復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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ゼノサーガなので、敵を投入してみる。

T-エロスさんを投入予定でしたが、彼女はまたの機会に…


管理局の介入

「五つ目のジュエルシードの確保に成功。封印をお願いします、フェイト」

 

「うん、コスモスさん」

 

 ジュエルシードの暴走により生み出された木の化け物を倒して数日後、KOS-MOSを護衛に加えたフェイト達は、手持ちの六つ目となるジュエルシードの獲得に成功した。

 これまでは、僅かな反応を頼りか、強制発動によって探索をしていたが、KOS-MOSの参加で探索は容易となり、三つを新たに手に入れられた。

 

「まさか、ここまでの凄い魔力センサーを持っているとはね。こんなの、管理局なんて持ってないよ」

 

「私の開発者、シオン・ウヅキが搭載予定でしたが、搭載の日はこず、現世に召喚した人物、アウトサイダーが搭載してくれました」

 

 この探索の容易さに、アルフはKOS-MOSが搭載している魔力センサーの性能の凄さに舌を巻けば、彼女はそのセンサーは自分を蘇らせたアウトサイダーが搭載した物と答える。

 

「現世に召喚した人物…?」

 

「アウトサイダーって人が付けてくれたの?」

 

「はい。ですが、彼の正体はこの私ですら分かりません」

 

 アウトサイダーがどのような人物であるかどうかを興味本位で聞くフェイトとアルフだが、KOS-MOSは彼の正体が分からないのか、返答は不可能と答える。

 

「さて、一日で二つも見付かった事だし。今日はこの辺にしておくか」

 

「うん、ちょっと疲れたから休まないと」

 

「その判断が正しいです。この状況でのネオ・ムガルの刺客たちとの戦闘は、不利になる可能性が大です」

 

「コスモスの言う通り、あの変な奴らがいつ襲ってくるか分からないし、早く帰ろうか」

 

 二つのジュエルシードを入手したため、アルフの提案でフェイト達はアジトへと戻る事に決めた。その判断が正しい物とKOS-MOSが太鼓判を押せば、一同はそれに賛同してアジトへと帰還した。

 

 

 

 二日後、いつものジュエルシード集めとは違い、なのは等は争奪戦を繰り広げている相手であるフェイト達と遭遇してしまった。

 

「フェイトちゃん…!」

 

「…」

 

 遭遇した二人は互いに見つめ合い、ユーノは警戒し、フェイトの使い魔であるアルフは戦闘態勢を取る。

 

「加勢しなくて良いのですか?」

 

「餓鬼の喧嘩には興味はねぇよ。俺らの仕事は、この時代にやって来て嬢ちゃん共を殺そうとするロリコン共の始末だろ」

 

「はい、私たち守護者の使命は、未来を守る事です」

 

 一方で彼女らの護衛を務めるシュンとKOS-MOSはと言えば、ただ二人の様子を眺めるだけである。

 そんな二人の様子を見ていれば、先にフェイトが自分のデバイスであるバルディッシュを起動し、臨戦態勢を取った。

 

「話し合いをするつもりは…無いんだね…?」

 

「うん。私にも、譲れないものがあるから…」

 

 フェイトが出した答えに、なのはもレイジングハートを起動して、臨戦態勢を取る彼女と一戦交える気だ。

 両者が構えたので、シュンとKOS-MOSの注目は二人の魔法少女に向けられた。

 

『そこまでだ!』

 

 いざ、戦闘が始まった瞬間、なのはとフェイトの間に、十代前半と思われる少年が割って入り、バルディッシュを自分の杖で抑え、レイジングハートを赤子の手を捻るかの如く空いている手で抑えた。

 

「アンノウン接近! 攻撃態勢を取ります!!」

 

「ネオ・ムガルの奴らか!?」

 

 突然、現れた少年に対し、二人の守護者は臨戦体勢を取り、各々の得物を向けた。

 そんな少年は自分の身元を明かしながら、なのはとフェイト、それにシュンとKOS-MOSに武器を下げるように告げる。

 

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。両者とも武器を下ろせ。ここでの戦闘行為は危険すぎる。そこの質量兵器を持つ貴方たちもだ」

 

 そう言うと、クロノと言う管理局の執務官は二人のデバイスから手を放す。

 だが、守護者の二名は武器を降ろさず、突然現れたクロノに警戒を解かない。この隙に、アルフは離脱の姿勢を取り、脱出の機会を伺う。

 

「何をしてるんだ。早く武器を下ろせ」

 

「おい、坊主。いきなり現れて武器を下ろせだ? 何を言ってやがる、さっさとお家へ帰んな」

 

「抵抗する気か? それなら、質量兵器所持の疑いで容赦はしないぞ」

 

「へっ、いっちょまえな事を抜かす餓鬼だ。大人を舐めんじゃねぇぞ、クソガキ」

 

 武器を降ろさない二人に再度警告するクロノだが、シュンは聞かず、挑発を仕掛けて相手のペースを崩そうとする。

 これに乗らないようにするクロノであったが、隙を見付けたフェイト達が離脱を始める。

 

「フェイト、一旦引くよ!」

 

「分かってる!」

 

「援護します!」

 

 既にジュエルシードはKOS-MOSのおかげで回収できたため、なのは等と戦う必要は無かった。それに管理局となれば、逃げる必要がある。ここで捕まるわけには行かないのだ。

 これを援護する為、KOS-MOSは煙幕手榴弾を投げ、クロノの視界を封じようとする。

 

「待って、フェイトちゃん!」

 

 投げ込まれた手榴弾から煙が噴き出す中、フェイトを見逃さなかったなのはは呼び止めたが、彼女は聞かない。

 

「逃がして溜まるか!」

 

 一方でクロノは、自分が得意とする捕縛魔法でフェイトを捕まえようとしたが、突然の如く現れた者達に妨害された。

 

「な、何者だ!? お前たちは!」

 

「来やがったか…!」

 

 クロノがその人物らに対して問えば、彼らを知るシュンはついに来たかと得物であるスレイブを手に取って構える。

 乱入してきた者達は、アービターを始めるサンヘイリと呼ばれる宇宙人の部隊と、一人で断っている暗殺部隊の指揮官である。

 

「ほぅ、小童が一人増えたか…まぁ良い。あの大剣の男の相手は私がする。暗殺対象と他は貴様のグオノーシスとやらにやらせておけ」

 

 バリアジャケットを纏い、大剣を構えて戦闘態勢を取るシュンを見付けたアービターは、二振りのエナジーソードを起動し、速攻で彼に斬り掛かった。

 

「ぬぅ、貴様。また勝手なことを…! だが、足止めしてくれるのは好都合! それにグノーシスと呼ばれる兵器もある! 今度こそ予定通りに始末させて貰うぞ! 行けぃ!!」

 

 このアービターの勝手な行動に怒りを見せる指揮官だが、厄介なシュンを止めてくれるのはありがたいので、自分は自分で新たに投入した新戦力であるグノーシスを、火損の戦力であるサンヘイリ、エリートたちと共に暗殺対象であるなのはとフェイトにぶつけた。

 

「いきなり現れて、予定通りだと!? 次元犯罪者共め! お前たちは一人残らず逮捕だ!!」

 

 いきなり現れたネオ・ムガルに対し、彼らの事を全く知らないクロノは怒ったのか、一番槍として向かって来たエリートを打ち倒して、後続の三名を捕縛魔法で拘束する。

 

「う、動けん! なんだこれは!?」

 

「僕の自慢の捕縛魔法だ。何所の世界の住人かは知らないが、君たちにも来てもらおう! そして半透明な君にも!」

 

 一気に四名のエリートの戦闘力を奪ったクロノは、半透明の存在であるグノーシスと呼ばれる生物に向けて同じ捕縛魔法を掛けたが、その生物たちは拘束できず、すり抜けるだけだ。

 

「拘束が出来ない!? 一体どんな魔法を…!?」

 

「クックック、慌てているな。その半透明の化け物共は、別の世界の高度文明を恐怖の底に叩き込んだ化け物共だ! 特別な兵装が無い限り、そいつ等を倒すことは出来んぞ! 絶望しながら死ぬが良い!!」

 

 グノーシスに自分の捕縛魔法と攻撃が効かないことに、驚きの表情を見せるクロノに対し、暗殺部隊の指揮官は勝利を確信して高笑いを始める。

 

「見えない化け物!? 悪霊か! だったら!」

 

「前にも言ったが、貴様の相手はこの私だ!!」

 

 そんな半透明な化け物と戦うことになったクロノを救おうと、シュンはアービターとの斬り合いを止めて助けに行こうとしたが、目前のエリートが許すはずも無く、その場に抑え付けられる。

 

「さぁ、絶望しながら死ねぇ!!」

 

 狂気染みた笑みを浮かべながら、グノーシスに恐れおののくなのはやフェイト、クロノらを見て告げる。グノーシスらは攻撃の際に一瞬だけ実体化するが、エリートがプラズマ弾を撃って邪魔しに来るので隙を突けない。逃げ遅れたフェイトもアルフも同様で、なのはらもグノーシスらに苦しめられていた。

 だが、KOS-MOSが対グノーシス用の人型兵器だとは彼は知らず、彼女が放った対応策で優勢は一気に崩れる。

 

「ヒルベルトエフェクト、発動!」

 

 謎のバイザーを装着したKOS-MOSが、半透明で幽霊な存在であるグノーシスの対応策、実体化させる装置を起動させれば、攻撃する際に一瞬だけ実体化するグノーシスを強制的に長時間実体化させることが可能だ。

 実体化したグノーシスには攻撃が普通に通るので、これでまともに戦える。

 破れかぶれになのはが放った魔弾が、一体のグノーシスを倒し、実体化したことを知らしめた。

 

「攻撃が通じた!?」

 

「な、何故実体化している!? 攻撃の時だけ実体化するんじゃなかったのか!?」

 

「残念ですが、私は対グノーシスの兵器です。彼らを実体化、いや、この空間に引き摺り出せる装置を持っております」

 

 突然、実体化して一方的にやられていくグノーシスらを見て、指揮官は混乱し始める。

 そんな指揮官に対し、KOS-MOSは自分がその対グノーシス用の兵器であると答えながら、周囲に居るグノーシスを兵装で始末して行く。

 

「フン、そんな物に頼るからだ!」

 

 指揮官が自慢の倒せない兵器と誇っていたグノーシスが、あっさりとやられていくのを見て、アービターは鼻で笑いながらシュンに連撃を入れ込む。

 長い時間を掛けて作り上げた作戦が、とても予想できない想定外の出来事で崩れ去ったことに、指揮官はその場で頭を抱えて嘆き始める。

 

「おのれぇ、どうして対グノーシス用の兵器が居るのだ!? 私の作戦は予定通りに行くはずだったのに、何故こうも行かぬのだ…!」

 

 指揮官はそう嘆いている間に、グノーシスの数もエリートの数は減って行く。

 なのはにフェイト、それにKOS-MOS、最初の乱入者であるクロノの活躍により、グノーシスは全滅。エリートも残り少なく、既に戦闘の継続は不可能であった。

 

「ちっ、これでは戦闘の続行は不可能か。撤退するぞ!」

 

 それをシュンと剣を交合わせながら確認したアービターは、致し方なく残りのエリートたちに撤退を命じ、相手を押して怯ませてから自分も撤退を始めた。

 

「おい、待て顎割れ野郎!」

 

「また勝負は預ける! だが、次は無いと思え!!」

 

「ま、待ってくれぇ!」

 

 相手に一太刀も浴びせられていないシュンは悔しいのか、呼び止めたが、アービターも悔しがっているのか、次は無いと答えて他のエリートたちと共に退却した。

 指揮官も置いて行かれると思ってか、自らも空を飛んで共に退却を始める。逃げる敵に対し、シュンは容赦なく左腕の防具に付けたボウガンで追撃弾を放つが、敵の撤退の際の攻撃で妨害される。

 

「今です、フェイトにアルフ! この隙に乗じて撤退しましょう!」

 

「お、おい! 待て! うわっ!?」

 

 KOS-MOSの提案を無言で呼んだフェイトとアルフは、ネオ・ムガルの撤退に乗じてアジトへと退いた。これを追おうとするクロノであるが、撤退の際にエリートらが放ったプラズマ弾の弾幕を受けて追跡を断念させられる。

 一発も被弾せずに無事で済んだ物の、フェイト等とネオ・ムガルには逃れられてしまう。

 

「逃げられたか…!」

 

 逃げて行く双方を見て、クロノは悔しがる。その隙に、シュンはなのはとユーノに逃げるようにハンドサインで指示を出したが、捕縛魔法が得意な彼からは逃れることは出来ない。

 

「待て、君たちだけには来てもらおう。その大剣の男にも」

 

 気付かれたなのはとユーノはその場に固まったが、シュンは目前の少年執務官に対し抵抗の意思を見せた。そんなシュンに対し、クロノは得意の捕縛魔法で拘束する。

 

「この餓鬼…!」

 

「この男に対してはこうしなければならないが、君たちには抵抗しない限り拘束して連れて行くつもりは無い。変な気は起こさないことだ」

 

「わ、分かりました…」

 

「よろしい。では、行こうか」

 

 全身を捕縛魔法で縛られたシュンは暴れ続けるが、鎖は固くて解けない。

 そんなシュンを見せしめにクロノは、抵抗の意思を見せない二人に言いながら同行を要請した。

 この要求に、なのはとユーノは首を縦に振って動向に応じ、クロノらの管理局の現地派遣部隊の本部へと向かった。

 

 

 

 それから数十分後、シュンとなのはの姿は、クロノら管理局の派遣部隊の移動本部として使用されている次元航行艦アースラの艦内にあった。

 先頭を歩くクロノを筆頭になのはが続き、最後尾にはバリアジャケットを解除され、両手を拘束されて両脇に武装局員で固められたシュンが続く。

 

「不服そうだな」

 

「当たり前だ。餓鬼にお縄になった挙句、両脇に馬鹿たれ二名を付かされてる。俺だけ拷問部屋にでも連れて行くつもりか?」

 

 最後尾に居るシュンに言葉を投げ掛けてみれば、自分を拘束したクロノに不満を撒き散らし、自分だけ拷問部屋に連れて行くのかと問い返す。

 

「拷問だって? 僕たち管理局は拷問なんてしない。人権を尊重している」

 

「けっ、どうだかな…」

 

 拷問部屋と問うた時に、クロノはそんな物は存在しないと答えたが、今の時代の二年後に発生する管理局とワルキューレの戦争を知るシュンは、鼻で笑う。

 何故なら、時空管理局も拷問や捕虜の虐待を行っていたことを知っているからだ。

 だが、二年後に起こる戦争なので、今の執務官であるクロノと後に管理局に入るなのはとフェイトは知る由も無い。もちろん、ワルキューレとの戦争に勝っても、連邦軍や同盟軍に蹂躙され、他の勢力と共にワルキューレの傘下に加わることだって知らない。

 そんな未来を知るシュンはまだ子供なクロノの心の中で嘲笑いつつ、脱出の手段を考える。

 

「なのは! 無事かい!?」

 

「えっ? 誰…?」

 

「僕だよ、ユーノだよ!」

 

 その時に、フェレットから人の状態へと戻ったユーノが一同に駆け寄って来た。

 だが、なのはは彼がそのフェレットから元の状態へと戻ったユーノだとは知らず、何者であるかどうかを問う。

 そんななのはに代わり、クロノはユーノがフェレットになっていた理由を答える。

 

「彼は魔力消費を抑えるために、動物の状態になっていたのさ」

 

「うん…それもあるけど、フェレットの状態なら君の家族には迷惑は掛けないと思って…その…最初には言ったんだよ…でも…」

 

「えっ? えぇぇ!?」

 

「その様子だと、一緒に風呂に入っちまったようだな」

 

「う、うぅ…ごめんなさい」

 

 クロノの答えを聞いたなのはは、ユーノがフェレットでは無く、人の子で男の子であったことを知れば、風呂場の事を思い出し、顔を真っ赤にして恥ずかしながら声を上げた。

 この様子を見ていたシュンは、なのはが恥ずかしがっている理由を直ぐに当て、それを口にしてからかう。それを知ってユーノは顔を赤くしながらなのはに謝る。

 

「さて、お喋りはここまでだ。この船の艦長がこの先の部屋で待っている」

 

 一同に対してクロノが静かにするように言えば、なのはとユーノは初めて会う管理局の次元航行艦の艦長に対して緊張を抱く。シュンは何も緊張しておらず、管理局が禁ずる質量兵器を多数所持していることに対する問いが面倒だと思うばかりであった。

 扉が開かれれば、そこに艦長と思われる緑色の長髪を持つうら若き美女が姿を現す。

 

「艦長、来てもらいました」

 

「クロノ、ご苦労様。そしてこんにちは。私は時空管理局提督リンディ・ハラオウン。名前で分かると思うけど、クロノの母親ね。そこで拘束されている人も含めてよろしく。面識のない人が居るから、取り敢えず、自己紹介をして貰うわね。」

 

 うら若き美女が自己紹介をすれば、彼女の息子であるクロノは顔を赤くして恥ずかしがる。目前に拘束されているとはいえ、厄介な奴がいるからだ。その厄介な奴ことシュンは、直ぐに反応した。

 

「あの美人の姉ちゃんがお前の母ちゃんだって? お前、ママと同伴かよ! こいつは傑作だぜ!」

 

「この子、まだ執務官となって日が浅いから。ちょっと心配なのよ」

 

「だろうな。ちょっと挑発するだけで、直ぐに反応してきたぜ」

 

「か、母さん、じゃなくて艦長! からかわないでください!」

 

「ごめんなさいね、クロノ。じゃあ、貴方にお願いするわね」

 

 直ぐに反応してからかい始めるシュンに、それにリンディが応えてしまったので、クロノが注意する。これにリンディは謝りながら、シュンに少しばかりの威圧感を含めて何者かを問う。

 

「バートル、ただのバートル」

 

「嘘ね。貴方の本当の名前、あるでしょ?」

 

 この時代における自分の偽名で答えたシュンだが、リンディはそれを偽名とすぐに見破る。

 顔に似合わず鋭い洞察力と観察力を持つリンディに恐れ入ったシュンは、これ以上の誤魔化しは無意味と判断して、本当の名前を告げた。

 

「顔に似合わねぇほど鋭い母ちゃんだ。瀬戸シュンだ。信じられないが、神か悪魔か分からない黒目野郎にそこの嬢ちゃん守れと言われてやってる。装備については、そいつが用意してくれたもんで、大剣も俺の物だ。返してくれ」

 

「日本人だったの…!?」

 

「それは無理な相談だ。あの馬鹿デカい大剣は質量兵器であり、それにロストギアに匹敵する物で、あのデバイスも同様だ。尚更に返す訳には行かない。本部に持って行って封印する」

 

 本当の名前を言えば、なのは等は驚いていた。

 その次にシュンはリンディに自分の大剣とデバイスを返すように言ったが、それにクロノは反対した。理由はスレイブの危険な魔力を秘めていることが分かり、ベルト型のデバイスも然り、時空管理局において使用禁止とされた物であるからだ。

 

「この餓鬼! 勝手なことを抜かしてんじゃねぇぞ!!」

 

 それを理由に自分の武器と装備が取り上げられるのを知って、クロノに掴み掛ろうとするが、両脇の武装局員に取り押さえられる。

 両腕を拘束されていようとも、自分の息子に危害を加えようとするシュンに対し、リンディは罪状を突き付けた。

 

「止めなさい。貴方は質量兵器と使用禁止デバイスの所持の罪状があるわ。管理局の法に従い、このまま貴方を拘束させて貰います」

 

「大人しく事件が解決するまで拘留室で大人しくしているんだな。もっとも、貴方の行く場所は時空管理局の留置所だが」

 

 リンディに続いてクロノがこれから連れて行く場所の事を告げれば、自分抜きでのネオ・ムガルとの戦闘をどうするのかを問う。

 

「ちっ、勝手に来て人をお縄にしやがって。俺抜きでネオ・ムガルの連中とやり合えるか疑問だぜ。お前らはあいつ等と戦えるのか?」

 

「どういうこと?」

 

「あの顎の割れた亜人の事だな? 僕たちの力を持ってすれば…」

 

 シュンから出された問いに、知らないリンディが問い返せば、その答えを知っているクロノが、エリートのことと分かってそれを口にする。

 この様子を、なのはとユーノは心配そうに見守るだけだ。

 先の戦闘の勝利を偶然が重なっての物と思っていないクロノは、シュン抜きでネオ・ムガルと戦えると強気で返す。

 

「止めときな、坊ちゃんよ。あの顎割れ野郎のボスは別格だ。お前らじゃ勝てねぇよ。それに幽霊のような連中に対しては運が良かっただけ。そいつ等に対しての対処法はあの碧い髪の姉ちゃんしか居ない。それも俺抜きだ。このなんとかシードの争奪戦、お前らの負け戦になっちまうぜ?」

 

 そんな少年執務官の強気の発言を否定するように、シュンは自分抜きではジュエルシード争奪戦は確実に管理局が負けることになると告げる。

 これにリンディは、少しシュン抜きでのジュエルシードの争奪戦の雲行きに不安を抱いたが、管理局の法と規定に則って、罪人であるシュンを拘束することに決める。

 

「貴方の言葉にはかなりの重みがあるわ。でも、犯罪者である貴方を野放しには出来ない。瀬戸シュンさん、管理局の規定に則り、貴方を拘束させて頂きます。この人を拘留室まで連行しなさい」

 

「…あくまで職務を全うするってか。けっ、随分とご立派なこって。どうなっても知らねぇぞ」

 

 その決断が大いに間違っていることと告げたが、リンディは聞かず、武装局員にシュンを艦内にある拘留室まで連れて行くように指示を出した。

 拘留室まで連行されようとした時に、なのはは頼まれて自分たちを守ってくれるシュンを連れて行かないようにせがむ。

 

「あの! その人は私達を守ってくれた人なんです! 連れて行かないでください!」

 

「乱暴ですが、僕たちの味方なんです! その人じゃ無ければあの次元犯罪者達には…!」

 

「駄目だ。この男は立派な次元犯罪者で、時空管理局の法律に則って裁かれるべき罪人だ。野放しにしては、今後に何をするか予想できない」

 

「ごめんなさいね、これは規定なの。貴方には命の恩人かもしれないけど、あの人は危険過ぎるわ。大丈夫、殺したりはしないわ」

 

 せがんだなのはだが、クロノとリンディは出来ない相談だと答える。

 理由は管理局の言うロストギアや使用厳禁な質量兵器、使用禁止のデバイスを使用しており、何が起こるか分からない。

 その為に、シュンをアースラに拘束しておく必要がある。

 シュンを解放できない理由をなのはやユーノに言えば、二人は彼抜きで戦うことにただならぬ不安を覚えた。

 

「…これは少々酷いことをしてしまったようだ。あれで良かったのか」

 

 二人の不安な表情を見て、クロノはシュンの拘束が正しかったのかどうか、自分の判断を疑い始めた。

 それからシュンを抜きに、なのはとユーノに現地戦力としての交渉が行われた。

 民間人である彼女らを、危険なロストギアであるジュエルシード集めに協力させるのに反対なクロノであったが、リンディが出した一定の条件を呑んでなのは等の協力を容認する。

 

 こうして、シュンが抜けた代わりに、頼りになる管理局の協力を得られたなのは等は、フェイト等とのジュエルシード争奪戦を再開する。

 この時に、なのははシュン抜きでのネオ・ムガルとの戦いに不安を覚えていたが、強大な第三勢力が現れないことを祈りつつ、フェイトとアルフとの説得とジュエルシード集めに奮闘した。

 だが、シュンがこのまま黙って拘留室に居るわけが無い。

 拘留室の中で彼は、自分の装備をアースラからの脱出を行うべく、計画を練った。

 

 

 

「クソッ、管理局が介入してくるなんて…!」

 

 あの場所からの逃亡に成功したフェイト達は、アジトまで避難することに成功したが、自分等が恐れていた事態、管理局の介入が起こってしまった。

 これにアルフは、八つ当たりに壁に向けて拳を打ち付ける。

 苛立つアルフに対し、KOS-MOSは管理局の介入が以下に、自分等に取ってなぜ不利なのかを問う。

 

「それほどに管理局の介入が、私達に取って不利な状況ですか?」

 

「当たり前だ! 奴らに取っちゃ、私たちは次元犯罪者なのさ! あんたが幾ら強くたって連中に勝てるかどうか分からない! ジュエルシードもあいつ等が全部持っていっちまう! ここも見付かるのも時間の問題だろうね…!」

 

 KOS-MOSからの問いに、アルフは苛立ちながら答えれば、碧い髪の美しい女性アンドロイドは管理局の介入がどれほどにこちらの陣営に不利になるかを計算した。

 

「計算終了、彼らの装備に人員を含め、こちらがより多くのジュエルシードの獲得はほぼ不可能と断定。なのはを初めとする者達が、管理局の派遣部隊に現地協力者として加わると、0パーセントに近い確率で私達が敗北します。投降を進めますが…」

 

 計算して自分等に勝ち目が無い事を告げ、降伏を進めたが、母に認められたいフェイトはその提案を却下した。

 

「…駄目! ジュエルシード集めは母さんの悲願なんだ…! それを諦める事なんて出来ない…!」

 

「フェイト…!」

 

「それは、プレシアからの暴力を恐れての事ですか?」

 

「っ!?」

 

 ネオ・ムガルの襲撃のみならず、管理局の介入が起こったとしても、頑なに母から命じられたジュエルシード集めを止めないフェイトに対し、アルフは心配の声を上げたが、これに無情にもKOS-MOSはプレシアの暴力を恐れての事かと問う。

 この問いに、アルフが怒りを露わにする中、フェイトは直ぐにやや感情を露わにしながら違うと答えた。

 

「違う! 母さんが怖いんじゃないんだ…アンドロイドのコスモスさんには、人の気持ちまでは分からないよ…」

 

 答えたフェイトは、表情を暗くしながら自分の寝床がある場所へと向かう。

 そんなフェイトの様子を見たKOS-MOSは、自分は彼女を傷付ける質問をしたのかとアルフに問う。

 

「アルフ、私は彼女を傷付ける質問をしましたか?」

 

「あぁ! 思いっ切り傷穴を広げる質問をね!」

 

 そんな問いをしたKOS-MOSに、はっきりと傷付けたと返してから、アルフもこの場を後にした。

 一人その場に残されたKOS-MOSは、赤い瞳を青い瞳に変えて一人呟く。

 

「私も、まだ彼女たちの事を分かってないわね」

 

 そう一言呟けば、彼女の瞳は赤い瞳へと戻った。




次回のネタバレ、脱出ぅ!(若本風に)

まぁ、シュンは管理局に取って危険物の塊ですからね。それに呪われた武器とか魔力を吸うデバイス持ってるし。
こんな奴、リンディとクロノが放っておくわけが無い(断言

と、言う事で、次回は鉄パイプ持って艦内の局員をスレイ! なっ、わけには行かない。
スレイするのはネオ・ムガルの兵隊と、甦らされたモヒカンと悪党共だけなんで、しくよろ。

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