復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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今週のネタバレ「俺がデストロンのニューリーダーだ!」


それぞれの拠点。

 翌日、フェイトの護衛を行うために、根城に居候するKOS-MOSとは違い、シュンは人里離れた場所で野宿していた。

 時間は早朝、早く目覚めてしまったシュンは、欠伸をしながら目覚め、日課である筋トレを行い、筋力を保つ。それから喉を潤そうとしたが、肝心の水を手に入れることを忘れてしまったようで、街で盗みに行くわけには行かず、アウトサイダーを呼び出す。

 

「おい! 滞在に対して俺はどうすりゃあ良いんだ!? 見えてるんだろ!?」

 

 そう一人、誰も居ない場所で叫べば、彼は何所からともなく現れた。

 

「どうした、シュンよ?」

 

「ようやく出て来たか。ここで叫んでたら、頭のおかしい奴と思われちまう。用件はあれだ、滞在する場所とかくれねぇか?」

 

 シュンは現れたアウトサイダーに、滞在場所を用意するように告げた。

 これにアウトサイダーは、滞在費は用意できるが、場所までの確保は出来ないと返す。

 

「聞かなかったので、用意せずには居たが…ふむ、考えていなかったな。滞在金は用意できるか、寝床は流石に用意出来ん。何所か心当たりがあるのではないか? 例えば、護衛対象の家に世話になる。これなら、いつでも見守れるだろう」

 

「おい待て。てっことは、あの嬢ちゃんの家に厄介になれってことか? そりゃあ冗談キツイぜ」

 

「他にこれ以外の最善たる方法はあるか? いや、無いだろう。安心しろ、喫茶店を経営しているなのはの両親は、人手を欲しがっている。お前のような大男はさぞ受け入れる事だろう」

 

「ちっ、分かったよ。たくっ、顔から火が出そうだぜ」

 

 なのはの家に厄介になる。

 そう告げるアウトサイダーに対し、シュンは反対意見を述べたが、身近に守ることによってネオ・ムガルから彼女を守る方法は、思い付くだけでそれしかない。

 仕方なくシュンはアウトサイダーから出された案を呑み、身体中の土や葉を落としてから高町なのはが暮らしている住宅へと向かう。

 ちなみに、アウトサイダーからはある書類を手渡された。

 それは、なのはの両親が経営する喫茶店「翠屋(みどりや)」の求人募集が記載された書類だ。シュンはモンゴル人のバートルとして、この店でアルバイトとして働くことになる。

 これに彼は、自分がモンゴル人として潜入できるようにモンゴルの文化と言語を叩き込まれてきたことに驚いたが、アウトサイダーは神に近い存在で、それに自分が他人に話して無い事も彼は知っているので、仕方がないと思って諦める。

 

「で、服とかどうすんだ? こんな格好じゃ門前払いだぜ?」

 

「その点は私に任せろ。今、お前の服を新品の一般人が着る服装にしてやろう」

 

 服の事を思い出したボロボロの衣服を着ているシュンが、その衣服についてアウトサイダーにどうするかを問えば、彼が直ぐにシュンの服装をこの時期の一般男性が着ている新品の衣服へと変えた。靴も新しい物へと変わり、これで難なく怪しまれずに受け入れられることだろう。

 

「これでお前は一般の外国人労働者だ。高町なのはの両親とその息子や娘たちはお前を受け入れる事だろう。後の服はお前が稼いだ金で買ってくれ。お前の存在は、魔術に通じる高町なのはとその友人ユーノは誤魔化しきれないが」

 

「あいつ等は魔法を使えるからな。流石のあんたでもお手上げか。そんじゃま、お仕事と使ってないモンゴル語でも思い出すとすっか」

 

 服を新品に変えたアウトサイダーだが、魔法に通じているなのはとユーノは誤魔化しきれないと告げた。

 その忠告を受け入れたシュンは、この過去の世界での自分の務めを果たすべく、護衛対象の両親が経営する喫茶店へと向かった。

 

 

 

『なのは、ちょっとこの中息苦しくない?』

 

「ううん、大丈夫だよフェイトちゃん。レイジングハートがちゃんとサポートしてくれてるから」

 

『VF-1バルキリーの操縦サポートはお任せを』

 

 一方、ネオ・ムガルに過去の自分等が狙われているとは知らず、なのはとフェイトは、ワルキューレの制圧下にある世界で、可変戦闘機であるVF-1バルキリーに乗り込み、慣熟飛行を行っていた。

 あのアウトサイダーによって連れて行かれたシュンとの戦いより一日しか経っていないが、余り疲労感は見られず、こうしてスケジュールを難なく熟している。さほどはデバイスのサポートで操縦しているが。

 

 彼女らの乗っている可変戦闘機は、VF-25メサイアの大先輩とも言える初の主力可変戦闘機VF-1バルキリーだ。

 先行量産型可変戦闘機であるVF-0フェニックスが初であるが、敵側が同じ可変戦闘機を投入して慌てて実験型の無理やり実戦配備型に改造したので、性能は安定しない。故により実戦向きの本機が初とも言えよう。

 その性能の高さの余り、後継機が出来ても主力であり続けたが、更に性能も生存性も上がったVF-11サンダーボルトの登場により、現役の座を退いた。

 だが、強烈な印象があるのか、何度も改良を重ねて現行機ほどの性能に引き上げられている。

 ちなみに、彼女らが乗っている型は、AとJ、D、Sの四つ(本来はBやRもある)の内、バトロイド形態の際に頭部の両耳にレーザー砲が二門のJ型に搭乗している。

 

 何故、彼女たちがワルキューレの空軍に居るのかは、元の管理局で、空戦魔導士であったからだ。

 その理由だけで、なのはとフェイトはワルキューレ空軍に引き抜かれた。

 階級はなのはが一等空尉兼戦技教導官から空軍砲兵大尉、フェイトは執務官からなのはと同じ空軍大尉だ。執務官から執行官へと変わった。

 なのはは砲撃魔法を得意としているので砲兵とされ、フェイトは執務では弱いと思われたのか、執行官へと変えられている。

 彼女らは古巣の管理局がワルキューレとの戦争の際、仲間の八神はやてと守護騎士ヴォルケン・リッターらと共に、騎士や将兵らにかなり恐れられていた存在だが、管理局がかつて勝ったはずのワルキューレの吸収された際には、一部に反感を買いながらも受け入れられ、容姿の良さもあって、宣伝に利用されている。

 二人の主な仕事は、ワルキューレの後方を脅かすゲリラやテロリスト、それにネオ・ムガルの排除だ。

 仲間のはやて達もこれに協力し、連邦や同盟が支援する抵抗組織やネオ・ムガルにかなりの動揺を与えることに成功している。なのはとフェイト、あるいははやてかヴォルケン・リッターの一人が姿を見せるだけで、武器を捨てて逃げ出す者が居る程だ。

 対抗勢力も、暗殺しようと数々の企てを計画したが、ワルキューレの存在と彼女らが余りにも強過ぎて結局は失敗している。ネオ・ムガルは、今の彼女らは倒せないと判断してか、まだ魔力の扱い方が慣れてない過去に行って殺しに行っているが、シュンとKOS-MOSに妨害されて頓挫寸前にまで陥っている。

 

『編隊合流まで予定通りの時刻です』

 

『うん、バルディッシュ。ぶつからないように気を付けるね』

 

『サポートはお任せを』

 

「もうこんな時刻か…鳥には気を付けてね、レイジングハート」

 

『付近を飛んでいる鳥類は確認できません。ご安心を』

 

 話を戻し、二人が乗る二機のVF-1Jは同型機の編隊に合流しようとしていた。

 彼女らが飛んでいるのは渓谷地帯であり、少し脇見か操縦ミスをしただけで岩に激突して墜落する可能性がある。

 故に彼女らは細心の注意を払って、広い場所を飛んでいるVF-1の編隊に合流するのだ。安全な飛行ができるガウォーク形態になれば済むことだが、それでは度胸と操縦技量が付かないので、戦闘機形態のファイターのまま渓谷を進む。

 二人はそれぞれが保有するデバイスのサポートの元、訓練の賜物か、見事な編隊を組んでいるVF-1の集団に合流した。

 

『スターズにライトニング、少し遅いぞ。一分の遅れだ、どうした? 何処かに着陸してよろしくやってたか? はっはっは!』

 

「わわわ!? 私とフェイトちゃんはそんな関係じゃありません!」

 

『せ、セクハラです!』

 

『はっはっはっ! 冗談だ! お前たちは遅れていない。時間ピッタリだ!』

 

 先頭に立っているVF-1、それも中隊長やエース用に配備されるS型に搭乗した編隊の隊長に、遅れてやってきた理由を、痴話をやっていたと冗談半分に言われ、二人は顔を赤くして怒る。

 それに笑顔で答え、隊長は彼女らに対して遅れておらず、時間通りに来たと褒め称える。

 

「ワルキューレの人達っていつもこんな感じなのかな…?」

 

『あの時は怖い人たちの集団と思ったけど、入ってみるとこんな感じだったなんて』

 

 冗談を言っては褒める。かつての敵の陣営に入った自分たちは、彼らも同じ人間と分かり、少々古巣である管理局に聞かされていた印象とは違う事にギャップを感じる。

 

『そう言えば、管理局から引き抜かれた連中だったな。多分、騎士共か下級兵士だな。あいつ等は野蛮に近いから。そう思っちまうのさ』

 

「そうだったんだ。最後に戦った時は、女の人達ばっかりだったけど」

 

 戦っていた時とは違う印象を受けたなのはに反応してか、編隊長が主に彼女が戦っていた者達のことを騎士か下級兵士であったと告げる。それをなのはは聞くと、最後にワルキューレと戦った際に、異常な数の女性兵士たちと仲間たちと共に戦ったことを思い出す。

 

『うん、まさか女の人があんなに居るとは思わなかったけど』

 

『そりゃそうだろう、お前ら二人が異常なまでに強かったからな。今までプライド高い騎士様か、捨て駒の下級兵士共をぶつけて倒そうとしたが、正規の兵隊も導入しても、結局は倒せずに、俺たちが負けったってことさ』

 

「私達って…そんなに怖がられているんですか?」

 

『あぁ、俺もあの戦争に居たからな。悪魔みたいだったぞ、お前ら』

 

 フェイトもあの時の戦いの事を思い出せば、編隊長もまた、ワルキューレが管理局に負けた要因を口にし、更には管理局との戦争に参加していたことも明かし、なのはとフェイトがどれほど恐ろしかったことも告げる。

 

「ちょっと何か…」

 

『申し訳ない気分です…』

 

 自分等がどれほどにかつての敵に恐れられていたことを知り、二人は苦笑いを浮かべた。

 

 

 

「けっ、あいつ等め、失敗しやがったな。元気に鉄の棺桶で飛び回ってるじゃねぇかよ」

 

 この二人の様子を見ている者が居た。それは者であったが、どうみても10m級のロボットだ。だが、人のように考えて人のように口を開いている。

 彼らはただのロボットでは無い。ロボット生命体であり、その名はトランスフォーマー。生命体のように喋ったり考えたりするわけではなく、様々な物に変形することが出来る。

 機械で出来た惑星、セイバートロン星で生まれ、高度な科学文明を築き上げた超ロボット生命体であるが、悪の軍団デストロンと、正義を愛する集団サイバトロンに別れ、何百万年にもわたる戦争で星は瓦礫の山と化し、かつての栄光は失われた。

 それに伴い双方はエネルギー資源を求めて宇宙に戦果を広げ、こうして戦争を続けている訳だ。

 ちなみにこのロボットは、悪の軍団のデストロンの一味、航空参謀のスタースクリームだ。彼はF15戦闘機に、変形、トランスフォームする。

 彼はネオ・ムガルの手によって蘇った咎人であるが、性格からして忠誠心の欠片も無い様子だ。

 

「ここはこのスタースクリーム様がやるしかねぇようだな」

 

「で、俺たちがやるってのか? あのおっかないお嬢ちゃんたちを?」

 

「冗談じゃねぇ。返り討ちにされるのがオチだぜ」

 

 なのはとフェイトを殺しに過去へ向かった部隊が失敗したとスタースクリームが言った際、同型の色違いのロボットたちが反対の声を上げた。

 黒いのがスカイワープ、青いのがサンダークラッカーだ。他にも色違いの同型が居り、その全員が二人を倒そうとするスタースクリームに賛同していない。

 どうやら、彼らはなのはとフェイトにこっ酷くやられたようだ。特にとんがり頭の三体は、スタースクリームが殺そうとしているのがなのはとフェイトと分かった途端に、身震いらしき反応を見せている。

 

「お前ら、この俺に盾突こうってのか?」

 

「お前さんは分かってないのか? あの嬢ちゃんたちの恐ろしさを。この前はお前もこっ酷くやられちまっただろうが」

 

「そうだぜ。あの時のお前、相当な間抜けだったぜ」

 

「だから何だと言うんだ? 今がチャンスなんだ、あいつ等は鉄の棺桶に乗っている。後はレーザーをお見舞いしてローストチキンにするだけのことよ。臆病者はそこにでも隠れていろ! 俺一人でもやってやる! トランスフォーム!!」

 

 次々と出る反対意見に、スタースクリームは短気で頭に来たのか、一人でもやると言って単独でVF-1の編隊にF15にトランスフォームして突っ込んだ。

 

「臆病共め、このスタースクリーム様一人でもやってやる! 相手はただの棺桶の集団だ! それにあの二人もそいつに乗ってる! あいつ等はそれがチャンスだって分かっていないんだ!!」

 

 独り言で仲間たちに対して悪態を付きつつ、編隊に合流しようとしている三機のVF-1Aの一機を撃墜した。

 僚機が突然に撃墜されて驚いたのか、残る二機はガウォーク形態に変形して周囲を警戒しようとしたが、スタースクリームはその隙に二機ともレーザー攻撃で撃墜する。

 

「ははは! どんなもんだ! ただの鉄屑じゃないか! あの二人をチキンにするのは造作も無いぜ!」

 

 僅か数秒で三機のVF-1Aを撃墜したスタースクリームは調子づき、編隊に襲い掛かろうとする。他のデストロンのメンバーも同様で、自分等が得意とする空戦で集団に襲い掛かる。

 だが、スタースクリームはミスを犯した。答えは単純、先ほどの三機を撃墜してしまい、編隊に自分等の存在を知らしめてしまったことだ。

 これにより、デストロンのジェットロン部隊の襲撃は、なのはとフェイトに知らされた。

 

 

 

『キャロ小隊全滅! で、デストロン軍団だ!!』

 

「デストロン!?」

 

『どうしてこんな所に!?』

 

『どうやら潜伏していたようです。敵機の集団は五時方向より接近中。迎撃態勢を取ってください!』

 

「分かった、レイジングハート! フェイトちゃん、後ろに気を付けて!!」

 

『うん! 味方を守らないと!』

 

 編隊のパイロットの一人がスタースクリーム等の襲撃を知らせれば、なのはらは安全地帯に現れたテロリストらの襲撃に混乱したが、デバイスの指示で迎撃態勢を取る。

 それからデストロンのジェットロン部隊と航空戦を始めるVF-1の集団であるが、押され気味であり、敵の一機も撃墜できぬまま次々と撃墜されていく。

 

『高町大尉とハラオウン大尉は何としても守れ! 彼女たちはこの次の作戦に必要な戦力だ!!』

 

「そんな…!? 私達の事は良いから…」

 

『いや、俺たちよりもあんた等の方が重要だ! これから先も…うわっ!』

 

「どうして私達のためなんかに…!」

 

 押されているが、なのはとフェイトを必死に守ろうとする味方機に対し、なのはは逃げるように告げるも、彼らは二人が重要な人物と聞かされているため、盾になろうと撃墜される。

 次々と落とされていく味方機を見て、なのはとフェイトらは不安を覚えるが、スタースクリームは容赦なく彼女らの盾になるVF-1を撃墜する。

 

「はっはっはっ! 周りのハエ共が必死に守ってるって事は、その二機が嬢ちゃんたちが乗っているな!? おい野郎共! あの二機を集中砲火だ!!」

 

 必死になのはとフェイトが乗る二機のVF-1Jを守るワルキューレ機を見て、スタースクリームはその二機が標的の乗っている機体と見抜き、他のジェットロン部隊と共に集中攻撃を始めた。

 これにより、編隊は次々と脱落者を増やし、地面へと落ちて行く。

 

『援軍を呼んだ! スクランブル機が二分で到着する予定だ! 他の部隊も急行している! ここは耐えるんだ!!』

 

「二分…一体どれくらいが…」

 

『二分は長すぎる! ここは私達がやるしか…!』

 

 編隊長機から援軍が来るとの報告はあったが、来る時間は二分だ。その二分では、編隊が全滅する恐れがある。それが分かっている二人は、守られるばかりでは無く、自分等が守るため、スタースクリーム達に挑んだ。

 

『お、おい!』

 

「これ以上はやらせない!」

 

『その為に私達は管理局とワルキューレに入ったのだから!』

 

 味方の静止の声も聞かず、二人は三機一隊で攻撃してくるジェットロンにミサイルによる攻撃を開始する。

 

「おわっ!?」

 

 発射された大型ミサイルは一発が外れて数発が三機に命中し、渓谷へと墜落して行く。死んでいないが、暫くは復帰しないだろう。

 続けて他の一体のF15のジェットロンにガンポッドを撃ち込んで、損傷を負わせて撤退に追い込む。

 

『やるな!』

 

「ちゃんとシミュレーションはやってきたから!」

 

『お前たちなんかに負けない!』

 

 バトロイド形態に変形しているVF-1Sに乗る編隊長が褒めれば、なのははこの時のためにシミュレーションを重ねて来たと告げ、フェイトはデストロンには負けないと告げる。

 

「ふざけやがって! このスタースクリーム様にお前らが勝てるもんか!」

 

 旧型のバルキリーに乗る二人にやられていく味方に苛立ったのか、人型形態のスタースクリームは、格闘戦を挑んで返り討ちにしたバトロイド形態のVF-1Aの在外を捨ててから、なのはとフェイトが乗るVF-1Jを撃墜しにF15に変形して向かった。

 

「ナル光線を食らいやがれ! うぉ!?」

 

『させない!』

 

 ガウォーク形態で飛んでいるなのは機に向け、得意のレーザー攻撃をお見舞いするスタースクリームであるが、フェイト機に邪魔をされて体勢を崩しかける。

 

「このアマ! うわっ!?」

 

 ロボット形態へ変形し、レーザーでフェイト機を攻撃するが、背中よりなのは機のガンポッドによる攻撃を受けてしまう。

 これに反撃するスタースクリームだが、フェイト機に背中を向けたので、またも背後より大口径の弾丸を受けてバランスを崩す。

 

「ふざけやがって! コン畜生が!!」

 

 二人の阿吽の呼吸による攻撃を受け過ぎたスタースクリームは、F15形態になってその場を離脱した。

 

「これでも食らいやがれ!」

 

 それからまたロボット形態へ戻り、胸のミサイルポッドの一斉射撃を二機のVF-1Jにお見舞いする。

 飛んでくるミサイルに気付いてか、二機はファイター形態に素早く変形してから追尾して来るミサイルから逃げ始める。

 

「はっはっはっ! そのミサイルからは逃れられねぇぜ! そいつはお前らを殺すまで地獄まで追い回す追尾ミサイルだ! ローストチキンになっちまいな!」

 

 全速力でスラスターを吹かせ、自分が放ったミサイルから必死に逃げる標的が乗る二機のVF-1Jを見て、スタースクリームは勝ったも同然と思って高笑いを始める。

 

『こいつめ!』

 

「うわっ!? このクソッタレのブリキ野郎め!!」

 

 そんなスタースクリームの背後から、VF-1Rと言う頭のレーザー砲が三門のバルキリーがレーザー砲と手に持ったガンポッドを浴びせた。

 これをスタースクリームは避けられず、当たって顔に地面を付けたが、咄嗟の反撃で背後より襲って来た敵機を撃墜する。

 

「まぁ良い。これであいつ等もお終いだ」

 

 そう勝ったも同然と思うスタースクリームだが、なのはとフェイトは彼の予想をはるかに上回るほど追尾ミサイルより逃れていた。

 

『迎撃します』

 

 レイジングハートが搭乗者のなのはに知らせれば、機体下部に収められている頭部レーザー砲を稼働させ、しつこく追い回してくるミサイルを迎撃する。

 追尾して来るミサイルの数発ほどが撃墜できたが、残りは上部の辺りに位置しているため、迎撃が出来ない。

 

『大丈夫!?』

 

 フェイトに無事を問われたなのはは、同じくミサイルに追われている彼女の機を見て、心配の声を上げて返す。

 

「こっちは大丈夫だよフェイトちゃん。それよりもそっちが…!」

 

『もう逃げきれそうにない。機体を捨てるしかないね。バルディッシュと一緒に脱出する。ちょっと申し訳ないけど』

 

『フェイトの言う通り、脱出するしかありません』

 

「うん、フェイトちゃんとレイジングハートの言う通り、脱出するしかないね。脱出後はもちろんバリアジャケット着用で!」

 

『うん、それならあいつ等に勝てそうだし! バルディッシュ、行くよ!』

 

『了解!』

 

 追尾ミサイルを躱すには、機体を捨てるしかないとフェイトと自分のデバイスであるレイジングハートの提案でそれしか無いと判断したなのはは、脱出後にバリアジャケットを着用すると告げてから、彼女と共にデバイスを持ってキャノピーを抉じ開けた。

 その瞬間に、追尾ミサイルが搭乗機に命中し、大爆発を起こす。それを見ていたスタースクリームは、大いに成功したと思い込んで高笑いを始める。

 

「やったぜ! 流石のあの女共も永遠にグットナイト! はははは!!」

 

 爆発を見て倒したと完全に思い込んだスタースクリームであったが、その爆炎からバリアジャケットを着込み、手にはデバイスを携えたなのはとフェイトが勢いよく飛び出した。

 これを見たスタースクリームは驚愕し、更には混乱を覚えた。

 

「ど、どうして生きてるんだ!? あのミサイルは、連中の強化服を容易く燃やしちまうほどの威力だぞ!?」

 

 彼が混乱する中、スカイワープとサンダークラッカーが、爆風より出たフェイトにレーザーを撃ちながら襲い掛かる。

 

「このレーザー攻撃なら、あの女を一撃で…!」

 

 そうフェイトの防御力の低さを見抜いて火力で落とそうとするサンダークラッカーであったが、彼女は高速戦闘を得意としており、一瞬にして自分に襲い掛かって来た青いF15のジェットロンを撃墜する。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

「クソッ、このスカイワープ様のワープ攻撃で! おわっ!?」

 

 仲間がやられた際に、スカイワープは自分の得意技であるワープ戦法でフェイトの斬撃を避けたが、その瞬時に移動してきた彼女によってサンダークラッカー同様に翼を斬られて撃墜されてしまう。

 

「あの白い奴はこの銀河最強のジェットファイターが! ぐあぁぁ!?」

 

 次に、爆炎の中より出て来たなのはを、三機のとんがり頭のジェットロンがデルタ翼の戦闘機にトランスフォームし、三機一隊で彼女に襲い掛かるが、立派な魔導士として成長した彼女の砲撃魔法を受け、三機諸共撃墜される。

 

「な、なんて奴らだ! デストロン軍団の最強を誇るジェットロン部隊がたかが二人の小娘相手に!」

 

「次は貴方です!」

 

 彼女らより遥かに上回るサイバトロン戦士たちを上空からの攻撃で圧倒していた自分等ジェットロンが、立った二人の少女に圧倒されるのを見て、スタースクリームは恐怖を抱く。

 そんな彼に対し、なのはとフェイトは互いに背中を合わせ、スタースクリームに向けて次はお前だと言わんばかりに各々の得物を向ける。これを見たスタースクリームは、部下を引き連れて一目散に退散し始めた。

 

「デストロン軍団、退却だ!!」

 

 彼がその声を上げるだけで、他のジェットロン部隊はボロボロになりながら先にF15になって退却するスタースクリームの後へと続いた。

 

『なんだ、援軍の必要も無いじゃないか。凄いな、お前ら』

 

「いえ、これは私たちの責任です。私達がもっと早くバリアジャケットを身に纏っていれば…」

 

「そう、私達がこうしていれば、貴方の部下たちは死なずに済んだのに…」

 

 ボロボロのVF-1Sを動かしながらも生き残っていた編隊長は、援軍が来なくともデストロン軍団を圧倒した二人に感心の声を上げるが、彼女らは最初から変身して戦っていれば、被害は少なくできたが、それが出来なかった自分等を恥じる。

 これに編隊長は彼女らを咎めず、責任感を感じさせないためにも過ぎ去った物だと返した。

 

『いや、お前らが人からもらった物を大事にすると言う事は分かった。決断の遅さは、誰にでもある物さ。次にやれば良いと思えば良い』

 

 その言葉に、二人は自分等の不甲斐無さを悔いたが、編隊長は帰還したら次の作戦までに休んでおくよう告げる。

 

『さて、お前たちは次の作戦の重要な戦力だ。帰還したら、しっかりと休んでおけ。この鬱憤は、次で晴らせ。帰るぞ!』

 

『はい!』

 

 編隊長の帰還命令で、二人は返事をしてから残存機と共に基地へと帰投した。

 

 

 

 ネオ・ムガルによる高町なのは、フェイト・T・ハラオウンの現在の暗殺作戦も失敗し、過去の暗殺作戦も頓挫寸前となる中、過去の高町なのはは、魔導士となって最初の課題であるジュエルシード集めを仲間のユーノと共に行っていた。

 

「よし、これで七つ目だ。後は、フェイトって言う子に奪われた三つとまだ見付かってない十一個だけだ」

 

 なのはが小さな手に握るジュエルシードと呼ばれる碧眼の瞳の形をした宝石のような物を見て、ユーノは全部で七つ手に入ったと喜ぶ。

 ジュエルシードとは、管理局で言う失われた技術「ロストギア」の一種の宝石だ。

 全部で二十一個あり、それぞれにローマ数字でシリアルナンバーがふられている。

 一つ一つが強大な魔力の結晶体であり、周囲の生物が抱いた願望を、自覚ある無しに関わらず叶える特性を持っている。

 元はユーノ・スクライアが発掘して、危険な代物のため、安全な場所へ移送されたが、その後に事故が発生して、結果的にこのような事態に至る。

 故に、このジュエルシードを使って何かをしようとするフェイトたちよりも先に、集めなければならない。いつ暗殺を仕掛けて来るか分からないネオ・ムガルの刺客たちにも警戒しながら。

 

「うん、じゃあ封印するね」

 

 それをフェイト達や刺客らの襲撃も受けずに、安全に回収できたので、なのはは早速レイジングハートを当てて封印を試みたが、ジュエルシードは突然現れた男に奪われてしまう。

 

「これが、ジュエルシードって奴か」

 

「わっ!? 昨日の筋肉のお兄さん!?」

 

「どうして結界内に!?」

 

 ジュエルシードを手に取ったのは、あのシュンだ。彼の名前を聞いてない二人は動揺し、どうやって結界内に入って来たのかを問う。

 

「あぁ、こいつでぶっ壊して来た。そんで、こいつがか。売れば儲かりそうだな」

 

 バリアジャケットを身に着けていないシュンは、自分の大剣を見せながらこれで壊して入って来たと答えてから、ジュエルシードの輝きに目を奪われ、凄い価値になると推定する。

 

「それはただの宝石じゃない。危険な物なんだ。それを僕たちに…」

 

「まぁ、待て。俺も分かってる。取り敢えず、こいつの腹ごしらえを済ませてからだ」

 

「それ、貴方のデバイス…?」

 

 良からぬことを考えるシュンに、ユーノが注意すれば、彼は自分のデバイスであるベルトを見せびらかしながら、地面に大剣を突き刺してジュエルシードをデバイスのコアに近付けた。

 すると、ジュエルシードの魔力は徐々に衰え、やがて輝きを失い、ただの石同然となる。

 

「こ、これは…一体…!?」

 

「ほぅ、こりゃあ良い腹ごしらえって所だな。そらよ」

 

「わわっ!? 輝きが消えてる…」

 

 ジュエルシードの輝きが失われたので、ユーノは驚いていたが、シュンは良い魔力補給弦を見付けたと判断して、石と化したジュエルシードをなのはに投げた。

 それを手に取ったなのはは、呆気に取られていたが、レイジングハートの声で気を取り直す。

 

『魔力は残る少ないですが、まだ危険です。封印してください』

 

「あぁ、うん。分かった、封印するね」

 

 気を取り直したなのはは、輝きが失われたジュエルシードをレイジングハートのコアを使って封印した。

 

「一体、お兄さんは何なんですか…?」

 

「後で調べればわかる事だ。今は、その宝石集めに集中しろ」

 

 ジュエルシードの魔力の大部分を吸うベルト型のデバイスを持つシュンに対し、なのはは問い掛けたが、彼は後で分かる事と返し、次に今はジュエルシード集めに集中しろと告げてから去って行った。

 

「次元犯罪者じゃ無さそうだけど…何か怪しいな…未来から僕たちを守るために来たとか言ってたし…」

 

「でも、見返りを求めずに私達の事を変な人達から守ってくれて、それにフェイトちゃんも守ってくれたよ。多分だけど、大丈夫だよ」

 

「本当にそうかな…でも、管理局が来るまでの辛抱だ」

 

 質問に答えないシュンに、ユーノは腕を組みながら怪しんだが、なのはは自分等も、それにフェイトも助ける彼を怪しまず、味方だと言って安心させた。

 これにユーノは信じられないでいたが、管理局が来るまでの辛抱として、シュンを味方に入れることにした。

 封印が終わった後、なのははバリアジャケットを解除し、元の制服姿に戻れば、同じく結界を解いたユーノと一緒に家路へと着いた。




~今週の後書きコーナー~

ダス・ライヒ「全くこのスタースクリームめが!」

ワスピーター「ぶ~ん、デストロン、違った、ディセプティコンのカリスマ、ワスピーターだよん! 劇場版なのは第三部と共に実写版トランスフォーマー 最後の騎士王、絶賛公開中だブーン! ぼくちんも大活躍…」

ダス・ライヒ「いや、お前出てねぇだろ」

ワスピーター「え、ぼくちん出てない? あっ、ホントだ。でも、次回作はまだあるし、ワンチャンあるよね?」

ダス・ライヒ「うん、あると思う。まだネタは残ってるしね」

ワスピーター「ぶ~ん! そんじゃ、後悔の時は、ぼくちんの中の人起用してね~! それじゃ、バイバイブ~ン!」

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