復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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※シルヴァニアファミリーは、串刺し公の姓名ではありません


串刺し世界Pat4

 マスターチーフに敗れたシュンがワルキューレの女性士官と共に回収されて数時間後、首都の東方数十㎞にある村が、連邦軍の敗残兵を匿った罪として、ワルキューレの敗残兵狩り部隊によって焼き払われていた。

 でっち上げかと思われていたが、その証拠に村に潜んでいた連邦兵達が一か所に集められている。

 連邦兵等を見張る部隊が持つ銃は、ルーマニア製のAKMであるAIM突撃銃が握られ、村を焼き払う兵士は火炎放射を持っていることから、この惑星に駐屯する部隊にしては、どの部隊よりも装備が贅沢であることが分かる。

 

「う、うわぁぁぁ!! 助けてくれぇ!!」

 

「誰も村から出すなと言う命令だ! 射殺しても構わん!!」

 

 ただ村を焼き払うだけだと思いきや、逃げる村人を射殺していた。

 どうやら、異文化汚染を広めないために処分を下したようだ。指揮官らしき甲冑を身に着けた長身の男が、この村の殲滅を指示している。

 

「焼き尽くせ! 殺し尽せ! この村は野蛮な侵略者たちの堕落した文明によって汚染された!! 汚染が広がる前に、この村を徹底的に殲滅するのだ!!」

 

『はっ!!』

 

 左手で握り拳を作りながら、連邦兵が踏み入った村の殲滅の正当性を傘下の将兵らに説いた。それに応じ、彼の部下たちは村人たちを射殺し、家屋を火炎放射で焼き払う。

 村が血の海と炎に呑まれる中、村の殲滅の指揮する彼に向けて、見張られている連邦兵等が、罵声を浴びせる。

 

「お、お前ら! 野蛮過ぎるぞ!!」

 

「俺たちはただ寝泊まりしただけだ! なんで焼き払う必要があるんだ!?」

 

 そうこの中では少し若い指揮官に向け、罵声を浴びせる武装を解除された連邦兵達であるが、彼が振り返る際に見せた恐ろしい一睨みで口を噤む。そんな連邦兵等を見た彼は、物量で満足にしか戦えない連邦軍の不甲斐無さを鼻で笑う。

 

『ひっ!?』

 

「ふん、所詮は群れることでしかろくに戦えないムシケラ共か。その侵略者共を串刺し刑に処せ!」

 

 強気に出て黙った連邦兵等を嘲笑いながら、彼らをこの場で処刑を命じた。その処刑方法は、ワラキア各地で風景となっている串刺し刑に処された串刺し死体だ。串刺し刑と聞いた連邦兵等は、先ほどの威勢が嘘のように消え、我が身可愛さで必死に命乞いを始める。

 

「や、止めてくれ! 串刺し刑だけは勘弁してくれぇ!!」

 

「銃殺刑とかあるだろ!? そっちにしてくれ! 串刺しなんて人間にやる処刑方じゃねぇ!!」

 

「我が身可愛さに命乞いなど、余ほど連邦の兵は弛み切っていると見えるな」

 

 必死に命乞いをする連邦兵等を見て、連邦軍の将兵がどれほど軍隊として弛み切っているのか口にした。そんな我が身可愛さで命乞いをする敵兵らを見下す彼の耳に、ある一人の兵士が発したとんでもない発言が入る。

 

「そ、そこの女だ! そこに居るビッチが勝手に、俺の前で股を開きやがったんだ!!」

 

「ほぅ、この村の女が、侵略者を前にして股を開いただと…? おい、この腰抜けが指差した女をここに連れてこい!」

 

 それを耳にした彼は、一塊にされている女性らを見て、その敵兵が指差した女性を前に出すように部下に指示する。

 部下がそれに応じて指定された女性を中から無理やり連れだしたが、彼女は殺されるのは確実だと思って、必死の悪足掻きを始める。

 

「ひっ、ひぃぃ! 違います! あの兵士に無理やり犯されたんです!! 私は被害者なんです! お願いだから殺さないで!!」

 

「嘘つけ、この(アマ)! てめぇが勝手に股を開いただろうが! 俺は悪くねぇんだ!!」

 

「違うわ! こいつが勝手に!!」

 

「黙れ! テメェみたいな梅毒にやられてそうな女とやるか!!」

 

 自分は強姦されたと必死に訴え、自分の両腕を掴んで無理やり指揮官の前に連れ出そうとする兵士らに抵抗する女性であったが、彼女を指名した連邦兵は、それが嘘の訴えであると強調するように叫ぶ。何か言い返し、口論を始める女性であるが、それから数秒後に、彼の前に突き出される。

 

「貴様か…そこの侵略者に易々と身体を差し出したのは?」

 

「ち、違います! あ、あの男が勝手に…」

 

 この機に及んでまだ自分の罪を認めようとしない女性であったが、指揮官は部下から渡された書類を手にし、腰に差してある鞘から剣を抜き、斬る準備をしながら書類に記されている内容を口にする。

 

「ほぅ、あの敵兵が言う通り、貴様はトンだ淫乱のようだな。目撃者の話によれば、数人のメガミ人将兵と三人の少女兵と性交渉…まぁ、女兵士やメガミ人共の部隊が駐屯すれば、民間人の女との関係は止めようがない事だが。他の地域の女ならまだしも、侵略者の兵士に股を開くとは…これは刑に処す以外、他に選択肢はないな…!」

 

「お、お願い…命だけは…!」

 

 彼が書類を一通り読み終えて、それを部下の前に叩き付けてから剣に振り素振りを見せたため、女性は死の恐怖を感じて後退り始める。そんな女性に対して、彼は価値も無い命と発してから容赦なく剣を振り下ろそうとする。

 

「笑わせるな! 貴様のような侵略者共に易々と股を開く淫乱の命に惜しむ価値も無い!!」

 

「そ、そんな…!?」

 

 凄まじい剣幕でこれから殺す予定の女性に発した後、彼は容赦なくその女性に剣を横に振り下ろし、頭を飛ばした。

 

『きゃぁぁぁ!?』

 

 首から切断された頭部は、集められた女性たちの中心に落ち、それを見た彼女ら自分が殺されると思って恐怖し、泣き叫び始める。一人は逃げようとしたが、槍を持った兵士に胸を一突きにされて息絶える。

 

「次に逃げようとした女を連れてこい!!」

 

「はっ! 来るんだ!!」

 

「い、嫌ぁ!!」

 

 さらに女性たちが叫ぶ中、返り血を浴びている彼は、次に逃げようとした女性を差し出すよう指示を出した。それに応じて部下は、指名された女性の無理やり彼の前に突き出す。

 首を刎ねられた女性のように、自分も殺されると分かっている女性は、暴れるのを止め、大人しく両膝を地面に着け、横顔を見せる彼に向けて命乞いを始める。

 

「お、お願い…やめて…!」

 

 震える声で、彼に向けて命乞いをする女性であるが、そんな様子を見た彼は舌打ちをしてから、部下に見張らせている連邦兵達に向けて怒鳴り散らし始める。

 

「どいつもこいつも命乞いばかりしやがる! そこの腰抜けの敵兵達もだ!! 貴様、そんなに自分の命が欲しいのか?」

 

 連邦兵等に怒鳴り散らした後、彼は女性の方へ向けて自分の命がそれほど大事な物であるかどうかを問う。その問いに対し、自分だけでも助かりたい女性は、身体を差し出すような思いで告げた。

 

「は、はい…見逃してもらえるなら、何でも致します…」

 

「そうか…」

 

 見逃してもらえるなら何でもする。

 その女性の言葉を聞いた彼は、悪魔のような笑みを浮かべながら、屈辱的な真似をするように告げた。

 

「よし、なら豚の真似をしろ」

 

「え、ぶ、豚…!?」

 

「早くしろ、殺されたいのか?」

 

「は、はい!」

 

 屈辱的な真似とは、豚の真似だ。それを聞いた女性はやや戸惑ったが、彼の催促で恥も命を優先するばかりで感じることなく、身体を四つん這いにして、豚の鳴き声を口にしながら彼が言った豚の真似をし始めた。

 

「ぶー、ぶー…ぶー、ぶー…」

 

 そんな女性の様子を見ていた彼は、可笑しさの余り高笑いを始める。

 

「ふ、ふはははは!! あっははは!!」

 

 数秒間ほど笑った後、恐ろしい笑みを浮かべながら豚の真似を終えた女性に向けて感想を述べた。

 

「面白いな…!」

 

「じゃ、じゃあ…!」

 

 これで自分は助かると思っている女性であったが、結果は余りにも絶望的な物であった。

 

「豚は死ね…!」

 

 屈辱的な真似をさせた挙句、その追い打ちと言わんばかりに剣を容赦なく振るい、彼女を殺害した。斬られた彼女は血を地面に撒き散らしながら横たえ、暫く地面の上で痙攣を続ける。

 女性を殺害した後の彼の元に、副官らしき人物が近付いてきた。

外見は初老の男であり、白髪が見え、頭部が禿げ上がっている。しかし顔付きは強面の分類に入り、歴戦の戦士であると伺える。

 

「イオアン様、もうよろしいでしょう。村の反逆者共にはこれ以上の抵抗力はありません。それ以上の殲滅は必要ないかと…」

 

そんな彼に対し、やって来た副官は十分に村の殲滅は完了した事と、これ以上の殲滅行為は不要であると告げるが、イオアンと呼ばれる若い指揮官は、それに応じなかった。

 

「必要ないだと…? 貴様、ここは何所だか分かっているのか? この惑星ワラキアは我がシルヴァニア家が守り続けた地であるぞ! 侵略者共の堕落した文明に汚染された村人共は、感染を広げんためにも一人残らず皆殺しにせねばならぬ! この地で強く生きる臣民のためにもな!! それを分かっているのか貴様は!?」

 

 応じるどころか、連邦兵等が持ち込んだ物に興味を惹かれて触れた老若男女の村人を皆殺しにする正当性を強く説いたため、勢いに押された副官は、それを渋々応じて実行するしか選択肢は無かった。

 

「は、はい…直ちに侵略者共の刑を執行いたします!」

 

「よろしい、共にこの素晴らしき惑星を侵略者共の手から守ろうぞ! お前ら、村の家屋をもっと焼き払え! 村を地図から消える勢いで焼き尽くすのだ!! 敵の文明に汚染された村人は全て殺せ! 赤ん坊に至るまでだ!!」

 

「はっ!!」

 

 副官からの返事で聞いたイオアンは、更なる村の殲滅を命じる。

 これに応じ、イオアンの部下たちは若い村人全員、赤ん坊に至るまで全て刀剣類や銃で殺した。

 

「や、止めろ! 止めてくれぇ!!」

 

「この惑星に貴様らを送り込んだ上層部を恨むんだな!!」

 

 連邦兵等に対しては、イオアンが命じたとおりに串刺し刑が執行された。それを嫌がる彼らは尻や背中に鋭く先端が尖った木の杭を突き刺され、数秒間苦しんでから息絶える。

 

「こ、こんな所へ閉じ込めないでくれぇ!!」

 

「黙れ! さっさと入れ!!」

 

 老人や妊婦、子供などの処刑を担当する部隊は、か弱き者達を納屋に無理やりにでも押し込む。唯一の出入り口である大きなドアを何度も叩き付ける音と悲鳴が聞こえて来るが、兵士たちはドアを板などで補強して固く閉じ、中に居る人々を閉じ込めた。それから火炎放射などで納屋を焼き、中に居る人間を纏めて焼き殺そうとした。

 数秒後、木造の納屋は忽ち炎に包まれた。中ではきっと地獄絵図が作り出されていることだろう。悲鳴や獣のような叫び声が聞こえる中、勢いの余り全身火達磨となった数名が、扉を開けて飛び出してきた。

 

「出て来たぞ! 撃ち方始め!!」

 

 だが、外に居る兵士たちは、彼らに向けて無慈悲に突撃銃や機関銃の銃弾を浴びせ、全身から伝わる高熱の地獄から解放する。

 数十分後、燃え盛り、死で溢れた村で生きている者は、イオアンと彼の部下たちのみであった。村に住んでいる村人は皆、燃え盛る家屋の壁の前に並ばされて射殺されて横たわるか、納屋の中に押し込まれて焼死している。この村の全滅させる原因となった連邦兵全員は、木の杭に串刺しにされ、腐敗するのを待つばかりだ。

 

「よし、殲滅は完了だ! 本部に帰投するぞ!!」

 

 全ての村の家屋を焼き払い、入り込んだ連邦兵と村民を皆殺しにしたナチス親衛隊の移動虐殺部隊である「アインザックグルッペン」のようなイオアンの部隊は、指揮官である彼がジープに乗り込んで撤収命令を出せば、速やかにトラックなどに乗り込む。荷台に全員の搭乗が完了すれば、トラックはエンジンを鳴らしながら基地へと帰還する。

 後に村に残されたのは、燃え盛る村の家屋と、大量の射殺された死体や焼死体、数体の串刺しにされた連邦兵の死体だけであった。

 この敵性分子、否、虐殺部隊が何故にそのような蛮行染みた行動を起こしたのかは、他の集落や街を文化汚染から守るためである。

 今後、連邦軍の敗残兵らが街や村に潜伏し、現地住民に文化汚染(チョコや煙草、etc)を犯せば、このような虐殺的殲滅が行われることだろう。

 流石にイオアンが村で行った虐殺的殲滅行動を乱発するわけには行かないので、ワラキア中の都市や村々に、連邦軍の侵攻部隊の敗残兵を発見次第、即座に通報するようにと、伝令兵を使っての通達が行われる。

 これで殺し尽すことは無いであろうが、ワラキアに住む者達にも、中世染みた生活に不満を持つ者が居る。彼らが連邦軍の敗残兵らと結託して事を起こせば、幾つかの町や村々が地図から消えることになるだろう。

 こうして、ワラキアを守り切ったワルキューレの駐屯軍と、何処かに潜伏してテロ活動を行うであろう連邦軍の敗残兵らとの戦いが始まった。

 

 

 

「はぁ…残党狩りメンドクサー」

 

 惑星各地に潜伏する連邦軍の敗残兵狩りを行うワルキューレの将兵達であったが、幾つかの部隊はやる気を起こさず、幾つかがサボっている様子であった。

 そんな発言を行う女兵士が居る部隊は、森の中にある綺麗な湖で軍服を脱ぎ、一糸纏わぬ姿となって、水遊びをしていた。全員が美女であり、大変に美しい光景である。

 彼女らの装備は訓練の賜物か、綺麗に並べられ、モシン・ナガンM1891/30のルーマニア軍モデルの小銃が互いに支え合う形で三つに立てられ、三つの銃口の上にヘルメットが置かれていた。軍服の方は、綺麗に畳まれて置かれている。

 兵だけならまだしも、下士官も士官すら軍服を脱いで身体を清らかな水で流しており、更に見張りすら立てていない。敗残兵が何時何所からか襲ってくるかも分からないのに、余りにも無用心過ぎる。

 人数は五十人編成の小隊であり、幼い少女のように水遊びをする者や、同性同士で性交渉する者も居る。絵にすれば大変に値打ちのある物であるが、彼女らは軍属の人間なので、彼女らを統括する中隊長が見れば、確実に厳罰に処されるであろう。

 

「そんなこと言っちゃ駄目ですよ、小隊長さん。中隊長が見れば、どれだけ叱られることやら…」

 

「そんなの関係ないでしょ。あんたみたいな乳デカも、サボって水遊びでもしてんじゃないの? それと、殿でしょ殿。ほら、もっと強く」

 

「は、はい」

 

 自分より遥かに大きいバストサイズを持つ部下に注意されれば、小隊長は仕返しと言わんばかりに上司に対して悪態を付き、さらに殿を付けて呼ぶように返した。

 それと自分の背中を部下の豊満な胸で女体を洗わせているらしく、もっと強く押し付けるように告げる。それに合わせてか、強く背中にIカップはある胸を擦り付けてソープを泡立てて行く。

 

「はぁ…」

 

 乳輪が直に肌に当たる所為か、少し感じてしまうが、止めると上司に文句を言われるので、止めるわけには行かない。自分の女体で上司の身体を洗う本人も、近くから聞こえて来る性行為の喘ぎ声で敏感になっており、自分の大き過ぎる胸で洗っている上司に襲い掛かりそうな本能を理性で抑えつつ、入念に洗う。

 

「あれ、誰あの人…?」

 

「綺麗…」

 

 彼女らが水遊びに入り浸る中、美しい女兵士たちよりも更に上回るほどの外見を持つ金髪碧眼の美女が水遊びをしている女兵士たちと同じく一糸纏わぬ姿で現れ、一番浅い場所へと腰を下ろした。その様子を見ていた女兵士らは、腰まで届く金色の髪と、色白で美しいラインを持つ身体つきに目を奪われ、余りの美しさに声を上げる。

 顔付きの方は、少々幼さが残っている。

 

「誰、あの女?」

 

「さぁ、あんなに綺麗だと、派手に目立ちますし」

 

「モデルだったら即座に表紙よね」

 

 突然、現れた美女に対して、全員が水遊びを止めてその美女を一目見ようと周りに集まってくる。自分の上司を体で洗っている巨乳の兵士も、身体で洗うのを止めてみんなと共に美女を見る。

 

「サキュバスじゃないよね…?」

 

 一人の兵士は何らかの敵ではないかと思い、近くに置いてあるPPs43短機関銃を手に取り、安全装置に指を掛けながら近付き、清らかな水で美しい体を洗う美女に銃口を向けながら問う。

 

「誰、あんた?」

 

 安全装置を外し、銃口を向けながら問うたが、彼女は無視して身体を洗い続ける。

 無視して洗い続けるため、短機関銃を持つ女兵士は無言で指示して、小銃を持った兵士らに四方を囲ませる。普通なら顔に不安を浮かべるか、怯える表情を浮かべる筈だが、四方から銃口を向けられている美女は、表情一つ変えない。

 

「お前、聞こえないの…きゃっ!?」

 

 これに少し苛立ったのか、小銃を持つ女兵士が美女の細い肩を強引に掴んだ。だが、掴んだ瞬間に差し出した左腕を右手で掴まれ、そのまま湖の中へ投げ飛ばされた。

 

「貴様!」

 

 美女は全く微動だにせずに、体重60kgはある女兵士を片手一本で湖の中に叩き込んだため、周囲に居る水遊びにふけていた女兵士たちは直ちに警戒態勢に入り、慌てて銃を取ろうと湖から這い出る。性行為をしていた女兵士らも同様に近くに置いてある自動拳銃を手に取り、銃口を美女に向けた。湖の中に叩き込まれた女兵士は、直ぐに這い上がって小銃の安全装置を外し、しっかりと構えて銃口を美女の頭部に向ける。

 

「貴様、能力者か!?」

 

「キャー、こわーい」

 

 PPs43を持つ下士官らしき女性が問えば、美女は少女のような声でワザとらしい悲鳴を上げて相手を挑発する。

 

「こいつ、調子に乗って!」

 

 この挑発に対し、横に居る女兵士が小銃の銃座で頭を打ち付けようと殴ろうとしたが、突然立ち上がった彼女に股間の秘部を軽く触られ、甘い声を出しながら小銃を手放して倒れ込む。

 

「ひゃっん!?」

 

「何を!? ひやっ!?」

 

「あぁん!?」

 

 一人目が赤面を浮かべながら倒れた直後に、残る二名が直ぐに引き金を引こうとしたが、彼女らが気付かぬ間に股間を信じられない速さで触れられ、脳に伝わってくる性感で思わず引き金から指を離してしまう。忽ち美女の包囲下が解かれたため、その様子を見ていた小隊長は、直ぐに撃ち方を始めるよう怒号を飛ばす。

 

「なによ全く! 全員撃ち方始め! ハチの巣にしちゃいなさい!!」

 

 これに応じて部下たちは直ぐに手にしている銃を一斉に美女へ向けて撃ち込んだが、弾丸は彼女に到達する70㎝を前にして全てが静止した。

 どうやら魔法や能力の類のようだ。このような芸当は、超能力者でもない限り出来もしない。

 

「う、嘘…!?」

 

SSS(トリプルエス)でもこんな事できないって…!」

 

「こ、殺される…!」

 

 音速の速さで目標に当たるはずの弾が、まるで時が止まったかの如く静止したので、それが返されると彼女たちは思って恐怖し、銃を握る手を震わせる。しかし、発射された弾丸を全て静止させた美女は、全ての弾丸を湖から離れた場所へと全て飛ばす。何故このような行動を取ったのかは、湖を汚さないためにもあるだろう。

 それに、音速の速さで発射された弾を全て止めることは、魔法では出来ないことだ。おそらく能力の類だろう。

 しかし、その美女にはもう一つの目標があるようだ。

 

「弾を全て湖の外へ…? 一体何の…!?」

 

 全ての弾丸を湖の外へ飛ばした後に、美女の目的が分からない女兵士らが戸惑う中、そんな彼女らに向けてある一言を放つ。

 

「アプロディーテ」

 

 戸惑う彼女らに向けて放った一言は、ギリシャ神話の愛と美と性を司るメガミの名であった。その一言を発した理由の真意は不明だが、それを耳にした女兵士らの反応で分かる。

 

「か、身体が…」

 

「な、なにこれぇ…急に身体が熱くなって…」

 

「ぬ、濡れてる…!? ど、どうして…!?」

 

「あぁ、なんかどうでも良くなってくる…いっぱいエッチしたい気分…」

 

 その声を聴いた女兵士たちは、まるで媚薬でも盛られたかの如く顔を赤らめ、武器から手を離して体勢を崩し、湧いてくる性欲と性感に我慢できずに喘ぎ声を出す。

 

「もう我慢できない…手が止まらない…」

 

 ある者は耐え切れず、片方の手を自分の秘部に入れ込み、もう片方の手を自分の胸の触れ、自慰行為を行う。

 

「ちょっと、イリアス! こんな時になにして…!?」

 

「ねぇ、フランチェカ…今すぐしよ…」

 

「えっ!? 待って! 敵が目の前にぃ…」

 

 恋人同士あるいは肉体関係はある二人の女兵士は、性欲に身を任せて敵を前にしてパートナーを押し倒し始める。

 

「ど、どうなってんのこれぇ…!? 性欲が止まらないしなんか気持ちいし、もう何が何だか…」

 

 部下たちが戦闘を止めて自慰行為や性行為を行い始めたのを見て、小隊長は自分も押し寄せてくる性欲や性感に晒されながら混乱する。

 

「はふ…はぁ…」

 

「はむ、へあ…」

 

 背後を振り返れば、自分の背中を体で洗わせていた巨乳の部下は、隣に居た副官の曹長と濃厚なキスを交わしている。それを見ていると、更に性欲や性感が高まり、自分もそこへ交わりたくなる。

 

「もう、あの女の事なんてどうでも良いや…カルフェのおっぱいにむしゃぶり付きたい…元々あのおっぱいにむしゃぶり付いて弄り倒すために引き入れたんだから…」

 

 そう自分の副官とキスを交わす巨乳の兵卒に、彼女を自分の部隊に引き入れた理由を包み隠さず口にして、近付こうとする。だが、近付く前に、彼女の背後からあの美女が近付いてくる。

 

「ここさ、私だけの秘密のお気に入りの場所だったんだけどね…まぁ、百年くらい経てば、見付かっちゃうけど」

 

 巨乳の兵卒の元へ向かおうとする小隊長に対し、背後から近付いた美女は、この湖がお気に入りの場所であることを告げた。

 

「えっ…? 百年…? そのアニメみたいな声…まさか…!?」

 

 百年と言う通常の人間が生きられない年数を告げ、更に近付いて良く聞こえる金髪碧眼の美女の声に対し、小隊長はあることを思い出した。

 

「(嘘よ、単なる噂じゃん。永遠に生きる絶世の金髪美女なんて。トップクラスの化け物以外、居ないでしょ…!? まさか、目の前の女が…!?)」

 

 小隊長はあり得ないと思っていたが、数名の兵士を目にも止まらぬ速さで制圧するほどの強さ、自分を含める部下たちを一言で戦闘不能にして性欲に溺れた淫乱に変える魔法を使う彼女の姿を見て、それが真実であることを嫌でも分からされた。

 

「金髪碧眼にアニメ声…長身で形の良すぎるFカップの白人美女…! あの撃墜記録がヤバ過ぎる元神聖百合帝国女帝にて元陸軍中佐で空軍中佐、マリ・ヴァセレート…!!」

 

「へぇ…知ってる子居たんだね…もう忘れられちゃったって思ってた。まぁ、辞めたのは、八十年くらい前だけど…その頃数えるのが面倒だから、良く分かんない」

 

 自分の名を口にした小隊長に対し、正体を明かされたマリは、小隊が持ち込んでいた石鹸とシャンプーを手に取り、自分の事をまだ覚えている将兵が居ることに少し驚きつつ、ワルキューレを辞めたのは、何十年前の事だと告げる。

 途方もない時間を過ごしているマリに対し、小隊長は困惑しつつ、ただその場に蹲って現実から目を逸らすべく、感じて来る性欲に身を任せようとしていた。そんな彼女に対し、マリは何か言い忘れていたのか、あることをするように命令する。

 

「あっ、そうそう。退役将校の権限使っちゃうけど。なんかこの湖さ、たまにお風呂みたいに温かくなるんだけど。タイミング悪かったから冷たいんだよね…あんた達の乱交で温めてくれる?」

 

 湖でグループセックスして水をお湯にしろ。

 そう彼女は小隊長に命じた。そんな命令、実行する指揮官など一切居ないはずだが、小隊長は笑顔でそれを実行する。

 

「はい、中佐殿ぉ。直ちに実行しまひゅ。みんな、湖の中でセックスしなさい!」

 

『イエッサー!』

 

 性感で呂律が回りながらも復唱した後、五十人は居る部下たちに命令すれば、彼女らはその命令を来るのを期待してか、隣に居る者同士で乱交を始めた。

 柔らかない肉がぶつかり合う音と女性の喘ぎ声を聞きつつ、マリは浅い場所へ腰を下ろし、両側面と背後を巨乳の兵卒で固め、豊満な胸の上に枕のように頭を乗せてくつろいだ。

 

 

 

「なんだここは、虐殺の後か…!?」

 

 マリがワラキアへ来たと同時刻、チーフと海兵隊員にワルキューレの女士官と共に掴まったシュンは、彼らと共にイオアンとその部下たちが徹底的に焼き払って破壊し尽した村に到着した。破壊された村の跡を見た海兵隊員の一人が、目の前に広がる教科書の挿絵でしか見る事しかできない光景を見て驚きの声を上げる。

 

「どうやら連邦軍の敗残兵を匿ったか、受け入れたかの見せしめだろうな。死体に銃創が見える」

 

 シュンに大剣を背負わせて、両腕を拘束バンドで縛らせた状態で歩かせているチーフが、串刺しにされた連邦兵等の遺体を見て、村が殲滅された理由を語る。他にも見せしめとしてか、射殺された若い男女の遺体が、「私は汚染された文明に触れた感染者です」と書かれたプラを掛けられたまま大木の枝に首に縄を括りつけられて吊るされている。

 女性士官の方は、シュンと同じく両手を拘束バンドで縛り、分隊の紅一点である女性隊員が見張っている。

 

「酷いことを」

 

「酷いって、あんた等が侵攻してきたからでしょうが」

 

「黙れ、このアマ。頭を吹っ飛ばされたいか」

 

 串刺しにされている味方の死体と、木に吊るされている村人たちの亡骸を見た中尉がこのような惨事を行ったまだ名前も知らぬイオアンに怒りを積もらせる中、その原因を作っている連邦軍の偽善さを、女性士官がわざと分かり易いように英語で喋って嘲笑う。それを聞いてか、気が短い隊員が苛立ってライフルの銃口を向ける。

 

「止めろ、彼女はその大剣を持っている大男より貴重な情報を持っている。射殺することは許さん。それに捕虜を勝手に射殺することは条約違反だ」

 

「条約、条約って…そんな物、一体なんの役に立つってんだ。ルールなんて守らなきゃ意味がねぇんだよ」

 

 中尉が注意すれば、その隊員はもはや守られていない軍事条約を厳守しようとする彼を皮肉ってか、小さな声で毒づく。

 

「よし、そこへ二人を座らせろ。ここで尋問する。第一班と第二班は周囲を警戒しろ。キャビン一等軍曹、君の出番だ」

 

「イエッサー」

 

 そんな隊員の事を気にせず、中尉は語学力に優れている女性下士官を呼び出し、女性士官と一緒に銃口を向けられているシュンに尋問を始める。どうやら、シュンが知っている情報と女性士官の知っている情報を照らし合わせるようだ。

 

「では、まずはそこの…マッチョだ。英語を喋っていたな? 我々はこの惑星のある程度の情報は掴んでいるが、情報部はそこまで詳しい情報が分からない。どんなにハッキングを行っても、凄まじいセキュリティーで何度も跳ね除けられる。一体どんな物を隠しているか知っているか?」

 

「あっ? このおっかねぇ惑星についてだって?」

 

 中尉に問われたシュンは、ワラキアに対して覚えている限りの噂話を包み隠さず話した。

 彼は元ワルキューレ所属で士官であるが、今となっては単なる復讐者であるので、ワルキューレが不利になるようなことを話しても、自分が元職場に狙われる以外、損は無い。

 

「つっても、俺はこんなヤベェ所なんかに一回も来たことないからな。確か、シルヴァニアって言う貴族が治めている惑星で、強者の楽園とか聞いたぞ。それと、人体実験してるって噂だ」

 

 強者の楽園に対しては、強く、健康的で優秀なる兵士を育てる場所であることを答え、人体実験に関しては、噂で聞いた程度の事を話す。

 

「強者の楽園に人体実験? それは本当か?」

 

 シュンが自分の覚えている限りのことを話せば、中尉は女性士官にそのことを問う。口裏合わせをしていないかどうかの確認であるが、シュンは彼女のことなど全く知らない。

 彼女は先ほど英語で喋っていたが、自分等の陣営が不利にならないようにするためか、わざとルーマニア語で「知らない」と一言で答える。語学力がある女性士官が何度も問うが、知らないの一点張りだ。

 

「彼女は何も知らないと言っているぞ」

 

「当然だろ、抜けた奴なんて構うもんか。俺を拷問したって、あの女は知らないしか言わねぇぞ」

 

 女性士官が知らないと答えれば、中尉は再びシュンを問うが、彼は自分を拷問しても無駄であることを告げ、海兵隊員等を困らせた。そんな海兵隊員らに向けて何を思ったのか、シュンはそこの女性士官を拷問に掛けてみてはどうかと問う。

 

「あんた、ルールは必ず守るって顔してるが、そんな事しても埒が明かねぇぞ。首筋にナイフでも突き立てたり、素っ裸にしてレイプでもしたらどうだ?」

 

「そんな畜生以下のことはしない!」

 

 それが挑発になったのか、中尉は提案したシュンを怒鳴り付ける。

 彼らのやり取りを理解できている女性士官は、レイプと言う単語を聞いて、黙秘を続ければ自分が犯されるのではないかと思い、固唾を飲んで自分の母国語であるルーマニア語で姓名と階級、所属部隊を言い始めた。それを聞き取った女性下士官が上官に告げる。

 

「喋りましたよ。彼女はアルマ・イオネスコ。階級は中尉で所属は、第826歩兵師団傘下の第1905歩兵連隊D中隊第三小隊の小隊長です」

 

「そうか。で、この惑星には串刺し以外に何がある?」

 

 姓名と階級、所属部隊が分かれば、中尉は次の質問に入った。それを女性士官はルーマニア語で彼女に問う。シュンの方には、一切見向きしていない。どうやら彼からは何の情報も得られないと判断したようだ。

 問いに対して彼女は、現在、分隊が野営を取っている村を廃村にした部隊、イオアンの部隊の事をビクビクしながら話した。

 

「この村を壊滅させたのは、イオアン・シルヴァニアが率いる虐殺部隊がやった物だと言っています」

 

「イオアン・シルヴァニア…? なんてこった、そんな極悪な奴は、サリジア戦線に居たんじゃなかったのか?」

 

「イオアン…? おい、どういうことだ? あいつは英雄だぞ」

 

 イオアン・シルヴァニアの部隊がこの村を壊滅させたと聞いて、厄介な奴が居ることを聞いて絶望する中尉に対し、彼の事を知っているシュンは、なぜ彼が極悪人になっているのかを問う。

 

「なに、お前…あいつはとんでもない極悪人だぞ。シッド戦線では降伏した同盟軍の数万の将兵を虐殺し、ナルジア戦線では敗走する我が軍の将兵を大量に虐殺した。そこには海兵隊員も含まれている。とんでもねぇクソ野郎だ」

 

 中尉の答えにシュンは、連邦がワルキューレを悪の組織に仕立てるためのプロパガンダと思い、真実を確かめようと女性士官の襟元を掴んで問い詰める。

 

「おい、マジでこの村を蹂躙したのは、イオアンの部隊か!? 答えねぇと犯すぞ!!」

 

「よせ、そりゃ拷問だぞ!」

 

 周りから銃口を向けられているにも関わらずに問い詰めるシュンに対して静止の声を掛ける中尉だが、彼は無視して女性士官を揺さぶりながら問う。それを本気だと認識した女性士官は、彼にも分かり易いように英語で答えた。

 

「ほ、本当よ…嘘じゃないわ…あの人は、父親が死んでから母親と同じく残忍な人に…」

 

「母親と同じく…だと…!?」

 

 父親が死んでから、母と共に残虐な人物へと変わり果てたと知り、シュンは自分の記憶にあるイオアンの事を思い出した。

 

 

 

 それはまだシュンがワルキューレに属し、日ノ本の帝国との全面戦争の頃、彼が属している部隊は、敵である帝国軍に勝利したが、敵側が玉砕突撃を敢行したため、自軍も多大な損害を被る。玉砕突撃対する阻止として砲撃が行われ、その際に吹き飛んできた大量の敵兵の死体に呑み込まれてしまう。

 

『おーい、ここだ! 誰か!!』

 

「そこか、大丈夫か!」

 

 見えない程の大量の武士の甲冑を身に着けた敵兵の死体に埋もれて助けを呼ぶシュンを見付けだした長髪の男、イオアン・シルヴァニアは死体を退けながら、死体の隙間から差し血塗れの彼の大きな手を掴み、力強く引っ張り出した。

 大量の死体の中からイオアンの手で引っ張り出されたシュンは、刀身が返り血塗れな大剣を手に取り、それを杖代わりにして上体を起こし、抜け出してもらった彼に礼を言う。

 

「あぁ、助かったぜ…あんた、噂の…」

 

「貴様、イオアン様に助けてもらった分際でこの口の利き方は何だ!!」

 

「よせアルトバス、せっかく私が助けた命だ。ここで断ち切ることは許さん」

 

 位の高いイオアンに対して敬語を使わない低階級の兵士であるシュンに対し、部下の一人が腰に差してあるメイスを抜き、殴り掛かろうとしたが、彼に止められる。そして彼は、シュンに対して自身の名を名乗り始める。

 

「如何にも、私は常勝のシルヴァニア。もっとも、それは敵が付けた名だがな。本当の名はイオアン・シルヴァニアだ。父は惑星ワラキアの統治をしている。しかし貴様、大剣を戦場で使うとは、余程の自信家だな。何故に大剣を使うのだ?」

 

 自分の名を名乗った後、イオアンはシュンが大剣を得物とする理由と問うた。

 この問いに対し、シュンは少し悩んでから、つたない敬語を使ってその理由を答えた。

 

「…憧れている男が居るんっす。そいつは俺の命の恩人で、馬鹿デカい大剣を使ってました。俺はそんな男に憧れて、こいつを得物として使ってるんですよ」

 

「ほぅ、憧れの人物か…よかろう、私が直々に調べてやろう。次に再会する時があれば、貴様のあこがれの男の事を話してやろう。では、行くぞ皆の者」

 

 大剣を使う理由が憧れの人物を真似ていることであると明かせば、イオアンは次に再会する時は、調べ上げたシュンの憧れの男の情報を告げることを約束し、部下たちを引き連れて別の戦場へと去った。

 しかし、シュンがイオアンに合う事は無かった。幾度か戦っているうちに、彼の功績は耳に入っていたが、ワルキューレを除隊する三年ほど前に、イオアンが戦場から去ったことを知る。

 その際にシュンは、憧れの男がどんな人物であるかどうかを知る事を諦めた。

 

 

 

「あり得ねぇ…あいつがこんなクソ以下の虐殺をするわけがねぇ…!」

 

 記憶の隅にあるイオアンのことを思い出し、シュンはあの誇り高き男が、神をも恐れぬ鬼畜の所業を犯したことを信じられないでいた。

 そんな彼に対し、チーフはシュンの両手を拘束している結束バンドを、周りの反対を押し切って外す。軍人としてありえない行動だが、彼の考えがあっての事だろう。

 

「ち、チーフなにを!?」

 

「いや、これで良い。その事実を信じられないと言うなら…」

 

 本人に直接聞いてみると良い。

 そう海兵隊員たちの反対を押し切ってまで、自分を自由の身にしたチーフに対し、解かれた結束バンドの片方を外すシュンは、そんなことをしても良いのかと問う。

 

「良いのか、こんなことやって。俺はあんた等に襲い掛かるかもしれねぇぜ?」

 

「お前がそうするなら、今度はお前を殺す。我々と戦っても、お前にとって何のメリットも無さそうだが」

 

「あぁ、それもそうだな。俺があんた等と戦っても勝てる見込みはねぇし、勝っても何の意味もねぇ」

 

 ここでチーフと海兵隊員等と戦っても、自分にとって何の意味も無い事を理解したシュンは、それを告げて鞘に収まっている大剣を取り、柄の部分を右手で触れる。

 

「(重くねぇ、魔が言う事を聞いているのか?)」

 

 大剣に触れたとき、と言うよりか背負ってから凄まじい重さを感じなかったため、シュンは大剣に潜む魔が自分の言う事を聞いていると思い、鞘から刀身を引き抜き、試しに振ってみようとするが、海兵隊員らは警戒して銃口を向ける。

 

「ただの素振りだ。お前らを叩き斬るわけがねぇ」

 

「奴の言う通りだ。我々に対する敵意は無い」

 

 そう告げるが、海兵隊員らは銃口を下げない。そこで、信頼されているチーフは、彼らに向けて銃口を下げるように告げれば、海兵隊員らは銃口を下げた。それが確認されれば、シュンは鉄塊のような大剣で素振りを始める。

 

「す、すげぇな…」

 

「あぁ…」

 

 大剣を振るう度に重圧感のある音が鳴り響き、強く振れば軽い風が巻き起こる。

 前回のマスターチーフとの戦いよりも、大剣が軽すぎた為に違和感が出た。

 十分に慣らし終えれば、素振りを止めて大剣の刃を見ながら、また潜んでいる魔が出るのではないかと疑う。

 

「よし、これで良い…だが、こいつに潜んでる奴が怖いな」

 

「潜んでいる奴?」

 

 独り言が聞かれたのか、中尉が大剣に潜んでいる魔が気になり、シュンに問うてきた。

 

「お前らには信じられないだろうが、こいつは魔剣でな。俺が持つと片手剣並に軽いんだよ」

 

「おい、ファンタジーの話は他所でしろよ」

 

「いや、奴の言っていることは本当だ。現にその大剣を背中に着けている時、何らかの声が頭に響いてきた」

 

「嘘だろ…?」

 

 中尉の問いにシュンが答えれば、隊員が笑いながら馬鹿にしたが、チーフが言えば、合点が言って表情を一変させた。

 

「あんたにも聞こえたか。どうやら、こいつは寄生して乗っ取る奴は、強い奴に決めてるそうだな…」

 

 チーフにもあの声が聞こえたと分かれば、シュンは大剣に潜んでいる魔が、自分を含める強靭な肉体を持つ男を主にターゲットにしていると認識する。それとどう向き合うのか気になってか、チーフはシュンにそのことを問う。

 

「で、どうするんだ? 大人しくそこに潜んでいる魔に身を任せるか?」

 

 その問いに対し、シュンは鼻で笑ってから大剣の刃を見つつ答えた。

 

「いや、一心同体って奴かな? こん中に隠れてる陰険なクソ野郎に、俺を認めさせてやる。それが出来るかどうか、俺には分からねぇがな。そんじゃ、俺はここでお別れだ」

 

 問いに答えた後、シュンは鞘を背負い、大剣を鞘にある専用のラックに取り付けた。それから無言で立ち去ろうとしたが、チーフに呼び止められる。

 

「待て」

 

「なんだ、急に?」

 

「我々と同行しないか? 行く宛も無いんだろ? それにお前は元職場の人間を数十人殺害した。ここに居たって、狙われ続けるだけだ」

 

 シュンがこの星で行く宛も無く、それに元職場の兵士を殺害したので、狙われることは確実と睨み、自分等と共に行動しないかと誘う。無論ながら、海兵隊員らからまた反対の意見が飛び交う。

 

「チーフ、こんな奴と一緒だなんて!」

 

「こいつは元ワイルドキャットだ! 途中で裏切るかもしれねぇ!」

 

「お前は黙っていろ! マスターチーフには何か考えがあるんだ」

 

 次々と出る反対意見に対し、中尉はチーフには何か考えがあると思い、部下たちを黙らせた。その対応にチーフはジェスチャーで無言の感謝をしつつ、シュンの説得を続ける。

 

「どうする、一人で次元転送装置がある基地を襲撃して行くか? そうなれば、ハチの巣にされることは間違いないが」

 

「あぁ、そうかい。だったら、あんた等も俺の目的に協力してもらうぜ。いずれにせよ、イオアンと戦うことになるかもしれねぇからな」

 

「その可能性も高いな。では、共に行こうか」

 

「チーフの見込んだ男だ。アービター以上の強力な仲間になるかもしれない」

 

 一人だけでは殺されるだけだと、自分では敵わない歴戦練磨の戦士に言われたシュンは、それに納得して誘いを受けた。これに中尉は、かつてチーフと共に戦った元敵の偉大な戦士の事を思い出し、それを口にする。これにシュンは気になったが、今は口を開くべきではないと思って気にしなかった。

 こうして、チーフたちと協力することになったシュンだが、彼が持っている大剣の名前が気になったのか、中尉が聞いてくる。

 

「済まないが、君の持っている大剣の名前は何だ?」

 

「名前? 知らねぇな…渡してきた白髪のおっさんが知ってそうだが、名前なんて言わず、魔剣とかしか言ってなかったな…どうすっか…」

 

 大剣の名を問われても、渡してきたブラスコヴィッチや知って良そうなゲラルドは名前すら教えなかったため、どの名前を付けて良いかシュンは悩む。そんな彼を見兼ねてか、中尉自身が自分の記憶にある神話関係の名を思い出し、その名でシュンの得物である大剣に名前を付ける。

 

「ならこうしよう、この大剣は持ち主を乗っ取ろうとする魔剣だ…持ち主に破滅をもたらそうとする剣だから…北欧神話の魔剣の一つであるダーインスレイヴって名前はどうだ?」

 

「中尉、そんな趣味を持っていたのか…」

 

「これなら、ワイルドキャットに入っても問題なさそうだな」

 

 自分等の上官が神話に詳しいことを知って、部下たちが驚きの声を上げる。

 

「長過ぎやしねぇか、その名前。陰険な野郎だから、スレイヴで良いだろ、スレイヴで」

 

 しかし、シュンは名前が長いことが気に食わなかったのか、後ろの名だけを取る。

 大剣の名前が「スレイヴ」と決まった所で、チーフはヘルメットの無線機を作動させ、惑星近くの宙域に潜んでいる自分等の母艦でUNSCの宇宙空母である「ギャラルホルン」に向けて長距離通信を始める。盗聴される覚悟であるが、チーフ以上のスパルタンが後三人も来ることは、海兵隊員等に取ってありがたい事だ。

 

「では、決まりだな。イオアンと戦う事も考えて、他のメンツも呼ぶ必要があるな。こちらシエラ117からブラックキャッスルへ。残りのブルーチームをここに寄越してくれ」

 

『こちらブラックキャッスル。派手にやる気だな。シエラ117、貴官の要請を受理する。こちらが指定したランディングゾーン(LZ)を確保していてくれ。詳細な場所は貴官のデータに送り込む。オーバー』

 

「受理に感謝する。これ以上の通信は盗聴される可能性が高い。ここで通信を切る。アウト」

 

 この要請をギャラルホルンに居る作戦指揮官は受理したことが返って来れば、チーフは礼を告げてから一同の方へ視線を向けた。

 

「よし、全員、南東2kmの平地に行くぞ」

 

『イエッサー!』

 

「で、こいつはどうするんだ?」

 

 チーフが指定されたブルーチームの着陸地点である南東の方角へ行くことを指示すれば、中尉と海兵隊員らはそれに応じた。一方で、シュンが捕虜にしている女性士官はどうするのかを問う。

 

「そうだな、そこらへんに寝かせておけ」

 

「だとよ」

 

 捕虜をどうするかチーフに問えば、気絶させておけと言ったので、シュンはその指示に応じて女性士官の腹に思いっ切り拳を打ち込み、気絶させてそこらに寝かせる。

 女性士官が気絶したのを確認すれば、チーフとシュンを含めるアルファ分隊は、増援であるブルーチームを迎えるため、南東2kmにある平地を目指して出発した。




イオアンのモデルは、あのボーカロイドのルカではありません。幻想水滸伝2に搭乗するルカ・ブライト様です。
それと炎628のアインザッツグルッペンを混ぜ込んでみました。
もう誰かやってるかもしれないけど、我ながらすげぇコンボだと思ってます。

中盤のマリマリ登場…これ、大丈夫かな…? 運営様から怒られないであろうか…心配だ…

大剣の名がここで決まったけど、あれは仮名なんでまだ明らかになってません。
本当の名が明らかになるのは、大分先になるかな…?

では、この辺で失礼。

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