無法者らは吹き飛んで海へと沈む。

 乗り込んで来た者達に対しては、左腕の付けた凄まじい連射力を誇るプラズマ弾を発射するボウガンで対処する。

 

「おい、駄賃だ」

 

「ひっ!? ひぃぃぃ!!」

 

 乗っている船や、乗り込んで来た無法者らを皆殺しにしたシュンは、お礼と言わんばかりに操艦手に安全ピンを抜いた手榴弾を受け取らせた後、空を飛んで敵船や敵機を左腕のボウガンで破壊しつつ、KOS-MOSの支援に向かう。

 

「た、助け…」

 

 一方で駄賃代わりとして手榴弾を渡された操艦手は、船の揺れでそれを落としてしまい、飛んできた破片で命を落とした。

 

「おい、大丈夫か」

 

「はい、ある程度は大丈夫です。敵航空戦力はどれくらい削れましたか?」

 

「取り敢えず、半分くらいの蠅は叩いた。嬢ちゃんたちはどうなってる?」

 

 ガトリング砲を撃ち続けているKOS-MOSに無事を問えば、彼女は撃ちながらシュンに敵航空戦力をどれくらい削ったのかを問う。

 これにシュンは半分程度の戦力は削ったと答えれば、次になのはとフェイトの様子を確かめた。

 

「二人のコンビネーションは抜群のようです。ネオ・ムガルの進行を食い止めれば、確実にジュエルシードの封印が成されるでしょう」

 

「それを出来るようにするには、俺たちがあのクソッタレ共を…止めなきゃな…」

 

 優勢であり、封印は時間の問題であるとKOS-MOSが言えば、シュンは機関銃を手に取り、ネオ・ムガルが迫り来る方向を見ながら二人の封印を手助けするには敵を止めなければならないと言ったが、彼の目には信じられない物が映った。

 それはフリゲートクラスの軍艦だ。戦艦や巡洋艦、駆逐艦ほどでは無いが、人にとっては脅威の他ない。そんな軍艦を見たシュンは、こちらに主砲を向けていることが分かって、一瞬の内に言葉を失う。

 その直後、フリゲートの主砲を受けてシュンはかなり遠くまで吹き飛ばされる。

 近くに居たKOS-MOSであるが、彼女は防衛線の維持で付いた被弾以外の傷は一切見られない。どうやらシュンにだけ当たったようだ。主砲で吹き飛ばされた彼が生きているかを確認するため、KOS-MOSは通信機を使って無事を確かめてみる。

 

「瀬戸シュン、生きていますか?」

 

『あぁ、生きてる…耳鳴りがするが、バリアなんたらと大剣のおかげでなんとかな…』

 

 彼の居る方向をKOS-MOSが見れば、血塗れになりながらもまだ戦闘継続が可能なシュンの姿がそこにあった。

 

「まだ、戦闘の続行は可能ですか?」

 

「この程度は唾でも付けときゃ治る」

 

「とても、そんな状態には見えませんが」

 

 KOS-MOSが戦闘の継続が可能かどうかを問えば、シュンは頭の切り口から血を流しながら出来ると答える。

 唾でも付ければ治ると言うシュンだが、誰から見てもそんな状態には見えなかった。

 そこにツッコミを入れるKOS-MOSであるが、シュンはそれを聞かずにフリゲートの対空砲火を避けつつ、随伴して突破を試みる敵航空機と船舶の破壊に努める。

 注意が完全にシュンに向いたためか、KOS-MOSは自分の中で最大の威力を誇る兵装の用意をする。

 

「相転移砲、スタンバイ」

 

 この時にKOS-MOSの胸元の服が開き、豊満な乳房が見えてしまいそうな状態となる。

 

「おいおい、ストリップでもやる気か?」

 

 それを偶然目撃してシュンは、色香で敵を惑わすつもりかと思ってしまう。

 現実に、無法者らは露出したKOS-MOSの胸元を見て下品な笑みを浮かべている。

 だが、それも束の間。彼女の胸部より恐ろしい威力を秘めたエネルギー体が発射され、それが高速でフリゲートまで迫る。

 

「やべっ!」

 

「んぁ?」

 

 胸部より発射されたエネルギー体が凄まじく危険な物だと、長年の感で判断したシュンは、即座に回避行動を取って巻き込まれない距離まで退避する。

 エネルギー体を恐ろしい物と気付いていない無法者らとフリゲートの乗員たちは、そのエネルギー体に呑み込まれ、断末魔を上げることなく消滅した。

 

「御眠りなさい、甘美なやさしさの中で…」

 

 消滅した無法者らとフリゲートの乗員たちに対し、KOS-MOSは普段の口調とは思えない物で彼らに告げた。

 この時に彼女の瞳は青色であったが、胸部の発射口が元の位置へ戻れば、瞳は赤色へと戻る。

 

「とんでもないおっぱい砲だな…」

 

 一瞬でフリゲートと随伴していた船舶と航空機を消滅させたKOS-MOSの最大の威力を誇る兵装である相転移砲を見て、恐ろしく思ったが、冗談は交えた。

 相転移砲を撃って敵を消滅させた頃には、既にジュエルシードの封印は終わっており、背後で起こっていた嵐は静まっていた。

 

「さて、敵も居ないことだし、戻るか」

 

「はい。私もフェイトの事が気になります」

 

 動いていない敵が居ないと確認が取れれば、シュンとKOS-MOSはなのはとフェイトの元へ向かった。

 

 

 

「おい、そっちは大丈夫か!?」

 

「あっ、瀬戸さん! って、大丈夫!?」

 

 なのはとフェイト、ユーノにアルフ、仕方なく救援に入ったクロノの元へ着いたシュンは、彼女に無事であったかどうかを問う。

 だが、そんな自分の姿は無事とは思えない姿であるため、逆になのはに無事かどうかを問われた。

 

「傷の具合からして、止血して暫しの休息を取れば、大丈夫です」

 

「良かった! コスモスさんも大丈夫?」

 

「私は大丈夫です。それより貴方たちは?」

 

 代わりにKOS-MOSが答えれば、なのはは彼女の無事を問う。これに大丈夫だと答え、次になのはとフェイトに無事かどうかを問う。

 

「うん、この通り。レイジングハートのおかげで。フェイトちゃんも大丈夫」

 

 無事かどうかを問われれば、自分もフェイトも無事であると答えた。

 フェイトの方に目をやったなのはだが、彼女は暗い表情のまま、自分のアジトへと行こうとする。これに続き、アルフもKOS-MOSも撤収を始める。

 

「待って! フェイトちゃん! まだ…!」

 

「約束は守ったから…それじゃあ…」

 

 呼び止めるなのはだが、フェイトはまたしても行ってしまう。

 

「待て! 今度という今度は!」

 

 これを追おうとするクロノであるが、撤収際にKOS-MOSが煙幕弾を放ったため、姿を見失ってしまう。

 

「おっと、俺もヤバいな」

 

 あのクロノが居るので、シュンも彼に気付かれる前に何処に姿を消した。

 煙が晴れた後、フェイト達とアースラより逃げたシュンを逃してしまったクロノは悔しがる。

 

「クソッ、直ぐに捕まえられたのにみすみす逃してしまうとは! 折角執務官になったと言うのに!」

 

 クロノは苛立ちを晴らすために悔しさを言葉にし、いつでも捕まえることが出来たのに、逃してしまう自分を恥じた。

 これをただ見ていたユーノであるが、勝手な行動を取った件もあるので、クロノになのは諸共に呼び止められる。

 

「おっと、君たちまで逃がす訳には行かない。さて、どういうことか説明して貰おうか。理由は分かるが…」

 

「うん、ごめんなさい」

 

 なのは達がフェイト達を助けた理由は分かっていたクロノだが、ここは執務官としての仕事を果たすべく、彼女らをアースラへと連れ帰った。




ちょっと最近コンパクトにまとめて短くなって来た…

次回は決闘回です。劇場版の方を参考しているので、破壊力MAXのディバインバスター、ではなくスターライトブレイカーを豪快にぶっ放します。

まぁ、原作を丸コピする訳にはいかんので、シュンと先代アービター&ネオ・ムガルとの戦いになりますが…
KOS-MOSの相転移砲以外の必殺技も見れちゃうぞ!

では、お楽しみあーれー!

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