復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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マリマリ大暴れ回に、ラスボスより強い中ボス回。


串刺し世界Pat5

 チーフとシュンを含めるアルファ分隊が南東の平地へと向かっている頃、空が夕空になった所で、湖を五十人の女兵士たちの乱交で温めたマリの元に、甲冑を身に着けた女騎士三名が召集令書を手にして馬でやって来た。

 

「な、なんだこれは…!?」

 

「まさか、兵士たちが邪教に…!?」

 

 馬上から湖で行われている異常な行動を目にし、白馬に乗る女騎士と二人の部下は驚きの声を上げる。一人はこの惑星内で密かに活動している邪神教に、湖の中で乱交を繰り広げている将兵らが入団したのではないかと疑ってしまう。だが、自分等の接近に気付いたマリによって、疑いが晴れる。

 

「あんたら誰?」

 

 糸一つ纏わぬ裸体で現れて問うてきたマリに対し、隊長各の女騎士は巻かれている命令書を見せ、慌てながら彼女に一時的なワルキューレの復員令が出されていることを馬上から告げる。

 

「き、貴殿がマリ・ヴァセレート元空軍中佐か!? 貴殿に命令書が出されている、特別行動隊隊長であり、この惑星の統治者であられるショアラ・シルヴァニアのご子息であるイオアン・シルヴァニア様の直々の命令書である。直接自分で確かめるが良い」

 

 命令書を見せながら告げれば、書物を何も着ていないマリに向け、豚でも睨み付けるような眼差しで投げ付ける。

 それを片手で受け取ったマリは、抑え付けてある紐を解き、書物に記されている文字を読もうとしたが、読む必要は無く、開いた途端にイオアンの立体映像が映し出され、映像の彼が書物に記されている文章を声に出して読み始める。どうやら、彼女が読むことを想定して録画され、書物に仕込まれた映像のようだ。ちなみに、これは科学的な物では無く、魔法の類だ。

 

『貴殿がかつて破壊の女帝と異名を持つマリ・ヴァセレート元空軍中佐か? 俺はイオアン・シルヴァニア、この惑星に侵攻して取り残された敵の敗残兵の殲滅を任されている者だ。貴殿がここに居ることが分かったのは、時空管理局より借り受けた魔法レーダーで貴殿の魔法を感知したからだ。本来なら不法侵入の罪で貴殿を捕縛する所だが、俺の命令に従い、見事に成功させれば、その件に目を瞑ってやろう。命令とは、惑星ワラキアに接近してくる連邦宇宙軍の大艦隊を撃退することだ。見事に敵艦隊を撃退させ、我がワラキア防衛艦隊の被害を軽微までに抑え込むことが出来れば、罪事態は俺が母上に掛け合ってみよう。それに貴殿が探している少女に関する情報も提供してやろう。どうだ、悪い話ではあるまい。貴殿がこの提案に乗ることを期待する』

 

 書き記してある全ての文章を読み終えれば、イオアンの立体映像は消える。

 

「ルリちゃんの居場所…?」

 

 イオアンの命令に従い、ワラキアの衛星軌道上に接近してくる連邦軍の艦隊を殲滅すれば、自分が探しているルリの情報を提供すると書いてあるので、マリは左手の指を鳴らして一瞬で自分の身体に衣服を纏わせた後、その命令に従うことを目前の女騎士に告げた。

 

「受けるわ、この命令」

 

「承ると言うか。なら、私の馬に…きゃっ!?」

 

 命令に従うマリの言葉を聞き、自分の白馬に乗るように告げる女騎士であったが、急に愛馬が暴れ出し、彼女を振るい落とす。

 

「どうしたキルス!? 何を急に…!?」

 

 言う事を聞くはずの愛馬が何故に自分を振るい落した意味が分からない女騎士であったが、代わりに馬上の上に居るマリの姿を見て、納得できない事実を知る事になる。

 

「き、貴様! 何故キルスに乗っている!? この馬は、私と世話係以外、乗りこなせない暴れ馬なのだぞ!? お前たち、直ちにこの女を捕縛せよ!!」

 

「はっ、直ち…!?」

 

「は、離せお前たち! 何のつもりだ!? や、止めろ!!」

 

 自分の愛馬を盗られた女騎士は、槍を持つ部下たちに自分の愛馬に跨るマリを捕縛するように指示を出すが、湖で乱交を行っている女兵士たちが自分等を取り囲み、虚ろな瞳と性欲に満ちた表情で、馬に乗る部下たちを引きずり降ろす。

 

「き、貴様! 止まらぬか! 騎士の馬を盗むなど、縛り首だぞ!! ふぐっ!?」

 

「騎士様ぁ…私達と淫らに交わりませんか…? 気持ち良く、天国に昇る勢いですよ…」

 

「な、何をするのだ!? それと私の鎧を外すでない! この私を誰と…!?」

 

 部下たちが淫乱と化した女兵士たちに掴まり、身に着けている防具を取り外され、下に着込んである衣服まで脱がされて襲われる中、女騎士は自分の馬を駆って宇宙基地がある方向に向かうマリに対して止まるように告げるが、兜を脱がされて自分の口を、女兵士の口で塞がれる。

 舌を入れ込んで来たので、無理に引き離してその兵士に問うが、今度は別の女兵士たちが背後に近寄り、身に着けている鎧を外される。抵抗する女騎士だが、自分の周りを囲んでいる女兵士たちに、次々と脱がされ、やがて下着だけにされてしまう。

 

「な、何なのだお前たちは!? 一体あの女に何をされたと言うのだ!?」

 

 下着姿となったところで、女騎士は周りの女兵士たちを引き払い、何故これ程まで乱れているのかを問うた。彼女が気付かない間に、二人の女の部下は、周りに居る女兵士たちと一緒に乱交に浸っている。

 そんな問いに対し、巨乳の兵卒の胸を揉み下している小隊長が答えた。

 

「あの人は、私たちの内に秘めている物を解放してくださったのですよ。騎士様」

 

「秘めている物…?」

 

 マリは自分等が秘めている物を解放してくれた。

 そう答える女の小隊長に対し、騎士はオウム返しのように再び問おうとしたが、背後に迫った女兵士たちにブラのホックとショーツを脱がされ、近付いてきた彼女に耳元で告げられる。

 

「愛欲と性欲です」

 

 その答えを聞き、女騎士は虚ろな表情を浮かべ、近くに居る女兵士の唇に自分の唇を合わせた。

 

 

 

 一方でマリが宇宙基地へと白馬で向かっている頃、都市同盟と呼ばれるワラキアに潜む反ワルキューレ抵抗組織が、幾つかの連邦軍の敗残兵たちを集め、ワルキューレの軍団本部がある都市へと攻勢を始めた。

 

「こっちはMSやゾイドがたんまりあるんだ! 一気に押し潰せ!!」

 

 都市同盟は主に機動兵器を運用する部隊を回収し、軍規模の部隊にまで拡大していた。機動兵器部隊の保有数は三個師団相当であり、都市を防衛する僅か一個連隊規模の機動兵器しか持たないワルキューレの部隊を圧倒する。

 

『押せ、押せ! 我が軍が圧倒的だ!!』

 

 後退するワルキューレの機動兵器部隊を圧倒する連邦軍と都市同盟の共同機動兵器部隊は、徐々に彼女らを追い詰めていく。

 連邦と同盟が保有する機動兵器は、MSが三つ目の特徴なドートレスに侵攻時に大量投入されたストライクダガーで、ゾイドはオオカミ型の中型ゾイドであるコマンドウルフや、アロサウルス型の中型ゾイドであるアロザウラーだ。

 しかし、これ程の中型起動兵器群では圧倒できない。彼女らを圧倒したのは、共和国最強のゾイドである恐竜型の巨大ゾイド「ゴジュラス」である。

 

『ふっはっはっはっ! ゴジュラスは最強だぁ!!』

 

 ゴジュラスに乗り込むパイロットは、ワルキューレ陸軍の主力機動兵器とされている戦術機を意図も容易く粉砕すれば、拡声器を使いながら自機がどれほど最強であるかを周りに告げる。

 対するワルキューレ側の戦術機は、現ルーマニア空軍が採用している戦闘機と同じ名前である「MiG-29」だ。しかし、本来の武装であり、全長18mの巨人に合うサイズのA-97突撃砲はしておらず、ワルキューレで開発されたPP-19ビゾンを戦術機サイズにした対機動兵器用の突撃砲を装備している。

 本場の突撃砲はBETA(ベータ)用に大口径で銃身に滑走砲を付けてある物だが、ワルキューレは凶悪な化け物との戦闘に投入するとは思っていなかったのか、小口径である。

 故に、ゴジュラスの重装甲を貫くことは出来なかった。元の大口径ほどの突撃砲を持っている戦術機も居るが、その大口径を持ってしてもゴジュラスの重装甲の前では弾かれるばかりであろう。

 重装甲を誇り、更に背中に装備されている二門の大口径ロングレンジキャノンの火力を前にして、戦術機を装備した連隊は後退を余儀なくされた。

 

「すげぇな、ゴジュラスって」

 

「串刺しにされてたなんて嘘みてぇだ」

 

 圧倒的な強さで、ワルキューレの守備隊を圧倒するゴジュラスを見た都市同盟の民兵たちは、侵略者の末路としてこの星に攻めた将兵や兵器群と共に串刺しにされているゴジュラスとは思えない強さに舌を巻く。それもその筈、動いているからだ。ワラキアを収める領主の前には串刺しにされるのが末路に見えるが。

 そして民兵たちが持つライフルは、連邦軍が密かに送り込んだ盛田式アサルトライフルだ。彼らもまた、連邦の傀儡であった。

 もし、惑星が連邦の手によって解放されれば、同盟軍寄りの抵抗組織との抗争が始まるであろう。

しかし、先の事を気にしていては目の前の敵に勝つことは出来ない。

 都市同盟に属する民兵たちはそう心に決め込み、市街地の奥へと後退するワルキューレの歩兵や装甲車を追った。

 

 

 

「イオアン様、ヴァセク市に駐屯する部隊が圧倒されています」

 

「ふん、群れる事でしかまともに戦えぬ豚共相手に情けない!」

 

 連邦と都市同盟から攻撃を受け、中半敗走状態にあるワルキューレの守備隊の様子を更なる後方で見ていたイオアンは、数ばかりでしか戦う事かできない相手に負ける自軍の情けなさを見て、苛立ちを覚える。

 そんな上官に対して、参謀はワルキューレの守備隊の数の少なさが原因であることを告げる。

 

「しかし、イオアン様。敵はMSやゾイドを含め、三百機ほどの三個師団相当です。対して都市を防衛する我が軍の機動兵器、即ち戦術機は百八機の一個連隊ほど。更に敵は歩兵に戦車、戦闘ヘリを初めとする機甲部隊の数でも守備隊を圧倒しております。押されるのは当然かと…」

 

 少な過ぎる数での防衛は、確実に攻め側に押されるのは当然であることを告げると、イオアンは不満そうに口を開く。

 

「ちっ、一機三機、一人十人殺すことも出来んのか! もう良い! 私が直接出向く!! この惑星ごと味方に滅ぼされるとは知らん哀れな連中にそれを思い知らせてやる!!」

 

「あ、貴方が直接出陣成されるのですか!? 無茶です! 幾ら機甲一個中隊をお一人様で殲滅した貴方でも、航空支援の無い状態で軍団規模の機甲部隊相手にそれは…!」

 

 友軍の部隊のだらしなさに苛立ちを覚えているイオアンは、直接自分が出向くことを告げれば、部下たちはそれに反対する。

 尚、都市を攻撃している連邦と都市同盟の連合部隊は、友軍の宇宙軍にこの惑星ごと殲滅されることは知らされていない。イオアンはその情報を、直接情報部より手に入れた様子だ。

 本当に軍団規模の機甲部隊相手を一人で殲滅できるのか?

 過去に一個機甲中隊を一人で殲滅したイオアンでもその自信は無いが、これ以上、自分が憎むべき豚共に神聖なる聖地を汚されたくないと思っての事か、彼は部下の反対を押し切って自分の愛馬に跨り、航空支援も待たずに都市を攻撃している豚共が居る戦場へと一人で駆けた。

 

「い、イオアン様が単独で出撃なされたぞ!」

 

「バルキリー隊も待たずにか!? やもえん! あのお方を守るために出撃だ!!」

 

 彼が馬に跨ってほぼ敵の占領下にある市街地へと単独で突入したのを確認した配下の機甲部隊と戦術機部隊は、敬愛なる主であるイオアンを守るべく、彼らも航空支援を待たずに出撃した。

 

 

 

 その頃、惑星ワラキアを味方諸共滅ぼす為に出動した連邦宇宙軍の二百隻の大艦隊は、救出作戦に当たっているUNSCの宇宙空母「ギャラルホルン」の訴えを聞かず、ワラキアを滅ぼせる位置まで続く進路を維持していた。

 

『提督、直ちに攻撃命令を中止して艦隊を帰投させてください! あの悪魔の巣には、まだ我が軍の将兵が大勢取り残されております! 彼らはまだ我々の救出が来ることを期待し、懸命に生き延びようと必死の思いで戦っております! 貴方はその将兵を殺すおつもりか!? 取り残されている地上軍の将兵の事を思うなら、直ちに攻撃を中止してください!!』

 

 救出作戦に当たる空母「ギャラルホルン」の艦長の訴えの通信を聞く大艦隊の提督であるが、彼はその訴えに聞く耳持たず、ワラキアの破壊命令が、公式な物であると返す。

 

「大佐、これは総軍本部の決定事項なのだ。地上軍もそれに同意している。あの野蛮に満ちた惑星に対する六度の侵攻で我が軍は二百万もの戦没者を出しているのだ。これ以上の犠牲者と予算をあの野蛮な惑星一つに掛けるわけにはいかん。君は宇宙海軍であるが、理解できることだろう?」

 

 そう椅子に腰を下ろしながら告げる初老の提督であるが、空母の艦長はそれに納得できず、自分等の英雄的な存在であるマスターチーフが居ることを告げて攻撃を止めてもらうように説得する。

 

『しかし提督…あそこにはマスターチーフが…!』

 

「彼はスパルタンと言え、一人の一兵士にしか過ぎない存在だ。その覚悟があってあの野蛮な星へと降りたのだろう。共に惑星諸共塵になろうとも、我々を決して恨まないはずだ」

 

『な、なんてことを! それでは我がUNSC総軍は…!?』

 

「えぇーい、鬱陶しい! 新参者の勢力の英雄だか何だか知らん‟化け物‟が何だと言うんだ!? こんな通信切れ! 今すぐ切れ!!」

 

 マスターチーフを殺すと同義な言葉を発した提督に対し、それではUNSC総軍の将兵らの怒りを買うことを怒りに満ちた表情をモニター越しで表す艦長であったが、それが提督の怒りを買ってか、彼は通信士官に直ちに通信を切るように指示した。

 これに応じ、空母の艦長が言い終える前に、通信士官は通信を切るボタンを押し、通信モニターを消す。通信が切れたのを自分の目で確認すれば、提督は近くのテーブルに置いてある水を一口飲み、喉を潤す。

 

「全く、スパルタンなどと言う無駄に金を掛かる化け物を大事に思うなど…」

 

「ですが、彼らが居なければ、我が軍は更に被害が…」

 

「貴様も新参者の肩を持つ気か? あんな化け物に頼らなければ、何も出来ん無能集団だぞ、あのUNSCとやらは」

 

 どうやらこの提督は、マスターチーフを初めとするスパルタンを余り良く思わない人物であるようだ。参謀のスパルタンの有効性にも冷たい反応であり、現時点で連邦軍最強の兵士であるチーフが死んでも、何の損失感も微塵に感じないだろう。

 そんな提督の元に、先行させている部隊からの報告が入る。

 

「先遣隊より報告! ワイルドキャットの迎撃部隊を捕捉! 艦影十、敵機を二個中隊ほど確認とのこと!」

 

「少な過ぎる…防空のため、艦載機を発艦させておきます」

 

「うむ、許可する。備えあれば患いなしだ」

 

「空母に通達! 艦載機発艦!」

 

「了解! 全空母に通達、直ちに艦載機を発艦せよ! 繰り返す…」

 

 報告が入れば、副官を務める将官が艦載機の発進することを伝えれば、提督はそれを許可する。許可が取れれば、通信手が艦隊の全ての空母に艦載機発進命令を出した。その後で、別の通信手からの報告が入る。

 

「先遣隊より再び報告、接近する艦影は空母三隻に護衛艦七隻のみ! 敵機四十はバルキリーで空母の艦載機です! 内一機が、他の編隊を抜いて単独で我が隊の正面から突っ込んで来ると言っています!」

 

「一機? 一機だと? ははは、馬鹿な奴だ。単独で何ができると言うのだ。対空ミサイルで撃墜しろと伝えておけ」

 

 他の友軍機と編隊を取らず、一機が単独で来る報告を受けた提督は、馬鹿らしさの余り小笑いを浮かべた後、先遣隊に対空ミサイルで撃墜するように命じた。

 後数分ほどで、その単独で突っ込んで来る馬鹿一人に二百隻もの艦隊が壊滅状態にされるとは知らずに…。

 

 

 

『ちょっと! 編隊に戻りなさい! 聞こえてるの!?』

 

 静止の声が響いてくる無線も聞かず、単独で敵の大艦隊に突っ込んでいる機体に乗るパイロットはマリであった。体のラインが出る程の動きやすいパイロットスーツに身を包み、戦闘機のコックピットに座り、操縦桿を握っている。

 彼女が乗る機体は、別世界の機動兵器、それも人間状態のバトロイド、鳥人間状態のガウォーク、戦闘機状態のファイターの三種に変形する可変戦闘機、バルキリーとも呼ばれる兵器だ。

 機種は統合した世界政府が地球より宇宙に進出して四十七年目に正規軍に正式採用されたVF-25メサイア。開発当時の最新技術が注ぎ込まれ、通常のパイロットでは乗りこなせない物となり、希少素材も使っているので製造コストはかなり高い。その為か、生産数はかなり少ない。

 更に様々なオプションパックも開発されており、その価格を性能と共に高騰化に拍車を掛けている。

 

 しかし、ここで疑問が抱かれる。それは何故、別世界の兵器がワルキューレによって採用されているか?

 その理由は、戦術機と同様に世界の統合政府と裏取引で入手したようだ。

 裏取引はその世界における異星人との戦争で地球の地表が焼き尽くされた後に再建された政府と行われている様子であり、ワルキューレは当時の機体のライセンス生産の権利を幾つか取得したようだ。その後も裏取引は続けられ、今日でも取引先の世界から、最新鋭機の設計図とライセンス生産の権利が渡されている。

 これでワルキューレは、連邦や同盟などの強力な勢力に対する強力な刃を手に入れているのだ。

 

 またも疑問が抱かれる。どうやって高性能機を大量生産しているかについてだ。

 この問題は、数々の植民地世界を持つ資源豊富なワルキューレなので、珈琲豆の代用品であるタンポポを使うように、別の素材で代用して問題を解決しているようだ。

 だが、代用品を使っても新たな問題が出るだけだ。例えば扱いが難しい機体が、更に扱いが難しくなったりする。その代表が、ワルキューレが早速取得して生産に乗り出したVF-25だ。

 オリジナルに使われているフォールド・クォーツが、異世界で見付かるはずも無いので、代わりの素材の代用品とした。その結果、オリジナル以上の性能を持ったが、代償としてオリジナルより操縦が難しくなると言う結果に終わる。

 それでも、元の世界より戦争を頻繁に起こしている超軍事組織のおかげか、実戦経験豊かなパイロットやベテランのパイロットに恵まれ、総生産数より十分の一以下しか稼働していないが、エース専用機として採用されている。

 そんな高性能な機体に乗り込むマリは、操縦桿を片手にマニュアルを読みながらどのような武装がなされているか確認した。

 ちなみに、彼女が乗っているVF-25はFタイプ。ドックファイト向けに最適化され、通常の生産タイプであるA型の単眼式カメラとは違ってゴーグル式であり、レーザー機銃は両耳のように付く形で二門となっている。小隊長機を務める事もあってか、A型よりかなりの性能が底上げされている。

 

「えーと、前に乗ったこともあるバルキリーと同じくガンポッドとミサイル、それと旋回対艦用ビーム砲? こんなの付いてんだ。時代は変わる物ね…」

 

 マニュアルで兵装を確認したマリは早速、自分が見たことも無い兵装である機体背面に装備されている旋回式連装ビーム砲を、射程距離に近い連邦のコルベット艦に向けて使った。

 尚、マリが乗っているVF-25Fには、数あるオプションパックの中で更に高価な物であるトルネードパックが装備されている。武装は機体背面の旋回式連装ビーム砲を始め、マイクロミサイルを詰め込んでいるポッドを四基も装備し、その重武装を更に加速化させるためのバーニアや回転式双発エンジンポッドも装備している。

 こんな贅沢な機体に装備を分け与えられたのは、マリがまだ破られていない撃墜数を誇っているからであろう。彼女が搭乗するVF-25Fのカラーは、元神聖百合帝国の女帝を意識したのか、白百合と同じ白である。

 

「威力は中々の物ね」

 

 試し撃ち代わりに小型の戦闘艇であるコルベット艦に向けて撃ったところ、見事に撃墜することに成功した。ビーム砲の威力を知ったマリは、更に周囲に居る艦艇に向けてビーム砲を撃ち始める。

 

『ミストルがやられた! 回避運動!!』

 

『MS隊、直ちに奴を潰せ!!』

 

 無線機から敵の通信が聞こえて来れば、巡洋艦や駆逐艦は回避行動を取り始め、代わりに十数機のMSのRGM-89ジェガンが前に出て来るのが、キャノピー越しから見える。

 敵機であるジェガンは、マリのメサイアをビームライフルの射程距離に捉えれば、直ぐにビームを浴びせて来た。他の機体も加われば、たちまちビームの雨となる。

 幾ら高性能機と言え、回避は困難である弾幕であるが、マリは意図も容易くそれを掠れることなく避けて見せる。これには流石にビームの雨を浴びせているパイロット達も驚きを隠せないでいる。

 

『ど、どうなってんだ!?』

 

『エースでも避け切れねぇほどの弾幕だぞ!?』

 

「あんた等が雑魚なだけでしょ」

 

 そんな敵機に乗り込むパイロット達の驚きの声を無線機から聞いていたマリは、彼らの事を雑魚と表しつつ、反撃に移る。暴風雨のようなビームを回避しつつ、マリは機体をバトロイド形態に変形させ、ライフルを撃ちながら接近してくる一機のジェガンに向け、ガンポッドを浴びせた。

 一度トリガーを引けば、離すまで放たれ続ける凄まじい数の弾丸が必死の回避行動を取る目標の胴体に向けて発射され、たちまち目標とされたジェガンをハチの巣にして爆散させる。 動き回れば当たらない物であるが、マリは逃げる先を予想してそこに撃ち込んだのだ。

 他の敵機も同様に回避行動を取りながらビームを浴びせて来るが、誰もマリのメサイアには当てられず、次々と返り討ちにされて撃墜されていく。

 

『ひっ、ひぃぃ!!』

 

『ば、化け物だ!!』

 

『お、おい! 逃げるんじゃない!』

 

 僅か数秒ほどで、十数機も居たジェガンは四機まで減少した。

 次は自分の出番だと思った戦意を損失して隊長の静止の声も聞かずに逃げるパイロット達の声が、無線から聞こえて来る。追撃しようと思ったが、弾の無駄と判断して放っておく。

 彼らが射線上から離れたことで、艦隊からの砲火と多数の対空ミサイルが飛んでくる。

 雨のようなビームに無数のミサイルに対し、彼女は機体をファイター形態に変形させ、並の人間では耐えられないような凄まじい機動を繰り返し、全て回避する。

 以下にマリが、人間でないと言う証拠だ。

 それらの攻撃を全て回避しつつ、敵艦隊に単機で到達することに成功すれば、回避行動を取りながら目に見える敵艦に向けて対艦連装ビーム砲を浴びせる。狙いは主に動力源や融合炉がある直撃部分だ。ビームは実弾兵器である徹甲弾とは違って何のコーティングもされていない限り、容易に重装甲や特殊装甲を貫くことが出来る彼女の並外れた命中率も重なり、三十秒ほどで六隻の艦艇が撃沈された。

 

『迎撃だ! 弾幕を張れ! 奴を近付けるな!!』

 

 無線から敵艦の艦長であるのか、対空砲火を強めるように指示する怒号を聞こえた。

 物の数秒ほどで、味方を誤射するような凄まじい弾幕が行われる。

 流石のマリでもこれは避けきれないかと思ったが、彼女はまるでシューティングゲームでもするがの如く、この凄まじい暴風雨のような弾幕を全て避け切る。

 

『の、乗っているのは人間か!?』

 

『あんなの、人間のできる技じゃねぇよ! 化け物だ、化け物!!』

 

 誤射されないように、遠くの方に退避していた空母の艦載機であるジェガンのパイロット達は、マリの人外染みた動きを見て、あれに乗っているパイロットは、人間ではないと言う確信を得る。

 実際の所、マリは数百年も生き、何度殺されても死なないので、人間で無い事は確かである。

 そんな化け物が乗るメサイアは、目に見える艦艇を次々と沈めつつ、全長が約1000mはある大型空母へと接近する。

 

『来たぞ! 護衛艦に当たっても構わん! 撃ちまくれ!! 発進間近のMSにも迎撃させろ!!』

 

 大型空母に接近するに向けて、空母とその巨大な艦艇を護衛する護衛艦から凄まじい雨のような対空砲火やビームを浴びせられる。それら全てマリには見えており、回避されるのがオチであるが、それでも近付けないように、味方に誤射をする勢いで迎撃に当たる。

 結局のところ、マリが乗るメサイアには一発を当てられず、空母の飛行甲板に取り付かれてしまう。

 

『き、来たぞ!』

 

『撃て、撃てぇ!!』

 

 飛行甲板に取り付いて機体をガウォーク形態に変形させたところで、混乱する敵兵等の声が無線から聞こえて来る。

 それに合わせてか、まだ発艦前のジェガンや全高15m程のヘビーガンに支援型MSのGキャノン等が、手持ちの兵装などを撃ち込んで来る。飛行甲板要員たちも、この時のために持ち込んで来た対機動兵器用の携帯火器を撃ち込む。

 

「ちっ!」

 

 流石にこれは回避しきれないと判断してか、マリは舌打ちしてからガウォークとバトロイドで使用可能な防御手段である左腕に搭載されている盾であるピンポイントバリアを使い、敵の攻撃を防御した。敵からの攻撃を防御しつつ、マリは機体の右手が持っているガンポッドと、この時のために温存していたマイクロミサイル数発を、目に見える敵機に向けて撃ち込んだ。

 発射されたミサイルは、標的にしたヘビーガンやGキャノンに向けて飛んで行き、撃墜には至らないものの、行動不能にまで追い込むことに成功する。ジェガンに対しては、58mmのガンポッドで十分に撃墜が可能なので、ミサイルを無駄に使わずに済む。レーザー機銃も惜しまなく使い、飛行甲板の制圧を一人で円滑に進める。

 

「うざっ」

 

 周囲の護衛艦からの攻撃もあったが、マリはそれが分かるように回避し、飛行甲板に居る敵機を撃破しつつ、旋回ビーム砲で鬱陶しい護衛艦を撃沈する。歩兵の携帯式ミサイルやロケット弾も飛んでくるが、それも分かっていたのか、回避行動を取りながら、機体側面にある25mm高速機関砲を掃射してミンチに変える。

 

『ひっ!? い、嫌だ、俺は死にたくねぇ!!』

 

 主に現代戦闘機や装甲戦闘車両に搭載されている大口径の機関砲であり、それを皿に連射力を上げた代物であるため、人に向けて撃てば、ミンチに変わること間違いなしだ。大勢の仲間が音も無く一瞬でミンチへと早変わりしたために、生き残っている一人の兵士は恐怖し、自分一人で逃げ出し始めた。

 

「ゴミ掃除OK!」

 

 飛行甲板の制圧が終われば、マリは機体をバトロイド形態に変形させ、機体の両足の裏を甲板に付ければ、絶え間なく出て来る敵機をガンポッドや旋回ビーム砲で撃破しつつ、ハンガーを固く閉じているハッチをレーザー機銃で強引に開け、内部へと侵入した。

 

『くたばれ骸骨野郎!!』

 

 空母内部に入れば、無線機から敵機のパイロットの罵声が聞こえ、それから物の数秒後に待ち伏せていたヘビーガンが、この場での射撃武器の使用を考慮してなのか、MSサイズのメイスで殴り掛かって来た。

 このサイズの打撃武器を受けては、流石のメサイアでも意図も容易く潰されてしまうため、直ぐに回避行動を取り、カウンター技の蹴りを、敵機の胴体に入れ込む。

 強烈な蹴りを受けた敵機は、メイスを離してしまい、ハンガーの床へと倒れ込む。機体に乗り込むパイロットは、頭部の60mmバルカン砲を撃ち込もうとしたが、誘爆を恐れて迂闊に撃つことが出来ず、遠慮知らずのマリが放ったレーザー機銃をコックピットへ撃ち込まれ、エンジンや動力部に誘爆することなく沈黙する。

 

『敵機が侵入した! 繰り返す、敵機が侵入した!!』

 

 ヘビーガンを沈黙させたところで、アナウンスが響き始め、打撃武器やヒートホークなどの近接武器を持ったジェガンやヘビーガンが、盾で防御しつつ近付いてくる。それに船員たちも、誘爆はしないとされる小火器を持って迎撃に当たる。

 

「時間無いし…一気に片付けちゃおうっと」

 

 向かってくる敵の集団に向け、余り時間を掛けたくないと思ったマリは、周囲に向けて背中の旋回ビームを手当たり次第に撃ち込み、弾薬箱や駐機されているMSを誘爆させる。これにより、後数分ほどで空母は内部爆発を起こして轟沈する。次々とハンガー内の爆発物が誘爆して行く中、総員退艦を知らせるアナウンスが響き始める。

 

『総員退艦せよ! 繰り返す、総員退艦せよ!!』

 

 当直の士官の必死な叫びが拡声器から聞こえる中、乗員やパイロット達は目前の敵に構わず退艦を始める。もっとも、これほど爆発しているので、物の数秒で空母と運命を共にするかと思うが。

 

「さっ、出ましょうか」

 

 爆発の連鎖を起こす空母内部にて、マリは外壁をビーム砲で吹き飛ばし、脱出路を確保すれば、機体をファイター形態に変形させ、そこを通って宇宙へと出た。

 彼女が空母を出た頃には、既に空母が内部爆発を起こして轟沈している頃であった。あの場でモタモタしていたら、爆発に呑まれ、氷漬けにされたまま宇宙へと彷徨っていたかもしれない。

 そんな生きるか死ぬかのスリルを感じつつ、マリは護衛が大量についている旗艦を目指して一直線に突っ込んだ。

 

『敵機、まだ生きてます!!』

 

『な、なんて奴だ…空母を一機で沈めやがった!』

 

『艦載機と護衛艦、なにやってる!? 早く撃墜しろ!!』

 

 空母を単独で轟沈させたところで、敵の戦意と戦力が減ったため、艦隊の将兵らの慌てふためいた通信が、無線から聞こえて来た。この慌てて混乱状態に入る敵兵等を嘲笑いつつ、マリは貴官の盾となろうとする敵艦を次々とビーム砲で沈め、迎え撃とうとする艦隊の防空部隊を破壊しながら、旗艦へと一気に突撃を仕掛ける。

 

「そろそろ、使っちゃおうかな」

 

 旗艦を囲う戦艦や巡洋艦が見えたところで、マリは温存していたマイクロミサイルを全て発射した。彼女がトリガーを押せば、機体の装備された全てのポッドから、無数のマイクロミサイルが勢いよく発射され、それぞれが標的にした目標へと飛んで行く。

 艦載戦闘機も幾らか居たが、無数のミサイルを避け切れずに撃墜され、宇宙の塵となる。

 戦艦や巡洋艦に関しては、一隻も撃沈には至らなかったが、砲や対空砲を撃ち込まれ、戦闘不能状態にされた。

 標的にされず、無事であった駆逐艦などが対空ミサイルを発射して旗艦に近付けないようにしたが、あれほど撃ってもマリのメサイアには一発も当たることなく、旗艦まで近付かれてしまう。

 

「あれが旗艦ね!」

 

 他の戦艦とは形状が違う旗艦型の戦艦を見付けたので、マリは自分の機体へ向けて砲身を向ける武装に向け、旋回ビーム砲を撃ち込み、丸裸にしていく。主砲、副砲、ミサイル発射口、対空砲などを破壊して行き、戦闘能力を奪えば、後方から追尾してくるミサイルを確認してから、それをブリッジへぶつけてやろうと一気に近付く。

 

『近付けるな! 撃ち落とせ!!』

 

 無線機から旗艦に乗る提督の怒号が響いてくるが、マリにとっては関係ない。空母から発艦したMSなどが、対空砲代わりにビームライフルやマシンガンを撃っているようだが、マリが乗るメサイアには当たる事は無い。

 それから物の数秒後、彼女が駆るメサイアは、旗艦のブリッジまで激突寸前まで近付いた後、ガウォーク形態を取り、両足を前に出して足裏のスラスターを吹かせ、急ブレーキを掛けて減速させれば、即座にファイター形態に変形させ、上方へと一気にスラスターを吹かせて飛んだ。

 数秒後に、マリのメサイアをしつこく追ってきたミサイルは急な方向転換は出来ず、そのままブリッジへと当たって旗艦を沈めてしまう。

 

「旗艦撃沈成功! 後は任せちゃって良いかしら?」

 

 旗艦が敵のミサイルで撃沈して行くのをキャノピー越しから確認すれば、マリは後続の味方部隊に後の始末を任せ、ワラキアへと帰投した。

 

 

 

 一方、ワラキアの地上では、自分らごと惑星を滅ぼそうとしていた味方の艦隊がマリの乗るVF-25Fメサイア一機に旗艦を撃沈され、壊滅状態になっているとは連邦や傀儡と化している都市同盟は知らず、ワルキューレの守備隊の排除をしていた。

 

「よし、異常無し。次だ!」

 

 大きな屋敷に敵兵が居ないことを確認すれば、民兵と連邦兵等は屋敷から出て、他の建造物の探索へ移ろうとする。

だが、広場に出たところで、この都市制圧に協力した市民たちが彼らを囲い、協力の見返りを要求してきた。

 

「な、なんだお前たちは!?」

 

「薬だ! 薬をくれ!」

 

「妻が病気なんだ! アンタ等の医学力なら簡単に治せるだろ!?」

 

「子供が病気なんです! 今すぐ医薬品を!!」

 

 凄まじい数で武装した彼らを囲い、身動き一つできなくして、医薬品を渡すまで解放しないつもりだ。

 

「ど、退け! 俺たちは敗残兵を狩っている途中だ! 妨害すれば、連中の手先と見なすぞ!!」

 

 銃口を向けて脅しを掛ける連邦軍の将兵らであったが、市民たちは聞く耳持たず、病気にかかった身内を助けるために、ただひたすらに手を伸ばして医薬品を要求する。

 

「奴らの敗残兵なんて逃がしちまえば良い! そんなことより薬をくれ!」

 

「その為に余所者のお前たちに協力したんだ! さっさっと見返りを寄越せ!!」

 

 この都市を陥落させるため、市民たちに医薬品を提供すると言う条件で協力させて見事にワルキューレから都市を奪うことに成功した連邦軍と惑星同盟であるが、まだ完全に都市の安全を確保しないうちに見返りを早く要求してきたので、彼らは困り果てていた。

 奪還のために来るとされる敵の攻撃部隊に対する迎撃用の陣地も、見返りを求める市民たちのおかげで全く進まず、攻撃されれば直ぐに奪還されることは確実であった。

 

「見返りは必ずしてやる! だから今は我々に協力しろ!」

 

「煩い! 俺たちは医薬品を貰うために、犠牲を覚悟でやったんだ! その為に俺の弟は死んだんだぞ! 早く薬を出せ! 薬を!!」

 

「この野郎! 俺たちの仲間がどれだけ死んだことが分かっているのか!?」

 

 都市同盟の民兵は、威圧的な態度で市民らを抑え付けようとするが、それが市民を更に逆撫でしたのか、暴徒状態寸前にまで発展する。

 しかし何故、市民たちがこれ程までに医薬品を求めるのか?

 理由はこの惑星ワラキアの中世的文化が原因であった。余りにも高度な文化を否定し過ぎた為、医学すらも強靭な肉体を作るためには不要と言う事で、疫病以外に惑星の住民に医薬品を支給することは禁じられている。

 して、どうやって治療法を探しているかと言えば、通常の税よりも高い税を納めるかしか選択肢が無く、選べない者は病で一生苦しむこととなる。

 そんな彼らに助けの手を差し伸べれば、藁にも縋る思いで群がってくるだろう。

 その証拠に、連邦や都市同盟に解放された都市の市民らは、見返りとして要求した医薬品を早く手に入れようと、手近に居る兵士らを囲んでそれを要求している。

 

「いい加減にしろ! これ以上の敵対行為を見せるなら、我々はお前たちを…う、うわぁぁぁぁ!?」

 

 陣地構築を図る工兵隊にも市民たちが押し寄せて来たため、ライフルを持つ兵士が安全装置を外して引き金に指を掛けようとした時、敵が来るとされる方向から来た凄まじい業火に全身を焼かれて火達磨となる。

 

「な、なんだ!?」

 

「わ、ワイルドキャットの魔法使いだ!」

 

「き、来やがった…!」

 

 防衛陣地構築を行っていた将兵らは、仲間が焼き殺されたのを見て、直ぐ敵と判断して即座に迎撃態勢を整えたが、彼らもまた、最初に焼き殺された兵士と同様の運命に陥る。

 

「ひ、ひぃぃぃ!!」

 

「い、イオアン様だぁ! イオアン様が直接前線に来たぞ!!」

 

 自分等を解放しに来た兵士たちが、全員業火に焼かれて焼き殺されたのを見れば、市民たちは巻き込まれないように建物の中へ逃げようとする。だが、イオアンは裏切り者である彼らにも容赦はしない。

 

「このクソ野郎! 俺のアサルトライフルでわぁぁぁ!!」

 

「や、止めてグァァァ!?」

 

 市民ごと自分の得意魔法である業火で焼き払い、たった一人で防衛ラインを突破する。

 

『クソッタレが! こいつで吹っ飛ばしてやる!』

 

 次々と友軍が焼き殺されているのを黙ってみていられなかったMSのドートレスに乗るパイロットは、一人で友軍部隊を次々と殺していくイオアンに向け、主兵装である90mmマシンガンを浴びせる。だが、イオアンの前に張り巡らされた炎の壁により、全て溶かされてしまう。

 

『ば、馬鹿な…!?』

 

「ふん、堕落した文明によって生み出された兵器など、この俺に傷一つ付けることは出来ん!」

 

 放たれた自分をミンチにするような弾頭を全て炎の壁で防いだイオアンは、自分より巨大な体格を持つドートレスを、魔法で放った業火で焼いた。

 

『馬鹿め、こいつは溶岩でも…う、うわぁぁぁ!? あ、熱い! 熱いぃ!! 助けてくれぇぇぇ!!』

 

 炎でMSが焼ける物か!

 そう高を括っていたパイロットであったが、機体は内部から燃え始め、閉鎖状態であるコックピットすらも燃え始めた。全身に炎を浴びたパイロットは我慢できず、悶え苦しみながらハッチを開け、外へ思わず飛び出して自殺してしまう。

 

「ひっ、も、モビルスーツを…!」

 

「や、焼きやがった…!」

 

 MSすら容易く燃やしたイオアンの炎魔法を見た連邦軍の将兵や都市同盟の民兵らは、彼の圧倒的な強さを見て、絶対に勝てないと言う絶望感を覚える。

 

「ふん、高度な文明に頼り過ぎるからだ。さて、豚共。貴様ら全員の刑は、焼殺刑か、それとも串刺し刑のどちらが良いのだ…?」

 

 周囲に居る恐れおののく敵兵等を見て、どちらの刑で処刑されたいかを問うイオアンであるが、どちらとも苦しみながら殺されるのは確実であるので、彼らは武器を捨てて我先へと逃げ始める。戦闘車両やMSに乗る者達も同様であり、車両ごと逃げたり、MSに乗ったまま逃げ始めている。イオアンの後続でやって来た奪還部隊に向けて一発も撃たずに。

 

「う、うわぁぁぁ!!」

 

「死にたくねぇ!!」

 

「ま、ママぁぁぁ!!」

 

「そうか…なら、両方の刑を貴様らに執行してやろうではないか!」

 

 喚き散らし、悲鳴を上げながら逃げる正規軍の兵士や民兵らを見て、イオアンは狂気じみた笑みを浮かべながら、焼殺刑と串刺し刑の双方の死刑法を執行した。

 まずは焼殺刑だ。魔法で業火を呼び出し、密集している地点へと放ち、纏めて焼き殺していく。豪華で焼かれた彼らは、獣のような叫び声を上げながら死ぬまで悶え苦しむ。

 

「ひっ、ひぃぃぃ!!」

 

「い、嫌だぁぁぁ!!」

 

「次は串刺し刑だ! 喜ぶと良いぞ! はっはっはっ!!」

 

 数千人と数百両、数十機は焼き払ったのを確認すれば、今度は串刺し刑を執行する。

 地面に向けて利き手である右手を打ち込み、地面より無数の杭を召喚させる。その杭は無差別であり、凄まじい速さで地中から飛び出して来た杭に串刺しにされた将兵達は、死ぬまで苦しみ悶える。戦闘装甲車両やMS、アーマード・トルーパー、ゾイドもサイズに見合った杭に串刺しにされ、機能を停止する。

 

『お、おのれ! このゴジュラスで!!』

 

 まだ無事であったゴジュラスが、二門のロングレンジキャノンでイオアンを吹き飛ばそうとしたが、照準を向けたところで、彼の姿は無かった。

 

『なっ、何所に!?』

 

「ここだ、愚か者め」

 

 姿が消えた為、彼が居た場所をカメラで探すパイロットであったが、既にイオアンの姿は、コックピットのキャノピーの上にあった。

 直ぐに護身用の自動拳銃を抜き、それをキャノピーの上に居るイオアンに向けて撃とうとしたが、彼が抜いた剣で胸を一突きにされる。

 

「ぐ、ぐぁぁぁ!?」

 

「ふっははは! 太古の獣の力が無ければ、貴様は無力であるな!!」

 

 キャノピー越しに突き刺された剣の刃で苦しむパイロットを見て、イオアンは高笑いを浮かべながら、空いている左手の指を鳴らし、ゴジュラスを一突きで貫通できるような杭を、この巨大な恐竜の足元に召喚した。

 

『グォォォォ!!』

 

 自分も巻き込まれないように一番高い塔の天辺まで退避すれば、共和国最強のゾイドが叫び声を上げ、巨大な杭で串刺しにされた光景を見て、更なる高笑いを浮かべる。

 

「フフフ、あはは…はっはっはっ!! これが共和国最強のゾイドか! 笑わせてくれる!! こんな有様が最強のゾイドとはな!! 最強のゾイドはこの俺の愛機であるバーサークフューラーよ!!」

 

 最強のゾイドが自分の愛機であるバーサークフューラーであることを示せば、今度は敵に協力した市民らに視線を向けた。

 

「ひっ、ひぃぃ…」

 

「や、やっぱりあいつに勝てるわけがねぇ…!」

 

 イオアンの圧倒的な強さを見ていた敵に協力した市民たちは、手にしている棍棒や手製の武器を地面に落とし、絶望感を覚えて震え始めた。

 そんな彼らの元に、イオアンは恐ろしい目つきを浮かべながら近付いてくる。

 彼に殺されることは間違いないと思った市民たちは、命欲しさの余り両膝を地に着け、頭まで地面に着けて命乞いを始める。

 

「お、お許しください! 我々は無理やり協力されていたのです!!」

 

「娘を人質に取られてそれで…」

 

 連邦や都市同盟に無理やり協力されたと言う理由を述べる市民たちであったが、見っとも無く命乞いをする者達に対して、いつも高笑いを浮かべるイオアンの表情は無感情のままであり、彼らの言う自分が助かりたいだけの訴えを聞いていた。全ての訴えを聞けば、イオアンは聞き終えるまで閉じていた口を開く。

 

「理由はそれだけか…?」

 

「は、はい! それだけでございます…」

 

「分かった…」

 

 他に何か理由があるのかを問えば、市民たちは思い付くだけの理由を全て喋ってしまったのか、他に思い付かず、彼の問いに素直に答えた。それを聞いたイオアンは、彼らの背後で衣服を剥ぎ取られ、全裸にされて凄まじい暴行を受けたワルキューレの将兵らの死体を見て、市民らに対する判決を下した。

 

「貴様らは串刺し刑だ。第一の罪状は敵と結託し、我が軍に被害を受けさせたこと。第二の罪状は我が軍の戦乙女たちを輪姦した罪だ。言い訳は閻魔やサタンにでもするが良い」

 

「そ、そんな…」

 

「俺たちじゃない、俺たちじゃないんだ…! 連邦や都市同盟の連中が…!」

 

 自分等がワルキューレの女性将兵らを輪姦していないことを必死に訴える市民たちであったが、イオアンは容赦なく彼らの足元に鋭い杭を召喚させ、市民全員を串刺し刑の処した。

 悲鳴が巻き起こり、高く上げられた串刺しにされた死体から、凄まじい血が降り注いでくる。男女関係なく串刺しにされており、老人も、子供も無差別に串刺しにされ、タイルを自らの地で赤く染め上げている。

 血の雨が降りしきる中、その中をイオアンは気にすることなく進み、輪姦されて放心状態になっている彼女らに近付く。

 

「あっ、あぁ…」

 

「貴様らの情けなさには心底うんざりさせられたが、豚共の恵み物にされて子を宿らされるのは、女にとってはさぞ屈辱であろう。せめてもの報いだ、俺がこの手で一瞬のうちに楽にしてやる」

 

 戦闘服を刀剣類で引き千切られ、裸にされた挙句に輪姦された一人の若い女兵士を見て、イオアンは自分にとってはトラウマと同等な記憶を思い出してか、腰に差し込んである剣を抜き、自分に向けて視線を向ける女兵士の額を一突きにし、精神的な屈辱感から解放した。

 一人目を殺せば、他の女兵士の元へ行き、一人目と同様に額を一突きにして楽にする。

 

「や、止めて…っ!?」

 

 何人かは殺さないように命乞いをしたが、今の彼には聞こえず、額を一突きにされて殺される。

 やがて全員を殺し終えれば、剣の刀身に付いた血を吹き払い、それを腰のベルトに差し込んである鞘に戻す。それと同時に、部下たちと奪還部隊の将兵らが来る。

 

「イオアン様、ここに居られましたか!」

 

 自分の主の無事な姿を確認した副官や部下たちは、周囲警戒を行い、安全を確保する。

 同じくやって来たワルキューレの奪還部隊の女将兵らは、イオアンによって殺された友軍の女兵士らの死体を見て、言葉を失う。

 

「なにこれ…!?」

 

「来たか女ども。この女兵士らを手厚く埋葬してやれ」

 

 一人の女兵士がようやく口を開いた所で、イオアンは彼女らに、自らが手を掛けて楽にした輪姦された女兵士らを埋葬するように命じた。

 彼女らがその命令に戸惑う中、目の前の人物の指示に応じなければ自分たちが殺されると思い、命令通りにイオアンによって殺された彼女らの亡骸を死体袋などに入れて運び、トラックの荷台へ味方の戦死者と一緒に詰め込み始める。

 

「このまま一気に豚共を叩き潰すぞ! 続け!!」

 

『応っ!!』

 

 戦死者たちの回収が行われる中、指示通りに動いていることを確認したイオアンは、部下が用意した大きな馬に跨り、自らの部隊を率いて敗走する連邦と惑星同盟の追撃に入った。




次回は、ブルーチーム全員と海兵隊一個機甲中隊呼んで、イオアン討伐かな?

後、三話ほどで串刺し世界編を終わらせる予定です。
イオアンの過去については…番外編でもやろうかな?
モデルの人が、あのラスボスより強い中ボスである狂皇子であられるルカ・ブライト様なので。

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