復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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皆の者! あの技が出るぞ!!

イメージ戦闘BGMhttps://www.youtube.com/watch?v=2wVV77G6a7Y


湿った大木

「フェイト、貴方の母、プレシア・テスタロッサへのお見上げはそれだけで良いですか?」

 

「うん、母さんのどんなものが欲しいか、これしか浮かばないから」

 

 シュンが相手のなのはの護衛に付いたころ、同じ護衛対象のフェイトについているKOS-MOSは、ジュエルシード集めを命じた母親に見上げを持参して報告に向かうフェイトに対し、見上げ物のケーキだけで良いかと問う。

 これにフェイトはこれしか思いつかないと言って、開いた門へと人間状態のアルフと共に入ろうとする。

 それを見送ろうとするKOS-MOSに、アルフは一緒に来るように伝える。

 

「あんたも来るんだよ。一応は、あいつにも知らせておかないとな」

 

「ですが、ここの見張りはどうしますか?」

 

「んなのは対策済みだ。さぁ」

 

「分かりました」

 

 これに応じたKOS-MOSは、同じく門の中へと入る。

 門に入った先は別空間であり、宮殿の内部の様子だった。壁や柱には様々な飾りが施されている。中々の出来だが、少し寂しい雰囲気が漂う。

 先を行くフェイトの後に続いて宮殿内を歩いていると、主の間と思われる部屋の前で、彼女は足を止めてアルフとKOS-MOSの方へ振り返る。

 

「アルフはここで待ってて。それとコスモスさん、貴方は私と一緒に。母さんに紹介するから」

 

「はい、フェイト」

 

 協力者とも言えるKOS-MOSを自分の母に紹介する為、フェイトはアルフに待つように言ってから主の間へと彼女と共に入った。この時、アルフは心配そうな表情を浮かべていたが、フェイトは気付いていない。

 主の間へと入ると、玉座に座るフェイトの母、プレシア・テスタロッサと思われる年配の女性が、娘と見ない顔の女性を見ていた。

 

「フェイト、その女は?」

 

「協力者です、母さん。名前はコスモスです」

 

「よろしくお願いします」

 

「そう。で、ジュエルシードはどれくらい集まったの?」

 

 玉座に座る母は、娘が連れて来た成人女性が誰なのかを問えば、フェイトは名前を言ってから紹介した。それに合わせ、KOS-MOSは挨拶を行う。

 娘が協力者と言って紹介した彼女を一目見たプレシアは、KOS-MOSをただの人間、それも異世界の技術で作られた人造人間だと見抜いたが、今はそんなことはどうでも良いのか、自分の代わりにジュエルシードを集めるフェイトにどれくらい集まったのかを問う。

 

「三つ、三つです。変な次元犯罪者達の邪魔があったけど、順調だと思います。それとお見上げも…」

 

 三つ集まったと嬉しそうに褒めてもらえると思って答えたフェイトであったが、褒めでは無く八つ当たりを浴びせられた。その衝撃で見上げ物であるケーキが散乱する。

 これは流石のKOS-MOSも、偽装モードである一般女性状態から、元のアンドロイド形態へと戻る。

 

「三つですって…? 貴方、それだけしか集められなかったの? それに変な次元犯罪者? そんな連中、早く始末しなさい。貴方なら出来るでしょ、フェイト?」

 

「はい…母さん…でも、そいつ等は質量兵器も…」

 

「黙りなさい! その程度の連中も倒せないの、貴方は? 罰としてお仕置きを…」

 

 三つしか集まらなかったことに苛立ったプレシアは、良いわけも聞かず、鞭を召喚してそれでフェイトを打とうとしたが、鞭の縄はKOS-MOSに掴まれる。

 

「これは児童虐待です。直ちに虐待行為を止めなければ、貴女に向けて攻撃します」

 

「新米が偉そうなことを…! まぁ、良いわ。貴方もフェイトと協力してジュエルシード集めに励みなさい。実力はそれで分かったわ」

 

「善処しましょう」

 

 鞭打ちを止められたプレシアは、少し苛立ちながらもKOS-MOSの実力を把握し、鞭を消してからフェイト共にジュエルシード集めに励むように命令した。

 これに何の感情も無くKOS-MOSは答えてから、無理に親のためになろうとして、立ち上がるフェイトを抱えながら主の間を後にする。

 主の間から出た後、入ることは許されないアルフは直ぐにフェイトの元へ近寄り、治癒魔法を唱えながら無事を問う。

 

「大丈夫かい、フェイト。あいつ、怒鳴り付けるだけじゃなくて手まで上げるなんて…!」

 

「うん、大丈夫だよアルフ。悪いのは母さんの期待には応えられない私だから…」

 

 治療されながらも親であるプレシアのことを悪く思わないフェイトは、自分が悪いからそうなったと答える。

 その親に手を挙げられながらも自分を責めるフェイトに対し、KOS-MOSはプレシアが虐待に及んだ原因をアルフに問う。

 

「何か、彼女が自分の娘であるフェイトに虐待行員に及ぶ原因は分かりませんか?」

 

「そんなの知ってたらフェイトを連れて逃げ出してるさ。そう言えば、数週間かそこらで急に態度が変わったってフェイトに聞いたね。理由は良く分からないけど…」

 

 問われたアルフは理由が分かればフェイトを連れて逃げ出していると答えれば、プレシアが娘に対して態度を変えた時期を思い出す。

 

「…推測ですが、彼女はクローン技術に関する何かを研究していると予想できます」

 

「クローン技術? そう言えば、あの婆はそう言うのを研究していた気が…」

 

「クローンって何…?」

 

「この話は止しましょう。フェイトの傷が癒えた後、ジュエルシードの探索を始めましょう」

 

 虐待に発展しようとした時期が分かった時、KOS-MOSは原因をクローン技術に関する物と推測したが、その話がフェイトにも聞こえていたのか、余り本人の前には話すのは止め、彼女の傷を癒す為にも拠点へと帰る事にした。

 

 

 

 フェイトがアルフやKOS-MOS等と共に拠点に戻って傷を癒している頃、シュンは喫茶店「翠屋」で、アウトサイダーが用意した偽の戸籍であるモンゴル人のバートルとして働いていた。

 顔は整った顔立ちながらも、大柄で目付きが怖すぎるため、面には出されない。

 シュンことバートルの主な仕事は、体格を生かした力仕事だ。接客などは店主である士郎が務め、店の看板メニューであるケーキの類はパティシエの店の経理も務める妻の桃子が担当している。

 そう店の裏で力仕事をする中、なのはが学校での友達で親友でもあるアリサ・バニングと、月村すずかを連れて翠屋に来た。

 顔を合わせているなのはが来たことに気付いたシュンは、彼女らの目を合わせまいと、気付かないふりをする。

 

「あれ?」

 

「どうしたの、なのは?」

 

「いや、何処かで見た人が居るなと思って」

 

「へぇ、なのはちゃんもそう思うところあるんだ」

 

 何とかなのはに気付かれずに済んだシュンは、ホッと胸をなでおろして仕事を続けた。

 それから数十分ほど親の店でくつろいだ後、三人はそれぞれの家路につき始めた。なのはは家のある方へと帰る。

 

「じゃあ、また明日ね、アリサちゃん、すずかちゃん」

 

「うん、また明日」

 

「じゃあね、なのはちゃん」

 

 三人は挨拶を交わした後に、家路へと着いた。

 それと同時にシュンはやっと帰ったと思って一息つこうとしたが、遂になのはに見付かってしまう。

 

「あれ、筋肉のお兄さん? こんな所で何しているの?」

 

「見付かっちまったか…仕事してんだよ、仕事を」

 

 見付かったシュンは良いわけもせず、聞いて来たなのはにただ仕事だけと答え、再会しようとしたが、店主である士郎に呼ばれる。

 

『バートル! ちょっと来てくれ!』

 

「うっす! そんじゃ呼ばれてるんでな。行くぜ」

 

「えっ、お兄さんは外国人なの?」

 

「いや、あぁ…後で話すから帰ってろ」

 

 自分の父がシュンの事をバートルと呼んだのか、なのはは外国人なのかと問えば、彼は後で話すと言って店内へと入った。

 

「バートルって…モンゴルの名前だっけ…? あの人モンゴル人なんだ」

 

 バートルと言う名前に、なのははテレビで得た知識を思い出して、シュンの事を完璧にモンゴル人だと思い込み始めた。

 

 

 

 それから翌日、ジュエルシードの魔力反応を探知したなのはとユーノは、直ぐに封印しようと現場へ急行した。

 休日の昼間に出て行く二人を見ていた非番のシュンは、ここ暫く動きが無いネオ・ムガルより彼女らを守るために後を付ける。

 彼女らは急を要するのか、バリアジャケットを身に纏って空を飛んで現場へと向かっていた。それに追い付くためか、シュンもバリアジャケットを纏って同じく空を飛んで後を追う。

 これには流石に気付かれたのか、なのはは後ろを振り返り、物騒な甲冑と黒いマントを身に着けて付いてくるシュンに声を掛ける。

 

「…バートルさん?」

 

「バートル? おいおい、そりゃあこの世界の偽名だ」

 

「偽名? じゃあ、本当の名前は…?」

 

「そいつは言えねぇな。兎に角、ジュエルなんたらが無作為に生物の願いを叶えちまって大変なんだろ? ネオ・ムガルが作った罠かもしれねぇから同伴させてもらうぜ」

 

 偽名で問うてくるなのはに対し、違う事を告げたが、本名は告げなかった。

 これにユーノは怪しんだが、なのはと自分だけではネオ・ムガルの襲撃には耐えられそうも無いので、仕方なくシュンの同行を条件付けで許す。

 

「仕方ない。あの連中が襲ってこられたら厄介だ、同行を許すよ。でも、ジュエルシードの横取りは禁止だ」

 

「ネズ公の癖に癪な奴だ。まぁ、ロリコン共は俺に任せとけ」

 

「ユーノ君はネズミじゃないよ」

 

 条件付けと言う事に、シュンは少しイラついたが、その条件を呑んでなのは等の後に続いた。友達のユーノの事をネズミ扱いするシュンに、怒りを覚えたなのはだが、ネオ・ムガル相手に自分ではどうしようもないため、頼るしかないと思って怒りを抑える。

 

「さぁ、ここだ! もう発動してしまったようだ。これ以上、被害が大きくならないうちに早く封印しよう。行くよ、なのは!」

 

「うん! その、あぁーと、もう、バートルさんで良いや。バートルさん、悪党の人達が来たらお願いします!」

 

「まぁ、本名を知られるのはマシだな。行ってこい、俺はここで悪党退治だ」

 

 現場へと到着したが、ジュエルシードは既に発動してしまっており、暴走が始まっていた。

 周囲への被害が拡大する前に、ジュエルシードを封印する為、なのは等は急いでその根源へと向かう。行く前に、なのははシュンのこの世界における偽名で呼ぶことにし、そう呼んで頼んでから封印へと向かった。

 これにシュンは本名で呼ばれるのはマシと考え、この場は自分に任せて行ってくるように告げた。

 二人が封印に向かったのを確認してから、シュンは縮小状態の大剣を懐から出し、それを元の大きさに戻して、剣先を地面に突き刺して自分が倒すべき敵が来るのを待つ。

 

『ヒャッハー! 九歳の餓鬼を殺すなんて赤子の手をひねるよりも楽だぜ!』

 

 背後から戦闘音を聞きながら待っていると、前方より無法者の声とバイクかバギーの走行音が聞こえて来た。

 数は数台以上であり、バギーが多い事から数十名の無法者が来ていると分かる。

 音を聞いて分かったシュンは、大剣を地面から引き抜き、左腕のガントレットにプラズマクロスボウを装着し、集団で向かって来る敵に備えた。

 程なく敵の集団はシュンの目前にまで迫り、待ち構える彼を見るなり車両に乗っている無法者らは様々な凶器を投げ付け、銃を持つ者は即座に撃つ。

 

「来たか…さぁ、お仕事と行きますか!」

 

 飛んでくる銃弾をバリアジャケットで受けながら、シュンは左腕の防具に着けてあるクロスボウを連射し始めた。

 一度にプラズマ弾を発射する音が鳴り始めれば、一瞬にして戦闘の車両集団はスクラップとなり、乗っていた無法者らは細切れとなって肉塊となる。

 撃ち続けること数秒ほど、先頭の者達を囮に左右に無法者らが乗る車両が展開し、そこから乗っている無法者らが次々と飛び降り、銃を撃ちながら突っ込み、様々な凶器を片手に雄叫びを上げながらシュンに襲い掛かる。

 これにシュンは、ボウガンでの攻撃を止め、地面に突き刺していた大剣を引き抜き、一番手として棍棒を振り下ろして来た無法者の顔面に左手で拳を打ち込み、続けて大剣でバラバラにする。

 

「このクソやが!?」

 

 仲間を無残に殺されて、怒りに燃える無法者が手にしている至近距離でライフルを撃ち込もうとしたが、撃つ前に大剣を頭に叩き込まれ、両目の眼球を飛び出させながら死んだ。

 肉が固まる前に素早く引き抜き、背後より襲い掛かる三人を纏めて大剣で叩き斬り、次の集団を同じく纏めて排除する。

 

「な、なんて奴だぁ…!」

 

「畜生! これでも食らぇ!」

 

 数秒ほどで数十人の仲間が肉塊にされたのを見て無法者らは怯えるが、一人の無法者はとっておきの得物、RPG-7と言うソ連の携帯式ロケットランチャーを持ち出し、安全装置を外してからシュンに撃ち込もうとした。

 だが、撃つ前に気付かれ、56式自動歩槍を撃ちながら近付いてくるモヒカン男に大剣を突き刺してから、彼が手放したそのライフルを手に取り、ロケット砲を撃とうとしている無法者を撃ち殺す。撃たれた射手はロケット砲を真下に向けてから倒れ、爆風で他の仲間も道連れにして死ぬ。

 

「勝てるわけがねぇ! 逃げろぉ!!」

 

 早くも大半の仲間を殺された無法者らは、武器や車両を捨てて逃げ出し始める。

 そんな戦意が損失して背中を見せながら逃げる無法者らに対し、シュンは左腕の防具に付けたボウガンを放ち、容赦なく殺していく。

 肉が裂ける音と断末魔が聞こえなくなるまで撃つと、デバイスの機能を使って生命反応が無いかを調べる。数秒後に、不気味な声色のロシア語での返答が来た。

 

『生きてる奴は一人も居ない。お前は虐殺者だ』

 

「さて、この調子でやって行くか」

 

 揶揄を含めた返答であったが、シュンは気にすることなくなのは等が上手くやっているかどうかを確かめようとボウガンを外してから元の位置に戻し、落ちている56式自動歩槍の弾倉を一つ懐に入れてから見に行こうとする。

 その時に、ユーノからの助けを求める念話がシュンの脳内に響いて来た。

 

『バートルさん! 助けて! なのはが!』

 

「あっ? お前、なんで俺の脳内に入って来てんだ?」

 

『それは後で説明します! 今すぐに来て!!』

 

「よし、分かったイタチ。待ってろ」

 

 念話のことを知らないシュンは、どうやって念話をしてきたのかをユーノに問うが、説明している間が無いのか、急いで来てくれるように言えば、事の重大を即座に理解した彼は、空を飛んで現場へと急行した。

 

 

 

「おい、大丈夫か!?」

 

 急いで飛ばしたシュンは、現場へと到着すれば、木の根に掴まっているユーノを見付け、即座に大剣を振るって根を破壊して彼に無事を問う。

 これにユーノは、自分よりなのはを優先しろと、彼女が居る方向を見ながら告げる。

 

「僕の事は良い! なのはが! なのはが木の根に捕まってしまった!」

 

「そこでジッとしてろ。嬢ちゃんは俺が助ける!」

 

 ユーノを安全な場所へ置けば、彼の頼みを聞いてシュンは、空を飛んでなのはが居る方向へと飛んだ。

 直ぐに、太い根に掴まれたなのはの姿が見える。まだ幼さが残る少女では、長く持ちそうも無いだろう。そう判断したシュンは、急いで救出に向かう。

 向かっている最中に、シュンに気付いた奥に見える大木の化け物が太い根を彼に向けて放ってきたが、殆どが避けられるか、大剣で振り払われる。

 

「っ!?」

 

 だが、全てとは行かず、腹に一発の根の打撃を受けて失速する。

 止まった瞬間に、とどめの根が高速で飛んできたが、シュンは何とか持ち直して突き刺そうと迫る根を全て切り落とし、なのはの元へ急ぐ。

 この間にも無数の根が飛んでくるが、先の一撃で動きを読み切ったのか、それを避けつつ、時には邪魔になる根を落としながら進む。

 僅か数秒ほどで、なのはを絞め殺そうとする根まで到着。直ぐにシュンはその根を大剣で切り落し、彼女を解放した。

 

「ありがとうございます!」

 

 絞め殺そうとして来た根より開放されたなのはは、即座に安全圏まで退避し、自分を助けてくれたシュンに礼を告げる。

 

「そいつは良い。それより、火とか持ってないか? こいつは多分、火が必要だ」

 

「え、火って…? レイジングハート、炎とか出せる?」

 

『私は炎属性の魔法は使えません。ですが、火薬があれば、射撃魔法で着火させることが可能です』

 

「ほぅ、持って来て良かったな」

 

 謝礼は良いと告げれば、なのはに炎属性の魔法を出せるかどうかを問う。

 だが、彼女の愛杖、レイジングハートは出せないと返すが、火薬さえあれば、射撃魔法で着火させられる可能性があると答えた。

 それを聞いてか、シュンは懐より無法者らの屍から出て来た突撃銃の弾倉を取り出し、ライフル弾を一つ親指で外した。

 

「それって、銃の…?」

 

「あぁ、弾丸だよ。中には火薬が詰まってる。こいつで、あの木の化け物を燃やすのさ。一つ勉強になっただろ?」

 

 テレビで見慣れた銃の弾倉を見たなのはは、それが銃の弾倉であると問えば、シュンは笑みを浮かべながら勉強になっただろと言いながら弾丸の部分を外し、実包の中に詰まっている火薬を確認する。

 シュンのプラズマ型のボウガンでも可能そうだが、レイジングハートの威力が絶大であるため、彼は後者の方を選んだ。

 

「そんでこれが火薬だ。銃はこの火薬を収めてる薬莢のケツの部分をぶっ叩いて尖ったこいつを標的まで飛ばすんだ」

 

『言葉が汚いです』

 

「え? 汚いって…?」

 

 シュンが銃弾の発射される仕組みをなのはにレクチャーしていたが、木の化け物はそれを待たず、攻撃を再開して来る。

 それを避けたシュンは、同じく避けたなのはに先に火薬を撒きに行くと告げる。

 

「一々煩い奴だ。とっ! 勉強会はここまでだ! 俺が先攻して火薬をあいつに振りまいてくる! お前は俺が指定した場所に向かって撃てば良い! それとあんまり前に出るな!」

 

「あっ、はい! 上手くやれるかな…?」

 

 手短に済ませたシュンの指示に従い、なのはは彼が指定された場所に火薬を撒いて指示を出すのを、安全圏より待った。

 一方で十分な数の弾丸より火薬を抜いたシュンは、それを偶然持っていた小さな布の袋に抜き取った火薬を全て入れ込み、根を使って猛威を振るう木の化け物に突撃していた。

 絶え間なく根が次々と目前に現れ、尖った先で突き刺そうとして来るが、それを全て読み取り、大剣で切り落しながら標的に向かって進む。

 根を切り落しながら進めば、化け物本体に取り付くことに成功した。直ぐにシュンは間近まで接近し、火薬が詰まった袋を思いっ切り投げ付け、袋が衝撃で潰れて中の火薬を付着させたのを確認してから、なのはに合図となる物を知らせる。

 それは、ボウガンのプラズマ弾の掃射であった。発射されたプラズマ弾は火薬の部分に当たり、少量の爆発を起こすが、木の化け物に届かず、空中を待っている火薬であるため、着火までには至らない。

 

「っ!? あれだ!」

 

 その銃声と少しも得ている部分を確認したなのはは、直ぐにカノンモードにしたレイジングハートの砲口から、強力な魔法のビームを標的に向けて放つ。

 放たれたビームは標的に向かってレーザーのように当たり、ビームを受けた火薬は爆発を起こした。木に付着した火薬が爆発を起こして火が広がり、燃えるが、木の化け物は湿った所為なのか、あまり燃え広がらない。

 

「そんな!?」

 

 余り燃え広がらなかった為、なのはは失敗かと思ったが、シュンは諦めておらず、燃えた部分に向けて大剣の刃を思いっ切りの力を込めて振り下ろした。

 

「湿ってて薪には使えねぇな!!」

 

 そう言ってから燃えている部分に巨大な刃を振り下ろせば、意図も容易くその部分は砕ける。

 この部分に集中すれば、木の化け物を倒すことが出来ると確信したシュンは、次の対策法を考えるなのはに向けて、先の一撃をもう一度放つように叫んだ。

 

「今だ! ぶっ放せ!!」

 

 それが聞こえたなのはは即座に杖を構え、砲口をシュンが潰した部分に向ける。

 

「さっきの倍、それも全力全開! 思いっ切り力を込めて…!」

 

 先の更に倍、それも最大火力の魔力砲を放つため、自分の全力を込めて砲口に魔法を溜め込み、十分な量まで溜まれば、叫びながら標的に向けてその強大な魔撃砲の名を叫びながら放った。

 

「スターライト、ブレイカァァァ!!」

 

 彼女が叫んだ瞬間にその強大な魔弾は標的に向け、一直線で飛んで行く。

 

「うわっ!? やべぇ!!」

 

 これには撃てと言った本人であるシュンも驚きであり、放たれる強大な魔力から逃れるため、慌てて逃げ始める。

 放たれた巨大な魔弾は狙った箇所に命中し、一撃で木の化け物を倒してしまう。

 その威力は、先ほどの火薬による爆発と着火が不要な程の物だ。思わぬ彼女の一撃に、シュンも放った本人も驚いていたが、長年に戦場を渡って来た彼は、即座に「スターライトブレイカー」と呼ばれるなのはの強力な一撃の弱点を見抜いた。

 

「溜め込んでる間は無防備で、疲れてやがるな」

 

 シュンの言う通り、スターライトブレイカーはチャージに時間の掛かる上、放った後のなのははかなりの疲労していた。見守るしか出来ないユーノも驚いていた様子だが、なのはの様子を見て直ぐに彼女の元へ急ぐ。

 今の自分の最大火力の技を放ったなのはは、息を切らしながらもレイジングハートと反省会を行う。

 

「やっぱり、ぶっつけ本番は無理みたい…ちゃんと練習して物にしなくちゃ」

 

『その通り、日々の鍛錬が大事です。チャージの時間も掛かり、魔力の消費も激しいです。それらを克服してこの技を完璧な物にしましょう』

 

「うん。それと威力ももっと高くしなくちゃね」

 

 どうやらスターライトブレイカーは、まだ完璧では無いらしい。あれで十分な筈だが、チャージの時間と魔力消費量を出来る限り抑えること、威力の増大が課題なようだ。

 そのやりとりを聞いていたシュンは、完璧なった時のスターライトブレイカーの威力を創造するだけで、なのはが末恐ろしくなる。

 

「あれで、完璧じゃねぇのかよ。たく、とんだ魔砲少女だぜ」

 

 そうワルキューレが勝手に付けた未来のなのはの異名を言いながら、シュンは朽ち果てて行く木の化け物の残骸からジュエルシードを取り出し、少し魔力をベルトに補充してから彼女の元へと持って行った。




ベルセルクのガッツさんの名言と、スターライトブレイカー(未完成)が登場。

スターライトブレイカー(未完成)の威力は、劇場版リリカルなのは第一期の三分の一程度と仮定しております。

まぁ、十分すぎる威力ですが、なのはさん(いや、さん付けは十代後半からや)もといなのはちゃんとレイジングハートは物足りないようで、劇場版並の威力を求めています。

取り敢えず、グダグダとジュエルシード集めをやってる暇は無いので、次回辺りからはクロノ君を出す予定。
それと、ネオ・ムガルがまた来るかも?

お楽しみに。

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