このクソッタレな世界に俺が来て、かれこれ数カ月くらいは経つな。
この世界は俺が餓鬼の頃に憧れていた平和で堕落しきった世界に似てちゃいるが、そんでかなり訳の分からねぇ世界だ。だが、ここは人の死で溢れている。あの世界と違うのは、殺意に満ち溢れた奴らが多い。銃声や死で満ち溢れていたアフリカって大陸のある前の世界よりもな。
そんで今の俺は、日本って言う俺の嫌いな国に居る。この国も例外じゃ無く、死と銃声で満ち溢れてやがった。
その原因は、日本を昔の栄光に満ちた帝国に戻すとかほざき、外国人や老人、障害者などの弱い連中をぶっ殺すことしか出来ねぇ玉の小せぇ大日本帝国とか言うクソ野郎共と、革命をカッコいいなんて思ってる馬鹿共の集団の新日本赤軍のアカ共の所為だ。
そいつ等の所為で治安が乱れたとか防衛省の泰田のおっさんが言ってたが、そもそもの原因はお上にあるんじゃねぇか?
んでそいつ等の装備は、密造品や粗悪なコピー製品ばっかだ。後、横流しもあったな。
何所で手に入れたか知らねぇが、連中はプロの訓練を受けてねぇから下手くそだ。俺が戦って来た民兵共よりも劣る。
所詮、銃とは無縁な国に住んでる奴なんてそんなもんだ。武装探偵とか言う民警共と同様にな。
連中はプロからあれこれ受けちゃいるが、武偵法なんて言うくっだらねぇもんに縛り付けられて
そんでもってフルサイズの弾を使った殺傷力の高い軍用銃ばかりを使いやがる。矛盾って言うのはこういうのか? おまけに餓鬼ばかりと来やがる、全くおかしな連中だぜ。
極右テロの大日本帝国は、主にアメリカ軍や隣国のロシア軍の横流しを使ってるが、宝の持ち腐れって奴だ。家に籠ってゲームばっかやって親の脛を齧るしかねぇ穀潰しなんぞが、現実で上手く扱えるわけがねぇんだよ。
さて、連中の悪口はその辺にして置き、俺ぁ今、防衛省の泰田のおっさんの所で世話になってる。
理由は余所者の俺がこの世界で、そんでこの国に身より何てありゃあしねぇからだ。
話は長くなるが、最初に来た時に遭遇、つうよりは運悪く政治家のドラ息子とその寄生虫共が居るアジトに転移しちまって皆殺しにした。そん時にアジトを包囲していた武偵共と交戦、あん時は疲れてて誰も殺さなかったな。万全なら皆殺しにしてた所だが、生憎と餓鬼を殺すと気分が悪いんでな、たんこぶが出来る程度で済ませてやった。
アリアとかいう小学生にはちょいと手こずったが、何とか捻じ伏せられた。
その小学生を捻じ伏せたら、勇者とか予言の乙女なんかと煽てられてやがるルリって言う嬢ちゃんと遭遇だ。その嬢ちゃんは生まれたての小鹿のように脚を震わせ、拳銃を持つ手を振るわせてやがった。あの時も疲れてて相手にするのが面倒だったぜ。
そんで物の数秒後で嬢ちゃんを狙う女騎士団のご登場だ。嬢ちゃんの仲間が怖がってたのか、大勢で押し掛けてきやがった。
こっちは連戦で疲れてるってのに、全く神様ってのは嫌な奴だぜ。余ほど俺を殺したいみたいだな。
相手が餓鬼じゃなくて大人の女…つってもお嬢様ばっかで、他は人数合わせに呼ばれた戦場に向かない鎧を身に着けた女騎士共だ。俺は遠慮無しに大剣を振るおうとしたが、身体に限界が来てたのか、剣が握れず、あんまり殺せなかった。数名ほど殺せば、連中はビビったが。
だが、お嬢様とアイドルみてぇな女中心の騎士団でも油断が出来ねぇ。ゴリラみてぇな女が混じってやがった。
馬一頭しか渡れない狭い橋を渡る老夫婦を、小型機動兵器一個中隊から守るために、三人の部下と一緒に挑んだ物好きな女騎士、ドミニク・ヨールゼンだ。
普通なら、四人の騎士があっと言う間に蹴散らされて爺さん婆さん共々挽き肉にされてるとこだが、この女は足一本を失うだけで壊滅打撃を追わせて敗走させやがった化け物だ。
部下も五体満足とは行かなかったが、老夫婦や橋に傷一つ負わせなかった為に、鉄のドミニクって呼ばれた。
運悪くそいつと鉢合わせしちまった俺が勝てるはずも無く、ただ押されるばっかだ。
このままじゃジリ貧だから、大将の一番偉いお嬢様を叩き殺そうとしたが、猫被った男女みてぇな女騎士に、一番負傷してる足になんかをぶつけられて、そんで気絶して女騎士団にお縄になっちまった。過ぎたことだが、万全なら皆殺しに出来たな。
もちろん、鉄のドミニクなんかにも負けやしねぇ。あの男女にもな。
そんで、嬢ちゃんと一緒にお縄となった俺だが、嬢ちゃんと一緒に少しばかり尋問を受けた。
俺が捕まったのは、ワラキアの領主をぶっ殺したからだ。その罪名は領主殺しだそうで、死罪に値するんだとか言ってたようだが、ワルキューレに二十年くらい居たのに、そんな法律があったなんて知らなかったな。どうでも良いが。
そのお嬢様騎士団の団長様は、サディスティックな女で、嬢ちゃんに仲間の居場所を喋らそうとしてか、俺の身体に何度も鉄の鞭を打ち付けやがった。だが、今まで感じた痛みからすれば、痒いだけだ。それが我慢できなくなったのか、嬢ちゃんは仲間の居場所をゲロった。何人か知らねぇがな。
俺を外にある動物を入れる檻みたいな場所へぶち込んで嬢ちゃんの尋問に入った。あの後どうなったかは知らねぇが、興味がねぇから知らねぇ。出て来た際に聞いたが、何名かの場所は言わなかったそうだが。
夜中になると、嬢ちゃんが飼ってる鼠が牢屋の鍵を持って来た。
俺は嬢ちゃんを放って逃げようかと思ったが、装備の場所が分かりもしねぇ。
鼠の分際でそれを知っての事か、飼い主を助けねぇと案内しないだと言わんばかりに睨み付けてきやがった。そんで仕方なく、鼠に従って嬢ちゃんを助けた訳よ。
それからは騎士団長様を人質に取って、嬢ちゃんと一緒に馬をかっぱらって逃走だ。お嬢様騎士団や支援部隊の連中が追って来たが、何故かアリアとか言う小学生まで追撃してきた。俺を大量殺人犯だとかで逮捕するためか?
そんなことはどうでも良い。それよりもこの世界に居ないはずの幽鬼の類が出てきやがった。廃墟の洋館に逃げ込めば、化け物のご登場ってわけだ。
あんまり休んでないから少し苦戦したが、ワラキアの一角竜の婆と比べちゃあ大したことは無かったな。
夜が明けて森で野宿してたら煙草を吸った変なグラサンの男に声を掛けられ、その挙句にこの世界で当てが無い事を見透かされ、俺がこの世界で存在しない奴、いや、異世界の人間で都合が良いから泰田の殺し屋にされちまったってわけだ。
俺が居なくとも、環境省って所に化け物染みた力を持つ集団が居る部署があるって聞いたが、泰田と松方のおっさんの話じゃ、存在してるかどうか分からないって事だ。
そいつ等が存在してれば、俺がこんな仕事をせずに済む筈だが、まぁ、殺すとか戦うしか能がねぇ俺がこの国で食い扶持も寝る所もねぇから、泰田のおっさんの指示に従うしかねぇんだけどな。
泰田の仕事を受け持ってからは、変な連中との戦いが多くなった。
まずはアカの拠点をぶっ潰せば、超能力者が出て来てボコボコにされた。そんでお次はアリアとか言う嬢ちゃん守るために、日本で外国の民兵と戦ったり、ジャックされたバスの爆弾を解除しようとすれば、棍棒持ったデブと戦う羽目になったり、酸を吐く爬虫類で、最後はナチスと来た! 更にロボットまで出てきやがる始末だ。
少々無茶な手を使って何とか倒せたが、血を失い過ぎてクラっと来ちまったぜ。
その後の嬢ちゃんらは、俺が追ってた武偵殺しだっけか? 外国の旅客機のハイジャックを阻止したそうだ。倒したが良いが空港の着陸許可が降りないそうで、武偵校の使われていない滑走路を使って着陸したようだ。
俺はその件には関わって無かったが、泰田のおっさんがカンカンに怒っていたな。俺にとっては武偵殺しの正体よりどうでも良い事だったが。
さて、次の仕事は極右の連中のアジトを吹っ飛ばせか。
連中は素人の集団、油断しなきゃ、瞬きする間に皆殺しに出来るぜ。
東京湾近くの橋の上におけるナチスとの戦いより数週間後、シュンは防衛省の防衛事務次官である泰田より指示された極右テロ組織「大日本帝国」のアジトがある付近に防衛省から貸し出された車両で来ていた。
車両は一般に流通している普通自動車であり、当然ながらなんの防弾装備も施されてなど居ない。
見付かりそうも無い場所へ車を止めたシュンは、エンジンを切ってから自分の半身に成りつつある
「デジタルは少し苦手なんだよな」
ギター用のトランクの中に入っていたのは、消音器付きでホロサイト、ハンドガードの下部にフォアグリップと言う特殊部隊が使用するライフル銃のように極限にカスタマイズされたM4カービンのクローンモデルの一つであるHK416が入っていた。
この豪勢な贈り物は大変喜ばしい物だが、デジタルにカスタマイズされた銃を余り好まないシュンに取っては、有難迷惑と言う奴だ。
少し嫌がった表情を見せるシュンだが、ここで一番有効な武器はこの銃以外に無いので、仕方なく持っていくことにする。
「さて、お仕事と参りますか」
スタングレネードや銃の予備の弾倉を収めたタクティカルベストを身に着け、消音器が付いたUSP自動拳銃を拳銃用ホルスターに納めれば、件の殲滅目標であるアジトへと向かった。もちろん、真正面から行かず、見張りの少ない裏から回る。
この時に、本部に居る泰田からの通信が入ってくる。
『現場に付いたようだな。では、くれぐれも派手にやってくれるなよ』
「んなもん、わーってるよ。真正面から突っ込む奴は、とんだイカレタ野郎だってことぐらいは分かる。それで人数は増えてないよな?」
『あぁ、付近を見張っている公安の者によれば、人数は六十名のままだ。一個小隊を一人で相手にすることになるが、こちらはとしては支援がしたいのだがそれが出来ないのだ。済まないと思うが…』
「元からあんた等には期待してねぇよ。それと相手は自分が映画化ゲームとかの主人公になったと思ってるアホ共だ。気付かぬ間に皆殺しにしてやるぜ」
現場に付いたことを本人から確認した泰田は、アジトには一個小隊規模の武装した人数が居ることを伝え、支援が出来ないことを詫びようとするが、シュンはそれに期待してないと答え、アジトに居る者達が自分にとっては赤子の手をひねるのと同じような物であると告げる。
『むぅ…それほどに我々が当てにならんと言うのか…! しかし、こちらの隊員は実戦経験などほぼ皆無…こんな奴に頼るしかないとは…』
それを聞いた泰田は言い返そうとしたが、実戦経験豊かなシュンを超える人材が居ない彼は何も言い返せず、ただ粗暴なシュンに頼るしかない自分の不甲斐無さを呪う。
「こんな奴で済まなかったな。取り敢えずだ、仕事始めさせてもらうぜ」
『おい、待てまだ話が…』
そんな泰田の事を気にせず、シュンは無線を切る。何か言い残したことがあったのか、泰田は無線を切らないように告げるが、シュンは聞かずに無線を切り、黒いバラクラバを被って自分の任務を始めた。
大日本帝国のアジトがある場所は、人里離れた場所にある随分と昔に放棄された廃工場であり、周囲には雑草が生繁って草村だらけとなっている。
遠目から見れば、薄気味の悪い幽霊でも出そうな工場跡と見られて興味を持つ者達しか近寄って来なさそうだ。しかし、何かを隠すにはおあつらえ向けの場所とも言える。
「伐採でもすりゃあ、良いのにな」
周囲に生い茂っている自分が身を隠せるほどの伸びに伸びた雑草を見て、シュンは廃工場を拠点にしているテロリストたちに、雑草の処理をすれば良かったものと呟けば、やる気の無い見張り番の目を盗んでから、身を低くして草むらの中に入り込んだ。
草むらを掻き分けて進む方向は、アジトとなっている廃工場がある方で、なるべく音を立てないように進む。迂闊に頭を出して周囲を探れば、見付かる可能性がある為、頭を上げずに進み続ける。
途中、前方から自分の物とは違う草を掻き分ける音が鳴れば、動きを止めて通り過ぎるのを待つ。
シュン以外に草むらの中を進んでいるのは、歩哨の三名だ。
手には横流しか、それとも密造品か、アメリカ軍のM16A2突撃銃が握られている。装備もそれに合わせて少し良い装備だが、歴戦練磨のシュンから見ればプロの真似をしたアマチュアでしかない。
「素人がよ」
そんな装備をして一人前を気取る極右テロリストに小声で言えば、通り過ぎたのを確認してから前進を再開した。
「(ここまでのようだな)」
前方の草村の隙間から廃工場が見えれば、地面を左手で探って何か投げられる物を探す。
自分の手に収まるくらいの石ころを掴むと、それを何所か注意を引ける場所へと投げた。
『なんだ?』
投げた石が何処かへ当たって落ちれば音が鳴り、その音に気を取られた歩哨が持ち場を離れて確認に向かう。
この間にシュンは草むらを抜け出し、一気に廃工場まで静かに走り抜ける。
少し装備の音が鳴ったが、小さい音なので気付かれずに済み、廃工場の内部に潜入することに成功する。
入ったと同時に、シュンは周囲に敵が居ないかどうか銃口を向けて索敵を行う。
元の古巣で散々叩き込まれた物だ。無駄な動きは無く、敵が出てきそうな場所に銃口を向け、数秒間で出てこないことを確認してから素早く別の場所へ銃口を向け、隈なく確認を行う。
「よし、誰も気付いて無いようだな」
敵が出てこないことを確認すれば、銃口を下ろして頭の中に叩き込んである地図を頼りに、この建物に潜むテロリストが司令室として使っているらしき部屋を目指す。
内部にも武装したテロリストは居たが、ここが余り知られない場所であるのか、油断しきっており、イヤフォンで流れる音に乗って自分の銃を整備していた。
「っ!?」
そんな油断しきって背中を見せているテロリストに対し、シュンは容赦なく口を塞ぎ、喉を手にした鋭利なコンバットナイフで掻き斬った。
切り口から血が噴き出し、数秒後に息絶えて死体へと変わる。重くなった死体をシュンはゆっくりと床に降ろし、そのまま寝かせる。
曲は依然に流れ続けており、イヤフォンが耳から離れてしまったため、周囲に響き渡ってしまっている。
誰かが来る恐れがあるがため、シュンは曲を流しているウォークマンを踏み潰し、無理に音楽を止めた。
「おい、聞こえて…」
ウォークマンを踏み潰したのと同時に、外に漏れ出た音楽を注意しに来た仲間が現れた。
目前に自分等の仲間でも無い男と仲間の死体があったため、まだ生きていた頃の男の仲間だった構成員は、直ぐに侵入者が居ることを知らせに走ろうとしたが、走る前にシュンが眉間を撃ち抜かれて先に逝った仲間と同じ元へ送られる。
銃声は消音器でなるべく押し殺されており、周囲に響くことは無かった。
六十名の内、二名をあの世へ送ったシュンは、死体を人目に付かない場所へ隠してから司令室があるとされる部屋へと向かうため、地下へと降りる階段を下る。
道中、辺りを警戒しながら目的地へと向か中、何名かと遭遇したが、ナイフで掻き斬るか、眉間をライフルで撃ち抜いて切り抜けた。
「ここのようだな」
数名程を死体に変えながら目的地とされる司令室がある部屋へと近付くと、何らかの指示を出す声が聞こえて来た。
『こちら第一監視所、異常無し。送れ』
「こちらチト、引き続き監視を続行されたし。以上」
「M16A2ライフルとM14ライフルの各拠点搬送はどうなっている?」
『両方合わせて六十挺ずつを送り込んでいる。作業は順調だ、それより駐在軍からの横流し品は順調に届いているか? このまま続けると、足りなくなるぞ』
「大丈夫だ、あちらさんは処分予定が多いらしい。それに例の武器商人からの格安品もある。暫くは安泰だ」
司令室とされる部屋から聞こえて来た指示を盗み聞きした辺り、駐留米軍より横流しされた品と武器商人の購入品を各拠点に回しているようだ。
「横流しは分かるが、武器商人がこんな連中に? どうなってんだ?」
これを聞いたシュンは、横流しは理解できた物の、武器商人が何故、このようなテロ組織に武器を譲るかどうかを理解できなかった。
「やるか」
会話でここが司令室であると分かったため、シュンは突入して書類を確保することに決め、スタングレネードを取り出す。
ここでジッとしてても、報告や交代要員に見付かってアジトに居るテロリストを全員相手にしなくてはならない。大多数の敵と戦うなら、まずは頭を潰さねばならんのだ。
そう決断したシュンは、ドアを少し開けてから安全ピンを外したスタングレネードを投げ入れて耳を塞いだ。
スタングレネードは爆発時の爆音と関光で効果範囲に居る人間を一時的な失明、目眩、難聴、耳鳴りなどの症状とそれに伴うパニックを発生させるための手榴弾であり、主に室内に居る武装凶悪犯の無力化などで使われる物だ。
「っ!? 手榴弾!?」
それが投げ込まれたことに気付いた司令室に居る一同は、地面に伏せようとしたが、スタングレネードは直ぐに爆発し、爆音と関光が室内に響き渡り、全員の目と耳を一時的に潰した。
その瞬間にシュンはドアを蹴って室内へと突入し、手にしている高性能ライフルを撃ち始める。部屋に居る全員が爆音と閃光で参っており、入った瞬間に反撃を受けることは無く、一人目を難なく撃ち殺すことに成功する。
「くっ、クソ! 誰なんだ!?」
物の数秒ほどで部屋に居た九名の内、八人を無き者にしたが、一人が意識を取り戻し、襲撃者を迎え撃とうと近くに置いてある拳銃を取ろうとした。
ここで撃てば少しは時間が稼げるが、武器商人の事が気になるシュンは、ライフルを下げて拳銃を取って撃とうとする敵指揮官に近付き、拳銃を撃つ前に拳銃を持つ手を跳ね除け、腹に強い拳を打ち込んで怯ませてから床に頭を叩き付けて無力化する。
「ぐぁっ!?」
「おい、お前らが言っていた武器商人って誰だ?」
「な、何の話だ?」
「これでもか?」
突然、襲撃を受けて自分以外の仲間を殺され、頭を無理やり固い床に押し付けられ、利き手を抑え付けられながら尋問を受けた敵指揮官は混乱する。
尋問の意味が分からない指揮官は、シュンに分からないと返すが、ナイフを目に向けられて死の恐怖を覚え、自分が知っていることを洗い浚い話し始める。
「わ、分かった! 武器商人は俺たち大日本帝国が設立当初から装備を安く売ってくれているお得意様だ! 正体については幹部クラスしか知らないんだ! 俺みたいな下っ端クラスには知らされていない! 本当だ、信じてくれ!」
武器商人が大日本帝国に商品を安く売っていることは分かったが、その正体に付いては知らず、幹部クラスしか知らないと答えた。
「そうか、ありがとな」
正体が分からないと知ったシュンは、対して役に立たない情報しか得られなかった為、ナイフを首に突き刺して敵指揮官を始末した。
数秒ほどで息絶えれば、死体を床に降ろし、テーブルや引き出しの中にある書類を手当たり次第に回収し始める。
重要そうな書類を回収して行く中、無線機から定時連絡なのか、声が聞こえて来る。
『こちら鷹の巣2、異常無し。本部、報告されたし。どうした?』
無論、この部屋にはシュン以外に返答する者は居ない。
それにシュンは答える義理が無く、気にせずに資料を専用のバックに詰め込み続ける。
『こちら鷹の巣2、応答が無いぞ。まさか居眠りでもしているのか? はやく応答しろ』
本部からの返答が無いのか、苛立ちを覚えた監視所のテロリストが返答を要請するが、シュンはそれには答えず、厄介なことになる前に、無線機の中継機を取り出した消音器付きの拳銃で破壊した。
これで敵は連絡手段を失い、混乱するのは目に見えているが、同時に自分の存在を知らせてしまった。
『おい、仲間の死体だ! 侵入者が居るぞ!!』
『全員に知らせろ! 本部に連絡を!』
『くそっ、なんで繋がらん!?』
それに廊下からはシュンが始末したテロリストの死体が発見され、怒号が聞こえて来る。
司令室は既に制圧し、無線機の中継機も破壊しているので、混乱はしているが、異常ありと見てここに確認に来るのは間違いないだろう。
そうなる前に、早く逃げるのが良い。
そう考えたシュンは、ある程度の書類を回収し終えたら、司令室を出て外へ通じる道を沿ってここから脱出しようとする。
「誰だ!?」
数分程は敵と遭遇せずに済んだが、狭い通路であるがためか、司令室の確認に来た二名のテロリストと鉢合わせしてしまった。
言い訳をすればと思うが、シュンの装備はここに居る者達の物とは違うので、直ぐに敵と判断され、敵が手にしている自分と同じAR15系統ライフルで撃たれる。
咄嗟に遮蔽物となる右手の通路に身を隠し、即座に撃ち返して一人目を撃ち殺す。
『銃声が聞こえたぞ!』
『あっちだ! あっちで侵入者と仲間が!!』
一人目を倒したが、銃声が響いて近くに居る者達に気付かれてしまったがため、自分の元に敵が集まってくる。
「こっちだ! こっちに居るぞ!!」
そればかりか、撃っている男が仲間に知らせるように大声で銃を撃ちながら叫ぶ。
「ちっ、余計なことを」
舌打ちしながらシュンは、相手が飛び出したと同時に胸に三発の銃弾を浴びせて射殺し、遮蔽物から飛び出して脱出路へと通じる道へ走る。
「居たぞ!」
途中、レミントンM1100散弾銃を持ったテロリストが姿を現したので、脅威になると判断して撃つ前に射殺し、生き残ったM14自動小銃を持った相棒も射殺する。
その際に、シュンはこの狭い通路では脅威となる散弾銃を手に取り、弾が入っているかどうかポンプを引いて確認すれば、それを自分の銃として使う。
「良い物を手に入れたな」
この狭い通路では強力な武器となる散弾銃を手に入れたシュンは、死体から予備の
走る最中、またしても敵と鉢合わせし、銃で撃たれそうになるが、シュンが散弾銃を撃つのが早く、撒き散らされた球で二人ともをあの世へと送る。
それから次の敵との遭遇に備え、ポンプを引いて空薬莢を排出し、次の弾を薬室へと送り込めば、周囲を警戒しながら通路を進む。
「よし、ここで」
「っ!? 侵入者だ!」
一階へと上がる階段を見付ければ、そこを上がって地上へと脱出しようとしたが、降りて来る四人のテロリストと鉢合わせしてしまう。
即座に散弾銃を撃って固まっている二人を纏めて撃ち殺せば、ライフルに切り替えて残る二名を撃ち殺す。
撃った弾の数は四発であり、狙った二名のテロリストに撃ち込んだ箇所は心臓がある胸の辺りだ。撃ち込んだ小銃弾は完全に心臓を破壊しており、階段からずり落ちた二名は助かる見込みは皆無に等しいだろう。散弾銃で撃たれた二名は生きているようだが、出血が酷いので助かりはしない。
四名の敵を手早く片付けたシュンは、階段を素早く上がって一階へと出る。
まだ屋内なので、散弾銃は手放せない。引き続き周囲を警戒しつつ、外へと出る通路を進む。
進んでいる際に、敵と遭遇することは無かったが、外へと近付くに連れ、司令室を制圧した後に起こる敵の混乱の様子が見える。
『どうなってんだ!? なんで無線が繋がらねぇ!』
『俺が知るか! とにかく、地下に伝令を!』
『地下で銃声が聞こえたぞ! 早く向かうんだ!』
『誰が向かうんだよ!?』
指揮系統を失った敵の混乱はシュンの予想以上に進んでおり、もう何をして良いか分からず、あたふたと慌てふためいている。
この隙に少数の部隊で攻め入れば、一気に制圧できそうだが、生憎と部隊の数はシュン一人しか居ない。耳に付けてある無線機で援軍を呼べばいいが、自衛隊の出動を拒んでいる泰田が許可を出すはずが無い。
「逃げて武偵共にやらせるか」
とにかく泰田が求めている資料は回収できたので、この場は逃げ出して後は武偵に任せれば良いと判断したシュンは、混乱しているテロリストたちに向け、更に混乱を加速させそうな消音器付きのライフルで、指示を連発している男の頭に向けて撃つ。
狙った男は頭の半分が吹き飛び、地面へと倒れた。周囲で何をして良いか分からないテロリスト達は、それを見て恐怖し、周囲に向けて銃を撃ち始める。
「うわぁぁぁ!?」
「慌ててやがるな」
周囲に滅茶苦茶に銃を撃って誤射すらするテロリストたちの様子を見て、シュンは十分に慌ててくれていることを確認すれば、進路上に邪魔になるテロリストを射殺しながら脱出しようとする。
「止めろ! 味方同士で撃つのは止めろ!! あいつだ! あいつを撃て!!」
途中、シュンの存在に気付き、乱射を止めさせて敵を撃つように指示を出す男が居たが、その叫び声は銃声で掻き消され、更に悪い事に味方に撃ち殺される。
周囲が混乱に包まれて味方同士の殺し合いが巻き起こる中、ただ一人冷静に居るシュンは、無線機で本部に居る泰田に、武偵か警察の出動を要請する。
『貴様、一体どうして…』
「んなことはどうでも良い! 今から武偵か警察の特殊部隊を呼べ! 今の連中は慌てふためいて味方同士で殺し合ってる! 制圧するのは今がチャンスだ!! 衛星の映像なんか見れば分かるだろ!」
『な、なに? 敵が混乱している? 直ぐに確かめろ!』
無線を切っていた男からの連絡に、訳を問おうとして来る泰田に対し、シュンは理由も話さず、武偵か警察の特殊部隊の出動を要請した。
これを聞いた泰田は映像でも確認しているのか、回答に間があった。
「クソッ、何やってんだ!?」
自分に向けて銃を撃ってくる者が出て来たため、シュンは苛つきながら返答を待つ。
撃ってくるテロリストを排除した後、現状を理解した泰田からの返答が来た。
『本当に味方同士で殺し合っているぞ!? 一体何をしたんだ!?』
「だから、制圧するのは今がチャンスなんだよ! 早く出動を要請しろって言ってんだろうが!」
『わ、分かった! 直ちにSATを…いや、既に誰かが…!?』
「あぁ!? 誰がだって!? おい!」
どんなマジックを使ったのかを問うてくる泰田に対し、シュンは説明している暇が無いので、早く出動させろと要請するが、既に何者かが来てテロリストたちを攻撃していると言う情報が出て来た。
それに対して自分に攻撃してくる敵を撃ちながら、混乱しているテロリストたちを攻撃している何者かが何なのかを問うが、問うまでも無く、その何者かがシュンの目前で飛び出して来た。
「日本刀…?」
その何者かの容姿は金髪のショートヘアーの長身の男であり、漆黒のスーツに身を包み、手にはシュンが言った通り、刀長80.3㎝、反り30.3㎝、厚さ0.6㎝と言った日本刀、太刀の分類に入る刀を持っていた。
刀身には味方同士で殺し合っていたテロリストを斬った返り血が付いている。どうやらこの男が警察の特殊部隊や武偵の代わりに制圧に来た援軍のようだ。
シュンの目の前に現れた男は、引き続き味方同士で殺し合っているテロリストたちを斬り殺し続ける。
動きはまさに達人その物であり、見事に刀身が刃こぼれしないように素早く狙った獲物の急所を斬り刺し、的確に仕留めて行く。引き抜く際も素早く、思わず見惚れてしまうほどだ。
おそらくこの世界で、これほど太刀を上手く扱う達人はあの男一人だけだろう。
そんな男は外で同士討ちをしていたテロリストを殺し尽した後、刀身の刃先をシュンに向けて問い掛けて来る。
「貴様、大日本帝国などと言う賊の者では無いな? それにその装備…そして背中の禍々しい妖気を纏った大剣…並の人間では無い。何者だ?」
剣先を向けながら問い掛ける男は、赤眼でえらく顔の整った美男子であった。声が若い事から、二十代になったばかりの青年と見える。
剣の腕だけでなく、シュンが背中に背負っている大剣の並々ならぬ気配を感じ取ったことから、この世界において超能力者の類であると分かる。
「返答次第では貴様を敵と判断して殺す」
「返答次第で殺すって、殺す前提かよ…おい、こいつは武偵か?」
自分が背負う大剣のただならぬ気配を見抜き、邪気の者であると判断して返答次第で殺すと告げる青年に対し、シュンは無線機で本部の泰田に問う。
『いや、武装探偵の者では無い。おそらく環境省の者だ…噂だと思っていたが、まさか実在するとは…』
映像でその男の姿を確認した泰田は、にわかに信じられなかった防衛省に属する超人的な力を持つ部署の者達の一人であると分かり、それが実在したことに驚きの声を上げる。
「そうかよ。取り敢えず、あいつのお上に話付けて欲しいんだが…」
『む、無理だ…私には環境省に対してのコネが無い…残念だが、お前だけでこの場を切り抜けてくれ…』
「冗談キツイぜ…」
実在するとは思わなかった組織の出現に驚いている泰田に対し、シュンは環境省に取り合って目前の青年を下がらせてくれるように頼んだが、本部に居る泰田には環境省に対してのコネが皆無だ。
ましてや目前の青年が、存在そのものが無いに等しい部署に属する者であるため、取り合っても知らを切られるのがオチだろう。それに、シュンもこの世界に存在する者では無い。
自分だけの力で何とかするしかないと判断したシュンは、背中の大剣に巻き付けてある布を取り払い、目前の青年に向けて構える。
シュンが大剣を抜いて構えたのを見て、スレイブより漂ってくる禍々しい気配を感じ取った青年は敵と判断する。
「その禍々しい気配…! やはり貴様は魔の者か…! ならば、貴様を敵と判断して斬る!」
目前の大剣を構える男を敵と判断した青年は、そう宣言してからその男に斬り掛かった。
~後書きコーナー~
ダス・ライヒ「今週の後書きコーナー…色々と忙しくて、ネタが思い浮かばない…今週のゲストは…」
天霧九寿「
ダス・ライヒ「薄桜鬼の鬼の一族、つか鬼その物で礼儀正しいおじさんの九寿さんです」
九寿「よろしくお願いします。所で、最後に登場した青年、童子切安綱を扱い、外見が風間殿にそっくりなのですが?」
ダス・ライヒ「まぁ、関連で言えばそうなるわな…でも、千景じゃないからね。千景と同じ姿した別人だからね!」
九寿「なるほど…別人ですか…世界には、似た人物が何人か存在しておりますからね。それと彼の出自、気になりますが…もしや風間殿の…」
ダス・ライヒ「ちょっ、それ以上言うな! 声も違うし、性格も若干違うから!」
九寿「そうですか。少し気になりましたが、詮索はこれ以上止した方が良さそうですね。ここで終わらせてもらいます」
ダス・ライヒ「うん、それで良い。次回で明らかにする予定だけど」
九寿「次回ですか、楽しみにしておきます」
ダス・ライヒ「そう、楽しみにね。それと近頃は超能力やら魔法やら色んなチート持って暴れ回ってる少年少女らが目立つけど、鬼の九寿さんに取ってどんな気持ちですか?」
九寿「それはなんとも言い難いことですね…そんな力を好奇心旺盛な年頃の少年少女が持つなど…恐ろしい事しか想像が出来ません」
ダス・ライヒ「確かにね…それ分かっててやってるかどうか想像して書いた本人には分かってやってるのかどうか…」
九寿「はい、これでは力を振るって己の思うままにしている無法者と変わりありません。それなりの力を持つには、責任を持つことが重要です。現に私は、この強大な鬼の力を持つことに多大な責任感を感じております」
ダス・ライヒ「あんさん、あんまり戦いを好まない生格なんだね。いや、みんなあんたほどの温厚さを持っていれば、ヒーローになれるんだけどな」
九寿「ヒーローとはどういう物か分かりませんが、お褒め頂き、光栄です」
ダス・ライヒ「まぁね、千景とかがその少年少女らを見たらどう思うか…」
九寿「おそらく苛立ちを覚えるでしょうな。風間殿は誇りを持たぬ者やそれを蔑ろにする者達に対して冷酷な態度を見せますから…」
ダス・ライヒ「まぁ、他人の力を自分の物と思っているうつけがとか言いそうな」
九寿「それは、ご想像にお任せします」
ダス・ライヒ「じゃあ、時間が時間なので、ここでしめらせてもらいます」
九寿「そんな時間ですか。では、失礼します」
ダス・ライヒ「どうも~」